ご遺族から「葬儀で弔辞をお願いできませんか」と頼まれた。故人への思いはあっても、何をどの順番で、どれくらいの長さで書けばいいのか、紙や包み方に決まりはあるのか。通夜までの短い時間で仕上げなければならず、焦る方は多いと思います。
この記事では、弔辞の構成と長さの目安、避けたい忌み言葉、続柄別の例文、奉書紙(ほうしょがみ)への書き方と包み方、当日の読み方をまとめます。例文は、名前や思い出を入れ替えて使えるように作ったひな形です。内容は2026年10月時点のものです。
先に結論:故人に語りかける3つの段で、ゆっくり読んで3分ほど
この記事の結論
- 構成:「お別れの呼びかけと悲しみ」「思い出と人柄」「別れの言葉と遺族への気遣い」の3つの段で、故人に語りかけるように書きます。
- 長さ:ゆっくり読んで3分ほど、400字詰め原稿用紙2〜3枚(800〜1,200字)が目安とされています。
- 紙と包み方:正式には巻紙か奉書紙に薄墨で書き、奉書紙で包んで表に「弔辞」と書きます。形式を重んじる葬儀でなければ、便箋や印刷した原稿を白い封筒に入れる形でも構わないとされます。
弔辞に決まった型はありません。立派な文章より、故人との具体的な思い出が一つ入っているほうが、聞いている人の心に残ります。作法は宗教・宗派・地域・会場で違うため、迷ったらご遺族か葬儀社に確かめます。
弔辞とは。頼まれたら最初に確かめること
弔辞は、葬儀・告別式で故人に向けて読むお別れの言葉です。ご遺族が、生前に親しかった人や、職場・学校などを代表する人にお願いするものです。弔電が「参列できない人が送る電報」であるのに対し、弔辞は会場で自分の声で読み上げます。弔電については弔電の送り方と文例にまとめています。
頼まれたら、書き始める前にご遺族か葬儀社に次のことを確かめておくと、あとで書き直す手間が減ります。
体調やどうしても外せない予定で引き受けられないときは、ご遺族がほかの方にお願いできるよう、なるべく早く伝えます。
弔辞の書き方:構成と長さの目安
弔辞は、次の3つの段で組み立てると書きやすくなります。故人の名前を呼びかけ、語りかけるような口調で書くのが一般的です。
長さは、All Aboutの解説(葬儀コンサルタント・吉川美津子氏)が「ゆっくり読んで3分ほど、400字詰め原稿用紙2〜3枚程度」、「いい葬儀」が「800字〜1,200字程度」を目安に挙げています。長ければよいわけではなく、式の時間は限られています。思い出は欲張らず、一つか二つに絞るとまとまります。
弔辞を書く手順
- 思い出を書き出す。出会ったころ、一緒にした仕事や旅行、言われてうれしかった言葉を、箇条書きで並べます。
- 一つか二つに絞る。故人の人柄がいちばん伝わる場面を選びます。ほかの弔辞と重ならないものを選ぶと自然です。
- 3つの段に当てはめて下書きする。下の例文を土台にして、自分の言葉に置き換えます。
- 声に出して読み、時間を測る。ゆっくり読んで3分前後に収まるか確かめます。言いにくい言葉もここで直します。
- 忌み言葉を確かめる。下の表と照らし合わせます。家族や同僚に一度読んでもらうと安心です。
- 清書して包む。奉書紙・巻紙か便箋に書き、包みます(後述)。
弔辞で避けたい忌み言葉と、宗教による違い
弔辞では、不幸が重なることや続くことを思わせる言葉、生死を直接表す言葉を避けるのが一般的です。ただしAll Aboutの解説は、忌み言葉にとらわれすぎないようにも述べています。気にしすぎて思いが伝わらなくなるより、言い換えできるものを直す程度で十分です。
宗教によっても使い方が変わります。「ご冥福をお祈りします」「成仏」「供養」は仏教の言葉で、キリスト教式や神式では使いません。「いい葬儀」は、「ご冥福をお祈りいたします」は浄土真宗でも避けるとしています。宗教が分からないときは、「安らかにお眠りください」「心よりお別れを申し上げます」のような言い方にすると、どの形式でも使えます。
続柄別の弔辞の例文(そのまま入れ替えて使えるひな形)
ここからの例文は、特定の方の弔辞ではなく、書き方を示すために作ったひな形です。〇〇の部分と思い出の場面を、ご自身の体験に入れ替えてください。宗教を問わず使える言い方にしています。
上司への弔辞(部下・社員を代表して)
先週まで会議でご一緒していた部長の訃報に接し、今も信じられない思いでおります。
