特養の申込書の理由欄は、気持ちよりも事実を書く欄です。自治体の入所指針は、要介護度、認知症の様子、介護している人の状況、住まいなどを点数にして、入る順番を決めます。その項目に沿って「週に〇回」「夜〇時ごろ」と数字を入れて書くと、施設に暮らしの様子が伝わります。
申し込み全体の流れや費用は、特養の申し込み方法にまとめています。この記事では理由欄の書き方に絞り、名古屋市・神戸市・中野区の公式資料(2026年10月11日確認)をもとに整理します。
先に結論:3つのことを、数字を入れて書きます
この記事の結論
- 何を書くか:「本人の状態」「介護している人の状況」「家で続けにくい事情」の3つです。入所指針が点数にする項目と重なります。
- どう書くか:回数・時刻・期間・距離を数字で書きます。「大変です」「限界です」だけでは、状況が伝わりにくくなります。
- 誰と仕上げるか:家族が下書きを作り、ケアマネジャーに記録と合っているか見てもらいます。事実と違う記載があると、入所できなくなります(名古屋市の案内)。
理由欄は何に使われるか:入所指針の評価項目の早見表
特養の順番は、申し込んだ順ではありません。施設が申込書の内容を点数にして、点数の高い人から入所を決めます。点数にする項目は、市区町村や都道府県が「入所指針」で決めています。
名古屋市の指針(令和6年版)は、まず要介護度と認知症の様子を点数にします。主な介護者の状況や、ほかに手伝う人がいるかも点数にします。さらに、在宅サービスの使い方、介護の期間、介護の負担、住まいなどの「個別事情」を、施設の入所検討委員会が点数にします。理由欄は、この個別事情を伝える大事な材料です。
配分の一例として、神戸市の調査票は「本人の状況」50点、「介護者の必要性」25点、「在宅介護の困難性」25点に分けています。本人の状態だけでなく、介護する側の事情も同じくらい見られる、ということです。親が住む市区町村の指針は、市のサイトで「特別養護老人ホーム 入所指針」と調べると見つかることが多いです。
書き方の型:3つの段落に、数字を入れる
理由欄は、次の順に3つの段落で書くと、読む人が項目ごとに拾いやすくなります。
- 本人の状態:要介護度と、介助が要る場面。認知症の行動があれば、その回数。
- 介護している人の状況:誰が、何歳で、どこに住み、どれだけ関われるか。病気や仕事も書きます。
- 家で続けにくい事情:使っているサービスと、それでも埋まらない時間。住まいの問題も。
数字の入れ方は、次のように言い換えるだけです。
数字は、1〜2週間ほどメモを取ってから書くと正確になります。カレンダーに「夜のトイレ〇回」と書き込むだけでも十分です。
状況別の例文8つ(書き方の型)
ここに挙げるのは、実在の方の事例ではなく「書き方の型」です。〇の部分を、親の実際の様子に置き換えてください。当てはまらない文は削り、事実だけを残します。
1. 一人暮らしで、認知症が進んできた
本人は一人暮らしで、要介護〇です。〇月ごろから、鍋を火にかけたまま忘れることが週に〇回あります。夜〇時ごろに外へ出て、近所の方に送り届けてもらったことが、この〇か月で〇回ありました。長女は〇県に住み、来られるのは月に〇回です。訪問介護を週〇回使っていますが、夜の見守りはできていません。
2. 主に介護している人が高齢(老老介護)
主に介護しているのは〇歳の夫です。夫も〇〇で月に〇回通院し、要支援〇の認定を受けています。本人は立ち上がりに介助が要り、1日に〇回、夫が体を支えてトイレへ連れて行きます。この〇か月で、介助中に夫が転んだことが〇回ありました。ほかに手伝える家族はいません。
3. 主に介護している人が病気になった
主に介護してきた長男が、〇月に〇〇の手術を受けました。医師からは、〇か月は重い物を持たないよう言われています。本人は入浴と移動に介助が要り、長男の代わりに介護できる人はいません。今はショートステイを月に〇日使って、しのいでいます。
4. 夜の介助が多い
夜〇時から朝〇時までに、トイレの介助が〇〜〇回あります。おむつを外してしまう夜は、着替えとシーツの交換が要ります。同居の長女は、夜に〇回以上起きる日が週に〇日あり、眠れるのは〇時間ほどです。長女は〇月から、〇〇で通院を始めました。
5. 在宅サービスを、ほぼ使い切っている
デイサービスを週〇回、訪問介護を週〇回、ショートステイを月に〇日使っています。介護保険の限度額の〇割ほどを使っており、これ以上は増やしにくい状況です。サービスのない夜と週末は、家族が一人で介護しています。
