退院の日が決まり、病院の相談員から「介護保険の申請はお済みですか」と聞かれた。実家の母の足取りが心配になり、ヘルパーを頼めないかと考え始めた。介護保険のサービスを使うには、まず要介護認定の申請が必要です。
この記事では、申請の窓口、家族が代わりにできること、認定調査と主治医意見書、結果が出るまでの日数、区分ごとに使える上限を、2026年10月時点の公的な案内で整理します。
先に結論:申請先は親が住む市区町村。家族でも出せる
この記事の結論
- 申請先は、親が住んでいる市区町村の介護保険の窓口です。家族のほか、地域包括支援センターやケアマネジャーに手続きを代わってもらうこともできます。
- 結果は原則として申請から30日以内に届きます。認定されると、効力は申請した日にさかのぼります。
- 65歳で介護保険被保険者証が届いても、認定は自動では行われません。サービスを使いたいと思った時点で申請します。
申請できる人・できない人の早見表
介護保険に入っている人のうち、年齢によって条件が変わります。40〜64歳の人は、国が定めた16の病気(特定疾病)が原因のときに限られます。
特定疾病は、がん(回復の見込みがないと医師が判断したもの)、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靱帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病の合併症(神経障害・腎症・網膜症)、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝や股関節の著しい変形性関節症の16です(厚生労働省)。
どこに、誰が申請する?窓口と代わりに出せる人
申請先は、介護を受ける本人が住んでいる市区町村です。子どもが別の市に住んでいても、親の住所地の窓口に出します。
- 市区町村の介護保険の窓口:名古屋市は区役所の福祉課か支所の区民福祉課、静岡市は各区の高齢介護課です。
- 地域包括支援センター:高齢者の暮らしの相談窓口です。何から始めればよいか分からないときは、ここに電話すると申請の進め方から相談できます。名古屋市では「いきいき支援センター」という名前です(名古屋市のいきいき支援センター)。
- 手続きを代わってもらえるところ:地域包括支援センターや居宅介護支援事業者(ケアマネジャーのいる事業所)に、申請を代行してもらえます(静岡市)。
申請は、本人や家族のほか、ケアマネジャーも代行できます(札幌市)。家族が窓口に出すときに委任状や本人確認書類が要るかどうかは、自治体で扱いが違います。出かける前に電話で確かめておくと、二度手間になりません。
離れて暮らしていて窓口に行けないときは、郵送や電子申請ができるか確かめます。名古屋市は電子申請に対応しています(40〜64歳の人の新規・区分変更は除く)。手続きをする人のマイナンバーカードと、署名用電子証明書の暗証番号が必要です。
申請の手順と、必要なもののチェックリスト
- 地域包括支援センターか市区町村の窓口に相談する。困っていることや、使いたいサービスを伝えます。
- 主治医に、申請することを伝えておく。意見書を書いてもらえるか先に確かめておくと、手続きが滞りにくくなります(名古屋市)。
- 申請書を書いて出す。主治医の氏名と医療機関名を書く欄があります。
- 認定調査を受ける。調査員が自宅や施設を訪ね、心身の状態を聞き取ります。日時は事前に連絡が来ます。
- 主治医意見書が作られる。市区町村が医師に直接依頼するので、家族が取りに行く必要はありません。
- 判定が行われる。コンピューターによる一次判定のあと、介護認定審査会が二次判定をします。
- 結果の通知が届く。要介護1以上で自宅で暮らすなら居宅介護支援事業者のケアマネジャーに、要支援1・2なら地域包括支援センターにケアプランを頼みます(厚生労働省)。
申請のときに用意するもの
- ☐ 要介護・要支援認定の申請書(窓口のほか、市区町村のホームページから印刷できることが多い)
- ☐ 介護保険被保険者証(65歳以上の人。名古屋市は原本の提出を求めています。失くしたときは先に再交付を受けます)
- ☐ 40〜64歳の人は、医療保険の資格がわかるもの(資格確認書、マイナポータルの資格情報の画面など。市がマイナンバーで確認できれば不要な場合があります:静岡市)
- ☐ 主治医の氏名・医療機関名がわかるメモ。総合病院にかかっているときは診察券(静岡市)
- ☐ 窓口に行く人の本人確認書類。代理のときに委任状が要るかは自治体に確認
申請書の書き方で迷ったら、空欄のままにせず、窓口や地域包括支援センターに書き方を尋ねてから出すと安心です。
認定調査と主治医意見書で見られること
認定調査:普段の様子を伝える場
認定調査は、市区町村の調査員か、委託を受けた事業者の調査員が行います(厚生労働省)。自宅や施設を訪ね、体と心の状態を本人や家族から聞き取ります。札幌市の案内では、記憶や理解の程度など74項目を確かめるとしています(札幌市)。
家族が同席できると、本人が言いにくいことや、普段の困りごとを補って伝えられます。夜中に何度も起きる、薬を飲み忘れる、買い物の支払いでもたつく、といった場面を事前にメモにしておくと、伝え漏れが減ります。調査の日だけ本人が張り切って、普段よりしっかり見えることもあるからです。
主治医意見書:市区町村が医師に頼む
主治医意見書は、市区町村が主治医に作成を依頼します。作成料を申請した人が払うことはありません。主治医がいないときは、市区町村が指定する医師の診察を受けます(厚生労働省)。
しばらく受診していない場合や、手術の直後で状態が落ち着かない場合は、意見書を書いてもらえないことがあり、結果が遅れます。医療保険でリハビリを受けている人は、認定を受けると今のリハビリを続けられなくなる場合があるため、先に医療機関に相談するよう名古屋市は案内しています。
判定:一次判定と二次判定
調査の結果などをコンピューターに入れ、全国一律の方法で一次判定をします。そのあと、保健・医療・福祉の専門家でつくる介護認定審査会が、一次判定と主治医意見書をもとに二次判定をします。介護や支援は必要ない「非該当(自立)」となることもあります。
