春に父を見送り、6月になって父あての住民税の納税通知書が届いた。もう亡くなっているのに払うのか、誰の名前で払うのか。初めての方はまず戸惑う書類です。
この記事では、亡くなった人の住民税(市民税・県民税)がかかるかどうかの決まり方、通知書が届いたときに家族がすること、市役所に出す「相続人代表者指定届」の欄ごとの書き方、相続放棄をする場合の扱いを整理します。内容は2026年11月1日に名古屋市・岐阜市・千葉市・練馬区・国税庁の公式ページで確認したものです。
先に結論:1月2日以降に亡くなった人の住民税は、相続人が払う
この記事の結論
- かかるかどうかは1月1日で決まる:その年の1月1日に住所があった人に、前年の所得で課税されます。1月2日以後に亡くなった人は、その年度の分がかかります。
- 払うのは相続人:亡くなった人の納税義務は相続人が引き継ぎ、残りの税額を納めます(名古屋市・千葉市)。
- 代表者を届け出る:通知書を受け取る相続人の代表者を、市区町村に「相続人代表者指定届」で知らせます。様式の名前や出し先は市区町村ごとに違います。
- 年金天引きは止まる:亡くなると年金からの天引き(特別徴収)は止まり、残りは納付書などで払う形に切り替わります。
- 相続放棄をした人は引き継がない:家庭裁判所の受理通知書の写しを出すよう求める市があります。
住民税がかかるかは「1月1日」で決まる
個人の住民税は、毎年1月1日に住所がある人に、前年の所得をもとに課税されます。年の途中で亡くなっても、その年度の分は納める必要があります(名古屋市「死亡した人にも、市民税・県民税・森林環境税はかかるのですか。」2026年3月31日更新)。亡くなった日ごとに整理すると次のとおりです。
亡くなった年の所得には、翌年度の住民税はかかりません。ただし、所得税の確定申告(準確定申告)が必要になる場合があり、これは税務署の手続きです(名古屋市)。準確定申告が要る人と期限は準確定申告が必要な人と4か月の期限にまとめています。
納税通知書はいつ・誰に届くか、年金天引きはどうなるか
住民税の納税通知書は、例年6月ごろに送られます。1月2日以降に亡くなった人の分は、相続人か、相続人と思われる親族に送られます(練馬区公式サイトの亡くなった方の住民税の案内、2024年4月3日更新)。届いた通知書は、相続人の誰が代表して受け取るかを市区町村に届け出ると、以後はその人あてに送られます。
年金から住民税が天引きされていた人は、亡くなると天引き(特別徴収)が止まります。止まった時点で納めていない税額があれば、普通徴収に切り替わり、納付書か口座振替で納めます。払いすぎになっていれば、還付の通知が届きます(練馬区「年金等と住民税」2026年2月1日更新、箕面市)。年金から何が引かれていたかは、年金振込通知書で確かめられます。見方は年金から天引きされるものと年金振込通知書の見方で説明しています。
年金の天引きが止まるのは、年金そのものが止まるためです。年金を止める届出がまだなら、先にそちらを済ませます。流れは死亡による年金の停止手続きを見てください。
相続人代表者指定届の書き方:欄ごとの記入例
相続人代表者指定届は、相続人のうち誰が代表して通知書を受け取り、市区町村とのやりとりをするかを知らせる書類です。地方税法第9条の2にもとづく届出で、様式の名前は市区町村によって少しずつ違います。ここでは岐阜市の「相続人代表者指定(変更)届出書」の記入例にそって、欄ごとに書く内容を整理します。
市区町村によって、細かな扱いが違います。練馬区は押印不要で、郵送・窓口・オンラインで受け付けています。千葉市は、亡くなった方の住所地を担当する市税事務所に出し、戸籍謄本など相続関係が分かる書類を求めています(いずれも2026年11月1日確認)。名古屋市は、住所のある区を担当する市税事務所市民税課が問い合わせ先です。出す前に、亡くなった人が住んでいた市区町村の税の担当に、様式と添える書類を確かめてください。
家や土地がある場合、同じ届で固定資産税の代表者もまとめて届け出られる市があります。固定資産税の通知書が届いたときの流れは亡くなった親宛に固定資産税の納税通知書が届いたらにまとめています。相続人の誰が何を引き受けるか、手続きの順番から整理したい方は、当社の30分無料相談をご利用ください。
相続放棄をする場合:住民税は引き継がない
相続放棄をした人は、亡くなった人の住民税の納税義務を引き継ぎません。千葉市は、家庭裁判所の「相続放棄申述受理通知書」の写しを市税事務所に出すよう案内しています。練馬区は、すでに放棄した場合だけでなく、これから放棄の手続きをする場合も収納課に連絡するよう案内しています。
相続放棄は、自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。亡くなった人の預金など遺産の中から払うと、相続を受け入れたと見られるおそれがあります。放棄を考えているときは、払う前に家庭裁判所の手続き案内や弁護士・司法書士に確かめてください。申立て先は相続放棄の手続き 家庭裁判所はどこ?で調べられます。
