親の通院にタクシーを使う回数が増えて、片道の運賃が気になってきた。役所で「福祉タクシー券」という言葉を聞いたけれど、親が対象なのか分からない。介護タクシーと何が違うのかも、はっきりしない。
この記事では、福祉タクシー券の対象者、市ごとの助成額の例、申請先、介護保険が使える「通院等乗降介助」との違いを、2026年10月時点の公式な案内で整理します。
先に結論:福祉タクシー券は「手帳」か「要介護」で決まり、市ごとに中身が違う
この記事の結論
- だれが:多くの市は重い障害の手帳を持つ人が対象です。船橋市のように、要介護認定で対象になる市もあります。
- いくら:名古屋市・横浜市は1枚500円、岐阜市は1枚560円、船橋市は運賃の半額(上限1,200円)です。
- どこへ:親が住む市区町村の障害福祉や高齢福祉の窓口です。介護保険の乗降介助はケアマネジャーに相談します。
福祉タクシー券は国の全国一律の制度ではありません。市区町村がそれぞれ決めている助成です。そのため、同じ等級の手帳でも、住む市によって金額も枚数も変わります。この記事では4つの市を例に、違いの見方をお伝えします。
福祉タクシー券・介護タクシー・介護保険の違い
言葉が似ているので、まず3つを分けておきます。いちばん大きな違いは「何にお金が出るか」です。
介護保険で出るのは「介助」の分だけ
通院等乗降介助は、訪問介護(ヘルパーが自宅に来るサービス)の一つです。運転手を兼ねるヘルパーが、乗る前の準備や乗り降り、受診の手続きを手伝います。
介護保険の単位は片道97単位です。自己負担は所得に応じて1〜3割で、1単位の円の額は地域で少し違います。厚生労働省の資料では、移送の運賃は介護保険の対象ではないとされています。運賃は別に自分で払います。
使うには、ケアプラン(介護サービスの計画書)に入れてもらう必要があります。介護保険の指定を受けた事業所でないと保険は使えません。親に合うかどうかは、担当のケアマネジャーに相談してください。
市の券と介護保険は、出る場所が別
市の福祉タクシー券は運賃に、介護保険は介助に使うものです。ただし、名古屋市の案内では、券は契約したタクシー会社でしか使えず、介助料金は助成の対象外です。組み合わせて使えるかは、市の窓口と事業者の両方に確かめておくと安心です。
対象になる人・ならない人の早見表
多くの市では、年齢だけでは対象になりません。手帳の種類と等級、または要介護度で決まります。下は、確認した市の例をもとにした目安です。
要介護認定をまだ受けていない親は、先に認定の申請を考えてもよいかもしれません。手順は要介護認定の申請方法にまとめています。
助成額の例:名古屋市・岐阜市・横浜市・船橋市
同じ「福祉タクシー券」でも、1枚の額と1回に使える枚数がかなり違います。愛知・岐阜の2市と、仕組みの違う2市を並べました。
例で見ると、使い方が変わる
運賃が片道3,000円の通院を考えます。名古屋市・横浜市なら、券を何枚か重ねて使えます。岐阜市は1回1枚なので、助成は560円までです。船橋市は半額でも上限1,200円なので、助成は1,200円までです。
つまり、長い距離の通院が多い人ほど、「1回に何枚使えるか」が効いてきます。親の住む市のルールを先に知っておくと、通院の回数と券の残りを考えやすくなります。
リフト付きタクシーの券がある市も
名古屋市には、車いすやストレッチャーで外出する人向けのリフト付タクシー利用券もあります。1枚の上限は2,000円です。普通の券とどちらが合うかは、区役所で聞いてみてください。
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申請の手順と必要書類チェックリスト
手続きは市によって細かく違いますが、流れはおおむね同じです。家族が窓口へ行く場合は、委任状がいるかも先に電話で聞いておきます。
- 親が住む市の制度を調べる。市のホームページで「福祉タクシー」「タクシー料金の助成」と検索します。障害者向けと高齢者向けが別の場合があります。
- 対象かどうか窓口に電話で確認する。手帳の等級、要介護度、施設に入っているかを伝えます。
- ほかの制度との選択を決める。名古屋市や横浜市は、福祉特別乗車券(市バスなどの無料パス)などとどちらかを選ぶ仕組みです。
- 書類をそろえて申請する。窓口へ行くか、市によっては郵送でもできます。岐阜市は更新を郵送で受け付けています。
- 券を受け取り、使い方を親と確認する。使えるタクシー会社、手帳の提示、おつりが出ないことを確かめます。
必要書類チェックリスト
- □ 身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれか(手帳で申請する場合)
- □ 介護保険被保険者証(要介護で申請する市の場合)
- □ 申請書(市のホームページか窓口で入手)
- □ 振込先の口座が分かるもの(船橋市の初回など、求められる場合)
- □ 前の年度の残りの券(岐阜市の更新など、求められる場合)
- □ 家族が行くときは、窓口へ行く人の本人確認書類と、必要なら委任状
今日できる一歩
- 親の手帳の等級と、介護保険証の要介護度を写真に撮っておく
- 親が住む市のホームページで「福祉タクシー」と検索する
- ケアマネジャーに「通院の乗り降りの介助を使えるか」を聞いておく
有効期限と、過ぎたらどうなるか
福祉タクシー券には有効期間があります。期間が終わると、残った券は使えなくなります。期間の区切り方は市によって違います。
