生活保護の申請方法【2026年】年金や持ち家がある高齢者・扶養照会・持ち物

年金の振込額を見て、家賃や医療費を払うと手元にほとんど残らない。貯金も少しずつ減ってきた。そんなときに思い浮かぶのが生活保護ですが、「年金があるから無理」「持ち家だから無理」と思い込んで、相談せずにいる方は少なくありません。

この記事では、年金だけでは暮らしが苦しい高齢の方とそのご家族に向けて、生活保護の申請の考え方、年金や持ち家がある場合の扱い、申請の流れと持ち物、家族への連絡(扶養照会)、相談先を、2026年10月時点の公式な案内で整理します。

目次

先に結論:年金や持ち家があっても、申請はできます

この記事の結論

  1. 誰が:年金を受け取っていても、持ち家があっても申請できます。国の基準の生活費より収入が少なければ、差額が支給される仕組みです。
  2. どこへ:住んでいる地域の福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所がない町村は、町村役場でも手続きできます。
  3. いつまで:申請から原則14日以内、長くても30日以内に結果が通知されます。書類がそろっていなくても申請はできます。

厚生労働省は「生活保護の申請は国民の権利です」と案内しています。生活保護が必要になる可能性は誰にでもあるので、ためらわずに相談してほしい、という趣旨です。受けられるかどうかは、申請したあとの調査で決まります。まずは相談して、話を聞いてもらうところから始めて大丈夫です。

申請を考えてよい人:国の基準の生活費と収入を比べる

生活保護では、国が決めた基準で「最低生活費」を計算します。最低生活費とは、その世帯が暮らすのに最低限必要とされる生活費のことです。年金や働いた収入、親族からの仕送りなどを合わせた収入がこれより少ないとき、足りない分が保護費として支給されます。

つまり、年金があることは申請できない理由にはなりません。年金は「収入」として差し引かれ、残りの足りない分が支給される形です。最低生活費は、住んでいる地域(級地という区分)や年齢、世帯の人数で変わります。厚生労働省のページには地域ごとの例が載っていますが、ご自身の世帯でいくらになるかは福祉事務所で計算してもらうのが確実です。

なお、生活保護は世帯ごとに考えるのが原則です。ここでいう世帯は、住民票の世帯だけで決まるとは限らず、同じ家で暮らして家計を一緒にしているかどうかで見られます。詳しくは福祉事務所で確かめてください。住民票の届出としての世帯分離のやり方と注意点とは、考え方が違う点に気をつけてください。

申請を考えてよい人・先に別の手段を確かめたい人の早見表

状況考え方相談のときに伝えたいこと
年金だけで暮らしていて、毎月足りない申請を考えてよい状況です。年金は収入として差し引かれます年金の月額、家賃、医療費や介護費の支払い
持ち家に住んでいる申請はできます。住み続けられるかは家の価値などで判断されます家の名義、ローンの有無、築年数や広さ
住まいがない・家を出ざるを得ない申請はできます今夜泊まる場所があるかどうか
まとまった預貯金があるまず預貯金を生活費に使うのが前提です残高と、あと何か月もつか
住んでいない土地や家がある売却などで生活費に充てるのが原則です場所と、売れそうかどうか
まだ手続きしていない年金・給付金がある受け取れるものは先に手続きします届いている通知や封筒
※出典:厚生労働省「生活保護制度」「生活保護を申請したい方へ」をもとに整理(2026年10月時点)。受けられるかどうかは、申請後の調査で個別に判断されます。

住民税が非課税かどうかも、家計の状況をつかむ手がかりになります。目安は年金暮らしの住民税非課税の目安でまとめています。ただし、非課税であることと生活保護を受けられることは別の話です。

年金・持ち家・預貯金・車がある場合の扱い

生活保護は、資産や働く力、ほかの制度など、使えるものを使ったうえで足りない分を補う制度です。そのため、申請すると財産や収入について確認があります。よく聞かれるものを順に見ていきます。