結果が出るまで約30日。区分と1か月に使える上限
申請から認定の通知までは、原則30日以内です(厚生労働省)。調査や意見書が遅れると、1か月以上かかることがあります。区分は、要支援1・2と要介護1〜5の7段階、それに非該当です。
認定には有効期間があります。初めての申請は原則6か月、更新は原則12か月で、本人の状態に応じて審査会が決めます(船橋市)。
自宅で使うサービスには、区分ごとに1か月の上限(区分支給限度基準額)があります。上限の中なら費用の1割(所得によって2割か3割)の負担で使えます。
上限を超えて使った分は、全額が自己負担です(厚生労働省)。特別養護老人ホームなどの施設に入っている人のサービスは、この上限の対象外です(目黒区)。負担が1割か2割かの決まり方は介護保険の2割負担の判定基準に、介護全体でかかるお金の目安は親の介護費用の平均と介護休業給付金や老人ホーム・介護施設の費用にまとめています。
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申請しないと始まらない。損しやすい点と期限
認定は自動では行われません
65歳になると介護保険被保険者証が届きますが、それだけでサービスは使えません。要介護認定は、申請してはじめて調査と判定が始まります。認定の効力は申請した日から始まるので、サービスを使う見込みが立ったら、早めに申請しておきます。
- 結果が出る前にサービスを使うとき:ケアマネジャー(要支援の見込みなら地域包括支援センター)に暫定のケアプランを作ってもらえば、申請日から使えます。ただし非該当になると、使った分は全額自己負担です(東京都中央区)。
- 更新を忘れない:更新は有効期間が終わる60日前から受け付け、それより前には出せません。市区町村から案内が届くので、届いたら早めに出します。サービスを使う予定がなければ、更新しなくてもかまいません(名古屋市)。
- 状態が変わったとき:有効期間の途中でも区分変更の申請ができます。ただし結果に不満があることを理由にはできず、軽くなることもあります。先にケアマネジャーに相談するよう名古屋市は案内しています。
- 結果に納得できないとき:都道府県の介護保険審査会に審査請求ができます。期限は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内が原則です(東京都)。
今日できる一歩
- 親の介護保険被保険者証がどこにあるか、一緒に確かめる
- かかりつけ医の名前と医療機関名を、メモにしておく
- 親が住む地域の地域包括支援センターの電話番号を調べておく
よくある質問
離れて暮らす子どもが、親の申請をできますか
できます。家族が申請するほか、地域包括支援センターに代行を頼む方法もあります。窓口に行けないときは、親の住所地の市区町村に郵送や電子申請ができるかを確かめます。名古屋市は、遠方などで窓口に来られない場合は区の福祉課に問い合わせるよう案内しています。
申請にお金はかかりますか
主治医意見書の作成料を、申請した人が払うことはありません(厚生労働省)。札幌市の案内では、認定後のケアプラン作成も、要支援・要介護とも利用者負担はないとしています。お金がかかるのは、実際にサービスを使ったときです。
入院中でも申請できますか
申請はできます。ただ、入院中は介護保険のサービスを使えません。手術の直後など状態が落ち着かないと意見書が書けないこともあるため、名古屋市は退院の見通しが立ってからの申請をすすめています。病院の相談員に、いつ申請するとよいか聞いてみてください。
結果に納得できないときは、どうすればよいですか
都道府県の介護保険審査会に審査請求ができます。期限は原則3か月です。状態が変わったことによる見直しなら、区分変更の申請という方法もあります。どちらが合うかは、ケアマネジャーや市区町村の窓口に相談すると整理しやすくなります。
認定を受けなくても使えるサービスはありますか
65歳以上の人は、「基本チェックリスト」という質問票で「事業対象者」にあたると、市区町村の総合事業のサービスを使えます。その場で結果が出るのが利点です。ただし、ショートステイや福祉用具、住宅改修などの介護予防サービスは使えません(名古屋市)。
参考にした公的情報
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム(サービス利用までの流れ)https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム(サービスにかかる利用料)https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
- 厚生労働省(介護保険の特定疾病)https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
- 名古屋市「要介護認定等の申請」(2026年9月30日更新)https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/koureisha/1016500/1011160/1011165.html
- 名古屋市(要介護・要支援認定の申請をする前にご覧いただきたい事項)https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/cmsfiles/contents/0000011/11133/sinseimaetyuui0704.pdf
- 東京都福祉局(介護保険に関する処分への審査請求)https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/hoken/kaigo_lib/yokyu.html
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報にもとづく一般的な整理です。申請に必要な書類や窓口、受付の方法は市区町村で異なります。実際に申請する前に、お住まいの市区町村か地域包括支援センターの案内をご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
