親が75歳の誕生日を迎える前に、見慣れない封筒が届きます。「後期高齢者医療」と書かれていて、何か手続きが要るのか迷う方は多いです。
この記事では、75歳で切り替わる医療保険、扶養から外れる家族、保険料の納め方、届く書類を、2026年10月時点の公式な案内で整理します。
先に結論:本人の手続きはほぼ不要、家族と払い方に注意
この記事の結論
- 本人:75歳の誕生日当日から後期高齢者医療(75歳以上の人の医療保険)に自動で入ります。加入の届出は要りません。
- 家族:会社の健康保険で扶養されていた74歳以下の家族は、同じ日に資格を失います。国民健康保険などへの加入を、原則14日以内に自分で届け出ます。
- 払い方:保険料は原則年金から天引きですが、最初の数か月は納付書か口座振替です。国保で使っていた口座振替が引き継がれない市区町村もあります。
この3点を押さえておけば、75歳の切り替えで困ることはほとんどありません。以下、順に説明します。
75歳で何が切り替わるか:対象になる人・ならない人
後期高齢者医療は、都道府県ごとの「広域連合」が運営し、窓口は市区町村です。75歳になった人は、それまでの保険の種類に関係なく全員が移ります。
変わるのは本人の保険だけではありません。それまでの保険によって、家族への影響が違います。
とくに注意したいのは、会社勤めを続けている父親が75歳になり、年下の母親を扶養しているケースです。父親が後期高齢者医療に移ると、母親は自動では次の保険に入れません。
定年後の健康保険の選び方は、定年後の健康保険は任意継続・国保・扶養のどれ?で詳しく整理しています。
誕生日の前後に届く書類
75歳の前後には、広域連合や市区町村から何通か届きます。どれも捨てずに、まとめて保管しておきましょう。
2026年8月からの資格確認書の扱い
2026年8月1日の一斉更新で、85歳以上の人は全員、84歳以下はマイナ保険証の利用登録がない人などに資格確認書が交付されました。有効期限は2027年7月31日までです。
マイナ保険証をふだん使っていない人も資格確認書の対象とする区もあります(例:東京都新宿区、大田区)。マイナ保険証を持っていても、希望すれば資格確認書を受け取れます。申請先は市区町村の後期高齢者医療の窓口です。
くわしくは75歳以上の親の資格確認書の記事もあわせてご覧ください。
病院での負担割合も書類で確認
75歳からの窓口負担は、所得に応じて1割・2割・3割のいずれかです。どれになるかは、資格確認書や資格情報のお知らせの「負担割合」の欄で確認できます。
2割負担の人の外来負担の増加を月3,000円までに抑える「配慮措置」は、2025年9月30日の診療分で終わっています。
扶養されていた家族の手続き:手順と必要書類
ここが75歳の手続きでいちばん抜けやすいところです。手続きをするのは、75歳になった本人ではなく、扶養されていた74歳以下の家族です。
手順
- 次の保険を決める。多くは国民健康保険です。子どもなど他の家族の健康保険の扶養に入れる場合もあります(収入などの条件は各健康保険で確認)。
- 会社の健康保険の資格喪失の書類を受け取る。75歳になった本人の勤め先や健康保険組合に「資格喪失証明書」を頼みます。
- 市区町村の国保の窓口へ届け出る。資格を失った日から原則14日以内です。
- 国保の資格確認書などを受け取る。マイナ保険証を使う人は、利用登録が続いているかも確認します。
- 保険料の払い方を決める。国保の保険料は加入した月からかかります。口座振替を希望するなら申し込みます。
必要書類チェックリスト(国保に入る場合の例)
- □ 会社の健康保険の資格喪失証明書(資格を失った日が分かるもの)
- □ 届け出る人のマイナンバーが分かるもの(マイナンバーカードなど)
- □ 窓口に行く人の本人確認書類(運転免許証など)
- □ 世帯主以外の家族が代わりに行く場合は委任状(市区町村による)
- □ 口座振替にする場合は通帳と届出印
必要書類は市区町村によって少しずつ違います。名古屋市なら区役所の保険年金課、ほかの市町村なら国保の担当課に、出かける前に電話で確かめると確実です。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
後期高齢者医療の保険料は最初は納付書、のちに年金天引き
後期高齢者医療の保険料は、原則として年金から天引きされます。これを「特別徴収」と呼びます。ただし、75歳になってすぐには天引きになりません。
天引きが始まるまでは、納付書か口座振替で払います(「普通徴収」)。天引きの開始時期は誕生月によって違い、柏市や札幌市のように誕生月ごとの開始時期を表で案内している市区町村もあります。
年金から何が引かれているかは、年金から天引きされるものと振込通知書の見方で確かめられます。愛知・岐阜の保険料の金額は、後期高齢者医療の保険料2026(愛知・岐阜)にまとめています。
扶養されていた人は保険料が軽くなる
後期高齢者医療に入る前日に、会社の健康保険の被扶養者だった人は、保険料が軽くなります。所得に応じてかかる「所得割」がかからず、全員にかかる「均等割」が加入から2年間だけ5割軽減されます。
会社の健康保険の喪失の手続きが済んでいれば、申請なしで自動的に当てはまります。国保に入っていた人は、この軽減の対象ではありません(名古屋市の案内)。
国保に1人残る家族の保険料
