愛知県内に相続した土地があり、使う予定も買い手の当てもないため、国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」を調べている方に向けた記事です。
法務省の統計(2026年9月30日現在の速報値)と申請の手引き、名古屋法務局の案内をもとに、愛知の土地の申請先、費用の計算例、引き取ってもらえない土地の理由別の件数をまとめました(2026年11月3日確認)。
愛知の土地を国に引き取ってもらうときの3つの前提
- 申請は名古屋法務局の本局(名古屋市中区)だけで受け付けます。春日井・一宮・岡崎・豊橋などの支局や出張所では受け付けていません。郵送でも出せます。
- 費用は、申請のときの審査手数料(土地1筆14,000円)と、承認されたあとの負担金です。負担金は多くの土地で20万円、市街地の宅地や森林などは面積に応じて計算します。
- 建物が建ったままの土地は申請できません。全国では申請6,125件のうち3,231件が国のものになり、1,162件が取り下げられています。
この制度で手放せる土地、手放せない土地
相続や遺贈で土地を受け継いだ人が申請し、承認を受けると、その土地を国のものにできます。制度が始まった2023年4月27日より前に相続した土地も対象です。共有の土地は、共有者全員で一緒に申請します。売買など相続以外で手に入れた土地は、基本的に対象になりません(法務省「申請の手引き」)。
一方で、国が管理に困る土地は引き取ってもらえません。法務省の統計にある「却下」(申請の段階で受け付けられない)と「不承認」(審査の結果、引き取れない)の理由を、件数とあわせて並べました。
相続した実家の土地なら、建物を解体してからでないと申請できません。名古屋市や近くの市の解体の補助は空き家の解体補助金 名古屋・愛知で、竹や木が茂った土地の扱いは相続した実家・土地の竹やぶはどうする?で説明しています。
全国の申請と結果:半分あまりが国のものに
取下げ1,162件の理由は、「土地を使う見込みが出た」595件、「却下や不承認になると分かった」415件、その他152件です。却下と不承認は合わせても申請の3%ほどですが、通らないと分かって取り下げた人がその倍以上います。申請の前に法務局へ相談して、引き取ってもらえない理由がないかを確かめておく意味は大きいといえます。
愛知県の土地の申請先と、相談の予約
ふだんの相続登記は土地のある地域の支局や出張所が受け持ちますが、この制度の申請だけは、愛知県内のどこの土地でも名古屋の本局です。豊橋や新城など東三河の土地でも変わりません。遠くに住んでいる場合は、郵送での申請と、電話やウェブの相談を組み合わせられます。
申請書は自分で作れます。作成を仕事として代わりに引き受けられるのは、弁護士・司法書士・行政書士に限られます。土地の境界の相談は、土地家屋調査士にできます(法務省「専門家の活用等について」)。当社は申請書の作成は行っていません。
費用の計算例:審査手数料と負担金
申請のときの審査手数料は、土地1筆につき14,000円です。申請書に収入印紙を貼って納めます。取り下げても、却下や不承認になっても戻りません(法務省「申請の手引き」)。
承認されると負担金の通知が届きます。通知が届いた日の翌日から30日以内に、金融機関で納めます。期限を過ぎると承認が効力を失い、申請をやり直すことになります。負担金を納めた時点で、土地は国のものになります(法務省「審査手数料・負担金」)。
負担金は、土地の種類ごとに国が10年間管理する費用をもとに決まります。宅地・田畑・雑種地や原野などは、一部の地域を除いて、面積にかかわらず20万円です。市街地の宅地、農用地区域などの田畑、森林は、面積に応じて計算します(法務省「制度の概要」)。
申請の前に、別の費用がかかることもあります。建物の解体、境界をはっきりさせるための測量、木や工作物の撤去などです。どれも土地の状態で大きく変わるため、法務局の相談で「この土地で問題になりそうな点」を先に聞いておくと、要らない出費を避けやすくなります。
ほかの手放し方との比べ方
相続放棄では、土地だけを放棄することはできません。兄弟の一人だけが放棄したときの扱いは兄弟の一人だけ相続放棄したらに、放棄した家や土地がその後どうなるかは相続放棄した空き家・土地はどうなる?にまとめています。買い手を探すなら、空き家バンク 愛知(54市町村の一覧)も選択肢です。
申請までの流れ
- 土地の名義と筆数を確かめる。登記事項証明書や固定資産税の通知で、地番ごとに何筆あるかを数えます。審査手数料は1筆ごとにかかります。
- 名古屋法務局に予約して相談する。手元にある登記の書類や地図、写真を用意すると、話が進みやすくなります。
- 引き取ってもらえない理由がないかを確かめる。建物・工作物・境界などに問題があれば、解体や境界の確認を先に済ませます。
- 申請書と添付書類を作り、本局に出す。窓口か郵送で出し、審査手数料は収入印紙で納めます。
- 審査を待つ。標準で8か月です。
- 承認されたら負担金を納める。通知が届いた日の翌日から30日以内です。納めた時点で国のものになります。
土地の名義を相続人に変える相続登記は、2024年4月1日から義務になっています(名古屋法務局のお知らせ)。法務局から「長期相続登記等未了土地」の通知が届いた土地は、長期相続登記等未了土地の通知が届いたらも読んでおくと、手続きの順番がつかみやすくなります。
相続土地国庫帰属制度 愛知のよくある質問
実家が建ったままでも申請できますか
できません。建物がある土地は、申請の段階で却下されます。先に解体してから申請します。
兄弟で共有している土地はどうなりますか
共有者全員で一緒に申請します。相続で共有の持分を受け継いだ人がいれば、全員がそろって申請する形です。
親が亡くなったのは10年前です。それでも使えますか
使えます。制度が始まった2023年4月27日より前に相続した土地も対象です。
審査で通らなかったら、手数料は戻りますか
戻りません。取り下げた場合も同じです。申請の前に法務局で相談しておくと、通らない土地に手数料を払うことを避けやすくなります。
豊橋や岡崎の土地でも、相談は名古屋まで行く必要がありますか
名古屋法務局の審査室は、面談のほかに電話とウェブでも相談を受けています。予約は電話(052-952-8025)か、インターネットの予約サービスでできます。
参考にした公的情報
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html - 法務省「相続土地国庫帰属制度 申請の手引き」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html - 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年9月30日現在)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html - 法務省「審査手数料・負担金」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html - 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(パンフレット)
https://www.moj.go.jp/content/001376268.pdf - 法務省「専門家の活用等について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00491.html - 名古屋法務局「相続土地国庫帰属制度」
https://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/page000001_00721.html - 名古屋法務局「管内法務局一覧」
https://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/table/shikyokutou/all00.html - 名古屋法務局「不動産を相続したら かならず相続登記!」(令和7年8月版)
https://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/content/001448424.pdf - 裁判所「相続の放棄の申述」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html - 国土交通省「低廉な空家等の媒介報酬」に関する資料
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf
※本記事は2026年11月3日時点の法務省・名古屋法務局・裁判所・国土交通省の公式情報をもとにした一般的な情報です。引き取ってもらえるかどうかは、土地ごとに法務局が審査して決めます。当社は申請書の作成や申請の代理、土地の売買の仲介は行いません。個別の土地のことは、名古屋法務局の相談窓口か、弁護士・司法書士・行政書士にご相談ください。
