60代からNISAは遅い?【2026年】始める意味がある人・ない人と入れてよい額

60代からNISAは遅い?始める意味がある人・ない人と入れてよい額

「退職金が入ったけれど、60代からNISAを始めても遅いのでは」「親が窓口でNISAを勧められたらしい」。60代のご本人や、60代の親を持つ子世代から、こうした声をよく聞きます。

この記事では、2026年10月時点の制度をもとに、60代から始める意味がある人・まだ早い人を分けます。そのうえで、使う時期から逆算して「いくらまでなら入れてよいか」を決める手順と、認知症や相続のときにNISA口座がどうなるかを整理します。口座開設を勧める記事ではありません。

目次

先に結論:60代のNISAは「当面使わないお金」なら遅くない

この記事の結論

  1. 年齢の上限はありません:60歳の平均余命は男性約24年、女性約29年です。60代から始めても、お金を置いておける期間は短くありません。
  2. 入れるのは「当面使わないお金」だけ:元本の保証はありません。生活費の不足分と、医療・介護・住まいの備えを預金で先に取り、残りから金額を決めます。
  3. 判断力が落ちたときと、亡くなったときの扱いもセットで:証券口座は原則として本人しか売れません。NISAの非課税は亡くなった日までです。始めるときに家族と共有しておくと安心です。

60代から始める意味がある人・まだ早い人

NISAは、投資で出た利益に税金がかからない口座の制度です。中に入れる投資信託や株は自分で選びます。60代では、年齢よりも「家計の状態」と「使う時期」で向き・不向きが分かれます。

始める意味がある人

  • 年金で足りない生活費と、医療・介護・住まいの備えを、預金で別に確保できている
  • 10年以上先まで使う予定のないお金がある
  • 値下がりしても、慌てて売らずに待てる額にとどめられる
  • すでに証券会社の特定口座などで投資していて、これからの買い付け分の置き場所を考えたい
  • 口座の場所や方針を、家族と話しておける

まだ早い・向かない人

  • 手元の預金が、生活費の不足分の数年分に届いていない
  • 数年以内に、住み替えやリフォームなど大きな出費が決まっている
  • 金利の高い借入れが残っている
  • 退職金の使い道(住まい、借入れの返済など)がまだ決まっていない
  • 商品の仕組みや手数料が分からないまま、勧められて決めようとしている

「意味がある」は、得をするという意味ではありません。投資は値上がりも値下がりもします。ここでの分け方は一般的な目安で、個別の投資判断ではありません。最終的な判断はご自身でなさってください。

NISAの決まりを60代の目で読む(2026年10月時点)

2024年から始まった今のNISAの決まりを、60代にとっての意味と並べて整理します。数字は金融庁のNISA特設ウェブサイトで確かめたものです。

項目決まり60代にとっての意味
始められる年齢日本に住む18歳以上。上限の定めなし60代・70代でも新しく口座を開ける
1年に入れられる額つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円(合計360万円)退職金などを一度に全部は入れられない
生涯の上限1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)。買ったときの金額で数える上限まで使うには、最も早くて5年かかる
非課税の期間無期限何年持っても期限切れはない。ただし本人が亡くなると終わる
売ったとき売った商品の買ったときの金額(簿価)分だけ、翌年以降に枠が戻る取り崩しても、翌年以降に年間の枠の範囲でまた使える
口座の数1人1口座(新しく買えるのは1年ごとに1つの金融機関)夫婦はそれぞれ自分の名義で口座を持つ
損が出たとき元本の保証はない。NISAの損は税金の計算上ないものとされるほかの口座の利益と差し引けず、翌年以降への繰越しもできない
※出典:金融庁「NISAを知る」、日本証券業協会「NISAのよくある質問」(2026年10月時点で確認)。

60代でまず気をつけたいのは、「1年に入れられる額」と「損が出たとき」です。1年に入れられるのは合計360万円までなので、まとまったお金も何年かに分けることになります。また、値下がりしたときに売ると損が確定し、税金の面で埋め合わせる仕組みもありません。

いくらまで入れてよいか:使う時期から逆算する

厚生労働省の簡易生命表(2025年)では、60歳の平均余命は男性23.86年、女性29.07年です。65歳でも男性19.68年、女性24.52年あります。60代から始めても、お金を20年以上置いておける人は少なくありません。

ただし、そのお金はこれからの暮らしの財源でもあります。そこで「いつ使うお金か」で置き場所を分け、NISAに入れる額は最後に決めます。

使う時期使い道の例置き場所の考え方
5年以内年金で足りない生活費、車の買い替え、入院や家の修繕の備え普通預金・定期預金など、すぐ引き出せて元本が減らない場所
5~10年後70代の住まいの手入れ、介護が始まったときの費用値動きの小さい置き場所が中心。NISAに入れるなら一部にとどめる
10年以上先80代以降の生活費、使い切らずに家族へ残す見込みのお金NISAを考える余地がある。値下がりしても暮らしが変わらない額に限る
※年数の区切りは一般的な考え方の目安です。家計や健康状態によって変わり、個別の投資判断ではありません。

この表に沿って、金額は次の順番で決めます。

  1. 年金で足りない月額を出す。1か月の生活費から、年金などの収入を引きます。
  2. 5年分の不足額と、医療・介護・修繕の予備を預金に残す。ここは値動きのない場所に置きます。
  3. 5~10年内に決まっている出費を足す。車、住まいの手入れ、家族の行事などです。
  4. 残りが「10年以上使わないお金」。そのうえで「半分に減っても暮らしが変わらないか」を確かめ、その額をNISAの上限の目安にします。
  5. 入れ方を決める。1年に入れられるのは360万円までです。何年かに分けるのか、毎月少しずつにするのかを決めます。