夫婦2人で国保に入っていて、1人が後期高齢者医療に移ると、国保に残るのは1人になります。世帯にかかる「平等割」がある市区町村では、5年間は平等割が半分になり、その後3年間は4分の1軽減される仕組みがあります(例:札幌市など)。
期限と、過ぎたらどうなるか
家族の国保加入が遅れると、その間の医療費をいったん全額自己負担するおそれがあります。総務省の行政相談の事例でも、広域連合がこの点を説明しています。
高額療養費の申請書は、診療月の数か月後に届きます。届いたら早めに出しましょう。
読者が損しやすい点
1. 家族の国保の届け出を忘れる
75歳の本人あての書類は届きますが、扶養されていた家族あてには案内が来ないこともあります。誕生日の前に、勤め先へ資格喪失証明書をいつもらえるか聞いておくと、14日以内に間に合います。
2. 口座振替が引き継がれず、納付書を見落とす
国保で口座振替をしていても、75歳からは改めて申し込みが必要な市区町村があります(例:静岡県沼津市)。最初の数か月は納付書が届くので、封筒を開けずに置いておくと払い忘れになります。
3. 誕生月の医療費の上限が半分になることを知らない
月の途中で75歳になると、その月だけは前の保険と後期高齢者医療のそれぞれで、自己負担の上限額が本来の2分の1になります。1日生まれの人は対象外です(広島市・相模原市の案内)。
払い戻しには申請が要ります。東京都では診療月からおおむね3〜4か月後、神奈川県では3〜5か月後に申請書が送られる、と各広域連合は案内しています。届いた申請書は早めに出しましょう。
4. 天引きと口座振替の切り替え時期を誤解する
天引きから口座振替に変えても、すぐには止まりません。切り替えまでの数か月は天引きが続きます。二重に払ったように見えても、まず通知書の期間を確かめてください。
今日できる一歩
- 親の75歳の誕生日をカレンダーに書き、その前月末に届く書類を待つ準備をする。
- 親が会社の健康保険の本人で、74歳以下の家族を扶養しているかを確認する。
- 扶養している場合は、市区町村の国保窓口に必要書類を電話で聞いておく。
よくある質問
Q. 75歳になったら、役所に行かないといけませんか?
本人の加入の手続きは要りません。誕生日当日から自動で後期高齢者医療に入り、資格確認書などは郵送で届きます。役所へ行くのは、扶養されていた家族が国保に入るときや、口座振替を申し込むときです。
Q. 今の保険証やマイナ保険証はどうなりますか?
75歳になる前の保険の資格確認書や保険証は、誕生日から使えなくなります。勤め先の健康保険のものは、会社や健康保険組合に返します。マイナ保険証は、誕生日以降は後期高齢者医療の資格で使えます。
Q. 75歳を過ぎても働いていますが、会社の健康保険に残れますか?
残れません。75歳になると、働いていても会社の健康保険の資格を失い、後期高齢者医療に入ります。会社の手続きは勤め先が行いますが、扶養していた家族の手続きは家族が行います。
Q. 介護保険料はどうなりますか?
介護保険料は65歳から市区町村に納めていて、75歳になっても続きます。後期高齢者医療の保険料とは別にかかり、年金から両方が天引きされる人が多いです。
Q. 75歳で、ほかに変わる手続きはありますか?
運転免許の更新では、75歳以上になると認知機能検査を受けます。過去3年に信号無視など一定の違反がある人は、運転技能検査に合格しないと更新できません。詳しくは都道府県の運転免許センターで確かめてください。
参考にした公的情報
- 名古屋市「被扶養者であった方の保険料の軽減(後期高齢者医療)」
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/hoken/1016449/1016476/1016482.html - 名古屋市「国民健康保険の加入・脱退の届出」
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/hoken/1011736/1011750/1011751.html - 名古屋市港区「後期高齢者医療制度(よくあるご質問)」
https://www.city.nagoya.jp/minato/kurashi/1023679/1023709/1023710.html - 静岡市「後期高齢者医療制度の資格確認書・資格情報のお知らせ」
https://www.city.shizuoka.lg.jp/s8435/s012186.html - さいたま市「後期高齢者医療保険料の納め方」
https://www.city.saitama.lg.jp/001/153/017/002/p086077.html - 広島市「後期高齢者医療制度の高額療養費」
https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/71/3154.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。保険料の額、年金天引きの開始時期、必要書類、軽減の有無は市区町村や広域連合によって異なります。実際の手続きは、お住まいの市区町村の後期高齢者医療・国民健康保険の窓口でご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。