親の介護をしている家族に、急な出張や入院が入った。あるいは、毎日の介護が続いて、少し休みたい。そんなときに使えるのが、ショートステイです。
施設に短い期間だけ泊まるサービスです。ただ、予約の取り方や日数の上限、費用の内訳は分かりにくいところです。老健のショートステイは、医療とリハビリが入る分、特養などより1日のサービス費がやや高めです。この記事では、2026年10月時点の公的な案内をもとに、使い方と費用の目安を整理します。
先に結論:連続30日まで。1日の費用は部屋の種類で変わります
この記事の結論
- いくら:介護保険のサービス費は、1割負担で1日600〜1,000円ほど(加算を除く)。これに食費1,545円と、部屋代にあたる滞在費が加わります。
- いつまで:連続して使えるのは30日までです。31日目は全額自己負担になります。合計の日数は、認定期間のおおむね半分が目安です。
- どこへ:まず担当のケアマネジャーに相談します。ケアプランに入れてもらい、事業所に予約します。
2026年8月から、国が定める食費の基準額が、1日1,445円から1,545円に上がりました。この記事の金額は、新しい基準で書いています。
ショートステイは2種類:対象になる人・ならない人
ショートステイには、大きく2つあります。ひとつは「短期入所生活介護」です。特別養護老人ホームなどに泊まり、入浴や食事などの支援と、機能訓練を受けます。
もうひとつは「短期入所療養介護」です。介護老人保健施設(老健)、介護医療院、医療機関が、医療や看護、機能訓練を含めて受け入れます。どちらも、家族の介護の負担を軽くすることが目的に入っています。
対象は、要支援1・2、または要介護1〜5の認定を受けた方です。本人の状態が重い場合のほか、家族が病気のときや、冠婚葬祭、出張のときにも使えます。
どちらの種類が合うかは、本人の状態や受け入れ先の空きで変わります。医療的なケアが必要かどうかの判断は、主治医とケアマネジャーに相談してください。
利用までの流れと予約のしかた
予約は、ケアプランの中にショートステイを入れる形で進めるのが基本です。順番は次のとおりです。
- ケアマネジャーに相談する。使いたい時期、泊まる日数、理由(家族の用事、休息など)を伝えます。
- 事業所の候補を選ぶ。空き状況の確認は、ケアマネジャーが事業所に連絡して進めることが多いです。
- ケアプランに位置づける。月の利用の上限や、日数の目安もここで確かめます。
- 事業所と契約し、事前に面談する。重要事項説明書の確認と、普段の様子や飲んでいる薬の聞き取りがあります。
- 当日、持ち物を持って入所する。退所後は、領収書を保管しておきます。
利用前の持ち物チェックリスト
- □ 介護保険の被保険者証と負担割合証
- □ 負担限度額認定証(お持ちの場合)
- □ 普段飲んでいる薬とお薬手帳
- □ かかりつけ医の連絡先と、家族の緊急連絡先
- □ 着替え、洗面用具(名前を書いておく)
- □ 契約に使う印鑑(事業所の案内に従う)
持ち物や書類は、事業所によって少しずつ違います。契約のときにもらう案内が正解です。
予約で困りにくくするコツ
日程が決まっている用事なら、早めにケアマネジャーに伝えておくと安心です。連休や年末年始など、使いたい人が重なる時期は、希望の日が取れないこともあります。
初めての事業所は、面談や書類のやりとりに時間がかかることがあります。急な用事に備えて、元気な時期に一度、短い日程で試しておく方法もあります。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
急に必要になったとき・介護疲れのとき
介護者が急に倒れた、という場面では、通常の予約を待てないことがあります。事業所に空きがあれば、緊急の利用を受け入れてもらえることがあります。受け入れた事業所には、1日90単位の加算がつきます(7日まで。やむを得ない場合は14日まで)。
市区町村が、独自に緊急の宿泊事業を行っている例もあります。たとえば東京都中央区の「緊急生活支援宿泊サービス」は、区に申し込み、利用期間は原則1週間以内です。介護の疲れによる利用は、ケアマネジャーが申し込みます。
こうした事業の有無、名前、期間は、市区町村で違います。お住まいの市区町村の介護保険課か、地域包括支援センターで確かめてください。介護の疲れが重いときは、親の介護に疲れたときのサインと負担の減らし方も参考になります。
連続30日まで。半数の目安と、過ぎたらどうなるか
ショートステイは、在宅の暮らしを続けるためのサービスです。そのため、連続して使えるのは30日までと決まっています。
期限と、過ぎたときの扱い
- 連続30日:30日目までは介護保険が使えます。
- 31日目:全額自己負担です。それでも続けたい場合、32日目から改めて連続30日と数える扱いがあります(前橋市の案内)。
- 認定期間のおおむね半数:合計の日数が、要介護認定の有効期間の半分を超えないようにするのが原則です。
半数のルールは、ケアマネジャーが守る決まりです。ただ、使う側にも関係します。たとえば有効期間が1年なら、1年で約半年分が目安になります。
