親が亡くなり、実家の土地を兄弟でどうするか決めなければならない。とりあえず兄弟で半分ずつの名義にしておけばよいのか。借りている土地(借地)の上に家がある場合は、地主に何か言われるのか。兄弟で土地を相続するときは、こうした迷いが出てきます。
この記事では、兄弟で土地を共有したときに「何をするのに誰の同意が要るか」を2023年4月の民法改正後のルールで早見表にし、分け方の比べ方、借地権を相続するときの地主の承諾と名義の書き換えを、2026年10月時点の民法・借地借家法と法務省の案内をもとに整理します。
先に結論:兄弟で土地を共有にするのは「決めるのを先に延ばす」こと
この記事の結論
- 共有のルール:土地全体を売る、家を建てるといった大きな変更は兄弟全員の同意が要ります。草刈りなど現状を保つことは一人でできます。
- 2023年4月から:形や使い道を大きく変えない工事や、短い期間の貸し出しは、持分の過半数で決められるようになりました。
- 兄弟2人で半分ずつは要注意:どちらも過半数に届かないため、意見が割れると何も決まりません。
- 分け方:分筆して分ける・一人が取得してお金で調整する・売って分ける・共有の4つを比べます。
- 借地権:相続人が引き継ぐことに地主の承諾を求める条文はありません。建物の相続登記と地主への連絡で名義を書き換えます。
兄弟で土地を共有すると、何に誰の同意が要る?(2023年改正後の早見表)
兄弟で土地を相続し、そのまま共有名義にすると、使い方や手入れのたびに「誰の同意が要るか」が問題になります。共有のルールは2023年4月1日に施行された民法改正で見直されました。改正後のルールを、よくある場面ごとにまとめます。
計算例:兄弟2人で半分ずつだと、なぜ決まらないのか
「過半数」は半分を超えることです。兄弟2人で1/2ずつ持つと、どちらも一人では過半数に届きません。兄が駐車場として貸したい、弟は反対、となると、短期の貸し出しすら決まりません。兄弟3人で1/3ずつなら、2人がそろえば2/3で過半数になります。母が1/2、子2人が1/4ずつの場合、母一人では過半数に届かず、母と子の一人がそろって3/4になります。
共有にするなら、持分の割合で「誰と誰がそろえば決められるか」を、名義を決める前に確かめておくと、後の行き詰まりを避けやすくなります。
連絡のつかない兄弟が共有者にいるとき
2023年の改正では、共有者の中に所在が分からない人がいる場合の手当ても設けられました。その人を知ることができない、または所在が分からないときは、裁判所の裁判を経て、ほかの共有者だけで変更や管理を決められます(251条2項・252条2項)。さらに、所在が分からない共有者の持分を取得させる裁判の仕組みもあります(262条の2)。ただし持分が相続財産で遺産分割をすべき場合は、相続開始から10年を過ぎていることが条件です。
共有にした後に起きやすいこと
- 共有者が増えていく。兄弟の一人が亡くなると、その持分はその人の配偶者や子に相続されます。兄弟2人の共有が、いつの間にか甥や姪を含む4人、5人の共有になります。
- 使っている兄弟と使っていない兄弟の不公平。一人が実家に住み続けると、持分を超えて使った分の対価をどうするかが問題になります。
- 固定資産税や草刈りの負担。誰がいくら払い、手入れを誰がするかを決めておかないと、不満がたまります。
- 遺産分割をしないまま時間がたつ。遺産のまま共有している土地は、原則として遺産分割で分けます。相続開始から10年を過ぎると、共有物分割の請求で分けられる道も開かれます(258条の2)。
相続登記は、相続で取得したと知った日から3年以内が義務です。分け方が決まらない間の扱いは相続登記をしないとどうなる?にまとめています。
兄弟で土地を分ける方法:分筆・代償・換価・共有の比べ方
土地の分け方は大きく4つです。それぞれの詳しい説明は遺産分割の方法は4つにあります。ここでは「兄弟で土地を分ける」場面に絞って、どれが向くかを比べます。
代償分割で払うお金をどう用意するかは不動産しかない相続の分け方、土地をいくらと見るかの決め方は遺産分割の不動産の評価方法で説明しています。
借地権を兄弟で相続するとき:地主の承諾と名義の書き換え
実家が借りた土地(借地)の上に建っている場合、相続するのは土地ではなく、土地を借りて建物を持つ権利(借地権)と建物です。相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぎます(民法896条)。借地権もその中に入ります。
