「介護に備える保険を検討しているけれど、種類が多すぎてどれを選べばいいか分からない」——そんな声をよく聞きます。このページは、民間の介護保険の主なタイプと、比較する際に見るべきポイントを整理したものです。特定の商品をおすすめするのではなく、ご自身の状況に合った選び方の「視点」を持っていただくことを目的としています。
「親の介護に備える」といっても、やり方は大きく3つあります。①親自身が介護保険に入る、②子の側が貯蓄や自分の保険で備える、③親の生命保険の受取人を、介護を担う家族にしておく。この記事は、①と②を決めるための比べ方を中心に書いています。③は少し下で触れます。
この記事の結論
- 比べる前に、不足額を出す。介護費用の平均は月9.0万円、一時的な費用47.2万円、期間55.0か月(生命保険文化センター、2024年度)。親の年金や貯蓄で足りるなら、「今は入らない」が答えになることもあります。
- 比べるのは保険料の安さより、お金が出る条件。公的介護保険の要介護認定に連動するのか、保険会社の独自基準なのかで、受け取れる時期が変わります。保険料以外で必ず確認したいのは、①お金が出る条件(要介護いくつから出るか)②受け取り方(一時金か年金か、何年受け取れるか)③更新で保険料が上がるか④介護状態になった後の保険料の払込免除⑤親が自分で請求できないときに家族が代わりに請求できるか(指定代理請求)の5つです。
- 新しく入る前に、手元の保険の「特約」欄を見る。すでに入っている生命保険や医療保険に、介護の特約が付いていることがあります。
介護にいくらかかるか|平均額の目安
保険を比べる前に、「そもそもいくら足りなくなりそうか」を見ておきます。生命保険文化センターの2024年度の調査では、介護にかかった費用の平均は次のとおりです。調査では、公的介護保険サービスの自己負担分を含めて聞いています。
出典:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」2024年度。右の列は、平均同士の掛け算による目安で、ご家庭ごとの実際の額とは大きく異なります。
この総額から、親御さんの年金・預貯金で賄える分を引いた差額が、保険で備えるかどうかを考える対象です。差額がほとんどなければ、保険に入らず貯蓄のまま備える選択も十分にあります。なお、民間の介護保険・介護特約に入っている人の割合は10.4%です(同センター「生活保障に関する調査」2025年度)。入っていない人のほうが多数派です。
民間の介護保険のタイプ別比較表
民間の介護保険は、お金の受け取り方と、保険料の払い方で大きく分かれます。特定の商品名は載せず、タイプごとの違いだけを表にしました。
一般的な目安です。実際の条件は保険会社・商品ごとに異なります。生活障害保障保険の説明は、生命保険文化センター「民間の介護保険について知りたい」を参考にしました。
どのタイプでも、どんな状態になったときにお金が出るかが商品ごとに違います。次の「給付条件のチェック」を、必ず合わせて見てください。
親の年金・預貯金を引いた「不足分」の出し方
商品を比べる前に決めておきたいのが、そもそも保険で埋める必要があるのはいくらか、です。公的介護保険で自己負担は原則1〜3割に抑えられますが、次の費用は対象外か、一部しかカバーされません。
- 施設入所時の居住費・食費(一部は補助の対象ですが、全額ではありません)
- 介護保険の支給限度額を超えたサービス利用分(超えた分は全額自己負担です)
- 家族が仕事を減らす・休むことによる収入の減少
- 介護のために発生する交通費・雑費など
この「隙間」を貯金でまかなうか、保険で備えるかは、家庭の状況によって答えが変わります。計算は難しくありません。(1)親の年金の月額(年金振込通知書か、ねんきんネットで確認できます)、(2)いま毎月出ていく介護費用と生活費の合計。この2つの差額が毎月の持ち出しです。(3)親の預貯金を、その持ち出し額で割ると、貯蓄で何か月もつかが出ます。
この数字が出て初めて、保険で埋めるべき部分があるのかどうかが判断できます。介護がいつまで続くかは誰にも分かりませんが、「何年分なら手持ちで足りるか」は今日出せます。
介護費用にいくら備えるべきか、順番から確認しませんか
手持ちで足りない分をどう用意するか、要介護・認知症になったときにお金を動かせる状態かどうかも含めて、順を追って確認できます。
介護への備え方を相談する(無料・オンライン可)→もう1つ、保険には費用への備えとは別の使い方があります。親自身の生命保険の受取人を、実際に介護を担っている家族に指定しておく方法です。死亡保険金は受取人固有の財産なので、遺産分割協議を経ずにその方へ渡せます。介護の労力に報いる、現実的な方法のひとつです。ただし保険金の額が遺産全体と比べて極端に大きい場合には、例外的に遺産分割の中で考慮された裁判例もあります。金額の目安に迷うときは、変更の前に一度確認しておいてください。
