電話で話すと、親の声は元気そう。でも帰省して冷蔵庫を開けると、食べかけの総菜とパンばかりだった。そんなとき、まず思い浮かぶのが「お弁当を届けてもらう」ことです。
この記事では、市区町村が行う高齢者の配食サービスについて、対象になる人、申込み先、民間の宅配弁当との違いを、2026年10月時点の公式な案内で整理します。
先に結論:自治体の配食は「食事+安否確認」の仕組み
この記事の結論
- だれが:多くの市は、ひとり暮らしなどで食事の用意が難しい高齢者が対象です。要介護・要支援の認定を条件にする市もあります。
- どこへ:最初の相談先は、親が住む地域の地域包括支援センターか市区町村の高齢福祉の窓口です。
- 民間との違い:市の事業は対象者の条件がある代わりに、費用の一部を市が負担したり、届けるときの安否確認が組み込まれたりしています。
自治体の配食サービスと民間の宅配弁当の違い
配食サービスとは、自宅まで食事を届けるサービスのことです。大きく分けると、市区町村の事業として行うものと、民間の事業者が自由に販売するものの2つがあります。
お弁当を作って届けるのは、どちらも民間の事業者であることがほとんどです。違うのは「市が仕組みに関わっているかどうか」です。市の事業では、市が対象者を決め、協力する事業者を登録し、届けたときの様子の確認(安否確認)を事業の目的に入れています。
市の事業は「だれでも安く」ではありません。条件に合わない場合は、民間の宅配弁当を家族で選ぶことになります。どちらが合うかは、まず親が対象になるかどうかで決まります。
電話やセンサーなど、配食以外の見守りの方法は離れて暮らす親の見守り方法で比べています。この記事では配食に絞って説明します。
対象になる人・ならない人の早見表
対象者の決め方は市区町村によって違います。ただ、多くの市で共通する考え方はあります。下の表は、名古屋市・岐阜市・一宮市の案内をもとにした目安です。
「料理ができるかどうか」は、家族が見て判断するより、相談窓口で話を聞いてもらうほうが確かです。本人が「まだできる」と言うことも多いため、ふだんの食事の様子を具体的に伝えると話が進みやすくなります。
3つの市の例:名古屋市・岐阜市・一宮市
同じ「配食サービス」でも、仕組みは市によってかなり違います。愛知・岐阜の3市を例に、対象・費用・申込み先を並べました。
名古屋市:介護保険の仕組みを使う配食
名古屋市の配食は、介護保険の仕組みを使っています。市が指定した事業者が届け、配達と安否確認にかかる費用は1食200円とされています。利用者はそのうち、介護保険負担割合証に書かれた割合(1〜3割)を払います。
注意したいのは、お弁当そのものの代金は別だという点です。弁当代は事業者ごとに違い、全額が自己負担です。生活援助型は1日1食、週7回までが限度です。また、名古屋市は「地域包括支援センター」を「いきいき支援センター」と呼んでいます。窓口の探し方は名古屋市のいきいき支援センターの記事にまとめています。
岐阜市:安否確認を目的にした配食
岐阜市の事業は「配食による安否確認事業」という名前のとおり、見守りが目的の一つです。希望する曜日の昼食や夕食を届け、そのときに様子を確かめます。料金は市が示す範囲の中で事業者が決め、配達時に払うのが原則です。
申請は市役所へ直接ではなく、親の住む地区を担当する地域包括支援センターを通します。担当センターは住所で決まります。岐阜市の地域包括支援センターの記事で地区ごとに探せます。
一宮市:昼食を届けて安否を確認
一宮市は、昼食を届けて安否を確認する事業です。市の窓口に申請書を出します。ひとり暮らしの人は「ひとり暮らし高齢者台帳」への登録もあわせて必要です。費用は事業者とメニューによって違い、事業者に直接払います。
3市を比べると、対象者の条件、費用の決め方、申込みの窓口がそれぞれ違います。ほかの市区町村でも同じことが言えるので、「親の住む市ではどうか」を必ず確かめてください。
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申込みの手順と必要書類
細かな流れは市区町村で違いますが、おおまかには次の順番で進みます。家族が離れて住んでいても、まずは電話で相談できます。
- 親の住む市区町村に配食の事業があるか調べる。市のホームページで「配食」「高齢者 食事」と検索するか、高齢福祉の担当課に電話します。
- 地域包括支援センターに相談する。高齢者の暮らし全般の相談窓口で、住所によって担当が決まっています。ケアマネジャーがいる場合は、その人に相談しても構いません。
- 親の暮らしぶりを伝える。料理や買い物の様子、ふだん何を食べているか、持病で食事の制限があるかなどを話します。
- 申請書を出す。市の窓口に本人か家族が出す、センターを通じて出す、事業者が出すなど、出し方は市によって違います。
- 市の判断を待ち、事業者を選ぶ。市に登録・協力している事業者の中から選び、曜日や食数、受け取り方を決めます。
- 配達が始まる。届けたときに応答がないなどの場合の連絡先(家族など)を決めておきます。
相談・申込みの前にそろえておくもの
- □ 親の介護保険被保険者証(認定を受けていれば認定の区分も)
- □ 介護保険負担割合証(名古屋市のように負担割合で費用が決まる場合)
- □ 本人確認書類(健康保険の資格確認書・マイナ保険証など)
- □ 障害者手帳(持っている場合。条件になる市があります)
- □ 緊急時に連絡する家族の名前と電話番号
- □ 届けてほしい曜日・昼か夜か・食数の希望
- □ 食べられないもの、かかりつけ医から言われている食事の注意(メモで十分です)
