住所等変更登記の義務化|自分でやれば1物件1,000円。頼むべきなのはどんな人か

相続登記を済ませたのは、去年のことでした。法務局から届いた登記識別情報通知をあらためて見返していて、ふと手が止まります。名義は自分になっているのに、住所の欄は結婚前、実家にいた頃の住所のまま——。あるいは、何年も前に引っ越したきり、登記簿の住所を変えていないことに、今になって気づいた方もいるかもしれません。「このままで大丈夫なのだろうか」という疑問に、正確な期限と金額でお答えします。

📋 この記事の結論(30秒まとめ)

2026年4月1日から、不動産の名義人は住所・氏名(法人は本店・名称)の変更登記が義務化されます
・変更した日から2年以内に申請しないと、5万円以下の過料の対象になることがあります
・施行前(2026年3月31日まで)にすでに変更がある方も、2028年3月31日までに申請が必要です
・登録免許税は不動産1個につき1,000円。書類が揃っていれば、自分で申請してこれだけで完了します
・無料の「検索用情報の申出」を使えば、法務局が住基ネットで確認し、職権で変更登記をしてくれる仕組みもあります

「住所を変え忘れているだけ」というのは、少し正確さに欠ける言い方かもしれません。本当に気になっているのは、①いつまでに、②いくらの過料のリスクがあって、③自分で直せるのか、それとも司法書士に頼むべきなのか、という3つの判断ではないでしょうか。しかも、よく似た制度に相続登記の義務化(過料10万円以下)があり、「もう相続登記はしたから大丈夫」と思い込んで、住所変更だけを見落としてしまうケースも少なくありません。だから、この記事では、施行日・期限・過料の正確な内容と、自分で申請する場合の手順、そして司法書士に頼むべき人の見極め方までわかるようにしました。

目次

住所等変更登記の義務化とは?施行日・対象・期限を正確に確認

不動産登記法の改正により、2026年(令和8年)4月1日から、不動産の名義人(所有権の登記名義人)には、住所や氏名(法人の場合は本店所在地や名称)に変更があった場合、その変更登記をする義務が課されます。対象になるのは、転勤や結婚などによる引っ越しで住所が変わった場合、結婚・離婚などで氏名が変わった場合です。法人であれば、本店移転や社名変更が該当します。

申請の期限は、住所・氏名の変更日から2年以内です。正当な理由なくこの期限を過ぎると、5万円以下の過料の対象になることがあります(不動産登記法第164条第2項)。過料は自動的に科されるわけではなく、①登記官が変更を把握して催告書を送る、②催告の期限内に登記や申出がされない場合に登記官が裁判所へ通知する、③裁判所が要件を判断して過料の裁判を行う、という段階を踏みます。DV被害・経済的困窮・重病など「正当な理由」が認められる場合は、この通知自体が行われません。

住所等変更登記 期限カレンダー
施行日
2026年4月1日
住所等変更登記の義務化がスタート
申請期限(原則)
変更から2年以内
住所・氏名の変更日が起算点
経過措置(施行前の変更分)
2028年3月31日まで
2026年3月31日以前に変更した人の期限

施行前、つまり2026年3月31日以前にすでに住所や氏名が変わっていて、まだ変更登記をしていない方も対象です。この場合は2028年3月31日までに変更登記(または後述する検索用情報の申出)をする必要があります。「施行日から2年」ではなく、施行日にかかわらずこの日付が期限になる点に注意してください。

なお、登記簿上の住所が現在のご自身のものか、そもそも誰の名義になっているかを確認する方法は、実家の名義、誰のものか確認する方法|登記簿の調べ方と古い名義の対処で詳しく解説しています。

相続登記の過料(10万円)と何が違う?混同しやすいポイント

「相続登記はもう義務化されて、うちも済ませたから大丈夫」という声をよく聞きます。しかし、住所等変更登記の義務化は、2024年4月1日から始まった相続登記の義務化とは別の制度です。相続登記を済ませていても、その後の住所・氏名の変更登記を怠っていれば、こちらの義務は別に発生します。2つの制度は、施行日・期限の起算点・過料の金額がすべて異なるため、混同しないよう整理しておきましょう。

相続登記の義務化
施行日:2024年4月1日
期限:相続で取得を知った日から3年以内
過料:10万円以下
住所等変更登記の義務化(本記事)
施行日:2026年4月1日
期限:住所・氏名の変更日から2年以内
過料:5万円以下
※どちらも「正当な理由」があれば過料の対象にはなりません。2つは別の制度であり、片方を済ませても、もう片方の義務は残ります。

相続で不動産を取得した際の名義変更(相続登記)そのものについては、義務化の対象・期限・過料が住所等変更登記とは別建てで定められています。相続登記をまだ済ませていない不動産をお持ちの方は、まず登記簿上の名義を確認する方法から着手することをおすすめします。