相談現場から|相談員メモ(相談員について)
介護への備えと相続への備えは、別々の商品で考えがちです。要介護になったら施設費用に充てられる給付がつき、死亡保障もある一時払終身保険のように、一つで両方に備える選択肢もあります。
給付条件のチェックが最重要
介護保険選びで最も見落とされやすいのが、給付条件です。
- 公的介護保険の要介護認定と連動するタイプ:「要介護2以上」など、公的介護保険の認定結果を基準に給付されるタイプです。認定基準が分かりやすい一方、公的な要介護度の判定を待つ必要があります。
- 保険会社独自の基準で判定するタイプ:公的な要介護認定とは別に、保険会社が定める基準(一定期間の寝たきり状態など)で給付を判定するタイプです。公的認定より基準が厳しい場合、あるいは緩やかな場合があり、契約前に必ず確認が必要です。
「要介護認定を受けたのに保険金が下りなかった」というトラブルの多くは、この給付条件の見落としが原因です。加入前に「どんな状態になったら、いくら受け取れるのか」を具体的な言葉で確認してください。すでに加入している介護保険を実際に請求する段階の流れ(要介護認定との連動、誰が請求できるか、税金の扱い)は民間の介護保険金はどう受け取る?にまとめています。
比較する際に見るべき視点|保険料以外で必ず確認するポイント
- 保険料と保障のバランス:保険料が高いほど手厚いとは限りません。ご家庭の家計で無理なく続けられる金額かどうかを基準にしましょう。
- 保険料払込免除の有無:所定の要介護状態になった後、保険料の支払いが免除される特約があるかどうかも、長期的な負担に影響します。
- 更新型か終身型か:更新型は更新のたびに保険料が上がる場合があります。長く備えたい場合は終身型も選択肢に入れて比較しましょう。
- 他の保障との重複がないか:すでに加入している生命保険や医療保険に介護特約が付いていないか、確認してから新規加入を検討しましょう。確認は保険証券の「特約」欄を見るのが早く、証券が見当たらない場合でも、保険会社のコールセンターに契約者名と生年月日を伝えれば、介護に関する特約の有無を電話1本で教えてもらえます。すでに付いていれば、新しく入る必要がないこともあります。
親の保険だからこそ見る|本人が請求できないとき、家族が代わりに請求できるか
保険料や給付の条件を比べても見落とされやすいのが、「お金が出る状態になったとき、誰が請求するのか」です。介護保険金は、原則として被保険者である親本人が請求します。ところが介護が必要になるころには、親が自分で書類を書けない、意思を伝えられないということが珍しくありません。
このときのための仕組みが指定代理請求です。あらかじめ指定しておいた家族が、本人に代わって請求できます。生命保険文化センターの案内では、対象となる給付の例に介護保険金・介護年金が挙がっており、指定代理請求特約に特約保険料はかからないとされています。代理人になれる範囲は、ある会社の例で「戸籍上の配偶者・直系血族・同居または生計を一にする3親等内の親族」で、会社によって異なります。
- 比べている商品に、指定代理請求の仕組みがあるか
- 代理人にしたい子が、その会社の範囲に入っているか(別居の子の扱いなど)
- 親がすでに入っている保険にも、代理人が指定されているか
代理人の指定は、親本人に判断する力があるうちにしかできません。保険料の安さを比べる前に、この3点を確かめておくと、「保険はあるのに請求できない」という事態を避けられます。出典:生命保険文化センター「指定代理請求制度って、どんな制度なの?」(2026年10月確認)。すでにある契約に代理人を付ける手順は指定代理請求人の変更・追加のしかたにまとめています。
確認ポイントの早見表|どの書類のどこを見るか
| 確認すること | 見る場所の目安 | 親の場合に特に気をつける点 |
|---|---|---|
| お金が出る条件(要介護いくつから・公的認定に連動か) | パンフレットの「お支払いする場合」、契約概要、約款 | 独自基準なら、その状態が何日続く必要があるかまで読む |
| 受け取り方と期間(一時金・年金、何年か) | パンフレット、設計書(提案書) | 施設に入ると費用は毎月続くため、一時金だけで足りるか |
| 保険期間と更新(終身か、更新で上がるか) | 設計書、契約概要 | 高齢での更新は保険料が大きく上がることがある |
| 保険料の払込免除 | 契約概要、約款 | 介護状態になった後も払い続ける契約か |
| 指定代理請求 | 申込書、ご契約のしおり | 代理人にしたい子が範囲に入るか |
| すでにある保険の介護の特約 | 手元の保険証券の「特約」欄 | 付いていれば、新しく入らなくてよい場合がある |