要介護認定がまだで、認定が条件の市に住んでいる場合は、認定の申請が先になります。手順は要介護認定の申請方法で説明しています。
期限はある?使い始めた後に連絡が必要なとき
配食サービスには、「いつまでに申請しないと使えない」という期限は通常ありません。必要になったときに相談すれば大丈夫です。ただし、使い始めた後に連絡が必要な場面があります。
- 入院やショートステイで家を空けるとき:事業者に止めてもらう連絡をします。連絡がないと、届けた弁当の代金がかかることがあります。
- 要介護度が変わったとき:名古屋市のように認定の区分でサービスの種類が分かれる市では、新たな申請が必要になることがあります。
- 引っ越したとき・施設に入ったとき:市の事業は住所地の市区町村のものです。住所が変わると、元の市のサービスは使えなくなります。
- 家族と同居を始めたとき:世帯の条件で対象を決める市では、対象から外れることがあります。
連絡を忘れても、さかのぼって大きな罰がある制度ではありません。とはいえ、止め忘れた分の費用や、市と事業者の手間が生じます。家族が連絡役を決めておくと安心です。
家族が損しやすい点・見落としやすい点
- 「市の配食はタダ」と思い込む。市が負担するのは一部で、弁当代は自己負担の市がほとんどです。月の食数で計算しておきましょう。
- 民間に先に申し込んでしまう。市の対象になる場合でも、市を通さずに契約すると市の負担や見守りの仕組みは使えません。まず市に確かめる順番がおすすめです。
- 子の住む市に問い合わせる。申込み先は親の住所地です。子の住む市の窓口では、親の市の手続きはできません。
- 食数や回数の上限を知らない。1日1食まで、昼食のみなど、市によって上限があります。足りない分は民間の宅配や家族の手配で補う形になります。
- 食事の制限を自己判断で伝えない。糖尿病や腎臓病などで食事の注意がある場合、どの食事が合うかは、かかりつけ医や管理栄養士に相談してください。特別食があっても、治療食ではない場合があります。
なお、国は配食事業者向けに栄養管理のガイドラインを示しています。ただ、これは事業者側の取り組みの目安です。個々の人にどの食事が合うかを決めるものではありません。
今日できる一歩
- 親の住む市区町村のホームページで「配食」と検索し、事業の名前と担当課をメモする。
- 親の住所を担当する地域包括支援センターの電話番号を調べておく。
- 次に電話するとき、親に「最近、何を食べているか」を一つだけ聞いてみる。
よくある質問
Q. 離れて住む子どもが代わりに相談してもいいですか?
はい。地域包括支援センターは家族からの相談も受け付けています。ただし、申請には本人の同意が必要です。本人が嫌がる場合は、センターの職員と一緒に話す機会をつくる方法もあります。
Q. 要介護認定を受けていないと使えませんか?
市によります。岐阜市のように、ひとり暮らしなどの世帯の状況で判断する市もあります。名古屋市や一宮市のように、認定などを条件にする市もあります。親の住む市の案内を確かめてください。
Q. 配達する事業者は自分で選べますか?
多くの市では、市に登録・協力している事業者の一覧から選びます。配達できる地区や曜日、メニューは事業者ごとに違います。一覧は市のホームページや相談窓口で確認できます。
Q. 留守のときや応答がないときはどうなりますか?
対応は市や事業者によって違いますが、あらかじめ決めた連絡先に知らせる流れが一般的です。申込みのときに、だれに連絡してもらうか、どこまで対応してもらえるかを確認しておきましょう。
Q. 市の配食と民間の宅配弁当を併用できますか?
市の配食は1日1食までなどの上限がある場合があります。足りない食事を民間の宅配で補うことは、一般にできます。市の事業同士の組み合わせに条件がある場合もあるため、相談窓口で確かめてください。
参考にした公的情報
- 名古屋市「配食サービスの概要」(介護・障害情報提供システム)
https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/kaigo/company/shitei/haishoku/ - 名古屋市「生活援助型・自立支援型配食サービス 運営の手引き」
https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/_files/00132909/haisyokutebikiR6.pdf - 岐阜市「配食による安否確認事業」
https://www.city.gifu.lg.jp/kenko/koureisyafukushi/1004557/1004564/1004569.html - 一宮市「配食サービス」
https://www.city.ichinomiya.aichi.jp/fukushi/kounenfukushi/kourei/1000146/1010613/1001012.html - 厚生労働省「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158814.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。対象者の条件や料金は市区町村ごとに異なり、改定されることがあります。利用の前に、親の住む市区町村の高齢福祉の担当課や地域包括支援センターでご確認ください。食事の内容や健康状態に関する判断は、かかりつけ医などにご相談ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。