「検索用情報の申出」(スマート変更登記)を使えば無料にできる人

住所等変更登記の義務化に合わせて、法務局には「検索用情報の申出」という制度が用意されています。氏名・振り仮名・住所・生年月日・メールアドレスなどをあらかじめ法務局に登録しておくと、法務局が概ね2年に1回、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)に照会し、住所や氏名の変更を確認できた場合に、本人の了解を得たうえで登記官が職権で変更登記をしてくれる仕組みです。自分で申請書を作成する必要がなく、費用もかかりません。

利用できるのは、国内に住所がある個人と、会社法人等番号を持つ法人です。海外に居住している方は、法務局側で住所の変更を確認する手段がないため対象外になります。申出の方法は2通りあります。1つは、登記申請と同時に検索用情報を申請情報に含める方法。もう1つは、すでに登記が済んでいる方向けの単独申出で、Webブラウザで完結する「かんたん登記申請」の利用、または申出書を管轄法務局へ提出する方法です。申出の受け付け自体は2025年4月21日から始まっており、実際に法務局が住基ネットを照会して職権登記を行うのは、義務化と同じ2026年4月1日以降です。

ただし、この申出をしても、変更のたびに即座に登記されるわけではありません。法務局が住基ネットに照会するタイミングまでは、登記簿上の住所が古いままになる期間が生じます。不動産の売却などで急いで登記事項証明書の住所を最新化したい場合は、次章で紹介する自分での申請か、司法書士への依頼を検討してください。

自分で申請する場合の手順

住所等変更登記は、書類さえ揃えば、司法書士に依頼せず自分で申請することもできます。法務局のWebサイトには、一戸建て編・マンション編の記載例と、申請手続きを解説する動画が公開されています。おおまかな流れは次のとおりです。

1

必要書類を集める

現在の住所を証明する住民票の写しに加えて、登記簿上の住所からのつながりを証明する住民票の除票・戸籍の附票など、変更の事実を示す書類を揃えます

2

登記申請書を作成する

法務局サイトの記載例(一戸建て編・マンション編)を使い、登記簿上の住所・氏名と現在の住所・氏名を正確に記載します

3

管轄法務局を確認する

申請先は、自分の住所地ではなく、不動産の所在地を管轄する法務局です

4

申請する

「登記・供託オンライン申請システム」によるオンライン申請、または法務局の窓口・郵送で提出します

5

登録免許税を納付する

不動産1個につき1,000円です(オンライン申請は電子納付、書面申請は収入印紙で納付します)

登記完了

審査に問題がなければ登記が完了し、登記事項証明書で最新の住所・氏名を確認できます

法務省・法務局の公開情報では、住所等変更登記に特別な非課税措置があるとは案内されていません。原則として、不動産1個につき1,000円と考えておくとよいでしょう。オンライン申請なら法務局に出向かずに自宅から手続きでき、書類集めさえ終われば、申請書の作成から提出まで数十分〜1時間程度で完了することも珍しくありません。不動産の売却を控えている場合は、決済までに登記が完了するよう早めに着手しておきましょう。実家の売却・賃貸・住み続けるかの判断基準は実家を売る・貸す・住み続ける、どう選ぶ?判断基準を徹底比較で解説しています。

司法書士に頼むべきなのはどんな人か

登録免許税だけを見れば1,000円で済む手続きですが、誰にとっても自分でできるとは限りません。次のいずれかに当てはまる方は、司法書士への依頼を検討したほうが、結果的に早く・確実に進められることが多いです。

  • 住所変更の履歴が2回以上ある:登記簿上の住所から現住所まで、住民票の除票や戸籍の附票を連続してつなげる必要があり、通数が増えるほど収集の手間が増えます
  • 海外への転出歴がある:住民票の除票だけでは住所のつながりを証明できず、在留証明書など追加の書類が必要になることがあります
  • 必要な証明書がすでに取得できない:保存期間の経過などで住民票の除票・戸籍の附票が取得できない場合、上申書(申立書)の作成など、通常と異なる対応が必要です
  • 共有名義や複数の不動産をまとめて変更したい:共有者ごとの持分や、複数物件分の書類を整理する必要があります
  • 氏名の変更を伴い、戸籍の変遷が複雑:婚姻・離婚・養子縁組などが重なっている場合、氏名のつながりを証明する戸籍の通数が増えます

逆に言えば、これらに当てはまらない方は、このあと紹介する通り自分で完結できる可能性が高い手続きです。空き家として管理している実家がある場合は、名義や登記を整理しておくと将来の選択肢が広がります。詳しくは空き家にする前にすべき生前対策|管理・税・売却で困らないためにをご覧ください。

