生前贈与で不動産の名義変更を自分でする手順【2026年】費用と必要書類

親の土地を、元気なうちに自分の名義にしておきたい。司法書士に頼むと費用がかかりそうなので、名義変更の登記を自分でできないか調べている。そんな方に向けて、生前贈与で不動産の名義を変える手順を順番に書きます。

先に知っておきたいのは、登記の手間よりも「税金の額」です。贈与で名義を移すと、登記の税金は相続のときの5倍になり、不動産取得税と贈与税も加わります。この記事では、手順と必要書類に加えて、費用の計算のしかたと、相続で取得する場合との違いを、2026年10月時点の法務局・国税庁・愛知県の案内をもとに整理しました。

この記事の結論
1. 生前贈与による名義変更の登記は、自分で申請できます。法務局の様式と記載例があり、窓口・郵送・オンラインで出せます。
2. かかる税金は3つです。登録免許税(固定資産税評価額の2%)、不動産取得税(愛知県は土地・住宅3%、宅地は評価額の2分の1が課税標準)、贈与税です。
3. 必要書類は、贈与契約書(登記原因証明情報)、権利証または登記識別情報、親の印鑑証明書(3か月以内)、受け取る人の住民票、固定資産評価証明書、登記申請書です。
4. 相続で取得すれば登録免許税は0.4%、不動産取得税はかかりません。急ぐ理由がなければ、贈与と相続のどちらで移すかを先に比べます。
※2026年10月時点。出典:国税庁タックスアンサーNo.7191、法務局「所有権移転登記申請書(贈与)」記載例、愛知県「不動産取得税」
目次

生前贈与で不動産の名義変更をする費用

名義変更にかかるお金は、大きく分けて「税金」と「書類の取得費」です。自分で申請すれば、司法書士の報酬はかかりません。ただし税金は、誰が申請しても同じ額がかかります。

費用計算のしかた払う時期・払う先
登録免許税固定資産税評価額×2%登記を申請するとき。法務局(収入印紙または現金納付)
不動産取得税評価額×3%(愛知県、土地と住宅)。宅地は評価額の2分の1に税率をかける。住宅や住宅用土地には軽減がある取得から60日以内に県税事務所へ申告し、後日届く納税通知書で納める
贈与税相続税の評価額(土地は路線価など)−110万円に税率をかける翌年2月1日〜3月15日に、受け取った人が税務署へ申告・納税
書類の取得費印鑑証明書・住民票・評価証明書・登記事項証明書の手数料市区町村・法務局。1通数百円の手数料が、取る通数だけかかる

(2026年10月時点/国税庁タックスアンサーNo.7191・No.4402、愛知県「不動産取得税」。愛知県の3%と宅地の2分の1は2027年3月31日までの取得が対象)

計算例:土地1,200万円・建物300万円の実家を子へ贈与した場合

固定資産税の評価額が、宅地1,200万円、木造の住宅300万円の実家を、親から30歳の子へ贈与したとします。軽減を使わない場合の目安は次のとおりです。

税金計算金額
登録免許税(1,200万円+300万円)×2%30万円
不動産取得税(土地)1,200万円×1/2×3%18万円
不動産取得税(建物)300万円×3%9万円
贈与税(特例税率)相続税の評価額が合計1,500万円だった場合
(1,500万円−110万円)×40%−190万円
366万円

(2026年10月時点/国税庁タックスアンサーNo.7191・No.4408、愛知県「不動産取得税」をもとにした仮の計算。贈与税は土地を路線価などで評価し直すため、固定資産税評価額とは別の金額になります)

不動産取得税は、受け取った人が自分で住む住宅や、その敷地なら、建てた年や床面積などの要件に応じて控除や減額があります。要件にあてはまれば、上の金額より大きく下がることがあります。適用できるかは、不動産がある地域の県税事務所で確かめてください。

この例でいちばん大きいのは贈与税です。相続時精算課税を選べば、累計2,500万円までは贈与税がかかりません。ただし登録免許税2%と不動産取得税はそのままかかり、贈与した不動産は相続のときに相続財産へ足し戻されます。精算課税の仕組みは生前贈与の方法と手続きで比べています。