年金や給付金:受け取れるものは先に手続き

年金や手当など、ほかの制度で受け取れるお金は、生活保護より先に使うことになっています。手続きをしていない年金があれば、先に請求するよう案内されます。年金が少ない方向けの給付金については年金生活者支援給付金の条件と手続きも確かめておくと安心です。

持ち家:住み続けられることもあります

今住んでいる家と土地は、家の価値が暮らしに使う価値に比べて著しく大きい場合を除き、持ったまま保護を受けられる扱いがあります。一方で、住宅ローンを返している途中の家は、保護費がローン返済に回ってしまうため、原則として保護の対象にしない扱いとされています。

原則65歳以上で一定の価値がある自宅を持つ世帯には、自宅を担保に生活費を借りる「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」を案内されることがあります。窓口は市区町村の社会福祉協議会です。対象になるかどうかは福祉事務所が判断します。

預貯金・保険・車

預貯金は、まず生活費に充てるのが前提です。解約すると返ってくるお金がある保険も、確認の対象になります。車は原則として処分を求められますが、障害がある方の通院や、公共交通の利用が難しい地域での通院など、例外が認められる場合があります。どこまで持てるかは、世帯の事情で判断が分かれます。手放す前に、まず福祉事務所に相談してください。

親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。

扶養照会:家族に必ず連絡がいくわけではありません

扶養照会とは、福祉事務所が子どもや兄弟姉妹など親族に「援助できますか」と問い合わせることです。親族からの援助は、受けられる範囲で生活保護より優先されます。ただし、厚生労働省は「同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」と案内しています。

また、2021年(令和3年)の厚生労働省の通知で、援助が期待できない親族には、基本的に直接の問い合わせをしない扱いが示されています。例として挙げられているのは次のような場合です。

  • 親族が未成年、おおむね70歳以上の高齢者、長期入院中、働いていないなどの場合
  • 10年程度音信不通など、交流が途切れている場合
  • 借金や相続をめぐる対立など、関係が著しく悪い場合
  • 暴力や虐待から逃れてきた場合など、問い合わせが本人の自立を妨げる場合

「子どもに知られたくない」「連絡されると困る事情がある」ときは、その理由を相談のときに伝えてください。親子の扶養義務の範囲については、法律上の扶養義務の範囲でも整理しています。

申請の流れと持ち物

申請できるのは、本人のほか、扶養義務のある親族や同居の親族です。離れて暮らす子どもが親の申請について相談することもできます。流れは次のとおりです。

  1. 福祉事務所に相談する。電話で予約してから行くと、待ち時間が短くなることがあります。
  2. 「申請したい」とはっきり伝える。申請の意思を伝えれば、申請書を受け取れます。
  3. 申請書と、収入・資産の申告書を出す。書けない部分は、窓口で聞きながら記入して構いません。
  4. 調査を受ける。担当者の家庭訪問、預貯金や保険、不動産などの調査、年金など他の制度の確認、親族への扶養の確認があります。
  5. 結果の通知を受け取る。原則14日以内、特別な理由があるときは最長30日以内に、書面で通知されます。

相談先の例(名古屋市・岐阜市・町村)

窓口の名前は自治体で違います。たとえば名古屋市は、住んでいる区の区役所保健福祉センター福祉部の民生子ども課(支所管内は支所の区民福祉課)です。岐阜市は、市庁舎3階の生活福祉一課・二課・三課が担当しています。福祉事務所を置いていない町村では、町村役場で手続きできるほか、都道府県の福祉事務所が担当します。

「生活保護の窓口に行くのはまだ気が引ける」という方は、生活全般の困りごとを聞く自立相談支援機関(生活困窮者自立支援制度の窓口)に相談する方法もあります。お住まいの市区町村の福祉担当課で場所を教えてもらえます。

持ち物チェックリスト

必要な書類がそろっていなくても、申請はできます。手元にあるものだけで構いません。あとから出すよう求められることがあるので、次を目安に集めておくと話が早く進みます。