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実務でよくあるつまずき

当窓口の相談から
住民票の除票・戸籍の附票は、以前は保存期間が短く、古い住所変更の履歴をたどれないことがありました。法改正で保存期間は大幅に延びましたが、それ以前にすでに廃棄されてしまったものは、今から取り直すことができません。特に、転居を何度も繰り返している方や、住民票を除票していた期間がある方は、書類だけでは変更の経緯を証明しきれず、法務局から追加の書類提出や上申書の作成を求められることがあります。ご自身で書類を集めてみて「つながらない」と感じたら、その時点で司法書士に相談する方が結果的に早く進みます。(当窓口に寄せられた相談をもとに再構成した典型例です)

こんな方は、司法書士に頼まなくても大丈夫です

✅ こういう方は、この手続きの依頼は不要です

住所・氏名の変更が1回だけで、住民票の除票(または戸籍の附票)がすぐに取得できる方は、司法書士に依頼しなくてもご自身で申請を完了できる可能性が高い状況です。無理に依頼される必要はありません。法務局の記載例を使えば、申請書の作成自体は数十分〜1時間程度で終わることが多く、費用は登録免許税の1,000円と書類の取得実費だけで済みます。

セルフチェック:自分でできるか、3段階で確認

次の4項目のうち、いくつ当てはまるか数えてみてください。

  • 引っ越しや結婚などによる住所・氏名の変更が2回以上ある
  • 海外に住んでいた(住民票を除票していた)期間がある
  • 共有名義や、複数の不動産をまとめて変更したい
  • 住民票の除票・戸籍の附票がすでに取得できない(廃棄済みと言われた)

該当数でわかる、今の状況

0〜1個:自分で進められる可能性が高い状況です。
上の手順に沿って、まずはご自身で申請書の作成を試してみてください。専門家に依頼する必要は、現時点ではありません。
2〜3個:判断が必要な論点があります。
書類が揃うかどうかで難易度が変わります。無料の生前対策診断で不動産や名義の状況を整理し、必要な対応を確認しておくと安心です。
4個:専門家と整理した方が早い状況です。
書類のつながりが取れない可能性が高く、自己判断で進めると差し戻しや上申書の作成で時間がかかりがちです。司法書士への相談を検討してください。

よくある質問

Q1. 相続登記の過料と何が違うのですか?

相続登記の義務化は2024年4月1日施行で、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。住所等変更登記の義務化は2026年4月1日施行で、住所・氏名の変更日から2年以内に登記しないと5万円以下の過料の対象になります。制度も期限の起算点も過料の金額も別物で、片方を済ませても、もう片方の義務は残ります。

Q2. すでに何年も前に住所を変えています。今からでは遅いですか?

遅くありません。2026年3月31日以前にすでに変更している方は、2028年3月31日までに変更登記(または検索用情報の申出)をすれば義務違反にはなりません。気づいた時点で早めに手続きすることをおすすめします。

Q3. 何度も引っ越している場合、途中の住所はどう証明すればいいですか?

登記簿上の住所から現在の住所まで、住民票の除票や戸籍の附票をつなげて証明します。転居の回数が多いほど必要な書類も増え、保存期間の関係で一部が取得できないこともあります。つながりが取れない場合は、上申書の作成など通常と異なる対応が必要になるため、司法書士への相談が現実的です。

Q4. 自分で申請する場合、費用はどのくらいかかりますか?

登録免許税は不動産1個につき1,000円です。これに加えて、住民票の写しや戸籍の附票など証明書の取得実費(1通数百円程度)がかかります。司法書士に依頼する場合は、これらの実費に加えて司法書士報酬が別途発生します。金額は書類の収集状況などにより異なるため、依頼前に見積りを確認してください。

Q5. 「検索用情報の申出」をすれば、もう自分で手続きしなくてよくなりますか?

申出をしておけば、法務局が住基ネットで変更を確認できた時点で、本人の了解を得たうえで職権により登記されます。ただし確認のタイミングは概ね2年に1回程度で、変更した瞬間に反映されるわけではありません。また海外居住者は対象外です。不動産の売却などで急いで住所を最新化したい場合は、この記事で紹介した自分での申請か、司法書士への依頼を検討してください。

まとめ:期限を知れば、あとは書類が揃うかどうかだけ

住所等変更登記の義務化は、2026年4月1日の施行日・2年以内という期限・5万円以下の過料という数字さえ押さえておけば、身構えるような制度ではありません。住所の変更が1回だけで書類がすぐ揃う方は、登録免許税1,000円で自分で完結できます。一方、変更の履歴が複雑な方や海外転居歴がある方は、無理に自分で進めようとすると差し戻しで時間を失いがちです。まずはセルフチェックで自分の状況を確認し、必要であれば早めに専門家につながっておきましょう。

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本記事は司法書士 今井裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。登記の要否・具体的な手続きは事案により異なります。最新の制度・書式は法務省・法務局の公式情報でご確認ください。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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