
相続手続きをしないといけないことはわかっているけど何をすればいいの?



相続ってめんどくさい手続きがたくさんありそう
確かに相続が発生すると、何から手を付ければ良いのか迷ってしまいますよね。
初めて相続手続きを行う方でも、スムーズに進められるように、今回は相続でやるべきことを10のステップに分けて解説します。できるだけ簡単にまとめましたので、必要な手続きを順番に進めていきましょう。
先に結論:相続でやることと、外せない4つの期限
相続の手続きは数十種類ありますが、遅れて困るのは上の4つだけです。まず「3か月」を意識して財産と借金の全体像をつかみ、そのうえで遺産分割協議へ進みます。以下、10のステップを順番に見ていきます。
1. 遺言書の有無を確認する
遺言書があれば、原則としてその内容が遺産分割より優先します。分け方を話し合う前に、まず有無を確認してください。遺言書は3種類あり、扱いが異なります。
- 自筆証書遺言: 本人が自筆で作成した遺言書。家庭裁判所での※検認が必要。
- 公正証書遺言: 公証人が作成し、公証役場に保管されている遺言書。検認が不要で信頼性が高い。
- 秘密証書遺言: 内容を秘密にしたまま公証人が関与する遺言書。検認が必要。
※検認とは、家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人同席のもとで内容を確認する手続きです。封のある自筆証書遺言を勝手に開封すると過料の対象になります。公正証書遺言なら、全国どこの公証役場でも有無を検索できます(法務局の自筆証書遺言書保管制度を使っている場合も同様に検索可能)。
2. 相続人を確定する
次に行うべきは、相続人の確定です。法律で定められた相続人は、主に配偶者や子供、親、兄弟姉妹です。相続人を確定するためには、被相続人の生まれたときから亡くなった時点までの戸籍謄本を取り寄せ、相続人の範囲を確認します。
ずっと同じ土地に住んでいた方なら数通で済みます。転籍を繰り返している場合は本籍地の役所を順にたどることになり、通数も日数も増えます。
戸籍を請求するには、まず亡くなった方の本籍地が分かっていることが前提になります。本籍が分からないときは、本籍の記載を入れた住民票(除票)を取ると確認できます。調べ方は本籍の調べ方を専門家が徹底解説にまとめています。
相続人となる可能性のある人一覧(お亡くなりになった人から見て)
- 配偶者: 常に相続人となります。
- 子供: 第一順位の相続人です。子供が既に亡くなっている場合、その子供(被相続人の孫)が代襲相続人になります。
- 親: 子供がいない場合に相続人となります。
- 兄弟姉妹: 子供も親もいない場合に相続人となります。
3. 相続財産の調査とリストアップ
借金も相続の対象です。放棄するかどうかを3か月以内に判断するため、プラスとマイナスの両方を洗い出します。
- 不動産: 固定資産税の納税通知書や登記簿謄本を確認し、所有している不動産の価値を把握します。
- 預貯金: 銀行口座の通帳や残高証明書を確認します。複数の銀行に口座がある場合は、全ての口座をリストアップしましょう。
- 株式や投資信託: 証券会社の取引明細書を確認し、保有する金融商品の価値を調べます。
- 生命保険: 生命保険の契約内容を確認し、受取人や保険金額を把握します。
- 負債: 被相続人が残した借金やローンがある場合、負債としてリストアップします。
あとから財産が見つかると遺産分割協議をやり直すことになります。通帳・保険証券・固定資産税の納税通知書・証券会社からの郵便物を一度すべて集めてから、リストを作ってください。
4. 相続放棄や限定承認の検討
負債がプラスの財産を上回るなら放棄を検討します。放棄は相続人ごとに単独でできますが、限定承認は相続人全員でそろって申し立てる必要があります。
- 相続放棄: 相続人が全ての相続財産を放棄し、負債を含む一切の相続権を失います。相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てを行います。
- 限定承認: プラスの財産の範囲内でだけ負債を引き継ぐ方法です。プラスの財産を限度として負債を支払い、それを超える負債は負いません。相続人全員が共同で家庭裁判所に申し立てる必要があります。
⚠️ 相続放棄を検討中は遺品の処分に注意
亡くなった方の私財(置物や書籍なども含む)を勝手に処分してしまうと、相続放棄が認められなくなってしまう可能性があります。家庭裁判所への申し立て期限は相続の開始を知った日から3か月以内。判断に迷う場合は、処分する前に専門家へ相談しましょう。
5. 相続税が発生するか確認する
相続税が発生するかどうかは、相続財産の総額によって決まります。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、この額を超える場合は相続税の申告が必要になります。
相続税の基礎控除額
3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例:相続人が配偶者と子供2人の計3人なら、3000万円+600万円×3人=4800万円
