姻族関係終了届とは【2026年】変わること・変わらないこと早見表と出し方

姻族関係終了届とは

夫や妻を亡くしたあと、義理の両親やきょうだいとの関係をどうするか、一人で考え込む方は少なくありません。「姻族関係終了届」という届けがあると聞いても、何が変わるのかは分かりにくいものです。

この記事では、2026年10月時点の法令と市区町村・日本年金機構の案内をもとに、届けを出すと変わること・変わらないこと、出せる人と時期、出し方、復氏届との違い、取り消せない点を整理します。

目次

先に結論:変わるのは「義理の家族との親戚関係」だけ

この記事の結論

  1. 変わるのは親戚関係だけ:義父母や義理のきょうだいとの法律上の親戚関係が終わります。扶養を求められる可能性がなくなるのが主な違いです。
  2. 相続・遺族年金・名字はそのまま:相続した財産も、受け取っている遺族年金も変わりません。名字を戻すには復氏届が別に要ります。
  3. 期限はなく、出すと取り消せない:本人だけで、いつでも出せます。元に戻せないので、気持ちが落ち着いてから決めても間に合います。

「死後離婚」と呼ばれることもありますが、離婚とは違います。亡くなった配偶者との関係はそのままで、終わるのは配偶者側の親族との関係です。

姻族関係終了届とは:義理の家族との親戚関係を終える届け

姻族(いんぞく)とは、結婚によってできた親戚のことです。妻から見た夫の親やきょうだい、夫から見た妻の親などが当たります。

法律上の親族は「6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族」です(民法725条)。義父母、義理のきょうだい、その子(おい・めい)までが姻族に入ります。

離婚すると、姻族関係は自動で終わります。一方、配偶者が亡くなった場合は自動では終わりません。残された配偶者が「終わらせる」と届け出たときに終わります(民法728条2項)。この届けが姻族関係終了届です(戸籍法96条)。

届けを出すと、義理の家族は法律上の親族ではなくなります。家庭裁判所が義父母などの扶養を命じる可能性(民法877条2項)や、同居の親族の助け合いの決まり(民法730条)の対象から外れます。

ただし、付き合いをやめる決まりができるわけではありません。届けの後も、行き来を続けるかどうかはご本人の自由です。

姻族関係終了届で何が変わる・変わらない(相続・遺族年金・戸籍・名字・お墓)

気になる項目ごとにまとめました。思い違いが多いのは、名字とお墓です。

項目届けを出すとポイント
義父母・義きょうだいとの関係法律上の親戚ではなくなる付き合いを続けるかは自由
義父母の扶養求められる可能性がなくなるもともと家庭裁判所が特別な事情を認めた場合だけ
亡くなった配偶者の相続変わらない相続した財産を返す必要はない
遺族年金変わらない受給権がなくなる理由に当たらない
自分の名字変わらない旧姓に戻すには復氏届が別に必要
自分の戸籍同じ戸籍のまま身分事項欄に終了したことが記録される
子どもと祖父母の関係変わらない子は孫のまま。祖父母の相続人になることもある
お墓・仏壇を引き継いでいた場合引き継ぐ人を決め直す関係する人の話し合い、まとまらなければ家庭裁判所
義父母の介護の特別寄与料請求できなくなる対象が「亡くなった人の親族」のため
義父母との結婚できないまま直系の姻族との結婚禁止は続く
※出典:e-Gov法令検索「民法」725・728・730・735・751・769・877・1050条、「戸籍法」96条、日本年金機構の遺族年金の失権に関する案内、秋田市「姻族関係終了届」をもとに整理(2026年10月時点)。

姻族関係終了届を出しても遺族年金は止まらない

日本年金機構の案内で、遺族年金を受ける権利がなくなるのは、本人の死亡、結婚(事実婚を含む)、直系の血族・姻族以外の人の養子になったときなどです。姻族関係終了届は、この中に入っていません。

気をつけたいのは再婚のほうです。再婚や事実婚をすると遺族年金はなくなります。「遺族年金失権届」を、遺族厚生年金は10日以内、遺族基礎年金は14日以内に出します。遺族年金の条件や金額は、妻が亡くなったときの遺族年金の要件と金額で整理しています。