民法が借りる権利の移転に貸主の承諾を求めているのは、権利を他人に譲るときや、又貸しするときです(612条)。相続人が相続で引き継ぐことに、地主の承諾を求める条文はありません。相続を理由に承諾料や名義書換料を払う決まりも、民法や借地借家法にはありません。契約書に特別な定めがないかは確かめておきます。
名義の書き換えの順番
- 誰が借地権と建物を引き継ぐかを決める。兄弟で共有にすると、上の共有のルールが借地の建物にも当てはまります。
- 借地上の建物の相続登記をする。借地権は、借りた人の名義で登記された建物があれば、第三者に主張できます(借地借家法10条1項)。名義が亡くなった親のままだと、この点で不安が残ります。
- 地主に連絡する。相続したこと、新しい名義、連絡先を伝えます。書面で伝えると記録が残ります。
- 地代の支払い名義と契約書をそろえる。振込名義を変え、必要に応じて契約書や覚書の名義も地主と相談して改めます。
地主から承諾料や更新料などの支払いを求められ、根拠が分からないときは、払う前に契約書を持って弁護士に相談してください。相続登記の書類と手順は相続登記の必要書類で確かめられます。
今日できる一歩
固定資産税の納税通知書か名寄帳で、親名義の土地と建物を一覧にします。借地なら、地主との契約書と地代の振込記録を探しておきます。そのうえで、兄弟それぞれが「住みたい・売りたい・どちらでもよい」のどれかを聞いておくと、分け方の候補が絞れます。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
よくある質問
兄弟で土地を共有名義にすると、何が困りますか
土地全体を売る、家を建てるといった大きなことには、兄弟全員の同意が要ります。兄弟が亡くなるとその配偶者や子に持分が移り、共有者が増えていきます。すぐに決められない事情がなければ、分筆・代償・換価のどれかを先に検討します。
兄弟2人で半分ずつの共有です。片方だけで貸せますか
短い期間の貸し出しは持分の過半数で決めますが、1/2は過半数に届きません。もう一人の同意がなければ、貸すことは決められません。
実家に住んでいる兄弟に、家賃のようなお金を求められますか
民法では、共有物を使う共有者は、別の取り決めがない限り、自分の持分を超えて使った分の対価をほかの共有者に払う義務があるとされています(249条2項)。金額や期間は話し合いで決めることになり、まとまらないときは弁護士に相談します。
借地権を相続するのに、地主の承諾は必要ですか
相続人が相続で引き継ぐことに、地主の承諾を求める条文はありません。承諾が必要なのは、権利を他人に譲るときや又貸しするときです(民法612条)。相続人以外に遺言で譲る場合や、相続後に建物ごと売る場合は承諾が問題になります。
借地の上の建物の名義変更は、どこでしますか
建物の所在地を管轄する法務局で、相続登記を申請します。あわせて地主に相続したことを知らせ、地代の支払い名義をそろえます。
2023年の改正で、共有の何が変わりましたか
形や使い道を大きく変えない工事が、全員の同意から持分の過半数で決められるようになりました。短い期間の貸し出しが過半数でできることも条文で明確になり、所在が分からない共有者がいる場合の裁判の仕組みも設けられました。施行は2023年4月1日です。
参考にした公的情報
- e-Gov法令検索「民法」(第249条・第251条・第252条・第258条の2・第262条の2・第612条・第896条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - e-Gov法令検索「借地借家法」(第10条・第19条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090 - 法務省民事局「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」
https://www.moj.go.jp/content/001374238.pdf - 裁判所「遺産分割調停」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。工事や貸し出しがどの区分に当たるか、借地契約の扱いは個別の事情で変わります。兄弟間で争いがある場合の交渉は弁護士、登記は司法書士、税金は税理士・税務署にご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