機械的に止められるわけではありません。介護者が病気で、回復すれば自宅に戻れる場合など、特に必要と認められるときは、これを超える利用も位置づけられます。前橋市では、半数を超えるときは理由書などの提出を求めています。手続きは市区町村で違うため、ケアマネジャーに確かめてください。
もうひとつ注意があります。介護保険には、月ごとの利用の上限があります。ショートステイも、他の在宅サービスと合わせて数えます。上限を超えた分は、全額自己負担です。
要介護認定の申請から更新までの流れは、要介護認定の申請方法にまとめています。認定の期間が切れていると、サービスを使えなくなるためです。
ロングショートステイ(長く続けて泊まる使い方)の注意点
特養の空きを待つあいだなどに、自宅に戻らずショートステイを続ける使い方は「ロングショートステイ」と呼ばれることがあります。31日目を自費にはさんでも、同じ事業所を続けて使っていれば「連続」として数えます(静岡市)。連続30日を超えると、31日目からはサービス費の単位数が少し下がり、61日目からは特養に入ったときと同じ水準になります(2024年4月から)。たとえば併設型・要介護3の多床室では、1日745単位が715単位になります。自費の日の費用や半数の目安もあるため、長くなりそうなら特養の申し込み方法もあわせて確かめ、ケアマネジャーと見通しを話しておきます。
費用の目安:サービス費に、食費と滞在費が加わります
ショートステイの費用は、3つに分かれます。①介護保険のサービス費(1〜3割負担)、②食費、③滞在費です。このほか、理美容代などの日常生活費は実費です。送迎を頼むと、片道184単位の加算がつきます。
①サービス費:介護度と部屋で決まります
単位数は、介護度が重いほど高くなります。1単位は10円が基本で、地域によって上乗せがあります。下の表は、特別養護老人ホームなどに併設された事業所の例です。
これに、職員の賃上げなどの加算がつきます。どの加算がつくかは事業所ごとに違うため、契約のときに料金表で確かめます。
②食費と③滞在費:国の基準額が目安です
食費と滞在費は、介護保険の対象外です。全額が自己負担になります。国は目安となる基準額を決めていて、実際は事業所が契約で定めます。
1日の合計は、3,000円台〜4,000円台が目安
要介護3・1割負担で計算すると、次のとおりです。
たとえば多床室に10日間泊まると、約3万2千円からです。ここに加算や日常生活費が加わります。
サービス費の自己負担が一定額を超えたときに戻る「高額介護サービス費」の仕組みもあります。ただし、食費と滞在費は対象外です。くわしくは高額介護サービス費の申請方法をご覧ください。
ショートステイの費用は老健と特養で違う?要介護度別の1日の目安
老健のショートステイ(短期入所療養介護)は、特養などのショートステイ(短期入所生活介護)より、サービス費が少し高めです。医師や看護職員による医療と、リハビリが含まれるためです。1割負担で比べると、1日およそ90〜170円の差です。
| 要介護度など | 特養など(短期入所生活介護・併設型) | 老健・基本型(短期入所療養介護・従来型個室) | 老健・在宅強化型(従来型個室) |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 451円 | 579円 | 632円 |
| 要支援2 | 561円 | 726円 | 778円 |
| 要介護1 | 603円 | 753円 | 819円 |
| 要介護2 | 672円 | 801円 | 893円 |
| 要介護3 | 745円 | 864円 | 958円 |
| 要介護4 | 815円 | 918円 | 1,017円 |
| 要介護5 | 884円 | 971円 | 1,074円 |
食費・滞在費は別にかかります。老健は部屋で差が出ます
上の表は、介護保険のサービス費だけです。食費と滞在費は別に払います。食費の国の基準額は、老健も特養なども1日1,545円で同じです。差が出るのは滞在費です。
| 部屋の種類 | 特養など(1日) | 老健・介護医療院(1日) |
|---|---|---|
| 多床室 | 915円 | 437円または697円 |
| 従来型個室 | 1,231円 | 1,728円 |
要介護3・1割負担の従来型個室で比べると、1日の目安は特養などが約3,521円、老健が約4,137円です。個室では老健の方が高くなります。一方、多床室の滞在費は、老健の方が安い基準になっています。
- 老健は「基本型」「在宅強化型」など、施設の型で金額が変わります。
- 老健の多床室のサービス費は、上の表に入れていません。事業所の料金表で確かめます。
- 加算や送迎、日常生活費がつくと、実際の支払いは表より上がります。
- 負担限度額認定を受けている方は、老健でも食費と滞在費が段階の上限まで下がります。
どちらを選ぶかは、費用より、医療的なケアやリハビリが必要かどうかで決めるのが基本です。通いでリハビリを受けたい場合はデイサービスとデイケアの違い、長く入る施設の月額は老人ホーム・介護施設の費用で整理しています。
食費・滞在費が安くなる人:負担限度額認定
