葬儀費用の相場2026|誰が払う?親の口座から払う方法と生前の準備

お彼岸に実家へ寄った夕方、新聞に挟まっていた葬儀の案内を見ながら、父がぽつりと言いました。「自分の葬式、いくらかかるんだろうな。お金は口座にあるから、それで払ってくれ」。ところが、亡くなったあとの口座は、家族でもすぐには動かせないことがあります。

この記事では、2026年公表の全国調査で葬儀費用の目安を確かめます。そのうえで、誰が払うのが一般的か、親の口座から払うにはどうするかを整理します。あわせて、健康保険から出る葬祭費と、相続税での扱いもまとめました。60代から80代の方と、親のことを考え始めたご家族に向けた内容です。

この記事の結論
1. 2026年の全国調査では、葬儀費用の総額は96.73万円(中央値)。家族葬は96.39万円、一日葬は74.43万円、火葬式は49.56万円でした。
2. 亡くなったあとの口座からは「預貯金の仮払い制度」で払い戻せますが、1つの金融機関で150万円まで。戸籍をそろえる時間もかかります。
3. 元気なうちに「どんな葬儀にするか」「どのお金で払うか」を家族で話しておくと、亡くなった直後に慌てずに済みます。
目次

葬儀費用の相場は総額97万円前後|家族葬・一日葬・火葬式の目安(2026年調査)

葬儀費用の目安としてよく使われるのが、株式会社鎌倉新書の「お葬式に関する全国調査」です。最新は第7回(2026年5月12日公表)です。直近2年以内に喪主などを務めた全国の40歳以上の2,000人に、インターネットで尋ねています。

この回から、金額は「中央値」で集計されています。中央値は、金額の低い順に並べたときに、ちょうど真ん中に来る人の金額です。一部の高額な葬儀に引っ張られにくい数字だと考えてください。

葬儀の形どんな葬儀か総額(中央値)選んだ人の割合
一般葬通夜と告別式。近所や仕事関係の方も呼ぶ122.01万円30.2%
家族葬通夜と告別式。家族や親しい人に絞る96.39万円47.0%
一日葬通夜をせず、告別式と火葬を1日で74.43万円11.9%
直葬・火葬式式をせず、火葬だけを行う49.56万円10.8%
全体形を問わない96.73万円―
出典:株式会社鎌倉新書「【第7回】お葬式に関する全国調査(2026年)」(調査期間2026年2月27日〜3月3日、有効回答2,000件)。「どんな葬儀か」の欄は一般的な説明です。

総額の内訳は3つです。葬儀社に払う「基本料金」が72.02万円、通夜ぶるまいなどの「飲食費」が11.67万円、香典返しなどの「返礼品費」が13.03万円でした。総額はこの3つを足した金額なので、お寺へのお礼などは別に考えておくと見通しが立ちます。

同じ方法で集計した前回(2024年)の総額は94.21万円で、約2.5万円増えました。家族葬だけを見ると、前回より6.49万円高くなっています。「家族葬なら安い」とは限らず、呼ぶ人数や料理、祭壇の内容で一般葬と大きく変わらないこともあります。

もう一つ気になる数字があります。同じ調査では、87.1%の人がほかの葬儀社と比べずに1社だけで決めていました。亡くなった直後は時間も気持ちの余裕もありません。比べる時間を取りやすいのは、元気なうちです。

葬儀費用は誰が払う?喪主と相続人の一般的な考え方

葬儀費用を「誰が払わなければならないか」は、法律にはっきり書かれていません。実際には、家族の話し合いで決めることになります。よくある形は次の3つです。

払い方よくある場面気をつけたいこと
喪主が払う同居の子や配偶者が喪主になり、香典も受け取るあとで「遺産から戻してほしい」と言うなら、早めに相続人に伝える
親の遺産から払う喪主がいったん立て替え、遺産を分けるときに精算する相続人全員が納得していること。領収書と明細を全員に見せる
きょうだいで分ける親の預金が少ない、または子どもたちで出し合うと決めた割合と、香典をどう扱うかも一緒に決めておく

どの形でも、もめるきっかけになりやすいのは「何にいくら使ったか分からない」ことです。葬儀社の見積書と請求書、お寺へのお礼のメモ、香典の記録(芳名帳)は、まとめて1つの封筒に入れておきましょう。

