福祉用具のレンタルと購入の違い【2026年】介護保険の対象品目・上限10万円

福祉用具のレンタルと購入の違い

親の退院が決まると、病院から「家に介護ベッドと手すりがあると安心です」と言われることがあります。そこで迷うのが、ホームセンターなどで買うか、借りるかです。

介護保険で使える福祉用具は、品目ごとに「借りるもの」「買うもの」「どちらか選べるもの」が決まっています。この記事では、その区分と、要介護度で借りられないものがある点、購入費の上限と申請のしかたを、2026年10月時点の公的な案内をもとに表で整理します。

目次

先に結論:借りるか買うかは品目で決まっている

この記事の結論

  1. 借りる:車いすや介護ベッドなど13品目はレンタル(貸与)。ただし要支援1・2と要介護1では、車いす・介護ベッドなどは原則対象外です。
  2. 買う:腰掛便座や入浴用のいすなど、肌に触れるものは購入。費用は年度(4月〜翌3月)で10万円までが対象で、1割負担なら最大9万円が戻ります。
  3. 条件:購入は都道府県などの指定を受けた事業者から買ったものだけが対象。申請は購入から2年以内に、親が住む市区町村へ出します。

レンタルと購入の違いと、対象になる人

介護保険の福祉用具には、2つの仕組みがあります。1つは「福祉用具貸与」、つまりレンタルです。もう1つは「特定福祉用具販売」、つまり購入費の支給です。

線引きの考え方は次のとおりです。体の状態に合わせて交換したいものは借りる。便座や入浴用品のように、他の人が使ったものを使いにくいものは買う。この線引きで品目が分かれています。

項目借りる(福祉用具貸与)買う(特定福祉用具販売)
主な品目車いす、介護ベッド、手すり、歩行器など13品目腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽など9品目
支払い方毎月のレンタル料の1〜3割を払ういったん全額払い、あとで7〜9割が戻る(償還払い)。市区町村によっては1〜3割だけ払う方法もある
限度額要介護度ごとの1か月の支給限度額の中に入る年度(4月〜翌3月)で10万円まで。1か月の限度額とは別枠
要介護度の制限一部の品目は要支援1・2、要介護1で原則対象外限度額は要介護度にかかわらず同じ
相談する相手ケアマネジャー(ケアプランに入れる)と貸与事業者ケアマネジャーと指定の販売事業者。申請は市区町村
※出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「福祉用具貸与」「特定福祉用具販売」、名古屋市「介護保険福祉用具購入費の支給について(R8.4版)」、板橋区「区分支給限度基準額」(2026年10月時点で確認)。

対象になる人・ならない人の早見表

こんな人使えるかひとこと
要支援1・2、要介護1〜5の認定を受け、自宅で暮らしている使えるただし借りられる品目は要介護度で変わる
まだ要介護認定を受けていない使えない先に認定の申請が必要。名古屋市の案内では、認定前に買ったものは支給されない
病院に入院中・介護保険施設に入所中原則使えない退院に向けて買い、自宅で使える状態になってから申請すれば対象(名古屋市の例)
指定を受けていない店や通販で買った使えない同じ商品でも、指定事業者以外からの購入は支給の対象外
同じ用途の用具をすでに支給で買っている原則使えない壊れた、要介護度が大きく変わったなど特別な事情があれば再支給されることがある
※出典:名古屋市「介護保険福祉用具購入費の支給について(R8.4版)」、港区「福祉用具購入費の支給について」(2026年10月時点で確認)。扱いは市区町村で細部が異なります。

要介護認定がまだの方は、要介護認定の申請方法から確かめてください。結果が出るまで原則30日ほどかかります。

借りられる13品目と、要介護度による違い

レンタルできるのは次の13品目です。ここで迷いやすいのが、要介護度が軽いと借りられない品目があることです。介護ベッドや車いすは、要支援1・2と要介護1では原則として保険の対象になりません。

品目要支援1・2要介護1要介護2・3要介護4・5
車いす・車いす付属品原則×原則×○○
特殊寝台(介護ベッド)・付属品原則×原則×○○
床ずれ防止用具原則×原則×○○
体位変換器原則×原則×○○
認知症老人徘徊感知機器原則×原則×○○
移動用リフト(つり具を除く)原則×原則×○○
自動排泄処理装置(尿のみを吸引するものを除く)原則×原則×原則×○
手すり(工事をしないもの)○○○○
スロープ(工事をしないもの)○○○○
歩行器○○○○
歩行補助つえ○○○○
※出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「福祉用具貸与」、大田区「軽度者に対する福祉用具貸与の例外給付」(2026年10月時点で確認)。車いすと車いす付属品、特殊寝台と付属品はそれぞれ別品目として数えるため、合計13品目です。

歩行補助つえの対象は、松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホームクラッチ、多点杖です。よく見かける一本のT字杖は、この一覧に入っていません。

