離れて暮らす母が、ひとりの家で急に具合が悪くなったら。電話がつながらないとき、誰が気づくのだろう。そんなときの備えの一つが、市の「緊急通報装置」です。
緊急通報装置は、ボタンを押すと受信センターにつながる機器です。多くの市区町村が、ひとり暮らしの高齢者に貸し出しています。ただし、対象や月額は市ごとに違います。この記事では、名古屋市・船橋市・岐阜市の公式な案内を例に、2026年10月時点の内容を整理します。
この記事の結論
- 対象:多くは65歳以上のひとり暮らしで、持病などの条件が付きます。名古屋市と岐阜市は条件あり、船橋市は75歳以上なら持病の条件なしの区分もあります。
- 利用料:無料から月2,000円台まで、市と所得で違います。名古屋市は月2,145円(前年の所得が169万5,000円以上の場合)、船橋市は無料・1,100円・2,200円です。
- 申込み先:役所の高齢福祉の窓口が多く、岐阜市は民生委員を通します。すでに事業をやめた市もあるので、まず親が住む市の最新の案内を見てください。
緊急通報装置とは何か:市のしくみ
自宅に機器を置き、ボタンを押すと受信センターにつながります。センターの職員が状況を聞き、救急車を呼んだり、あらかじめ決めた協力者に連絡したりします。
名古屋市の「あんしん電話」には、相談用のボタンもあります。看護師などがいる民間のコールセンターに、24時間365日つながります。年に4回ほど、センターから安否を確かめる電話も入ります。
船橋市は、通報すると救急車の要請や警備員の駆けつけで安否を確かめます。岐阜市は、受信センターを通じて救急車、または協力員につながります。同じ「緊急通報装置」でも、通報のあとに誰が動くかは市で違います。
毎日の安否を知らせる「見守り」とは役割が違います。見守り全体の選び方は離れて暮らす親の見守り方法に書きました。この記事は、そのうち緊急通報装置の自治体サービスに絞ります。
対象になる人・ならない人の早見表
市の案内に共通するのは、ひとり暮らし、またはそれに近い暮らしの高齢者です。そこに、持病などの条件が加わる市が多くあります。
3つの市の例:対象・利用料・申込み先
金額や条件は、市の案内をそのまま写しています。親が住む市とは違うことが多いので、考え方の見本として読んでください。
名古屋市と岐阜市は、近所の協力者を決めておく仕組みです。名古屋市は原則2名の登録が必要ですが、無料の駆けつけサービスを使えば1名で済みます。岐阜市は、近くに住む2人ほどを選びます。遠方の人は緊急時に動けないため、近隣の人に限られます。
船橋市と名古屋市の駆けつけサービスは、警備員が自宅に入るため、合鍵を預ける必要があります。名古屋市は、警備会社で預かる方法と、自宅にキーボックスを付ける方法があります。駆けつけ員は、身体介助まではできません。
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申込みの手順と、そろえておくものチェックリスト
- 親が住む市の案内を探す。市の名前と「緊急通報」「あんしん電話」で検索します。名前は市で違います。
- 対象かどうか、窓口に電話で聞く。年齢、世帯の状況、持病の条件、電話回線の種類を伝えます。
- 協力者を決めてお願いする。近所の人や親族に、緊急時に連絡が行くことを伝えて、了解をもらいます。
- 申請書を出す。窓口、郵送、民生委員経由など、出し方は市で違います。
- 機器の設置と、通報の試験をする。名古屋市は、通報テストで正常に通報できると確認されれば、NTTのアナログ回線以外の電話回線も使えます。
申込み前のチェックリスト
- □ 親本人が、機器を置くことに同意している
- □ 親の年齢、世帯の状況、持病のことを、窓口で説明できる
- □ 緊急連絡先(家族など)の名前と電話番号を書き出した
- □ 近所の協力者を、必要な人数だけ決めた
- □ 駆けつけがある場合、合鍵の預け方を決めた
- □ 自宅の電話回線の種類(固定電話か、携帯電話だけか)を確かめた
- □ 前年の所得が分かる書類(利用料に関わる市の場合)
必要な書類は市で違います。窓口で渡される案内が正解です。離れて暮らす子が窓口に行くときは、本人の同意と、代理でできる手続きの範囲を先に聞いておくと進みます。
市の窓口がどこか迷うときは、地域包括支援センターとはで、相談の探し方をまとめています。
民間サービスとの違い
民間にも、ボタンを押すと通報できるサービスや、見守り機器があります。特定の会社は取り上げません。一般的な違いだけを表にしました。
市のサービスは費用を抑えられる反面、条件に合わないと使えません。民間は選びやすい反面、総額が見えにくくなります。どちらも、緊急時に誰が見に行くかを決めておくことが土台です。契約で困ったときは、消費者ホットライン188に相談できます。
事業が終わる市もある:期限と、制度が変わったとき
今回読んだ3市の案内に、申込みの締切は書かれていませんでした。ただし、事業そのものが終わる市があります。
横浜市の「高齢者あんしん電話貸与事業」は、2026年3月31日で終了しました。市の案内では、固定電話の利用が減り、携帯電話が広がったこと、民間の見守り機器が増えたことが理由です。すでに付けている装置は、回収業者から順に連絡が来るのを待つ形です。
