親は要介護3。でも障害者手帳は持っていない。この場合、確定申告書の「障害者控除」の欄は空けておくしかないのでしょうか。
この場合に使えるのが、市区町村が出す「障害者控除対象者認定書」です。65歳以上で、認知症や寝たきりの状態が一定の基準に当たる人は、手帳がなくても税の障害者控除を受けられることがあります。この記事では、控除額の表、申請の仕方、過去の年分をさかのぼる方法を、2026年10月時点の公的情報で整理します。
先に結論:要介護の親は「認定書」で障害者控除の対象になりうる
この記事の結論
- いくら:所得から差し引ける額は、所得税で27万円(特別障害者40万円、同居なら75万円)、住民税で26万円(同30万円、53万円)です。
- どこへ:親が住む市区町村の高齢福祉・介護の窓口に申請します。要介護認定を受けても、自動では認定されません。
- いつまで:申告していない年は翌年1月1日から5年間、申告済みの年は原則として申告期限から5年以内に直せます。
障害者控除対象者認定とは:要介護認定とは別の判定
税金の「障害者控除」は、本人や家族が障害者に当たるとき、所得から一定額を差し引く仕組みです。差し引く額が増えるほど、所得税と住民税が下がります。
国税庁は障害者の範囲の一つとして、満65歳以上で、障害の程度が知的障害者や身体障害者に準ずるものとして「市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人」を挙げています。この認定の証明が、障害者控除対象者認定書です。
ここで押さえたいのは、要介護認定と同じものではない点です。横浜市は「要介護認定と障害者控除認定は判断基準が異なる」としています。要介護認定を受けていても対象になるとは限らず、受けていなくても対象になる場合があります。千葉市も、要介護度が重くても認定されない場合があると案内しています。
判断の材料は、多くの市区町村で介護保険の認定調査の記録です。たとえば東京都大田区は、寝たきりの度合い(障害高齢者の日常生活自立度)や、認知症の度合い(認知症高齢者の日常生活自立度)で区分を示しています。要介護度そのものではなく、体の動きと認知症の状態で見るということです。
判定の基準日は、控除を受ける年の12月31日です(年の途中で亡くなった場合は死亡日。横浜市・大田区の案内)。まだ要介護認定を受けていない場合は、要介護認定の申請方法と窓口もあわせてご覧ください。
対象になる人・ならない人の早見表
認定の区分は「障害者」と「特別障害者」の2つです。名古屋市・横浜市の案内では、おおむね次のように分かれます。
- 障害者:身体障害者3〜6級に準ずる人、認知症や知的障害の軽度・中度に準ずる人
- 特別障害者:身体障害者1・2級に準ずる人、認知症や知的障害の重度に準ずる人、6か月程度以上ねたきりで日常生活に支障のある人
大田区の例では、寝たきり度がランクB・C、または認知症の自立度がⅢ〜Ⅴなら特別障害者に準ずる人、寝たきり度ランクA以上、または認知症の自立度Ⅱ以上なら障害者に準ずる人としています。基準の書き方は市区町村で違うので、親の住む市区町村の案内で確かめてください。
控除額の表:所得税と住民税
表の金額は「税金が減る額」ではなく「所得から差し引く額」です。たとえば所得税の税率が5%の人なら、27万円の控除で減る所得税はおよそ1万3,500円です(復興特別所得税は別)。住民税の所得割は多くの地域で10%なので、26万円の控除でおよそ2万6,000円の目安になります。
子が使うには「扶養」に入れている必要がある
控除を受けられるのは、障害者に当たる人本人か、その人を同一生計配偶者や扶養親族にしている人です。子が自分の税金で使うなら、親を扶養親族にしていることが前提です。
扶養親族の所得の上限は、国税庁によると2025年分で合計所得金額58万円以下、2026年分から62万円以下です。年金の多い親は扶養に入れられないことがあります。その場合でも、親自身の申告で障害者控除を使える可能性があります。
親本人の住民税が非課税になることも
住民税には、障害者で前年の合計所得金額が一定額以下なら課税しない仕組みがあります。千葉市の案内では、2026年度(令和8年度)は135万円以下です。基準は市区町村の税務担当で確かめてください。年金暮らしの人の非課税の目安は年金暮らしの住民税非課税の目安にまとめています。
申請方法と必要書類:3つの市の例
申請先は、控除を受ける人(親)が住む市区町村です。窓口の名前や受け付け方は市区町村で違います。2026年10月時点の例を並べます。
申請から控除までの流れ
- 親の介護保険被保険者証で、要介護度と認定の時期を確かめる。障害者手帳があるかも見る。
- 親が住む市区町村の高齢福祉・介護の窓口に電話する。対象になりそうか、過去の年分も出せるかを聞く。大田区は事前の電話確認をすすめています。
- 申請書を手に入れて書く。窓口でもらうか、公式ページから印刷する。何年分を申請するかも書く。
- 窓口、郵送、電子申請のうち、その市区町村で使える方法で出す。
- 認定書(当てはまらない場合は非該当の通知)を受け取る。
- 控除を使う。会社員の子は年末調整の扶養控除等申告書に書く。間に合わなければ確定申告。年金の親は確定申告で使う。
申請の持ち物チェックリスト
- □ 障害者控除対象者認定申請書(市区町村の様式)
- □ 親の介護保険被保険者証(写しでよい市区町村もある)