姻族関係終了届の戸籍の記載はどうなる

届けを出すと、届けた本人の戸籍の身分事項欄に、姻族関係が終わったことが記録されます。届書には、亡くなった配偶者の氏名・本籍・死亡日を書きます(戸籍法96条)。

名字も、戸籍の場所も変わりません。亡くなった配偶者と同じ戸籍に残ります。旧姓に戻る、新しい戸籍を作るといった変化は、後で説明する復氏届で起こります。

お墓や仏壇を引き継いでいた場合

亡くなった配偶者の家のお墓や仏壇を、あなたが引き継いでいることがあります。この場合に姻族関係終了届や復氏届を出すと、関係する人と話し合い、引き継ぐ人を決め直すことになっています(民法751条2項・769条)。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所が決めます。

ご自身がそのお墓に入れるかどうかは、墓地の使用規則や管理者との話し合いで決まります。お墓の今後を考える際は、墓じまい・樹木葬・散骨の違いと費用も参考になります。

姻族関係終了届を出せる人・出せない人と時期

立場出せるか補足
配偶者を亡くした本人出せる義理の家族の同意は不要
義父母・義理のきょうだい出せない義理の家族の側から終わらせる届けはない
亡くなった人の子ども出せない子と祖父母は血族で、この届けの対象外
離婚した人出す必要なし離婚で姻族関係は自動で終わる
再婚した人出せる再婚しても前の配偶者側との関係は自動では終わらない
配偶者がまだ存命出せない配偶者が亡くなった後に限る
※出典:e-Gov法令検索「民法」728条、「戸籍法」96条、秋田市・川崎市の姻族関係終了届の案内をもとに整理(2026年10月時点)。

期限はない。過ぎて困ることもない

届出の期限は、法律で決められていません。配偶者の死亡届が受理された後なら、何年たってからでも出せます。

ですから、葬儀の直後に決める必要はありません。四十九日や一周忌を終えて、気持ちが落ち着いてから考える方もいます。

一点だけ、出せるのはご本人だけです。ご本人が亡くなった後に、子どもが代わりに出すことはできません。

姻族関係終了届の出し方と必要なもの

届けは市区町村の戸籍の窓口で受け付けます。手順は次のとおりです。

  1. 届書を手に入れる。市区町村の窓口でもらえます。川崎市のように、届書のPDFを公式サイトに載せている自治体もあります。
  2. 亡くなった配偶者の情報を確かめる。氏名・本籍・死亡日を書きます。本籍は、自分の戸籍謄本や住民票(本籍入り)で確かめられます。
  3. 提出先を決める。自分の本籍地か住所地の市区町村に出します。秋田市は、一時的にいる場所(所在地)でも受け付けると案内しています。
  4. 窓口に出す。本人確認書類を見せます。郵送で受け付ける市区町村もあるので、方法は提出先に確かめます。
  5. 記録を確かめる。戸籍に記録されるまで日数がかかることがあります。必要なら後日、戸籍謄本で記載を確認します。

必要なものチェックリスト

  • □ 姻族関係終了届(届書)
  • □ 届出人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • □ 印鑑(秋田市などは任意。持っていくと訂正のときに安心)
  • □ 亡くなった配偶者の氏名・本籍・死亡日のメモ
  • □ 戸籍謄本(2024年3月1日から原則不要。例外があるので事前に確認)

2024年3月1日から、戸籍の届けに戸籍謄本を付けることは原則不要になりました(江戸川区などの案内)。窓口の職員が本籍地の戸籍を確認できるようになったためです。ただ、川崎市の資料では、電算化されていない戸籍は従来どおり添付が必要とされています。出す前に電話で確かめると確実です。

親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。

復氏届との違い:名字を戻すのは別の届け

姻族関係終了届と混同しやすいのが、復氏届(ふくしとどけ)です。復氏届は、結婚前の名字に戻すための届けです(民法751条1項、戸籍法95条)。

項目姻族関係終了届復氏届
目的義理の家族との親戚関係を終える結婚前の名字に戻る
名字変わらない旧姓に戻る
戸籍同じ戸籍のまま結婚前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作る
義理の家族との関係終わる続く
出せる人配偶者を亡くした本人配偶者を亡くした本人
期限なしなし
義理の家族の同意不要不要
子どもの名字・戸籍変わらない変わらない
取り消しできない元の名字に戻すには家庭裁判所の許可が必要
※出典:e-Gov法令検索「民法」728・751条、「戸籍法」95・96・107条、秋田市「姻族関係終了届」「復氏届」をもとに整理(2026年10月時点)。