財産の合計が基礎控除以下なら、相続税の申告そのものが不要です。まず不動産の固定資産評価額と預貯金残高を足して、基礎控除と比べてください。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って初めて基礎控除以下になる場合は、特例を使うために申告が必要になります。
6. 遺産分割協議を行う
相続人全員で、相続財産の分割方法を話し合うことを遺産分割協議といいます。遺産分割協議では、相続財産をどのように分けるかを相続人全員で合意する必要があります。
遺産分割協議2つの原則
- 合意が必要: 全ての相続人が合意しなければ、遺産分割協議は成立しません。
- 遺産分割協議書の作成: 協議がまとまったら、その内容を遺産分割協議書に書面でまとめます。相続人全員の署名と実印が必要です。
話がまとまらないときは、第三者を入れて論点を整理するだけで進むことがあります。相続人の一人が認知症、行方不明、未成年といった場合は協議そのものが成立しないため、家庭裁判所での手続き(成年後見人・不在者財産管理人・特別代理人の選任)が先に必要です。
7. 名義変更や財産の移転手続きを行う
遺産分割協議書が完成したら、不動産は法務局、預貯金は各金融機関、株式は証券会社と、財産ごとに窓口が分かれます。必要書類は金融機関ごとに違うので、先に電話で確認してから出向くと二度手間になりません。
相続登記に必要な書類は次の7点です。これを自分でそろえてから依頼すると、専門家に任せる作業量そのものが減ります。
- 亡くなった方の出まれた時から亡くなった時までの戸籍
- 各相続人の現在の戸籍
- 不動産を相続する相続人の住民票
- 亡くなった方の住民票除票または戸籍の附票(登記上の住所とのつながりが分かるもの)
- 法定相続以外の割合で名義変更する場合は、遺産分割協議書
- 遺産分割などを行っている場合は、各相続人の印鑑証明書
- 対象となる不動産の固定資産評価証明書
8. 相続税の申告と納税を行う
その前に、亡くなった方の所得税をまとめる「準確定申告」があります。期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月で、相続税より先に来ます。事業や不動産の収入があった、公的年金等の収入が年400万円を超えていた、といった場合は必要です。会社員で年末調整が済んでいれば不要なことが多く、逆に医療費が多かった年は還付を受けられる場合もあります。判断に迷うときは税務署か税理士に確認してください。
相続税の期限は相続開始を知った日の翌日から10か月。申告先は亡くなった方の住所地を管轄する税務署で、相続人の住所地ではありません。納税も同じ期限までに現金一括が原則で、間に合わないときは延納・物納の申請を期限内に出す必要があります。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、期限内に申告して初めて使えます。「税額がゼロになるから申告しなくていい」と判断すると特例が使えなくなるので、控除を使った結果ゼロになるケースでは必ず申告してください。
9. 相続登記を行う
不動産の名義を相続人へ変えるのが相続登記です。2024年4月1日から義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければなりません。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
義務化より前に起きた相続もさかのぼって対象です。その場合の期限は2027年3月31日まで。遺産分割がまとまらず3年に間に合わないときは、自分が相続人であることだけを法務局に届け出る「相続人申告登記」で義務を果たしたことにできます(名義変更そのものは別途必要)。
10. 各種手続きと相続後の対応
- 保険金の受け取り: 生命保険や死亡保険の保険金を受け取るための手続きを行います。保険会社に連絡し、必要書類を提出します。
- 公共料金や各種契約の名義変更: 電気、ガス、水道などの公共料金や、携帯電話やインターネット契約の名義を変更します。契約者が亡くなった場合、名義変更手続きを行わないと、契約が無効になることがあります。
- 預貯金口座の管理: 被相続人の預貯金口座を解約し、相続人の口座に資金を移す手続きを行います。銀行によっては、特別な手続きが必要な場合があります。
相続でやることはご家族によって変わる
10のステップのうち実際に手間がかかるのは「相続人の確定(戸籍集め)」と「遺産分割協議書の作成」の2つです。財産が預貯金だけで相続人も配偶者と子だけなら自分で進められます。転籍が多い、相続人に兄弟姉妹が含まれる、不動産が複数の市町村にある場合は戸籍の通数が一気に増えるので、詰まった工程だけ依頼するのが結果的に安く済みます。


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