親が亡くなり、実家の名義を変える必要が出てきた。司法書士に頼むか迷っているけれど、自分でできるなら費用をおさえたい。そう考えて調べている方に向けた記事です。
相続登記は、相続人が自分で法務局に申請できます。この記事では、自分でできる人と難しい人の判定表、自分でやった場合の費用、完了までの期間、申請の流れ、オンライン申請の画面ごとの進め方を、2026年10月時点の法務局・法務省・国税庁の案内で順に整理します。
先に結論:相続登記は自分でできます。分かれ目は「戸籍」と「話し合い」です
この記事の結論
- 自分でできるか:相続人が配偶者と子だけで、遺産分割の話し合いがまとまっていれば、自分で進めやすいです。数次相続、相続人が多い、話し合いがまとまらない場合は、司法書士への相談が向いています。
- 費用:登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)と、戸籍や証明書の手数料、郵送代です。自分でやっても、この実費は変わりません。
- 期間:法務局の審査は、申請から2〜3週間ほどが目安です(各法務局が公表する登記完了予定日)。その前の書類集めの期間は、戸籍の量で大きく変わります。
- オンライン申請:申請用総合ソフトとマイナンバーカードの電子署名が必要です。添付書類は、受付から2日以内に法務局へ持参か郵送で届けます。
相続登記には3年の期限があります。期限や、しないまま置いたときに起きることは相続登記をしないとどうなる?にまとめています。この記事は「自分でどう進めるか」に絞ります。
相続登記は自分でできる?判定表
相続登記の難しさは、申請書そのものより、その前の準備で決まります。集める戸籍の量と、相続人の話し合いの状況です。ご自分の状況に近い行を探してください。
相続登記に限らず、預金や年金も含めた相続手続き全体で自分でできるかは、相続手続きは自分でできる?戸籍の通数でわかる判定表で確かめられます。
相続登記を自分でやった場合の費用
自分でやる場合にかかるのは、法務局に納める登録免許税と、戸籍や証明書の手数料、郵送代です。司法書士に頼んでも、この実費は同じです。自分でやって浮くのは、司法書士への報酬の部分です。
登録免許税の計算方法と計算例
登録免許税は、固定資産税評価額をもとに計算します。使うのは、固定資産税の課税明細書の「価格」または「評価額」の欄です。「固定資産税課税標準額」の欄ではないので注意します(法務局「登録免許税の計算」)。
- 評価額の1,000円未満を切り捨てます(これが課税価格です)。
- 課税価格に0.4%(1,000分の4)を掛けます。
- 出た額の100円未満を切り捨てます。1,000円に満たないときは1,000円です。
たとえば評価額が12,345,678円の土地なら、課税価格は12,345,000円です。0.4%を掛けると49,380円で、100円未満を切り捨てた49,300円が登録免許税になります。
2027年3月31日までは、課税価格が100万円以下の土地の相続登記は登録免許税がかかりません(国税庁No.7191)。この場合、申請書には税額の代わりに、免税の根拠になる法令の条項を書きます。書き方は法務局の記載例と「相続登記の登録免許税の免税措置」のページで確かめます。
実費の一覧と戸籍の取り方の節約は相続の実費一覧、司法書士に頼んだ場合との比べ方は相続登記を司法書士に頼まない場合の費用と手間で説明しています。
相続登記の流れ(自分で申請する8ステップ)
自分で申請するときの順番です。時間がかかるのは3と4です。戸籍の請求は、ほかの準備と並行して早めに出しておくと、全体が短くなります。
- 相続する不動産を洗い出す。固定資産税の納税通知書の課税明細書を見て、土地と建物を書き出します。通知書が来ない土地がないかは、名寄帳で確かめます。登記事項証明書を取り、今の名義と地番・家屋番号を確認します。
- 管轄の法務局を調べる。申請先は、不動産のある場所を受け持つ法務局です。相続人の住所の近くではありません。
- 戸籍などを集める。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の今の戸籍、亡くなった方の住民票の除票(または戸籍の附票)です。本人・配偶者・子などは、戸籍の広域交付で最寄りの役所からまとめて請求できる場合があります。
- 分け方を書面にする。遺言書があれば、それを使います。なければ相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作って全員が実印を押し、印鑑証明書をそろえます。
- 固定資産評価証明書を取る。不動産のある市区町村で取り、登録免許税を計算します。
- 申請書を作る。法務局のサイトに、法定相続・遺産分割・数次相続・遺言の様式と記載例があります。2026年10月5日以降は新しい様式を使います(下で説明します)。
- 申請する。窓口に持参、書留で郵送、オンライン申請の3つから選べます。
