介護が始まると、想像していなかった出費が次々と発生します。手すりの設置、介護用ベッドのレンタル、おむつ代——「こんなにかかるとは思わなかった」という声をよく聞きます。実は、その一部は申請すれば戻ってくる、あるいは補助を受けられる制度があります。このページは、知らないと使えない「申請主義」の補助金・助成金を見逃さないための整理です。
「知らなかった」で損をしないために
介護保険の給付やこの後紹介する制度の多くは、自分から申請しないと受け取れません。窓口で自動的に教えてもらえるとは限らず、忙しさの中で見逃してしまう方も多くいます。まずは「使える可能性のある制度」を知っておくことが、家計を守る第一歩です。
申請すれば使える、代表的な制度
- 高額介護サービス費:1ヶ月の介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。申請しないと払い戻されないため、該当しそうな方は市区町村の窓口に確認しましょう。この払い戻しを受ける権利には2年の時効があります。すでに介護が続いているご家庭は、過去に上限を超えた月がなかったか、さかのぼって窓口で確認してみてください。
- 住宅改修費の支給:手すりの取り付けや段差解消などの小規模なリフォームで、上限20万円のうち原則9割(所得によっては8割・7割)が支給されます。工事前の事前申請が必要な点に注意してください。
- 福祉用具購入費の支給:入浴補助用具やポータブルトイレなど、レンタルに向かない福祉用具の購入費について、年間10万円を上限に原則9割が支給されます。
- 負担限度額認定(食費・居住費の軽減):施設入所時の食費・居住費について、所得や資産が一定以下の場合に自己負担を軽減できる制度です。
- 自治体独自の助成(紙おむつ支給・介護手当など):市区町村によっては、紙おむつの支給や、在宅で介護する家族への慰労金・介護手当を独自に用意している場合があります。内容は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に確認するのが確実です。
- 高額医療・高額介護合算療養費制度:見落としが最も多いのがこれです。1年間(8月1日〜翌年7月31日)の医療費と介護費の自己負担を合算し、世帯の限度額を超えた分が払い戻されます。医療と介護の両方がかかっているご家庭は、それぞれの制度では上限に届かなくても、合算すると超えていることがあります。申請先は加入している医療保険の窓口(国民健康保険・後期高齢者医療は市区町村)です。
- 障害者控除対象者認定:障害者手帳がなくても、要介護認定を受けている65歳以上の方が「障害者に準ずる」と市区町村長に認定されれば、所得税・住民税の障害者控除(区分により27万円または40万円の所得控除)が使えます。市区町村で認定書の交付を受け、確定申告または年末調整で使います。過去の年分についても、認定を受けたうえで更正の請求ができる場合があります。
- おむつ代の医療費控除:傷病でおおむね6か月以上寝たきりの状態にあり、医師が発行する「おむつ使用証明書」がある場合、おむつ代が医療費控除の対象になります。2年目以降は、市区町村が主治医意見書の内容を確認して発行する書類で代えられる取扱いもあります。対象になるかどうかは税務署にご確認ください。
いずれの制度も、要件・上限額・申請方法が細かく定められています。まずはケアマネジャーか市区町村の窓口に「使える制度はありますか」と聞いてみることから始めてください。
今日の一歩:ケアマネジャーか市区町村の窓口に、まとめて聞く
行き先は、担当のケアマネジャー、またはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口(高齢福祉課など)です。
持ち物は、介護保険の保険証(または認定結果通知書)と、直近でかかった費用がわかる領収書やレシートです。
窓口で聞く3点は、①今の所得区分・世帯の状況で高額介護サービス費や負担限度額認定の対象になっているか②改修や福祉用具の購入を予定しているなら事前申請が必要か③お住まいの自治体独自の助成(紙おむつ代など)があるか、です。
介護保険の窓口では分からない制度(高額医療・高額介護合算療養費制度や障害者控除、おむつ代の医療費控除など)は、加入している医療保険の窓口や税務署に改めて確認します。
高額介護サービス費の払い戻しを受ける権利には2年の時効があります。心当たりがあれば、早めに窓口で確認してください。
立て替えた費用は、記録を残しておく
補助金・助成金でカバーしきれない部分は、家族の誰かが立て替えることになります。この立替は、単なる支出ではなく、将来の相続における大切な証拠にもなります。
- 寄与分(民法904条の2)の証拠に:介護費用を立て替えてきた記録は、相続の際に「特別の寄与」を主張する根拠になります。レシートや振込明細は捨てずに残しておきましょう。
- 生命保険で将来の費用に備える:介護費用がかさむことを見越して、親自身の保険や、介護を担う家族を受取人にした保険で備えておく方法もあります。
親が元気なうちにできる、3つの備え
- 介護にかかりそうな費用の全体像を、家族で共有する:使える制度と、それでも足りない部分を把握しておきましょう。
- 立替の記録をつける習慣をつくる:家計簿アプリやノートで、誰がいくら立て替えたかを残しておきます。
- 親の預貯金・保険の内容を把握しておく:介護費用をどこから捻出できるか、あらかじめ整理しておくと安心です。
よくある質問
Q. どの窓口に相談すればいいですか?
A. まずは担当のケアマネジャーか、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口・地域包括支援センターに相談するのが確実です。
Q. 住宅改修費の支給は、工事後でも申請できますか?
A. 原則として工事前の事前申請が必要です。先に工事をしてしまうと支給を受けられない場合があるため、必ず着工前にケアマネジャーや市区町村へ相談してください。
Q. 補助金だけで介護費用はまかなえますか?
A. 多くの場合、補助金だけでは足りず、家族の持ち出しが発生します。使える制度を最大限活用したうえで、不足分をどう備えるか(家族での分担・保険の活用など)をあわせて考えておくことをおすすめします。
まとめ
介護には申請すれば使える補助金・助成金が複数あります。まずはケアマネジャーや自治体窓口に確認し、見逃しを防ぎましょう。立替費用の記録を残すこと、将来の相続や保険での備えを整理しておくことも、あわせて考えておくと安心です。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、制度の詳細は改定される場合があります。最新の要件は市区町村の窓口でご確認ください。