神戸市の調査票は、在宅サービスの利用率を「過去3か月の平均で、限度額に対して何割使ったか」で見ています。割合はケアマネジャーに聞くと分かります。
6. 介護している人が働いている
主に介護している次女は、週〇日、1日〇時間働いています。本人がデイサービスから帰る〇時から、次女が帰る〇時までの〇時間は、家に誰もいません。この時間に一人で外へ出たことが、この〇か月で〇回ありました。
中野区の記入例では、1か月に10日以上、かつ1日4時間以上働いていれば「働いている」に印を付けます。働く日数と時間は、はっきり書いておきます。
7. 介護している人が遠くに住んでいる
子は長男と長女の2人で、どちらも〇県に住んでいます。実家までは片道〇時間で、通えるのは月に〇回です。本人は一人暮らしで、食事は配食とヘルパーに頼っています。電話に出ない日が週に〇回あり、そのたびに近所の方に様子を見てもらっています。
8. 老健や病院から、退院・退所後の行き先がない
本人は〇年〇月から、介護老人保健施設(老健)に入所しています。施設からは、〇月ごろの退所を前提に相談するよう言われています。自宅は〇階でエレベーターがなく、トイレは〇階にあります。同居の家族はおらず、退所後に戻って暮らせる場所がありません。
神戸市の記入例では、老健や病院に入っている人には、在宅サービスの利用率の評価を当てはめません。その分、住まいの問題や、戻る先がない事情をはっきり書くことが大切です。
要介護1・2で「特例入所」を望むとき
要介護1・2の人は、家で暮らすのが難しい事情があるときだけ申し込めます。杉並区のサイトに載っている「特養以外での生活が困難な理由記入書」では、4つの要件から当てはまる番号を選び、具体的な理由を書きます。4つとは、認知症、知的障害・精神障害など、虐待、一人暮らしや老老介護でサービスも足りない場合です。
この記入書は、原則として家族以外の人が書く形です。ケアマネジャーや、本人をよく知る医療の専門職が書きます。また、使える在宅サービスを使っていない場合は当てはまらない、と注意書きがあります。
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書いてはいけないことと、仕上げの流れ
名古屋市の案内は、申込書に事実と違う記載があると入所できなくなる、としています。神戸市のように、認定調査票やサービス利用表の写しを添える地域もあります。書いた内容は、こうした記録と並べて読まれます。
- 回数や症状を、実際より重く書く。面接や記録と合わないと、かえって信用を損ねます。
- 決まっていないことを、決まったように書く。退院日や転居が未定なら「〇月ごろの見込み」と書きます。
- 気持ちだけを書く。「かわいそう」「もう限界」だけでは、何に困っているかが伝わりません。気持ちを書くなら、事実の後に一文で添えます。
- 使えるサービスを使っていないのに、困っていると書く。特例入所では、当てはまらないとされる場合があります。
ケアマネジャーと施設の相談員に見てもらう流れ
- 家族が下書きを作る。1〜2週間のメモをもとに、3つの段落で書きます。
- ケアマネジャーに見てもらう。サービスの回数や認定の内容と、書いた数字が合っているかを確かめます。
- 清書する。本人が書けないときは、ケアマネジャーなどが代わりに書けます。神戸市の記入例では、代わりに書いた人の名前を添えます。
- 施設の相談員に出し、面接で補う。名古屋市の指針では、施設は原則として本人と家族に会って状態を確かめます。書ききれなかったことは、そこで伝えます。
- 状況が変わったら届け出る。要介護度や主な介護者が変わったときは、書面で届けるか、申し込み直します(名古屋市の指針)。
ケアマネジャーに相談しても話が進まないと感じるときは、担当を見直す方法もあります。手順はケアマネジャーの変更・選び方で確かめられます。
申込書と一緒に出すもののチェックリスト
- □ 入所申込書(施設ごとの様式。中野区は、複数の施設に出すときはコピーでよいとしています)
- □ 介護保険被保険者証の写し
- □ 認定調査票の写し(神戸市は、調査から3か月以内のもの)
- □ 直近3か月分のサービス利用表の写し(神戸市)
- □ 切手を貼った返信用封筒(中野区)
- □ 障害者手帳などの写し(持っている場合)
- □ 要介護1・2の場合は、特例入所の申出書や理由の記入書(名古屋市は「特例入所該当申出書」)