相続で名義を移す場合(0.4%)との比較

同じ不動産を、親が亡くなった後に相続で受け継ぐ場合と比べると、違いがはっきりします。

項目生前贈与で移す相続で移す
登録免許税評価額の2%評価額の0.4%(一定の土地は免税措置あり)
上の例の登録免許税30万円6万円
不動産取得税かかるかからない
かかる税贈与税(110万円を超えた分)相続税(基礎控除を超えた場合だけ)
相続税の小規模宅地等の特例使えない要件を満たせば使える
手続きに必要な人親(渡す人)と受け取る人の2人遺言がなければ、相続人全員の遺産分割協議
登記の期限申請の義務はない(ただし登記しないと、名義は親のまま)相続で取得したと知った日から3年以内に申請する義務
名義を移す時期親が元気なうちに選べる亡くなった後

(2026年10月時点/国税庁タックスアンサーNo.7191、愛知県「不動産取得税」、法務省「相続登記の申請義務化について」をもとに整理)

税金だけを見れば、相続を待つほうが軽く済むことが多いです。それでも生前に移すのは、「この家はこの子に」と親の意思で確実に決めておきたい場合や、親が元気なうちに名義を整理しておきたい場合です。実家を売る予定があるなら、名義を移すと売却時の控除が使えなくなることもあります。実家を親が生きているうちに名義変更・売却するとどうなるで、売る場合も含めて比べてから決めてください。

生前贈与の名義変更を自分でする手順(7ステップ)

  1. 登記事項証明書で、今の名義と地番を確かめる。名義人が本当に親か、住所が今の住所と同じか、住宅ローンなどの抵当権が残っていないかを見ます。取り方は登記事項証明書の取得方法にまとめています。
  2. 固定資産評価証明書を取る。登録免許税の計算に使います。登記を申請する時期によって必要な年度が変わるので、固定資産評価証明書の取得方法で確かめてから取ります。
  3. 贈与契約書(登記原因証明情報)を作る。不動産の表示は、登記事項証明書のとおりに書き写します。記入例は次の章にあります。
  4. 必要書類を集める。親の印鑑証明書は、作成から3か月以内のものが必要です。早く取りすぎないよう、申請日から逆算します。
  5. 登記申請書を作る。法務局のサイトにある「所有権移転登記申請書(贈与)」の様式と記載例を使います。2026年10月5日以降に申請する場合は、その日以降用の様式を選びます。
  6. 不動産がある地域を受け持つ法務局に申請する。窓口に持っていくほか、郵送やオンラインでも申請できます。登録免許税は収入印紙を申請書に貼るか、現金で納めた領収書を貼ります。
  7. 完了後に、登記識別情報を受け取り、税の申告をする。登記事項証明書で名義が変わったことを確かめます。不動産取得税は県税事務所へ申告し(愛知県は取得から60日以内)、贈与税は翌年2月1日〜3月15日に税務署へ申告します。

登記が終わるまでの日数の目安は、各法務局のサイトに「登記完了予定日」として載っています。書類に不備があると、法務局から電話で補正(直し)を求められます。申請書には、平日の昼間につながる電話番号を書いておきます。

必要書類の一覧:誰が、どこで用意するか

書類誰のものどこで用意する注意点
登記申請書―法務局の様式で自分で作る2026年10月5日以降は新しい様式。受け取る人のふりがな・生年月日・メールアドレス・国籍等も書く
贈与契約書(登記原因証明情報)親と受け取る人自分で作る法務局の記載例にある「登記原因証明情報」の形でもよい
登記識別情報または登記済証(権利証)親(渡す人)手元にあるものを使うなくした場合は、申請書でその理由を選ぶ。別の手続きが必要になる
印鑑証明書親(渡す人)市区町村作成から3か月以内。申請書・委任状には同じ実印を押す
住民票の写し受け取る人市区町村マイナンバーの記載がないもの。本籍の記載があるものなら、国籍等を証する情報も兼ねられる
固定資産評価証明書不動産市区町村(東京23区は都税事務所)登録免許税の計算に使う。年度に注意
委任状代理で申請するとき自分で作る受け取る人が親の代理で申請するときなど。親は実印を押す

(2026年10月時点/法務局「所有権移転登記申請書(贈与)」令和8年10月5日以降用の記載例をもとに整理)

