葬儀を終えて少し落ち着いたころ、役所でもらった手続きの一覧に「葬祭費」という言葉が出てきます。何のお金で、誰が、どこへ出すのか。そこで手が止まる方は少なくありません。
葬祭費と埋葬料は、亡くなった方が入っていた健康保険から、葬儀をした人に支払われるお金です。死亡届を出しても自動では振り込まれず、申請して初めて受け取れます。この記事では、金額・申請先・期限・必要書類を、2026年10月9日時点の公式の案内をもとに整理します。
この記事の結論
- いくら:国民健康保険と後期高齢者医療(75歳以上)は「葬祭費」で、5万円の市区町村が多くあります(広島市の国保は3万円、東京都世田谷区は7万円など)。会社の健康保険は「埋葬料」で5万円です。
- どこへ:国保・後期高齢者医療なら、亡くなった方が住んでいた市区町村の窓口へ。会社の健康保険なら、協会けんぽの支部か健康保険組合へ出します。
- いつまで:期限は2年です。葬祭費は葬儀をした日の翌日から、埋葬料は亡くなった日の翌日から数えます。過ぎると受け取れません。
葬祭費と埋葬料の違い|亡くなった方の保険で決まる
名前が違うのは、お金の出どころの保険が違うからです。受け取れるのは、原則としてこのうちどれか1つです。まず保険証、資格確認書、「資格情報のお知らせ」などで、どの保険だったかを確かめます。
75歳になると、会社員の子の扶養に入っていた親も、全員が後期高齢者医療に移ります。そのため75歳以上の親が亡くなったときは、子の会社の家族埋葬料ではなく、後期高齢者医療の葬祭費を申請します。
公務員の方の共済組合にも、同じような給付があります。申請先は加入していた共済組合です。
もらえる人・もらえない人の早見表
申請できるのは、原則として葬儀をした人(喪主)です。亡くなった方の口座ではなく、申請する人の口座に振り込まれます。次の表で、自分の場面に近いものを探してください。
健康保険の本人が、会社を辞めた後も傷病手当金などを受け取っている間や、受け取り終わってから3か月以内に亡くなった場合も、前の健康保険から埋葬料が出ます(協会けんぽ)。会社を辞めて間もない方が亡くなったときは、先に前の勤め先の健康保険に聞くと、二度手間になりません。
金額の例|同じ葬祭費でも3万円から7万円まで幅がある
葬祭費の額は、市区町村や広域連合ごとに決まっています。多くの市区町村で5万円ですが、3万円や7万円のところもあります。東京都の後期高齢者医療は、広域連合の5万円に区が2万円を上乗せしている区があります。
ご自分の地域の額は、亡くなった方が住んでいた市区町村のホームページで「葬祭費」と検索すると出てきます。75歳以上の方は、都道府県の後期高齢者医療広域連合のページにも載っています。会社の健康保険組合では、独自の上乗せがある場合もあるので、勤め先か組合に確かめます。
葬祭費や埋葬料で、葬儀費用の全部がまかなえるわけではありません。葬儀費用の目安や、親の口座から支払うときの注意は葬儀費用の相場と支払い方にまとめています。
申請の手順|保険の手続きと一緒に済ませると楽
期限は2年ありますが、葬儀の領収書や会葬礼状が手元にあるうちに出すのが確実です。国保・後期高齢者医療は、亡くなった後の保険の手続きと同じ窓口(保険年金課など)で受け付けているところもあり、一度に済ませると足を運ぶ回数が減ります。
- 亡くなった方の保険を確かめる。保険証、資格確認書、「資格情報のお知らせ」で、国保・後期高齢者医療・会社の健康保険のどれかを見ます。
- 申請する人を決める。葬儀をした人(喪主)が基本です。葬儀社の領収書の宛名と、申請する人の名前をそろえます。
- 市区町村や保険のホームページで、申請書と持ち物を確かめる。必要書類は次の見出しのチェックリストを使ってください。
- 申請する。窓口のほか、郵送や電子申請ができるところもあります。名古屋市の国保は電子申請で受け付けています。会社の健康保険は、協会けんぽなら都道府県支部へ、健康保険組合なら勤め先の担当者に出し方を聞きます。
- 振り込みを確かめる。申請した人の口座に振り込まれます。入金までの日数は保険によって違うので、気になるときは申請先に聞きます。
死亡届を出したあとに役所で済ませる手続きは死亡届の出し方と書き方に、そのほかの手続きを期限の順に並べた一覧は相続の手続き一覧にあります。
必要書類のチェックリスト
書類は保険や市区町村で少しずつ違います。ここでは、公式の案内に共通して出てくるものを並べました。出す前に、申請先の案内で最終確認をしてください。
国保・後期高齢者医療の葬祭費
- □ 葬祭費の支給申請書(窓口かホームページで入手。窓口で書けば持参不要のところもある)
- □ 亡くなった方の保険の番号が分かるもの(資格確認書、資格情報のお知らせ、マイナ保険証など。返却済みなら不要のところもある)
- □ 葬儀をした人が分かるもの(葬儀社の領収書や会葬礼状。宛名が申請者で、「〇〇様ご葬儀代金」などと書かれたもの)
- □ 申請者名義の振込先口座が分かるもの(通帳やキャッシュカード)
- □ 申請者の本人確認書類(神戸市・名古屋市など)
- □ 亡くなったことが分かる書類(埋火葬許可証や死亡診断書の写しなど。求める市区町村がある)
- □ 申請者以外の口座に振り込むとき、代理の人が手続きするときは委任状
- □ 火葬だけのときや、会葬礼状・領収書がないときは申立書(横浜市・西宮市など)
会社の健康保険の埋葬料(協会けんぽの例)
- □ 埋葬料(費)支給申請書
- □ 事業主による死亡の証明(申請書の欄)か、埋葬許可証のコピーなど亡くなったことが分かる書類
- □ 扶養家族ではない人が申請するときは、生計を維持されていたことが分かるもの(同居なら住民票、別居なら仕送りが分かる通帳の写しなど)