- 補正に答え、完了書類を受け取る。不備があると法務局から電話で連絡が来ます。完了すると登記識別情報通知と登記完了証が出ます。登記事項証明書を取って、名義が変わったことを確かめます。
戸籍の束は、法務局で法定相続情報一覧図を作っておくと、登記と銀行で何度も使い回せます。作り方は法定相続情報一覧図の取り方、協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方とひな形にまとめています。
2026年10月5日からは、申請書に「国籍等」を書きます
法務局は、2026年10月5日以降に出す申請について、新しい様式と記載例を出しています。新しく名義人になる人の国籍等を申し出る欄が加わりました。記載例では、名義人になる相続人について、氏名のふりがな、生年月日、国籍等、メールアドレスを書きます。
- 日本国籍なら、国籍等の欄に「日本」と書きます。
- 添付情報には「国籍を証する情報」も挙げます。日本国籍の場合は、相続人であることを示す戸籍で足りるため、別の書類を重ねて出す必要はありません(記載例)。
- 古い様式をダウンロードしたままの方は、法務局のページで新しい様式に取り替えてから書き始めます。
自分でやった場合の期間の目安
期間は、申請するまでの準備と、申請してからの法務局の審査に分かれます。準備は戸籍の量と話し合いの進み方で人によって大きく違います。審査の期間は、各法務局が「登記完了予定日」として公表しています。
この表では、申請から完了まで2〜3週間ほどです。名古屋法務局の注意書きでは、郵送の申請は配達された日が申請日の扱いです。オンライン申請で添付書類を郵送したときは、添付書類が届いた日が申請日の扱いになります。書面申請や申請の不備があると、予定日より遅れることがあるとも書かれています。
準備の期間で差がつくのは、戸籍の取り寄せです。本籍地が遠く郵送で請求する場合は、1か所ごとに往復の日数がかかります。亡くなった方が何度か本籍を移していると、前の本籍地へ順に請求することになります。名古屋市内の管轄と窓口は名古屋の相続登記を自分で、愛知・岐阜の法務局の一覧は愛知県・岐阜県の法務局一覧にあります。
相続登記のオンライン申請の流れ(画面ごとの手順)
オンライン申請は「登記・供託オンライン申請システム」を使います。相続登記では、申請書だけをネットで送り、戸籍や協議書などの添付書類は法務局へ持参か郵送で届ける形(特例方式)が一般的です。半分オンライン、という意味で「半ライン申請」と呼ばれることもあります。
先に用意するもの
- マイナンバーカード(電子証明書が有効なもの)
- ICカードリーダライタ(電子署名に使います)
- パソコン(申請用総合ソフトをインストールします)
- 紙で集めた戸籍・協議書・印鑑証明書などの原本
画面ごとの進め方
- 申請者情報の登録。初めて使う人だけ、登記・供託オンライン申請システムで申請者IDとパスワードを登録します。
- 申請用総合ソフトのインストール。これも初めての人だけです。ソフトは、IDとパスワードを入れずに「キャンセル」を押すと、オフラインでも起動できます。
- 申請情報の作成(操作手引書のSTEP1)。所有権移転登記(相続・遺産分割)の申請書を選び、登記の目的、原因、相続人、不動産の表示などを入力します。
- 添付情報の添付(STEP4)。書面で出す添付書類を、申請情報の中で指定します。
- 電子署名の付与と電子証明書の添付(STEP5)。カードリーダにマイナンバーカードを置き、署名します。公的個人認証の電子証明書を付けると、住所を証する書類の提出は要りません。
- 申請情報の送信(STEP6)。送信が終わると、申請が法務局に届きます。
- 登録免許税の納付。申請用総合ソフトから、ネットバンキングなどで電子納付できます。収入印紙で納めることもできます。
- 添付書類の提出。処理状況表示の画面の「アクション」メニューから、添付書類の内訳表を印刷します。内訳表と原本を、法務局へ持参するか書留郵便などで送ります。受付の日から2日以内(初日と休日などを除く)に届くようにします。
- 補正と完了の確認。補正が必要なときは、ソフトに補正のお知らせが届きます。完了すると「手続終了」のお知らせが届き、登記完了証(電子公文書)をダウンロードできます。
相続登記を一度きりで自分でやる場合、カードリーダを買って初回設定をする手間と、窓口や郵送の手間を比べて選ぶのが現実的です。どの方法でも、法務局の審査の中身は同じです。
自分でやるときにつまずきやすい点
- 評価額の欄を取り違える。登録免許税は「価格」「評価額」で計算します。「課税標準額」で計算すると税額が合いません。
- 戸籍が途中で切れている。戸籍の日付をつなげて、出生の記載まで届いているかを確かめます。
- 登記簿の住所が古いままで、つながらない。住民票の除票や戸籍の附票で、登記簿の住所から最後の住所までをつなぎます。