- □ 窓口に行く人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- □ 委任状(本人や同居の親族以外が申請する場合など。要否は市区町村で違う)
- □ 返信用封筒と切手(郵送で申請する場合。大田区は110円分)
- □ 要介護認定を受けていない場合は医師意見書(大田区の例)
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さかのぼれる年数:5年の数え方と期限が過ぎたら
認定書を初めて知った人の多くが気にするのが「去年までの分も戻るのか」です。税の側の期限は、国税庁が次のように示しています。
もう一つの壁は、市区町村が過去の年分の認定書を出せるかです。千葉市は最長5年分の申請を受け付けますが、過去の認定調査の記録で審査するため、5年分すべては出ない場合があるとしています。大田区も複数年の申請ができると案内しています。名古屋市・横浜市の公式ページには、さかのぼりの記載が見当たりませんでした。窓口で聞いてください。
期限を過ぎた年分は、税の手続きで直すことができません。古い年分から順に期限が来るので、過去分があるなら最も古い年から確かめるのが近道です。
住民税は、名古屋市の案内では、所得税の確定申告をしていれば改めての手続きは不要です。過去の年分の住民税の扱いは、市区町村の税務担当にご確認ください。
損しやすい5つの点
- 要介護認定で自動的に控除されると思い込む:名古屋市・横浜市・千葉市はいずれも申請制です。何もしなければ認定書は届きません。
- 「要介護1だから無理」と決めつける:判定は要介護度ではなく、寝たきりや認知症の状態で見ます。逆に要介護度が重くても非該当になることがあります。
- 施設にいる親を「同居」で計算する:国税庁は扶養控除の同居老親等について、老人ホーム等に入所している場合は同居に当たらないとしています。75万円の同居特別障害者に当たるかは、税務署で確かめてください。
- 亡くなった年の分を忘れる:認定の基準日は死亡日になります(横浜市・大田区)。親の最後の年の申告は準確定申告の期限と必要な人で確認できます。
- ほかの控除と分けて考える:おむつ代や介護サービス費は医療費控除に当たる場合があり、障害者控除と一緒に申告できます。詳しくは介護費用・おむつ代と医療費控除をご覧ください。
今日できる一歩
- 親の介護保険被保険者証を出して、要介護度と認定の時期をメモする。
- 親の住む市区町村の公式ページで「障害者控除対象者認定」と検索し、窓口の電話番号を控える。
- 過去5年分の源泉徴収票と確定申告書の控えが手元にあるか探す。
よくある質問
要支援や要介護1でも認定されますか
要介護度だけでは決まりません。認知症の状態や寝たきりの度合いが市区町村の基準に当たれば、認定されることがあります。名古屋市は、要介護・要支援認定を受けている人は対象となる場合がある、と案内しています。
認定書は毎年申請し直すのですか
市区町村で扱いが違います。名古屋市は、障害の事由に変更や消滅がない限り次年度以降も使えるとしています。横浜市や大田区のように、年ごとの12月31日を基準日として発行するところもあります。申請のときに確かめてください。
年金だけの親でも、申告すると税金は戻りますか
年金から所得税が差し引かれていれば、戻る可能性があります。年金の源泉徴収票の「源泉徴収税額」を見てください。0円なら所得税は戻りませんが、住民税が下がることはあります。
親が65歳未満で要介護です。対象になりますか
この認定は65歳以上が対象です。大田区は、要介護認定を受けていても65歳未満は対象とならないと明記しています。身体障害者手帳などを持っていれば、手帳で障害者控除を受けられます。
年末調整に間に合いませんでした
翌年の確定申告で控除を受けられます。申告をしていない年分なら、翌年1月1日から5年間は還付申告ができます。
参考にした公的情報
- 国税庁「No.1160 障害者控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm - 国税庁「No.2030 還付申告」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm - 国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm - 名古屋市「ねたきり・認知症高齢者等の税の障害者控除」
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/koureisha/1016427/1016439.html - 横浜市「障害者控除対象者認定」
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigohoken-igai-service/koukyou-zei/shougaisha-koujo.html - 千葉市「障害者控除対象者認定」
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/koreishogai/korei/shougaishanintei.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。認定の基準や申請方法は市区町村ごとに異なり、税額は所得や家族の状況で変わります。個別の判断は税務署や税理士に、手続きは申請先の最新の案内でご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