- □ 埋葬費を申請するときは、支払った人の氏名と金額が書かれた領収書の原本と、費用の明細書
葬儀社の領収書と会葬礼状は、申請が終わるまで捨てずに取っておきます。領収書の宛名の方がすでに亡くなっているなど事情があるときは、念書や戸籍謄本を求められる例もあります(目黒区)。
期限は2年|数え始める日と、過ぎたらどうなるか
どの給付も期限は2年です。ただし、数え始める日が少しずつ違います。
2年を過ぎると時効になり、受け取れなくなります。横浜市は「支給できなくなります」と案内しています。期限が近いと気づいたら、書類が全部そろっていなくても、まず申請先に電話で相談してください。
申請しないともらえない|損をしやすい点
死亡届を出しても、自動では振り込まれません
葬祭費も埋葬料も「申請により支給」されるお金です。役所に死亡届を出しただけでは手続きは終わっていません。申請しないまま2年がたつと、受け取れなくなります。
- 会社の健康保険の方は、役所では手続きできません。協会けんぽか健康保険組合に出します。役所の手続き一覧に載っていないこともあります。
- 領収書の宛名と申請者がずれている。費用を払った人と喪主が違うと、委任状などが追加で必要になります。葬儀社に領収書を頼むときに、宛名を決めておくと楽です。
- 会社を辞めて間もない方を、国保に申請してしまう。前の健康保険から出る場合は、国保・後期高齢者医療からは出ません。
- 遺族年金や未支給年金は別の手続き。年金は年金事務所などで、葬祭費とは窓口が違います。
夫が亡くなった後の年金の手続きや金額の目安は、遺族年金で妻はいくらもらえるかで説明しています。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で整理できます。
今日できる一歩
1. 亡くなった方の保険証(資格確認書)を見て、保険の種類を確かめる。国保・後期高齢者医療なら市区町村、会社の健康保険なら協会けんぽか組合です。
2. 葬儀社の領収書と会葬礼状を、1つの封筒にまとめる。宛名が誰になっているかも見ておきます。
3. 住んでいた市区町村のホームページで「葬祭費」と検索する。金額、申請書、郵送や電子申請ができるかが分かります。
よくある質問
火葬だけで、葬儀をしなかった場合も受け取れますか
対象にしている市区町村があります。横浜市の後期高齢者医療は、火葬のみでも支給し、火葬代の領収書と申立書を求めています。目黒区も火葬や散骨を葬祭と認めています。一方で、献体や納骨だけの場合は扱いが分かれるため、申請先に確かめてください。
喪主と、葬儀代を払った人が違うときは、誰が申請しますか
市区町村によって書き方が違います。横浜市や神戸市は「葬祭を行った方(喪主)」、世田谷区は「葬祭を行い費用を支払った方」としています。目黒区は、領収書の宛名の方が申請者になると案内しています。迷うときは、領収書を手元に置いて窓口に電話で聞くのが早道です。
遠くに住んでいて、役所に行けません
郵送や電子申請ができる市区町村があります。名古屋市の国保は電子申請、目黒区の後期高齢者医療は郵送でも受け付けています。会社の健康保険の埋葬料は、協会けんぽの支部か健康保険組合の案内で出し方を確かめます。申請書をホームページから取り寄せられるかを、まず見てください。
葬祭費と埋葬料を、両方受け取ることはできますか
できません。どちらか一方です。会社を辞めて3か月以内に亡くなったなどで前の健康保険から埋葬料が出るときは、国保・後期高齢者医療の葬祭費は出ません。
葬祭費は、亡くなった親の口座に振り込まれますか
いいえ。申請した人(葬儀をした人)の口座に振り込まれます。別の人の口座にしたいときは、委任状などが必要です(神戸市・西宮市など)。
参考にした公的情報
- 愛知県後期高齢者医療広域連合「受けられる給付」https://www.aichi-kouiki.jp/iryou/kyufu/1001902.html
- 横浜市「後期高齢者医療制度 葬祭費」https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kouki/iryo/koukisousaihi.html
- 名古屋市「葬祭費の支給申請(国民健康保険)」https://www.city.nagoya.jp/kurashi/hoken/1011736/1011815/1034707/1033733.html
- 世田谷区「国民健康保険 葬祭費」https://www.city.setagaya.lg.jp/02060/329.html
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「よくあるご質問(埋葬料・埋葬費)」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/benefit/008
- 厚生労働省「労災保険 請求(申請)のできる保険給付等」(PDF)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001235000.pdf
このほか、神戸市(国保)、広島市(国保)、世田谷区(後期高齢者医療)、目黒区(後期高齢者医療)、西宮市(後期高齢者医療)、協会けんぽ広島支部の案内資料(PDF)の公式ページを確認しています。
※本記事は2026年10月9日時点の公的機関の公開情報にもとづく一般的な整理です。金額・必要書類・受け付け方法は、市区町村や保険によって異なり、変わることがあります。申請の前に、申請先の最新の案内をご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