親の住所や氏名が、登記されたときから変わっている場合は、贈与の登記の前に住所・氏名の変更登記が必要です。2026年4月からは、住所や氏名の変更登記も申請が義務になっています。

贈与契約書と登記申請書の書き方(記入例)

贈与契約書は、そのまま登記原因証明情報として法務局に出せます。法務局の記載例と同じく、当事者・不動産・贈与の事実が分かるように書きます。

贈与契約書(記入例)
贈与者 愛知 太郎(以下「甲」という。)と受贈者 愛知 次郎(以下「乙」という。)は、次のとおり贈与契約を結んだ。
第1条 甲は、その所有する末尾記載の不動産を乙に贈与し、乙はこれを受諾した。
第2条 甲は、本日、前条の不動産を乙に引き渡し、所有権移転登記の申請に協力する。
第3条 登記にかかる費用、不動産取得税および贈与税は、乙が負担する。
この契約を証するため本書を2通作り、甲乙が署名押印のうえ各1通を持つ。
2026年11月1日
甲(贈与者)住所 愛知県○○市○○町1丁目2番3号 氏名 愛知 太郎 ㊞(実印)
乙(受贈者)住所 愛知県○○市○○町4丁目5番6号 氏名 愛知 次郎 ㊞
不動産の表示
(土地)所在 ○○市○○町一丁目 地番 123番4 地目 宅地 地積 165.28平方メートル
(建物)所在 ○○市○○町一丁目123番地4 家屋番号 123番4 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階 66.24平方メートル 2階 49.68平方メートル
※氏名・住所・地番・面積はすべて架空の記入例です。不動産の表示は、登記事項証明書のとおりに書き写します。

不動産の贈与契約書は印紙税がかかる文書にあたるため、収入印紙を貼ります(法務局の記載例にも、印紙を貼る旨の説明があります)。金額は国税庁の印紙税の案内で確かめてください。

登記申請書に書く主な項目

項目書き方の例
登記の目的所有権移転
原因令和8年11月1日贈与(申請日ではなく、贈与契約の日)
権利者(受け取る人)住民票どおりの住所・氏名、ふりがな、生年月日、国籍等、メールアドレス
義務者(渡す人)登記記録どおりの住所・氏名。自分で申請するなら実印を押す
添付情報登記識別情報(または登記済証)、登記原因証明情報、印鑑証明書、住所証明情報、国籍等を証する情報、(代理なら)代理権限証明情報
申請先・申請日○○法務局○○支局(出張所)、申請する日
課税価格・登録免許税評価証明書の価格の合計と、その2%の税額
不動産の表示登記事項証明書どおり。不動産番号を書けば所在・地番などは省略できる

(2026年10月時点/法務局「所有権移転登記申請書(贈与)」令和8年10月5日以降用の記載例より)

登録免許税は、課税価格の1,000円未満を切り捨て、税額の100円未満を切り捨てて計算します。申請書が2枚以上になるときは、つづり目に契印をします。様式どおりに作っても迷う所があれば、多くの法務局で予約制の登記手続案内を受けられます。

司法書士に頼む場合の費用の考え方

司法書士の報酬は、事務所ごとに決められています。決まった公定の料金表はないため、この記事では金額の目安は書きません。依頼するときは、見積もりで次の3つを分けて出してもらうと比べやすくなります。

  • 報酬:贈与契約書の作成、登記申請書の作成と申請、書類の確認など、司法書士の仕事に対する費用
  • 実費:登録免許税、証明書の手数料、郵送代など。登録免許税は自分で申請しても同じ額
  • 含まれないもの:不動産取得税と贈与税。贈与税の申告は税理士の仕事なので、別に頼むかどうかを決める

自分でやるか頼むかの分かれ目は、書類の数と状況の複雑さです。土地と建物が1つずつで、名義人の住所も変わっていないなら、自分で申請しやすい手続きです。権利証が見つからない、抵当権が残っている、共有になっている、といった場合は、先に司法書士に相談しておくと手戻りが防げます。司法書士を探すときは、各地の司法書士会の相談窓口も使えます。