工事をして取り付ける手すりやスロープは、福祉用具ではなく「住宅改修」という別の制度になります。工事の前に申請する流れと上限20万円の使い方は、介護保険の住宅改修の申請方法にまとめています。

軽い要介護度でも借りられる場合(例外給付)

要支援1・2や要介護1でも、状態によっては借りられます。たとえば介護ベッドなら、日常的に起き上がりや寝返りができない場合です。車いすなら、日常的に歩くことが難しい場合です。

まず認定調査の結果で判断します。調査結果で当てはまらなくても、医師の意見で「日や時間によって状態が大きく変わる」「急に悪くなっている」などと判断されれば、市区町村の確認を経て対象になることがあります。判断はケアマネジャーが中心になって進めるので、家族は困っている場面を具体的に伝えてください。

買える9品目と、2024年4月から選べる4品目

購入費の対象は次の9品目です。このうち固定用スロープ、歩行器、単点杖、多点杖の4品目は、2024年4月から「借りる」か「買う」かを選べるようになりました。これを選択制といいます。

品目区分補足
腰掛便座購入和式を洋式にする便座、ポータブルトイレなど
自動排泄処理装置の交換可能部品購入本体はレンタル品目
排泄予測支援機器購入購入時に医学的な所見の確認書類が必要(名古屋市の例)
入浴補助用具購入入浴用のいすや浴槽の手すりなど
簡易浴槽購入空気式・折りたたみ式など
移動用リフトのつり具の部品購入リフト本体はレンタル品目
固定用スロープ選択制工事をしない、持ち運ばない段差用のもの
歩行器(歩行車を除く)選択制車輪やキャスターのないもの
歩行補助つえ(松葉づえを除く)選択制単点杖(クラッチ類)と多点杖
※出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「特定福祉用具販売」、大田区「福祉用具の貸与と販売の選択制」(2026年10月時点で確認)。

借りるか買うか、選ぶときの考え方

選択制の品目は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が、医師やリハビリ職の意見、体の状態をふまえて提案することになっています。長く同じものを使うなら、買う方が負担を抑えやすくなります。体の状態が変わりそうなら、交換しやすいレンタルが向いています。

レンタルを選んだ場合は、使い始めから6か月以内に少なくとも1回、続けて借りる必要があるかを確認する決まりです。買った場合も、販売の計画に書いた目標が達成できているかを事業者が確認します。

購入費の上限は年10万円:自己負担の目安

購入費の支給は、年度ごとに10万円までの購入額が対象です。年度は4月1日から翌年3月31日まで。10万円を超えた分は全額自己負担になります。戻ってくる額は、介護保険負担割合証に書かれた割合で変わります。

負担割合10万円分を買ったとき戻る額自己負担12万円分を買ったときの自己負担
1割9万円1万円3万円(1万円+超えた2万円)
2割8万円2万円4万円(2万円+超えた2万円)
3割7万円3万円5万円(3万円+超えた2万円)
※出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「特定福祉用具販売」、名古屋市「介護保険福祉用具購入費の支給について(R8.4版)」(2026年10月時点で確認)。12万円の列は、上限10万円の仕組みから計算した目安です。

レンタル料は、要介護度ごとの1か月の支給限度額の中に入ります。訪問介護やデイサービスと合わせて限度額を超えると、超えた分は全額自己負担です。一方、購入費は1か月の限度額とは別枠です。

レンタル料金の目安と、料金表の見方

レンタル料は、国が一律に決めた金額ではありません。同じ品目でも、商品と事業者ごとに月額が違います。そのかわり厚生労働省が、商品ごとの「全国平均貸与価格」と「貸与価格の上限」を公表しています。上限を超える価格で貸した分は、介護保険の対象になりません(2018年10月から。広島市の案内による)。

事業者の福祉用具専門相談員は、貸す商品の価格とあわせて、その商品の全国平均貸与価格を説明することになっています。機能や価格帯の違う商品をいくつか示すことも決まりです。料金表や見積りを受け取ったら、次の3点を確かめてください。

  • □ 月額のレンタル料(10割の額)と、本人が払う1〜3割の額が分けて書かれているか
  • □ その商品の全国平均貸与価格と比べて、高すぎないか
  • □ 機能や価格の違う商品を、ほかにも見せてもらえたか

たとえば月額1万円の商品なら、1割負担の人が払うのは月1,000円が目安です。ほかのサービスと合わせて1か月の限度額を超えると、超えた分は全額自己負担になる点も見ておきます。

また、毎月の自己負担が上限を超えたときに戻る高額介護サービス費では、福祉用具購入費と住宅改修費の自己負担は計算に含まれません。購入の負担は、この表の範囲で考えておくと安心です。