名古屋市と横浜市は、新しく申請した月によって交付枚数が減ります。対象になったら早めに申請したほうが、使える枚数は多くなります。名古屋市の案内では、券をなくしても年度の途中に再交付はできないとされています。
また横浜市では、有効期間の初日に有効な手帳がないと、券を交付できないとしています。手帳の更新時期が近い人は、そちらを先に済ませておくと安心です。
損しやすい点
おつりが出ない
名古屋市・横浜市とも、運賃が券の額より安くてもおつりは出ません。短い距離で券を使うと、助成の一部が無駄になります。何枚使うかは運賃を見てから決めます。
介助料や器具の料金は券の対象外
名古屋市の案内では、有料道路の料金、駐車料金、ストレッチャーなどの使用料、介助料金は助成の対象外です。介護タクシーを自費で使うと、運賃以外の料金が大きくなることがあります。予約の前に料金の内訳を聞いておきます。
ほかの制度と「どちらか一つ」になる
横浜市では、タクシー券・燃料券・福祉特別乗車券・敬老パスは併用できず、選択制です。途中で切り替えられる回数にも決まりがあります。家族の車で送迎することが多いのか、タクシーが多いのかで選び方が変わります。
親が運転免許を返納すると、市によっては別の支援が受けられることもあります。話の切り出し方は親に運転免許の返納をどう切り出すかで紹介しています。
手帳の割引と組み合わせる
岐阜市の案内では、身体障害者手帳や療育手帳を見せると、タクシー運賃が1割引になるとしています。名古屋市の券も、障害者割引などを引いたあとの料金に使う仕組みです。乗るときに手帳を見せるのを忘れないようにします。
タクシー代が医療費控除になる場合もある
国税庁の案内では、病状から急を要する場合や、電車やバスが使えない場合のタクシー代は医療費控除の対象になります。ふだんの通院のタクシー代は原則として対象外です。くわしくは医療費控除のやり方をご覧ください。個別の判断は税務署にご確認ください。
離れて暮らしていて通院に付き添えない場合は、見守りの仕組みも合わせて考えておくと安心です。離れて暮らす親の見守り方法で、自治体のサービスも含めて比べています。
よくある質問
65歳以上なら、だれでも福祉タクシー券をもらえますか?
年齢だけで対象になる市は多くありません。確認した4市では、手帳の等級か要介護度が条件です。高齢者向けの別の交通支援がある市もあるので、高齢福祉の窓口で聞いてみてください。
要支援でも介護保険で介護タクシーを使えますか?
介護保険の通院等乗降介助は、要介護1〜5の人が対象です。要支援1・2の人は介護保険では使えません。自費で使える事業者や、市の独自の助成がないかは、地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)で聞けます。
家族が代わりに申請できますか?
多くの市で家族の申請を受け付けています。ただし、委任状や本人の署名が必要な場合があります。船橋市は初めての申請で対象者の署名を求めています。行く前に窓口へ電話で確かめてください。
どのタクシー会社でも使えますか?
市と契約や協定を結んだタクシー会社に限るのが一般的です。名古屋市は契約タクシーのみ、船橋市は協定を結んだタクシー会社が対象です。使える会社の一覧は市のホームページや券の案内に載っています。
施設に入ったら券はどうなりますか?
岐阜市のように、施設に入所している人を対象外とする市があります。入所や入院が決まったら、券の扱いを市の窓口に伝えて確認しておきます。
参考にした公的情報
- 名古屋市「タクシー料金の助成」
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/shougaisha/1016573/1016575.html - 岐阜市「タクシー料金の助成」
https://www.city.gifu.lg.jp/kenko/syougaisyafukushi/1004706/1004716.html - 横浜市「福祉タクシー利用券の交付」
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/fukushi/annai/gaishutsu/kotsu/riyoken.html - 船橋市「福祉タクシー乗車券(要介護者等)を交付します」
https://www.city.funabashi.lg.jp/kenkou/koureisha/002/p001792.html - 厚生労働省「各介護サービスについて(訪問介護)」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000163526.pdf - 国税庁「病院に収容されるためのタクシー代」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/21.htm
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。福祉タクシー券の対象者・金額・枚数は市区町村ごとに異なり、年度ごとに見直されることがあります。最新の内容は、親が住む市区町村の障害福祉・高齢福祉の窓口でご確認ください。介護保険のサービスが合うかどうかは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご相談ください。特定のタクシー事業者をおすすめするものではありません。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。