耳鼻咽喉科で「補聴器を考えてもいいですね」と言われ、販売店で見積書をもらうと、思っていたより高い。そんなとき、買う前に確かめておきたいのが助成の有無です。
補聴器の購入費を助ける仕組みは、大きく2つです。障害者手帳がある人向けの国の制度と、手帳のない高齢者向けの市区町村の助成です。どちらに当たるかで、窓口も金額も変わります。
先に結論:補聴器の助成は「手帳があるか」で窓口が変わります
この記事の結論
- どこへ:聴覚障害の身体障害者手帳がある人は、市区町村の障害福祉の窓口で「補装具費」を申請。手帳の対象外の人は、住んでいる市区町村に独自の助成があるか確認します。
- いくら:補装具費は原則1割負担で、市町村民税非課税世帯は0円。市区町村の助成は、この記事の4市区の例だけでも上限3万円から14万4,900円まで幅があります。
- いつ:どちらも「買う前に申請」が基本です。医療費控除は、補聴器相談医の書類があれば対象になり、5年さかのぼって申告できます。
補聴器の助成は2種類:国の「補装具費」と市区町村の独自助成
1つめは、障害者総合支援法の「補装具費支給制度」です。補装具とは、体の働きを補う用具のこと。補聴器もその1つです。
対象は、聴覚障害の身体障害者手帳がある人です。窓口は市区町村ですが、国の制度なので全国で同じ枠組みです。
2つめは、市区町村が独自に行う「高齢者補聴器購入費助成」などです。手帳の基準には届かないものの、聞こえにくさがある人向けです。国の制度ではないので、ある市とない市があり、条件も金額もばらばらです。
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対象になる人・ならない人の早見表
国の補装具費を使えるかどうかは、手帳の対象になるかで決まります。聴覚障害の手帳でいちばん軽い等級は6級で、基準は聴力の数字で決められています。
デシベルは聞こえにくさを表す数字で、大きいほど聞こえにくい状態です。聴力の検査と、補聴器が必要かどうかの判断は、耳鼻咽喉科で受けてください。手帳の診断書を書けるのは、身体障害者福祉法で指定を受けた医師です。
助成額の例:国の上限価格と4つの市区の比較
国の補装具費:補聴器の購入上限価格と自己負担
補装具費には、補聴器の種類ごとに国の上限価格があります。耐用年数、つまり買い替えの目安は5年です。
本人が払うのは原則1割です。ただし、世帯の所得に応じて月の上限があります。
上限価格を超える機種を選びたいときの扱いは、申請の前に市区町村の窓口で確かめておくと安心です。
市区町村の独自助成:港区・目黒区・大田区・瀬戸市の例
手帳のない高齢者向けの助成は、市区町村ごとに中身が違います。公式ページで条件を確認できた4市区を並べました。
同じ「高齢者の補聴器助成」でも、上限3万円の市もあれば、14万円台の区もあります。所得の条件も、非課税世帯だけの市と、課税世帯も対象の区に分かれます。制度そのものがない市町村もあります。
申請の流れと必要書類
手帳がある人:補装具費の申請(7つの手順)
- 市区町村の障害福祉の窓口に相談し、医師意見書の用紙を受け取る
- 身体障害者福祉法の指定医を受診し、医師意見書を書いてもらう
- 補聴器の販売店で試して機種を選び、見積書を作ってもらう
- 手帳の写し・意見書・見積書をそろえて、市区町村に申請する
- 身体障害者更生相談所などが、支給が適当かを判定する
- 市区町村から支給決定通知書と支給券が届く
- 支給券を販売店に持っていき、自己負担分を払って受け取る
流れは山梨県の案内を例にしました。細かな順番や書類は、都道府県や市区町村で少し違います。
- □ 身体障害者手帳(写し)
- □ 指定医が書いた医師意見書
- □ 販売店の見積書
- □ 申請書(窓口で受け取る)
- □ マイナンバーが分かるもの(所得の確認に使うことがあります)
手帳がない人:市区町村の独自助成(6つの手順)
- 市区町村の高齢者福祉の窓口や地域包括支援センターで、対象になるか確かめる(目黒区は「事前確認依頼」が最初)
- 市区町村が決めた耳鼻咽喉科の医師を受診し、意見書や確認書を書いてもらう
- 条件を満たす販売店で見積書をもらう(港区・大田区は認定補聴器技能者がいる店)
- 申請書・意見書・見積書を出して申請する
- 助成の決定通知が届いてから、補聴器を買う
- 領収書などを添えて請求し、助成金を受け取る
- □ 助成の申請書
- □ 医師の意見書・確認書(目黒区はオージオグラム付き。聴力検査の結果のグラフです)
- □ 販売店の見積書(内訳が分かるもの)
- □ 買った後に出すもの:請求書、領収書の原本、納品書(目黒区の例)
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医療費控除との関係:補聴器相談医の書類があれば対象に
補聴器の購入費は、条件を満たせば医療費控除の対象です。国税庁は2018年に、次の3つを満たす場合は対象になるという考え方を示しました。
- 医師の診療などのために、直接必要な補聴器であること
- 一般的に支出される水準を、著しく超えない金額であること
- 学会が認定した「補聴器相談医」が、「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」で必要性を証明していること
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の案内では、手順は次の3つです。
- 補聴器相談医がいる耳鼻咽喉科を受診し、診療情報提供書を書いてもらう
- 認定補聴器技能者がいる認定補聴器専門店で買い、提供書の写しと領収書を受け取る