介護にかかるお金の全体像は、介護保険で使える補助金・助成金まとめでも整理しています。

親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。

申請の手順と必要書類

レンタルは、ケアマネジャーがケアプランに入れ、貸与事業者と契約すれば始まります。家族が市区町村に申請書を出す必要は基本的にありません。手続きが必要なのは購入の方です。

  1. ケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター)に、何に困っているかを伝える
  2. 指定を受けた販売事業者の福祉用具専門相談員と、品目と商品を決める
  3. 事業者から購入し、領収証を受け取る(宛名は介護を受ける本人)
  4. 親が住む市区町村の介護保険の窓口へ、購入費の支給申請書と書類を出す
  5. 審査のあと、本人の口座に7〜9割が振り込まれる

市区町村によっては「受領委任払い」も選べます。登録した事業者で買えば、店では1〜3割だけ払い、残りは市区町村から事業者へ支払われます。名古屋市や東京都港区などで実施しています。まとまったお金を立て替えるのが難しいときは、窓口で使えるか聞いてみてください。

必要書類チェックリスト(償還払いの場合の例)

  • □ 福祉用具購入費の支給申請書(市区町村の様式)
  • □ 領収証の原本(本人宛て)
  • □ 購入した用具のパンフレットやカタログ(写しでよい市区町村もある)
  • □ 販売事業者が出す証明書や福祉用具サービス計画書
  • □ 介護保険被保険者証と介護保険負担割合証
  • □ 振込先の口座が分かるもの(本人名義の通帳など)

必要な書類は市区町村で少しずつ違います。名古屋市ではオンライン申請もできます。書類をそろえる前に、親が住む市区町村のホームページで最新の様式を確認してください。

期限と、家族が損しやすい点

購入費の申請は、購入した日から2年以内です(港区の案内)。2年を過ぎると時効になり、支給を受けられません。退院や入院が重なると、申請を忘れたまま領収証だけ残ることがあります。買った月のうちに申請するつもりで動くと安心です。

損しやすい5つの点

  • 先に買ってしまう:ホームセンターや通販で買ったものは対象外です。同じ商品でも、指定事業者から買う必要があります。
  • 認定前・入院中に買う:認定前に買ったものは支給されません。入院中の購入も原則は対象外ですが、退院に向けて買い、自宅に戻ってから申請すれば対象とする市もあります(名古屋市の例)。買う前にケアマネジャーや窓口に相談してください。
  • 介護ベッドを自費で借り続ける:要介護1以下で自費レンタルしている場合、状態によっては例外給付の対象になることがあります。一度ケアマネジャーに聞いてみてください。
  • 領収証の宛名が家族になっている:宛名は介護を受ける本人が基本です。子の名前で受け取ると、手続きが手間取ることがあります。
  • 選択制の品目を深く考えずに決める:短期間しか使わないのに買う、長く使うのに借り続ける、どちらも負担が増えやすくなります。使う期間の見込みを相談員と話しておきましょう。

今日できる一歩

  1. 親の介護保険被保険者証と負担割合証を出し、要介護度と負担割合(1〜3割)を確かめる
  2. 家の中で困っている場面(起き上がり・トイレ・入浴・段差)を3つメモする
  3. そのメモを持って、ケアマネジャーか地域包括支援センターに「借りるか買うか」を相談する

よくある質問

Q. 要介護1ですが、介護ベッドは借りられませんか?

原則は対象外です。ただし、日常的に起き上がりや寝返りができないなど、国が定める状態に当てはまれば借りられます。医師の意見をもとに、市区町村の確認を経て対象になることもあります。ケアマネジャーに相談してください。

Q. 10万円の枠は毎年リセットされますか?

はい。年度ごと(4月1日〜翌年3月31日)に10万円までが対象です。ただし、同じ用途の用具は原則1回の支給なので、毎年同じものを買い替えられるわけではありません。

Q. 杖や歩行器は、借りるのと買うのとどちらが得ですか?

使う期間で変わります。長く使う見込みなら購入、状態が変わりそうなら交換しやすいレンタルが向いています。どちらにするかは、福祉用具専門相談員やケアマネジャーが医師などの意見をふまえて提案します。

Q. 子どもが代わりに購入費の申請をしてもいいですか?

家族が書類をそろえて窓口に出す形は、よくある進め方です。ただし、領収証の宛名や振込先は本人が基本です。代理で出すときに委任状などが要るかは、市区町村の案内で確認してください。

Q. ホームセンターで買った手すりは対象になりますか?

なりません。購入費の対象は、都道府県などの指定を受けた事業者から買った、決められた品目だけです。また工事をして付ける手すりは、福祉用具ではなく住宅改修の制度で扱います。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。対象品目の細かな範囲、必要書類、受領委任払いの有無などは市区町村によって異なります。用具の選び方や体の状態の判断は、ケアマネジャーや医師などにご相談ください。手続きは申請先の最新の案内でご確認ください。

本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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