立て替えた人は、日付・支払先・金額を1枚の紙に書き出しておくと話が早く進みます。親の口座から引き出したお金を使った場合も同じです。使い道を後から説明できるようにしておけば、ほかの相続人から疑われにくくなります。

なお、相続放棄(親の財産も借金も引き継がない手続き)を考えている場合は、親のお金に手をつける前に専門家へ相談してください。話し合いがこじれて、相手と交渉する段階になったときは弁護士の領域です。

亡くなった後に親の口座から葬儀費用を払う方法|預貯金の仮払い制度

銀行は、預金者が亡くなったことを知ると、その口座の入出金を止めます。止まったあとの預金は、遺言がなければ相続人全員の話し合い(遺産分割協議)が終わるまで、原則として自由には引き出せません。

それでは葬儀費用や当面の生活費に困るため、2019年7月1日から「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」が始まりました。一般に「預貯金の仮払い制度」と呼ばれ、民法909条の2に定められています。相続人の1人が、ほかの相続人の同意なしに、一定額まで払い戻しを受けられる仕組みです。

払い戻せる金額の計算
亡くなった日の預金残高 × 3分の1 × 払い戻す人の法定相続分
(1つの金融機関につき150万円まで)
例:相続人が長男と次男の2人、普通預金が600万円の場合
600万円 × 3分の1 × 2分の1 = 100万円(長男が1人で払い戻せる額)
出典:法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」、全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」案内リーフレット

上限の150万円は、口座ごとではなく金融機関ごとです。同じ銀行に普通預金と定期預金があっても、合わせて150万円までになります。

全国銀行協会の案内では、主に次の書類が必要とされています。

  • 亡くなった人の、生まれてから亡くなるまでの続いた戸籍(除籍謄本・戸籍謄本など)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 払い戻しを受ける人の印鑑証明書と本人確認書類

必要な書類は金融機関によって違うため、窓口に事前に確認します。書類を出してから入金まで日数がかかるので、葬儀の支払い日に間に合わないこともあります。葬儀社への支払いは、いったん家族が立て替えて、あとで仮払いのお金で精算する流れが現実的です。

仮払いで受け取ったお金は、あとで遺産を分けるときに、受け取った人がすでにもらった分として調整されます。また、遺言で預金を受け取る人が決まっている場合などは、この制度を使えないことがあります。150万円を超えて必要なときは、家庭裁判所に申し立てて認めてもらう方法もあります。

銀行での相続手続き全体の流れや、書類が戻ってくる典型例は、銀行から相続手続きの書類が届いたらで詳しくまとめています。

親が元気なうちにできる、葬儀のお金の準備

仮払い制度があるとはいえ、戸籍を集めるだけで何日もかかります。亡くなった直後に慌てないための準備は、どれも元気なうちにしかできないことです。

当面の分を「すぐ使えるお金」として分けておく

葬儀のためのお金を定期預金に入れたままだと、元気なうちでも引き出すには解約の手続きが要ります。当面の分は普通預金に置いておくと、入院などの急な出費にもすぐ使えます。

ただ、亡くなったあとは普通預金も止まります。葬儀の支払いを担う家族が、いったん立て替えられるかどうかも話しておきましょう。親から子へ早めにお金を移す場合は贈与税がかかることがあるので、金額や方法は事前に確かめてください。ご自身の場合どうなるかは、提携の税理士が確認します。

すでに生命保険に入っている場合は、受取人が誰で、いくら出るかを確かめておくと、葬儀の支払いの見通しが立てやすくなります。

葬儀の希望と予算を家族で共有する

「家族葬でいい」と一言あるだけで、残された家族の迷いはずいぶん減ります。話しておきたいのは、葬儀の形、呼んでほしい人の範囲、お付き合いのあるお寺や宗派、予算の上限の4つです。紙に書いて、通帳や保険証券と同じ場所に置いておくと見つけてもらえます。

互助会や生前契約に入っているなら、中身を確かめる

互助会(毎月の掛金で葬儀の費用を積み立てる仕組み)や、葬儀社との生前契約に入っている方もいます。入ること自体の良し悪しより、家族が中身を知っているかが分かれ目です。確かめておきたいのは次の点です。

  • 契約先の名前と連絡先、契約書や会員証の置き場所
  • 積み立てた金額で、どこまでの内容がまかなえるか(足りない分はいくらか)
  • 引っ越した場合や、使わずに解約した場合の扱い
  • 家族がそのことを知っているか