- 不動産の表示を登記簿どおりに書いていない。地番や家屋番号は、住所の番地と違うことがあります。登記事項証明書のとおりに書きます。
- 私道や共有の土地を書き漏らす。課税明細書に載らない非課税の土地もあります。名寄帳で確かめます。
- 原本を返してもらう準備をしていない。戸籍や協議書の原本を返してほしいときは、原本還付の手続きをします。やり方は記載例と法務局の案内で確かめます。
途中で「これは数次相続かもしれない」「相続人と連絡がつかない」と分かったら、そこで止めて司法書士に相談するのが近道です。ご家族の構成や不動産の数で、どこまで自分でできるかは変わります。30分の無料相談では、書類を見ながら一緒に整理できます。愛知県内はご自宅への訪問もできます。その場で何かをお決めいただく必要はありません。
今日できる一歩
固定資産税の納税通知書の課税明細書を出し、相続する土地と建物、それぞれの「価格(評価額)」を書き出す。あわせて、上の判定表でご自分の状況がどの行に当たるかに印を付けておきます。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
よくある質問
相続登記は、本当に自分でできますか
できます。相続人本人が法務局に申請でき、法務局のサイトに様式と記載例があります。管轄の法務局の登記手続案内(予約制)では、手続きの進め方を聞けます。ただし、申請書を代わりに作ってもらう場ではありません。
自分でやると、費用はいくら安くなりますか
登録免許税や戸籍代などの実費は、自分でやっても頼んでも同じです。安くなるのは司法書士への報酬の分です。報酬の目安は相続登記の司法書士費用の相場にまとめています。
自分でやった場合、終わるまでどのくらいかかりますか
申請してからの審査は、名古屋法務局の公表では2〜3週間ほどです。その前の準備は、戸籍が何か所から必要か、話し合いがすぐまとまるかで大きく変わります。管轄の法務局の「登記完了予定日」のページで、今の目安を確かめられます。
オンライン申請だけで全部終わりますか
相続登記では、戸籍や協議書の原本を持参か郵送で出す特例方式が一般的です。受付の日から2日以内(初日と休日などを除く)に法務局へ届ける必要があります。電子署名には、マイナンバーカードとICカードリーダライタが要ります。
固定資産税の評価額が低い土地でも、登録免許税はかかりますか
2027年3月31日までに申請する相続登記で、土地の課税価格が100万円以下なら、登録免許税はかかりません(国税庁No.7191)。建物は対象外です。申請書には、税額の代わりに免税の根拠の条項を書きます。
話し合いがまとまらず、自分で登記ができません
相続登記の期限は3年です。分け方が決まらないうちは、相続人申告登記を出すと、申し出た人は義務を果たしたものとして扱われます。登録免許税はかかりません(法務省)。ただし名義変更ではないため、売却などには後で相続登記が必要です。
参考にした公的情報
- 法務局「不動産登記の申請書様式について」(相続の様式・記載例、令和8年10月5日以降用)
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html - 法務局「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」記載例(令和8年10月5日以降に申請する場合)
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001470094.pdf - 法務局「登録免許税の計算」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001467400.pdf - 国税庁 タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm - 法務局「不動産登記のオンライン申請(所有者となる方が申請する場合)」
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudosan_online03.html - 名古屋法務局「登記完了予定日」
https://houmukyoku.moj.go.jp/nagoya/static/toukikanryou.htm - 法務省「相続登記の申請義務化について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html - 法務省「相続人申告登記について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。様式、手数料、完了予定日は変わることがあります。実際に申請する前に、管轄の法務局の案内をご確認ください。数次相続や相続人が多い場合など事情が複雑なときは、司法書士にご相談ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