私が入社して配属された日、最初に声をかけてくださったのが部長でした。大きな失敗をして落ち込んでいたとき、「結果より、次に何をするかだよ」と言っていただいたことを、今もそのまま覚えています。仕事では安易な妥協を許さない一方、帰り際には必ず「今日もありがとう」と声をかけてくださる方でした。
部長に教わった仕事への向き合い方を、私たち部員一同、日々の仕事の中で生かしてまいります。どうか安らかにお眠りください。
ご遺族の皆様に、心よりお悔やみ申し上げます。
令和〇年〇月〇日 株式会社〇〇 〇〇部 〇〇〇〇
同僚への弔辞
あなたがいなくなった職場は、本当に静かです。
研修で同じ班になってから、繁忙期の深夜に二人で資料を仕上げたことも、帰り道に寄った店で将来のことを語り合ったことも、つい昨日のことのようです。困っている人を見ると、自分の仕事を後回しにしてでも手を貸す、そんな人でしたね。
あなたが大切にしていた、仲間を思いやる気持ちを、私たちが引き継いでいきます。
これまで本当にありがとう。どうか安らかに。
令和〇年〇月〇日 〇〇〇〇
友人への弔辞
高校の部活で出会ってから三十年あまり。進学で住む町が分かれても、年に一度は必ず集まり、その席の中心にはいつも君の笑い声がありました。私が仕事で行き詰まったとき、何も言わずに遠くから車を飛ばして来てくれたことを、一生忘れません。
君がいたから、私たちは今もつながっています。この仲間を、ずっと大切にしていきます。
たくさんの思い出をありがとう。どうか安らかに眠ってください。
令和〇年〇月〇日 友人代表 〇〇〇〇
恩師への弔辞(教え子を代表して)
先生のご逝去の知らせは、卒業生の間にあっという間に広がり、多くの仲間が悲しみに暮れています。
先生は授業のはじめに、いつも「分からないと言える人が、いちばん伸びる」とおっしゃいました。進路に迷っていた私に、放課後、遅くまで付き合ってくださったことが、今の私の土台になっています。
先生にいただいた言葉を胸に、私たちそれぞれの場所で歩んでまいります。本当にありがとうございました。どうか安らかにお眠りください。
令和〇年〇月〇日 〇〇高等学校 卒業生代表 〇〇〇〇
祖父母への弔辞(孫から)
病院で「またね」と手を振ってくれたのが、最後になってしまいました。
小さいころ、夏休みに遊びに行くと、おばあちゃんはいつも台所で待っていてくれました。一緒に作ったおはぎの形が不揃いでも、「これがいちばんおいしい」と笑って食べてくれたことを覚えています。就職して初めてのお給料で贈ったストールを、冬になるといつも巻いてくれていましたね。
おばあちゃんが教えてくれた「ごはんはみんなで食べるとおいしい」という言葉を、今度は私が自分の家族に伝えていきます。
たくさんの優しさをありがとう。ゆっくり休んでね。
令和〇年〇月〇日 孫 〇〇〇〇
この例文の「またね」のように、故人が実際に話した言葉をそのまま引く場合は、忌み言葉にあたる言葉が入っていても、無理に言い換えなくて構いません。迷うときはご遺族に一度読んでもらうと安心です。
小さな孫が読む短い弔辞
いっしょにこうえんで、じてんしゃのれんしゅうをしてくれて、ありがとう。
のれるようになったとき、いちばんよろこんでくれたのがうれしかったです。
おじいちゃんのこと、ずっとわすれません。
だいすきだよ。さようなら。
〇〇〇〇
小さな子どもが読む場合は、経歴には触れず、声に出しやすい短い文にします。漢字が読めない場合は、ひらがなで書いておくと読みやすくなります。大人が代筆するときは、子どもの言葉をなるべくそのまま生かします。
弔辞の紙と書き方、奉書紙の包み方
正式な形は、巻紙か大判の奉書紙に、薄墨の毛筆で縦書きにし、別の奉書紙で包む方法です。ただしAll Aboutの解説は、社葬や団体葬のように形式を重んじる葬儀でなければ、便箋やパソコンで印刷した原稿でも構わないとしています。その場合は白い封筒に入れます。
奉書紙・巻紙に書くとき
「いい葬儀」は、右端から10cmほど余白を空けて書き始め、行間も広めに取るときれいに見えるとしています。本文のあとには、日付と名前を入れます。書き終えたら、最後の署名の側から文の先頭に向けて、屏風のように折りたたみます。毛筆に不慣れなら、筆ペンを使うと書きやすくなります。
奉書紙での包み方
- 上包み用の奉書紙を、たたんだ弔辞を三つ折りで包めるくらいの長さに切ります。
- 奉書紙の真ん中に弔辞を置きます。
- 右、左の順に折り、上と下を裏側へ折り込みます。
- 表の中央に「弔辞」と書きます。