  • □ 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • □ 年金の金額がわかる書類(年金額改定通知書、年金振込通知書など)
  • □ 世帯全員の預貯金通帳(ネット銀行や使っていない口座も)
  • □ 生命保険などの保険証券
  • □ 賃貸の場合は賃貸借契約書と家賃の領収書
  • □ 持ち家の場合は固定資産税の納税通知書、ローンの返済表
  • □ 働いている場合は給与明細
  • □ 医療費や介護費の領収書、借金がある場合はその明細
  • □ 親族の名前と連絡先のメモ(連絡されたくない事情があればそのメモも)

印鑑が必要かどうかは自治体で扱いが違います。行く前に電話で確かめておくと安心です。

決定までの期限と、過ぎたらどうなるか

場面期限・扱いひとこと
申請から決定の通知まで原則14日以内書面で通知されます
調査に時間がかかる場合最長30日以内延びた理由が通知に書かれます
30日を過ぎても通知がない申請が却下されたとみなすことができます不服を申し立てる道が開けます
決定に納得できない不服の申立て(審査請求)ができます申立て先と期限は決定通知書で確認
※出典:生活保護法第24条、厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」(2026年10月時点)。

決まった日付までに申請しないと受けられなくなる、という期限はありません。ただ、生活保護は申請をもとに始まる制度です。相談だけで帰ると、申請したことにはなりません。暮らしが続けられないと感じたら、早めに申請の意思を伝えておくことが、結果的に家計を守ることにつながります。

損しやすい点・つまずきやすい点

  1. 「年金があるから無理」と決めつける。年金は収入として差し引かれるだけで、申請の妨げにはなりません。
  2. 相談だけで終わってしまう。申請したい気持ちがあるなら、その場で「申請します」と伝えましょう。
  3. 書類がそろうまで待ってしまう。書類が足りなくても申請はできます。後から出せば大丈夫です。
  4. 家や車を先に手放してしまう。持ったまま認められる場合もあるので、処分する前に相談してください。
  5. 親族に頼めないから申請できないと思う。親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません。

生活保護を受けると、病院の費用は医療扶助として福祉事務所から医療機関に直接支払われ、本人の窓口負担はありません。介護サービスの自己負担も介護扶助で賄われます。医療費や介護費が家計を圧迫している方は、その点もあわせて相談してみてください。

今日できる一歩

  1. 市区町村のホームページで「生活保護」と検索し、担当の窓口と電話番号をメモする
  2. 年金の通知書と通帳を1か所にまとめ、毎月の収入と支出を紙に書き出す
  3. 窓口に電話して、相談の予約と、持って行くものを確かめる

よくある質問

年金を受け取っていても生活保護を申請できますか?

申請できます。年金を含めた収入が国の基準の最低生活費より少なければ、差額が支給される仕組みです。受けられるかどうかと金額は、申請後の調査で決まります。

持ち家は売らないといけませんか?

今住んでいる家は、価値が著しく大きい場合などを除き、持ったまま保護を受けられる扱いがあります。ローン返済中の家や、自宅を担保にした貸付を案内される場合もあるので、家の状況を伝えて相談してください。

子どもに知られずに申請できますか?

親族への問い合わせ(扶養照会)は、援助が期待できない親族には基本的に行わない扱いです。長く音信不通、関係が著しく悪い、暴力があったなどの事情は、相談のときに伝えてください。照会するかどうかは、事情を聞いたうえで福祉事務所が判断します。

離れて暮らす子が、親の代わりに申請できますか?

生活保護法では、本人のほか、扶養義務のある親族や同居の親族も申請できるとされています。申請先は、親が住んでいる地域の福祉事務所です。親本人の気持ちも確かめながら進めると、その後の手続きがスムーズです。

書類がそろっていなくても申請できますか?

できます。厚生労働省も、必要な書類がそろっていなくても申請はできると案内しています。足りない書類は、申請後に出すよう求められます。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。生活保護を受けられるかどうか、支給額、持ち家や車の扱い、扶養照会の有無は、世帯の事情によって福祉事務所が個別に判断します。実際の取扱いは、お住まいの地域の福祉事務所(町村役場)でご確認ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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