- 買った年の分の確定申告で、医療費控除として申告する
学会は、認定補聴器専門店や認定補聴器技能者以外から買うと控除は受けられない、としています。提供書の写しと領収書は、税務署から求められたときに出せるよう保管します。
控除額は「支払った医療費の合計−保険金などで補てんされる金額−10万円」で計算します。総所得金額等が200万円未満の人は、10万円の代わりにその5%を引きます。上限は200万円です。
市区町村の助成を受けた分は、自分で払っていないお金です。差し引いて考えるのが基本ですが、個別の扱いは税務署や税理士にご確認ください。
年金暮らしの親は確定申告が要らないことも多いのですが、医療費控除で税金が戻る場合があります。計算の流れは医療費控除のやり方、申告の要否は年金受給者の確定申告で整理しています。
期限と、過ぎたらどうなるか・損しやすい点
補聴器の助成には「何日以内」という申請期限よりも、「買う前に」という順番の決まりが効いてきます。
- 買う前の申請:補装具費も、この記事の4市区の助成も、購入前の申請が条件です。先に買うと、原則として対象外になります。
- 意見書の有効期間:目黒区と瀬戸市は意見書の作成から6か月以内、港区は確認書の証明から6か月以内の申請です。過ぎると書類の取り直しになります。
- 医療費控除:税金を戻す申告は、買った年の翌年1月1日から5年間できます。5年を過ぎると申告できません。
- 買い替え:補装具の耐用年数は5年。港区と大田区の助成も、前回から5年たつまで再申請できません。
損をしやすいのは、次のような場面です。
- 手帳の基準に当たるかを確かめず、自費や独自助成で買ってしまう
- 補聴器相談医でない医療機関で済ませ、控除に使う提供書がもらえない
- 助成で戻った分まで、医療費控除の金額に入れてしまう
今日できる一歩
- 親が住む市区町村の名前と「補聴器 助成」で検索し、制度があるか確かめる
- 近くに補聴器相談医がいる耳鼻咽喉科があるか、学会のサイトや医療機関に問い合わせて確かめる
- 見積書をもらっても、助成の決定までは買わないと家族で決めておく
よくある質問
親が離れた市に住んでいます。どこに申請しますか?
親の住所がある市区町村です。子の住む市区町村の制度は使えません。まず親の市区町村の公式ページで、制度があるかを確かめてください。
住民税が課税されていると使えませんか?
国の補装具費は、課税世帯でも使えます(自己負担の上限は月37,200円)。ただし本人か配偶者の市町村民税所得割が46万円以上だと対象外です。市区町村の助成は、目黒区や瀬戸市のように非課税世帯だけの所と、港区や大田区のように課税世帯も対象の所があります。
先に買ってしまった補聴器は対象になりますか?
補装具費も、この記事で挙げた市区町村の助成も、購入前の申請が条件です。買った後の申請は原則として対象外です。医療費控除は、買う前に補聴器相談医の提供書をもらう流れが前提です。
通信販売や量販店で買っても助成や控除は受けられますか?
店の条件しだいです。港区と大田区の助成は、認定補聴器技能者がいる店での購入が条件です。医療費控除も、学会は認定補聴器専門店や認定補聴器技能者からの購入を条件にしています。買う前に確かめてください。
手帳の基準に届くか分かりません。どうすればよいですか?
耳鼻咽喉科で聴力の検査を受けてください。手帳の申請は、補装具費とは別の手続きです。窓口は市区町村の障害福祉の担当です。
5年たったら買い替えにも助成は使えますか?
補装具の耐用年数は5年で、買い替えの目安になります。港区と大田区の助成も5年に1回です。故障や紛失、メンテナンスの費用は、大田区では対象外とされています。ほかの市区町村は、それぞれの案内で確かめてください。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「補装具費支給制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yogu/hosouguhisikyuuseido.html - 厚生労働省「補装具種目一覧(令和8年4月1日現在)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001695519.pdf - 国税庁「個人課税課情報 第3号(平成30年4月16日)補聴器の購入費用に係る医療費控除の取扱い」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/180416/index.htm - 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm - 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「補聴器購入者が医療費控除を受けるために」
https://www.jibika.or.jp/modules/hearingloss/index.php?content_id=7 - 港区「高齢者補聴器購入費助成事業」
https://www.city.minato.tokyo.jp/zaitakushien/koureisya/hoctyouki/hotyoukijyosei.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。市区町村の助成は年度ごとに条件や金額が変わることがあります。聞こえの状態の判断は耳鼻咽喉科で受け、手続きは申請先の最新の案内でご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