2つは別々の届けです。どちらか一方だけでも、両方でも出せます。順番の決まりもなく、同じ日に出すこともできます。

秋田市の案内でも、復氏届で旧姓に戻っても、配偶者側の親族との関係や扶養の義務は続くとされています。名字を戻すことと、親戚関係を終えることは別の話です。

子どもの名字を自分にそろえたいとき

復氏届で自分だけ旧姓に戻ると、子どもは元の名字と戸籍に残ります。

子どもを自分の戸籍に入れるには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を得てから、市区町村に入籍届を出します(民法791条)。申立先は子の住所地の家庭裁判所で、費用は子1人につき収入印紙800円です。連絡用の郵便切手の額は、裁判所ごとに違います。

子どもが15歳以上なら本人が申し立てます。15歳未満なら、親権者などが代わりに申し立てます。

姻族関係終了届のデメリットと取り消せないこと

この届けには、出した後で戻せないという特徴があります。決める前に、次の点を確かめておくと安心です。

一度出すと取り消せない

受理された届けを、なかったことにする手続きはありません。後で気持ちが変わっても、義理の家族と法律上の親戚に戻ることはできません。

復氏届も同じように考えておきます。旧姓に戻った後で結婚中の名字に戻すには、家庭裁判所の「氏の変更許可」が必要です。「やむを得ない事由」が求められ、気軽には戻せません(戸籍法107条)。

損しやすい点・思い違いしやすい点

  • 名字も戻ると思い込む。姻族関係終了届だけでは名字は変わりません。旧姓に戻したいなら復氏届も出します。
  • 義父母の介護分を請求できなくなる。義父母を無償で介護してきた人は、義父母の相続のときに「特別寄与料」を相続人へ請求できる場合があります。この制度の対象は亡くなった人の「親族」です(民法1050条)。届けを出すと親族ではなくなるため、介護を担ってきた方は時期を考える材料になります。詳しくは特別寄与料の条件と期限をご覧ください。
  • 子どもへの影響を見落とす。子どもと祖父母の関係は変わりません。祖父母の相続では、子どもが亡くなった親に代わって相続人になることがあります(代襲相続)。届けの後も、子どもを通じて義理の家族と関わる場面は残ります。
  • 扶養の心配を大きく見積もる。義理の子に義父母を扶養する義務は、もともと原則ありません。家庭裁判所が特別な事情を認めた場合に限られます。介護の悩みは介護は義務?民法877条と扶養義務も参考にしてください。

今日できる一歩

  1. いま気になっていることを紙に書き出します(名字、お墓、介護、付き合いなど)。
  2. それぞれが「姻族関係終了届」「復氏届」「どちらでもない」のどれに当たるか、早見表と照らします。
  3. 出すと決めたら、本籍地か住所地の役所に「戸籍謄本の添付は要りますか」と電話で聞いておきます。

よくある質問

姻族関係終了届とは、死後離婚のことですか?

一般に「死後離婚」と呼ばれているのは、この届けのことです。ただし離婚とは違い、亡くなった配偶者との関係は変わりません。終わるのは、配偶者側の親族との法律上の親戚関係です。

姻族関係終了届を出すと、遺族年金はもらえなくなりますか?

いいえ、もらえなくなる理由には当たりません。遺族年金がなくなるのは、再婚(事実婚を含む)や、直系の血族・姻族以外の人の養子になったときなどです。

義理の家族に知られずに出せますか?

義理の家族の同意は要らず、本人だけで出せます。ただ、戸籍には記録が残ります。伝えるかどうかは、ご自身で決めて構いません。

届けを出した後も、法事やお墓参りに行ってよいですか?

行って構いません。届けは法律上の親戚関係を終えるもので、付き合い方を決めるものではありません。参列するかどうかは自由です。

再婚したら、前の配偶者側との姻族関係は終わりますか?

自動では終わりません。死別の場合、姻族関係が終わるのは本人が届け出たときです。再婚の前後に関係なく、届けは出せます。

復氏届と姻族関係終了届は、どちらを先に出すべきですか?

順番の決まりはありません。片方だけでも、両方を同じ日に出すこともできます。名字を戻したいなら復氏届、親戚関係を終えたいなら姻族関係終了届です。

参考にした公的情報

※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の公開情報をもとにした一般的な整理です。届書の様式、受付時間、郵送の可否、戸籍謄本の要否は市区町村によって異なります。提出前に、本籍地または住所地の市区町村にご確認ください。遺族年金の個別の扱いは年金事務所に、お墓の承継などご家族の事情で答えが変わることは専門家にご相談ください。

本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

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