所得や預貯金が一定以下の方は、食費と滞在費の上限が下がります。これを「負担限度額認定」といいます。申請先は、市区町村の窓口です。認定を受けると、認定証が届きます。事業所に見せると、上限までの支払いになります。申請の手順と必要な書類は、負担限度額認定の申請方法にまとめています。
第4段階にあたる方(上の表に当てはまらない方)は、軽減がありません。基準額を目安に、事業所との契約で決まった金額を払います。
認定の有効期間は、申請が受け付けられた月の1日からになるのが一般的です。さかのぼって適用されないため、使う予定が決まったら、早めに申請します。
読者が損しやすい点
- 認定証を出さずに利用する。軽減の対象でも、その分は戻らないことがあります。利用前に窓口で確かめます。
- 31日目以降の費用を見落とす。連続が30日を超える予定なら、ケアマネジャーに先に相談します。
- 月の上限を超える。他のサービスと合わせた上限を超えた分は、全額自己負担です。
- 食費・滞在費を見積もりに入れない。サービス費だけで考えると、実際の支払いが大きく見えます。
- 領収書を捨てる。介護費用の税の扱いは条件があります。介護費用と医療費控除で確かめ、個別の判断は税務署や税理士にご確認ください。
今日できる一歩
- 担当のケアマネジャーに電話し、「ショートステイを使いたい時期」と「理由」を伝えて、候補の事業所を2〜3か所聞く。
よくある質問
ケアマネジャーがまだいないときは、どうしますか
要介護の認定が出たあと、居宅介護支援事業所のケアマネジャーを選びます。選び方に迷うときは、市区町村の窓口や地域包括支援センターで相談できます。要支援の方は、地域包括支援センターが担当になる場合があります。探し方と選ぶときの見どころは、ケアマネジャーの変更・選び方にまとめています。
前日や当日の急な利用はできますか
事業所に空きがあれば、受け入れてもらえることがあります。ただし、必ずできるわけではありません。普段から、利用できそうな事業所を2〜3か所、ケアマネジャーと決めておくと動きやすくなります。
30日を超えて預けたいときは
原則は、30日で一度、自宅に戻ります。介護者の病気など、特に必要な場合は、超える利用が位置づけられることがあります。判断は市区町村や事業所で違うため、早めにケアマネジャーへ相談してください。
老健のショートステイの費用は、特養より高いですか
サービス費は少し高めで、滞在費は部屋の種類によって高くも安くもなります。たとえば老健などの従来型個室の滞在費は、基準額で1日1,728円です。食費の基準額は同じ1,545円です。サービス費も、医師や看護職員による医療やリハビリが入る分、少し高めです。厚生労働省の案内では、老健の従来型個室(基本型)で要介護3・1割負担なら、サービス費は1日864円です。食費と滞在費の基準額を足すと、1日約4,137円が目安になります(加算、日常生活費を除く。厚生労働省、2026年10月確認)。
利用中に具合が悪くなったら、どうなりますか
事業所から家族に連絡が入ります。連絡がつく電話番号を、必ず伝えておきます。医療の判断は、医師や施設の職員が行います。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」短期入所生活介護/短期入所療養介護
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group12.html
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group13.html - 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(食費・滞在費の基準額、負担限度額)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001675936.pdf - 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 資料(短期入所生活介護の報酬、2026年6月15日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001712541.pdf - 前橋市「短期入所サービス利用の留意事項」
https://www.city.maebashi.gunma.jp/material/files/group/38/ryuuijikou.pdf - 東京都中央区「緊急生活支援宿泊サービス(緊急ショートステイ)」
https://www.city.chuo.lg.jp/a0029/kenkouiryou/koureikaigo/zaitakuiryou/zaitakushienservice/nintei/syortosutei.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。金額、日数の扱い、申請の方法は、お住まいの市区町村や事業所によって異なります。ご自身の場合は、担当のケアマネジャーや市区町村の窓口でご確認ください。介護や医療の判断は、医師や専門職にご相談ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