自分で名義変更するときに気をつけたい点

  • 住宅ローンが残っている:抵当権が付いたままでも登記はできますが、借入先との契約で名義変更に承諾が要ることがあります。先に借入先の銀行に相談します。
  • 親の判断力に不安がある:贈与は契約なので、親に判断する力が必要です。認知症が進むと、贈与も登記もできなくなります。
  • きょうだいがいる:特定の子への不動産の贈与は、相続のときに遺産分割や遺留分の計算に入ることがあります(民法903条・1044条)。理由をきょうだいに伝えておくと、後でもめにくくなります。
  • 亡くなる前の一定期間の贈与は足し戻される:暦年課税で贈与した不動産も、相続財産に加算されることがあります。期間は生前贈与の加算7年の早見表で確認できます。
  • 不動産取得税の申告を忘れる:愛知県では、取得から60日以内に県税事務所へ申告することになっています。軽減を受けたいときも、この申告で手続きします。
今、名義を移すべきか決めかねている方へ
贈与で移すか、遺言で決めておいて相続で移すか。税金の差だけでなく、親の年齢や体調、きょうだいとの関係、売る予定があるかで答えが変わります。30分の無料相談では、固定資産税の納税通知書と家族構成をうかがい、贈与・遺言・相続のどれで進めるかの判断材料を整理してお渡しします。登記の申請は司法書士、贈与税の申告は税理士の仕事なので、必要な場合は相談先をご案内します。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
※お電話は相談中の場合、折り返しになります。

今日できる一歩

1. 固定資産税の納税通知書を探す。課税明細書の「価格(評価額)」の欄で、登録免許税(×2%)と不動産取得税のおおよその額が分かります。

2. 権利証(登記済証)か登記識別情報があるか確かめる。見つからなければ、手続きが増えるので早めに分かったほうが安心です。

3. 相続で移した場合と並べて比べる。上の比較表に自分の家の評価額を当てはめるだけで、差額の大きさがつかめます。

よくある質問

生前贈与の不動産の名義変更は、本当に自分でできますか。

できます。法務局が贈与用の申請書の様式と記載例を公開しており、本人が申請することも認められています。土地と建物が1つずつで、親の住所が登記と同じなら、書類をそろえて様式どおりに作れば申請できます。不安があれば、法務局の登記手続案内(予約制)で確認してから出すと安心です。

生前贈与の手続きを司法書士に頼むと、費用はいくらかかりますか。

報酬は事務所ごとに違い、公的な定価はありません。見積もりを取り、報酬と実費(登録免許税など)を分けて出してもらってください。登録免許税は、自分で申請しても司法書士に頼んでも同じ額です。

名義変更の費用や税金は、誰が払いますか。

不動産取得税と贈与税は、不動産を受け取った人にかかります。登録免許税や書類の費用を誰が負担するかは、贈与契約書で決めておきます。親が税金分まで現金で渡すと、その現金も贈与になる点に気をつけます。

土地の一部(持分)だけを、毎年少しずつ贈与できますか。

持分の贈与もできます。申請書の登記の目的は「愛知太郎持分一部移転」のように書きます。ただし贈与のたびに登記の申請と登録免許税がかかり、共有の状態が長く続きます。手間と費用に見合うかは、先に比べてから決めてください。

相続時精算課税を使えば、税金はかかりませんか。

贈与税は、累計2,500万円までかからなくなります(年110万円の控除も別にあります)。ただし登録免許税2%と不動産取得税は、ふつうの贈与と同じようにかかります。贈与した不動産は相続のときに相続財産へ足し戻され、小規模宅地等の特例も使えません。選ぶ前に税理士に試算してもらってください。

贈与契約だけ結んで、登記はしなくても大丈夫ですか。

契約自体は有効ですが、登記をしないと、名義は親のままです。親が別の人に売ったり担保に入れたりしたとき、受け取った人は自分の権利を主張しにくくなります。贈与で取得したら、早めに登記まで済ませます。


あわせて読みたい

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の法務局・国税庁・愛知県の公開情報にもとづく一般的な説明です。不動産取得税は都道府県の税のため、愛知県以外の不動産は所在地の都道府県の案内をご確認ください。登記は法務局・司法書士、贈与税は税務署・税理士、不動産取得税は県税事務所に個別にご確認ください。

本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。

家の名義、贈与と相続どちらで移す? 30分無料で相談できます052-766-5650無料相談を申し込む
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

目次