今日の一歩|比較するときに、そのまま口に出す5つの質問
パンフレットを読み比べても、条件の差はまず分かりません。窓口でも電話でも、次の言い方でそのまま聞いてください。
- 「親が要介護2になったら、いくら出ますか。要介護2で出ないなら、どこから出ますか」
- 「給付の判定は公的な要介護認定に連動しますか。御社独自の基準ですか」
- 「独自の基準なら、その条件が書いてある箇所を見せてください」
- 「介護状態になったあと、保険料の払込は止まりますか」
- 「この保険料は将来上がりますか。更新のたびに上がる契約ですか」
手元にあると話が早いもの
すでに加入している保険の証券または契約内容のお知らせ/親御さんの要介護認定の結果通知(あれば)/毎月いくらまでなら家計から出せるかのメモ。
説明が進まないと感じたら
答えがパンフレットの読み上げで終わるときは、「約款またはご契約のしおりの、給付条件が書いてあるページを見せてください」と言ってください。ここを見せられるかどうかで、比較できる相手かが分かります。
期限
この検討に期限はありません。その日のうちに決める必要はないので、5つの答えを持ち帰って、家族で読み比べてから決めてください。
なぜ一社だけで決めるべきではないのか
介護保険は、保険会社ごとに給付条件・保険料・特約の内容が大きく異なります。1社だけの説明を聞いて決めてしまうと、他社であればもっと自分の状況に合った商品があったのに、気づかないまま契約してしまうことがあります。複数の保険会社を横並びで比較できる乗合代理店を利用すれば、ご自身の状況に合った選択肢を客観的に比較できます。
よくある質問
Q. 介護保険を比較する際、保険料以外で必ず確認しておくべきポイントはどこですか?
A. ①お金が出る条件(公的な要介護認定に連動するか、要介護いくつから出るか)②受け取り方(一時金か年金か、何年受け取れるか)③保険期間と更新で保険料が上がるか④介護状態になった後の保険料の払込免除⑤親が請求できないときに家族が代わりに請求できるか(指定代理請求)の5つです。あわせて、親がすでに入っている保険の「特約」欄に介護の保障がないかも見てください。付いていれば新しく入らなくてよい場合があります。
Q. 親が高齢でも、介護保険に入れますか?
A. 加入できる年齢の上限と、健康状態の告知で決まります。条件は商品ごとに違い、年齢が上がるほど保険料は高くなり、選べる商品も限られます。先に、親御さんがすでに入っている生命保険・医療保険の「特約」欄に、介護の保障がないか確認してください。
Q. 子が契約者になって、親を被保険者にすることはできますか?
A. 取扱いは商品ごとに違います。被保険者になる親御さん本人の同意と、親御さん自身による健康状態の告知が必要です。保険料を誰が払うかで税の扱いが変わることがあるため、加入前に保険会社と税理士に確認してください。
Q. 持病があっても加入できますか?
A. 商品によっては、健康状態の告知が緩やかなタイプ(引受基準緩和型)もあります。持病の内容によって加入できる商品が変わるため、複数社を比較しながら確認することをおすすめします。
Q. 公的介護保険と民間の介護保険、何が違いますか?
- 公的介護保険:40歳以上が加入し、介護サービス(訪問介護・施設利用等)そのものを原則1〜3割の自己負担で利用できる仕組みです。
- 民間の介護保険:任意で加入し、所定の要介護状態になった際に現金で給付を受けられる仕組みです。公的介護保険を補完する位置づけです。
Q. 比較にはどれくらい時間がかかりますか?
A. 初回は30分程度です。ご家庭の状況をヒアリングしたうえで、複数社の商品の比較は、全社の商品を扱える提携の生命保険募集人(乗合代理店に所属)が担当します。その場での契約を求めることはありませんので、まずは情報を整理する目的でご利用いただけます。
まとめ
介護保険は一時金型・年金型など複数のタイプがあり、給付条件の違いが最も重要なチェックポイントです。保険会社ごとに条件が大きく異なるため、一社だけで決めず、複数社を比較することをおすすめします。
介護で悩んだら|負担の偏り・気持ち・お金・相続までの総合ガイドもあわせてご覧ください。
親を連れて行かなくても、ご家族だけで相談できます
介護とお金の話は、親本人より先にご家族が動くことがほとんどです。いま何を確認しておくべきか、親への切り出し方も含めて30分で整理します。オンライン・お電話でも可能です。
お電話でも:052-766-5650(相談中は折り返しになります)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品を推奨するものではありません。保険の内容・保険料は商品・年齢・健康状態により異なります。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