横浜市は、代わりに「高齢者見守り・安否確認機器補助事業」を案内しています。市内に住む65歳以上のひとり暮らしで、市の他の見守りサービスを使っていない人が対象です。市に登録された事業者の月額料金のうち、月1,000円までが補助されます。申込みは役所ではなく、事業者に直接です(2026年10月1日更新のページ)。
つまり、10年前の記事や古い口コミにある「市の貸与」が、いまは使えない場合があります。検索で出てきた金額も、古い可能性があります。必ず、市の公式ページの更新日を見てください。
読者が損しやすい点
- 古い情報で諦める、または期待する。市の案内は更新されます。ページの更新日と、問い合わせ先の電話番号を確かめてください。
- 電話代は別と考えておく。岐阜市は、装置の購入費と工事費は利用者負担なしですが、電話料金は利用者の負担です。
- 携帯電話だけだと、使えない市がある。岐阜市は電話回線が条件です。名古屋市は携帯型もあります。
- 協力者が決まらず止まる。名古屋市と岐阜市は、近隣の協力者を求めます。遠方の子は協力者になれません。駆けつけサービスで1名に減らせる市もあります。
- 携帯型は、毎日の充電と、使える範囲に注意。名古屋市の携帯型は自宅内のみで、通報先はコールセンターに限られ、毎日の充電が必要です。
- 親の同意なしに進めない。機器は、本人が押せなければ意味がありません。置く場所と使い方を、親と一緒に決めてください。
今日できる一歩
- 親が住む市の名前と「緊急通報」で検索し、市の公式ページの更新日と、問い合わせ先の電話番号をメモする。
よくある質問
ひとり暮らしでなくても、使えますか
市で違います。名古屋市は、75歳以上のみの世帯で他の世帯員が寝たきりの人や、日中ひとりになる65歳以上の人も対象です。船橋市は、日中独居や、同居家族の心身に問題がある場合を「準ずる人」にしています。窓口で状況を話して確かめてください。
固定電話がありません。携帯電話だけでも大丈夫ですか
市で違います。岐阜市は、電話回線がある人が条件で、携帯電話のみは対象外です。名古屋市は、電話回線がなくても利用できます。ただし、携帯電話などの連絡先は必要です。
離れて暮らす子が、申し込めますか
対象になるのは、その市に住む本人です。子が書類をそろえて窓口に行けるかどうかは、市の案内で確かめてください。本人の同意は欠かせません。
押し間違えて通報してしまったら
今回読んだ市の案内には、押し間違いの扱いは書かれていませんでした。設置のときに、押し間違えた場合の連絡のしかたを、窓口や設置の担当者に聞いておくと安心です。
引っ越したら、そのまま使えますか
市の貸与は、その市に住んでいることが前提です。別の市に移るときは、いまの市に返却の方法を聞き、新しい市で改めて条件を確認してください。
配食など、ほかの見守りと一緒に使えますか
市で違います。横浜市の補助事業のように、市の他の見守りサービスを使っていると対象外になるものもあります。配食サービスは高齢者の配食サービス 自治体の助成で、対象と申込み先を整理しています。
高齢者が持ち歩ける「緊急ボタン」も、市から借りられますか
市によっては借りられます。名古屋市の「あんしん電話」には、据置型のほかに携帯型があり、利用料は月2,145円です(前年の所得が169万5,000円以上の場合)。ただし携帯型は自宅の中だけで使え、通報先はコールセンターに限られ、毎日の充電も必要です。外出先でも押せるボタンが欲しいときは、民間のサービスも含めて比べることになります。まずは親が住む市の「緊急通報」の案内で、ボタンの形と使える範囲を確かめてください。
参考にした公的情報
- 名古屋市「あんしん電話(緊急通報システム)」(2026年8月19日更新)
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/koureisha/1016427/1016428.html - 船橋市「緊急通報装置の貸与」(2026年4月1日更新)
https://www.city.funabashi.lg.jp/senior/service/0002/p001782.html - 岐阜市「緊急通報システム」
https://www.city.gifu.lg.jp/kenko/koureisyafukushi/1004557/1004564/1004572.html - 横浜市「高齢者あんしん電話貸与事業」(2026年4月1日更新)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigohoken-igai-service/zaitaku-yoengo-shien/anshintel.html - 横浜市「高齢者見守り・安否確認機器補助事業」(2026年10月1日更新)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/kaigohoken-igai-service/zaitaku-yoengo-shien/mimamori.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。対象、利用料、申込み先は市区町村によって異なり、変わることがあります。お住まいの市区町村の最新の案内をご確認ください。医療や介護の判断は、医師やケアマネジャーなどの専門家にご相談ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