家族が契約を知らないまま別の葬儀社に頼んでしまうと、せっかくの積立が使われないままになります。

健康保険の葬祭費・埋葬料は5万円|愛知県内の主な市の例

亡くなった人が入っていた健康保険から、葬儀をした人に給付があります。自動では振り込まれないので、申請が必要です。愛知県内の主な市と協会けんぽの公式案内を確かめると、金額はいずれも5万円でした(2026年10月時点)。

亡くなった人の保険名前と金額受け取る人申請先
後期高齢者医療(主に75歳以上)葬祭費 5万円葬祭を行った人住んでいた市区町村の後期高齢者医療の窓口
名古屋市の国民健康保険葬祭費 5万円世帯主または葬祭を行った人区役所保険年金課・支所区民福祉課(電子申請も可)
豊田市・岡崎市・一宮市の国民健康保険葬祭費 5万円葬祭を行った人(喪主)各市役所の国民健康保険の窓口
協会けんぽ(会社員など)埋葬料 5万円亡くなった人に生計を維持されていた人協会けんぽの都道府県支部
出典:愛知県後期高齢者医療広域連合「葬祭費」、名古屋市「国民健康保険の葬祭費支給制度」、豊田市・岡崎市・一宮市の各「国民健康保険 葬祭費」ページ、協会けんぽ「埋葬料・埋葬費」。2026年10月8日確認。

協会けんぽでは、生計を維持されていた人がいない場合、実際に葬儀をした人に5万円の範囲で実費が出ます(埋葬費)。会社員の家族(扶養されていた人)が亡くなったときは、会社員本人に5万円が出ます。また、会社員などの健康保険から埋葬料が出る場合、国民健康保険の葬祭費は受け取れません。

申請には、葬儀をしたことが分かる書類が求められます。多くの窓口で例に挙がっているのは、会葬礼状(参列のお礼状)か葬儀の領収書です。どちらも捨てずに取っておきましょう。豊田市・岡崎市・一宮市の案内では、申請できるのは葬儀を行ってから2年と明記されています。ほかの市町村でも、期限は窓口で確かめておくと安心です。

相続税で差し引ける葬式費用、差し引けない費用

相続税を計算するとき、相続人などが負担した葬式費用は、遺産の総額から差し引けます。国税庁のタックスアンサー「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」(令和8年4月1日現在の法令等)では、次のように整理されています。

差し引ける主なもの差し引けないもの
・火葬や埋葬、納骨にかかった費用
・遺体や遺骨を運んだ費用
・お通夜など、葬式の前後にかかる通常欠かせない費用
・お寺へのお礼(読経料など)
・香典返しの費用
・墓石や墓地を買う費用、墓地を借りる費用
・初七日などの法事の費用
出典:国税庁 タックスアンサー No.4129(言い回しは分かりやすく改めています)

お寺へのお礼は、領収書が出ないことがよくあります。日付、お寺の名前、金額、何のためのお礼かをメモしておきましょう。

ただし、相続税がかかるのは、遺産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除を超える場合です(国税庁 No.4152)。遺産がこの額を下回れば、葬式費用を差し引くまでもなく相続税はかかりません。ご自身の場合に申告が要るかどうかは、提携の税理士が確認します。

今日できる一歩

1. 葬儀の希望を4つだけ紙に書く。形(家族葬・一日葬など)、呼んでほしい人、お寺や宗派、予算の上限です。全部決まっていなくても構いません。

2. 親の口座がある金融機関を書き出す。仮払い制度は金融機関ごとに150万円までです。どこに口座があるか分かるだけで、亡くなったあとの動きが早くなります。

3. 互助会の会員証や生前契約の書類があれば、置き場所を家族に伝える。電話で「あの書類は仏壇の引き出しにある」と言うだけでも十分です。

相談現場から

よく伺うのは「葬式代は口座に残してあるから大丈夫」というお話です。ところが、亡くなったあとはその口座からすぐには払えません。結局、子どもが立て替えたという話は珍しくありません。また、葬儀の明細や香典の記録が見当たらず、きょうだいの間で精算の話が進まないこともあります。お金を用意することと、使い方を家族で決めておくことは、セットで考えておくと安心です。

この話、うちの場合はどうなるか知りたい方へ
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参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の一般的な情報です。葬儀費用は調査に基づく目安で、地域や内容によって変わります。給付の金額や手続きは各保険者・市区町村で、税金や相続の個別の判断は専門家にご確認ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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