上下の重ね方など細かい点は、解説によって違いがあります。奉書紙は文房具店や和紙を扱う店で手に入ります。薄墨の筆ペンも一緒に用意しておくと、清書がすぐにできます。
当日の弔辞の読み方と流れ
一般的な流れは次のとおりです。会場や葬儀社によって手順が違うため、当日は早めに着いて係の方に確かめます。
- 名前を呼ばれたら席を立ち、ご遺族と参列者に一礼します。
- 祭壇の前に進み、祭壇に一礼します。
- 上包みから弔辞を取り出し、ゆっくり読み上げます。上包みは台があればその上に置きます。
- 読み終えたら弔辞を包み直し、祭壇にお供えします。台に置く、係の人が受け取るなど会場で違います。
- 祭壇に一礼し、ご遺族にも一礼して席に戻ります。
キリスト教式では、祭壇ではなく参列者の方を向いて読むとされています。読むときは、ふだん話すより少しゆっくりを心がけると聞き取りやすくなります。涙で詰まっても、少し息を整えてから続ければ大丈夫です。
葬儀の前後にご遺族と連絡を取り合う場合は、葬儀の連絡の順番と例文や葬儀参列のメール例文も参考になります。
自分の親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。親が亡くなったあとの手続きで迷うことがあれば、無料相談で何から手をつけるかを整理することもできます。
今日できる一歩
- ご遺族か葬儀社に、宗教・持ち時間・ほかに弔辞を読む人を確かめる
- 故人との思い出を箇条書きで書き出し、一つか二つに絞る
- 下書きを声に出して読み、3分前後に収まるか測る
弔辞についてよくある質問
弔辞は何分くらい、何文字くらいがいいですか?
ゆっくり読んで3分ほど、400字詰め原稿用紙2〜3枚(800〜1,200字)が目安とされています。式の時間やほかに読む人の数によって変わるため、ご遺族か葬儀社に持ち時間を確かめると確実です。
便箋やパソコンで印刷した弔辞でも失礼になりませんか?
社葬など形式を重んじる葬儀でなければ、便箋や印刷した原稿でも構わないとする解説があります。その場合は白い封筒に入れて持参します。読み終えた弔辞は祭壇に供えるものなので、印刷でも誤字のないよう丁寧に仕上げておきます。
弔辞は薄墨で書かなければいけませんか?
奉書紙や巻紙に毛筆で書く正式な形では、薄墨を使うとする解説が一般的です。便箋に書く場合や印刷する場合は、黒い文字で読みやすく仕上げれば十分です。地域の慣習が気になるときは、葬儀社にたずねます。
弔辞を頼まれましたが、断ってもいいですか?
ご遺族があなたを選んでお願いしているため、できれば引き受けたいところです。体調や日程の都合でどうしても難しい場合は、理由を添えて早めに伝えれば、ご遺族がほかの方にお願いできます。人前で話すのが苦手なだけなら、短めの文にして紙を見ながら読めば大丈夫です。
故人の経歴は詳しく入れたほうがいいですか?
経歴を時系列で並べるより、故人との具体的な思い出や人柄が伝わる話のほうが温かみがあるとされます。職場を代表する弔辞では、主な功績を簡単に入れるとまとまります。
キリスト教式や神式の葬儀では、何に気をつけますか?
「ご冥福」「成仏」「供養」など仏教の言葉を使わないようにします。「安らかにお眠りください」などの言い方なら、宗教を問わず使えます。キリスト教式では、参列者の方を向いて読むとされています。
参考にした公的情報・解説
- All About「弔辞の書き方」(吉川美津子 社会福祉士・葬儀コンサルタント)
https://allabout.co.jp/gm/gc/67432/ - 鎌倉新書「いい葬儀」「弔辞とは?書き方の基本・立場別の例文・読み方のマナー」
https://www.e-sogi.com/guide/25118/ - 鎌倉新書「いい葬儀」「奉書紙とは。販売場所と使い方」
https://www.e-sogi.com/guide/14842/ - 日本郵便「Web レタックス 弔電・弔事のマナー(お悔やみ)Q&A」
https://www.post.japanpost.jp/service/webletax/manner_choji/
※本記事は2026年10月時点の公開情報と一般的な慣習をもとにした整理です。弔辞の作法は、宗教・宗派・地域・会場によって異なります。例文は書き方を示すために作成したひな形で、実在の方の弔辞ではありません。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