- □ 理由欄の下書きのもとにした、介護の様子のメモ(面接で聞かれたときのために手元に)
必要な書類は、市区町村と施設で違います。申込書を取り寄せるときに、施設へ電話で確かめてください。
今日できる一歩
- 今日から1週間、夜のトイレの回数と時刻をカレンダーに書き込む。
- 介護保険被保険者証と、毎月届くサービス利用表を1つの封筒にまとめる。
- 親が住む市区町村のサイトで「特別養護老人ホーム 入所指針」を探し、点数にする項目を見ておく。
よくある質問
理由欄は、ケアマネジャーに書いてもらえますか
本人が書けないときは、ケアマネジャーなどが代わりに書く形があります(神戸市の記入例)。要介護1・2の特例入所の理由書は、原則として家族以外が書く様式もあります。ただ、家での様子をいちばん知っているのは家族です。家族が下書きを作り、ケアマネジャーに見てもらう形が進めやすいです。
複数の施設に申し込んでもよいですか
中野区は、複数の施設に申し込むときは申込書をコピーして、それぞれの施設に出すよう案内しています。神戸市の申込書には、ほかの施設への申込状況を書く欄があります。どこかに入所が決まったら、申し込んだすべての施設に連絡します。
理由欄に書ききれないときは、どうしますか
別紙を付けてよいかは、施設によって扱いが違います。申込書を出す前に、施設の相談員に聞いてください。欄の中には、3つの段落の要点を数字つきで書き、細かい様子は面接で伝える方法もあります。
出したあとで、理由を書き直せますか
状況が変わったときは、届け出ることになっています。名古屋市は、要介護度、認知症の様子、主な介護者などが変わったら、書面で届けるか申し込み直すよう定めています。届けないと点数に正しく反映されないことがあります。連絡がつかないままだと、申し込みを取り下げた扱いになることもあります。
理由欄の書き方だけで、順番が決まりますか
決まりません。名古屋市では、要介護度や介護者の状況などを決まった基準で点数にします。在宅サービスや住まいなどの個別事情は、施設の入所検討委員会が判断して点数にします。理由欄は、その判断の材料です。正しく伝われば、実際の必要性に見合った点数になりやすい、と考えてください。
参考にした公的情報
- 名古屋市「特別養護老人ホーム優先入所指針」(令和6年版)
https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/_files/00129527/nagoya_nyusho.pdf - 名古屋市の介護保険FAQに掲載の説明資料(作成:名古屋市特別養護老人ホーム優先入所指針運用適正化委員会)
https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/kaigo/faq/docs/2013070400401/file_contents/explanation.pdf - 神戸市「特別養護老人ホーム入所申込書・入所調査票(記入例)」
https://www.city.kobe.lg.jp/documents/7770/05kinyuumihonn.pdf - 中野区「特別養護老人ホーム入所申込書・調査書の記入例」
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kurashi/denshishinsei/kenko-fukushi/kaigohoken/nyusyomoshikomi.files/kinyuurei.pdf - 杉並区掲載「特養以外での生活が困難な理由記入書(要介護1・2)」記入例
https://www.city.suginami.tokyo.jp/documents/8745/riyuukinyuurei20204.pdf
いずれも2026年10月11日に確認しました。
※本記事は2026年10月時点の公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。例文は書き方の型であり、実在の方の事例ではありません。入所の順番の決め方、申込書の様式、必要な書類は、市区町村や施設によって異なります。ご自身の場合は、親が住む市区町村の介護保険の窓口、担当のケアマネジャー、各施設でご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー)・生命保険募集人 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