払った住民税は、相続の場面でどう扱われるか
亡くなった人が納めるはずだった税金で、亡くなったあとに相続人が納めたものは、相続税の計算で「債務」として遺産の総額から差し引けます。ただし、相続人の責任で生じた延滞金などは差し引けません(国税庁タックスアンサーNo.4126、令和8年4月1日現在法令等)。
そのため、誰がいくら立て替えたかは、領収書を残しておくと後で整理しやすくなります。相続税の申告が要るかどうかや、具体的な税額の計算は、税務署の相談窓口か税理士に確かめてください。当社は税額の計算や申告書の作成はお受けしていません。
通知書が届いたら、今日できること
- 通知書の宛名・年度・納期限を確かめ、納付書が同封されているかを見る
- 相続人の誰が代表して受け取るかを家族で決める
- 亡くなった人が住んでいた市区町村の税の担当に、相続人代表者指定届の様式と添える書類を聞く
- 相続放棄を考えている人がいれば、払う前に家庭裁判所の案内を確かめる
- 払ったら領収書を保管し、誰が払ったかをメモしておく
よくある質問
12月に亡くなりました。翌年の住民税はかかりますか
かかりません。住民税は1月1日に住所がある人にかかるため、その前に亡くなった人には翌年度分は課税されません(名古屋市)。亡くなった年度の分で、まだ納めていない期の分があれば相続人が納めます。
相続人代表者になると、一人で全額を払う義務がありますか
代表者は、通知書を受け取り、市区町村とのやりとりをする窓口役です。納める義務そのものは相続人が引き継ぎます。相続人の間で誰がいくら負担するかは、家族で話し合って決めることになります。分け方で意見が分かれる場合は、弁護士などの専門家に相談してください。
亡くなった親の口座から払ってもよいですか
銀行に死亡を伝えると、口座の出し入れは止まります。相続人が立て替えて払い、遺産を分けるときに精算する方法があります。相続放棄を考えている場合は、払う前に確かめてください(上の見出し参照)。
退職したばかりの親の住民税はどうなりますか
退職した翌年の住民税は、前年の給与の所得をもとにかかるため、高く感じることがあります。亡くなった場合の考え方は、この記事と同じく1月1日の住所で決まります。退職後の住民税の仕組みは退職後の住民税の払い方で説明しています。
参考にした公的情報
- 名古屋市「亡くなった父の市民税・県民税・森林環境税は?」
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1035069/1012012/1012022/1033973/1012037.html - 名古屋おしえてダイヤル「死亡した人にも、市民税・県民税・森林環境税はかかるのですか。」
https://faq.city.nagoya.jp/faq/detail.aspx?id=1809 - 岐阜市「相続人代表者指定(変更)届出書」記入例(PDF)
https://www.city.gifu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/032/643/souzokunin20260630.pdf - 千葉市「納税者が死亡しましたが、住民税に関してどうしたらよいですか。」
https://www.city.chiba.jp/faq/zaiseikyoku/zeimu/kazeikanri/72.html - 練馬区(亡くなった方の住民税の案内)
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/zei/genmen/nakunararetakata-zei.html - 練馬区「年金等と住民税」
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/zei/jyuminzei/nenkin.html - 箕面市「公的年金からの住民税の特別徴収について」
https://www.city.minoh.lg.jp/zeimu/nentoku.html - 国税庁 タックスアンサーNo.4126「相続財産から控除できる債務」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
※本記事は2026年11月1日に確認した公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。届出の様式・出し先・添える書類は市区町村ごとに異なります。個別の税額や納め方は、亡くなった人が住んでいた市区町村の税の担当にご確認ください。相続税の申告の要否や税額は、税務署または税理士にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー) 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