たとえば、預金が2,000万円、年金で月4万円足りない家庭で考えます(考え方を示すための仮の数字です)。5年分の不足額240万円、医療・介護の予備500万円、屋根の修繕などの予定300万円で、1,040万円を預金に残します。残りの960万円が「10年以上使わないお金」の候補です。全部を入れる必要はありません。

6年目以降の不足分も、この残りのお金から出していくことになります。NISAに入れた分も、必要になったら少しずつ売って使えます。値下がりした時期に売らずにすむよう、預金に残す年数を長めに取るのも一つの方法です。預金や国債も含めた置き場所の全体は、老後のお金の置き場所で整理しています。

口座を開く前に確かめたい3つ

60代から始める場合、手数料だけでなく「この先、家族が手続きしやすいか」も見ておくと、あとで困りにくくなります。

  • 窓口のある口座か、ネット専用か。ネット専用では家族を代理人にできない場合があります。
  • 家族が代わりに手続きできる制度があるか。代理人の登録制度や、次の章で説明する家族サポート証券口座の取り扱いです。
  • 商品にかかる手数料。投資信託は、持っている間ずっとかかる信託報酬(運用の手数料)を確かめます。

70代になってから始める場合や、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入年齢については、70代のNISA・iDeCoで整理しています。

認知症への備え:原則本人しか売れない口座と、家族が動ける仕組み

60代で始めて20年以上持つなら、その間に判断する力が落ちることも考えに入れておきます。証券口座の取引は、原則として名義人本人だけができます。本人の判断する力が落ちた後に家族が売るには、成年後見制度を使うのが基本です。

後見人が付いても、後見人の役目は本人の財産を守ることです。新しく積み立てたり買い足したりすることは、一般に期待しにくいと考えておきましょう。

本人が元気なうちなら、家族が代わりに手続きできる仕組みを用意できます。名称や範囲は会社ごとに違うため、ここでは一般化して書きます。

  • 証券会社の代理人制度:家族を代理人として登録しておく仕組みです。判断する力が落ちたときに備えて、あらかじめ指定しておく型もあります。売却と出金だけで、買付はできない例もあります。
  • 家族サポート証券口座:日本証券業協会が示す各社共通の枠組みです。本人と家族が、公証役場で公正証書による任意代理契約を結びます。取り扱いを始めた証券会社は、2026年10月時点でまだ一部です。
  • 任意後見・家族信託:証券口座だけでなく、預金や自宅も含めて備える方法です。どちらも契約が必要です。

なお、NISA口座で代理人がどこまで取引できるか(特に新しい買付)は、2026年10月時点で協会や各社の公開資料に明記を確認できませんでした。口座を開くときに、証券会社へ具体的に聞いておくと安心です。仕組みの違いや必要書類は、親が認知症になったら証券口座・NISAは?で詳しく比べています。

亡くなったら:NISAの非課税は亡くなった日まで

NISA口座の名義人が亡くなると、非課税で持てるのは亡くなった日までです。中の株や投資信託は、相続人の特定口座か一般口座に移ります。どちらも税金がかかる普通の口座で、相続人のNISA口座には移せません。

  • 値上がり分の所得税:相続人は、原則として亡くなった日の終値に相当する金額で買ったものとみなされます。亡くなった日までの値上がり分に、所得税はかかりません。
  • 相続税:NISAの中身も相続財産です。預金や自宅と合わせて相続税の計算に入ります。
  • 家族がする届出:相続人は、亡くなったことを知った後、遅れずに金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」を出します。亡くなった日から届出までに支払われた配当などは、さかのぼって課税されます。

60代で始めると持つ期間が長くなり、その間に相続が起きることもあります。「家族に残すつもりのお金」をNISAに入れる場合は、こうした扱いと口座の場所を家族と共有しておくと、手続きのときに迷いません。

手続きの流れと必要書類はNISA口座の相続手続き、NISA以外の特定口座なども含めた手続きは証券口座の相続手続きで確認できます。

親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。

今日できる一歩

  1. 紙を1枚用意し、「5年以内に使う」「5~10年後に使う」「10年以上使わない」の3つの欄に、今あるお金を書き分けてみましょう。NISAを考えるのは、3つ目の欄のお金です。

よくある質問

Q. 60歳を過ぎてからでもNISA口座は開けますか?

A. 開けます。日本に住む18歳以上であれば、年齢の上限はありません。ただ、開けることと向いていることは別です。上の「使う時期」の表で、10年以上使わないお金があるかを先に確かめてください。

Q. 退職金をまとめてNISAに入れられますか?

A. 一度には入れられません。1年に入れられるのは、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて360万円までです。生涯の上限1,800万円まで使うには、最も早くて5年かかります。

Q. 夫婦で1つのNISA口座を使えますか?

A. 使えません。NISAは1人1口座で、名義は本人です。夫婦ならそれぞれが自分の口座と枠を持ちます。配偶者のお金を自分の口座で運用すると、相続や贈与のときに誰のお金かが問題になることがあります。

Q. 年金生活に入っても、積み立ては続けられますか?

A. 年齢や収入で止まる決まりはありません。続けるかどうかは家計次第です。積み立て額が生活費を圧迫するようなら、減らしたり止めたりして、預金に残す分を優先します。

Q. 2026年に、60代のNISAの決まりは変わりましたか?

A. 2026年10月時点で、18歳以上の年間の枠、生涯の上限、非課税の期間は変わっていません。金融庁の特設サイトでは、2027年1月から0~17歳も口座を開けるようになると案内されています。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な整理です。特定の金融商品や金融機関を勧めるものではありません。投資には元本割れ・為替変動などのリスクがあります。制度の内容は改正されることがあるため、手続きの前に金融庁や口座のある金融機関の最新の案内をご確認ください。

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この記事を書いた人

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