公正証書遺言の必要書類と作成当日の流れ|準備するもの・かかる時間を解説

公証役場に電話をして、日程だけはなんとか決まった。ところが担当者から「これとこれをご用意ください」と言われた書類の一覧を見て、また手が止まる。印鑑登録証明書、戸籍謄本、登記事項証明書——聞き慣れない言葉が並び、いつまでに何を揃えればいいのか、当日はどれくらい時間がかかるのかも分からない。準備を始めたはずが、最初の一歩でつまずいてしまう方は少なくありません。

📝 この記事の結論(30秒まとめ)

必要書類は大きく4つ、「本人確認書類」「財産資料」「戸籍謄本」「証人の本人確認書類」に分けられます。

本人確認書類…印鑑登録証明書+実印、または運転免許証等の顔写真付き身分証明書+認印(役場により対応が異なります)。

財産に関する資料…不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書、預貯金通帳のコピーなど。

戸籍謄本…相続人・受遺者との関係がわかるもの。

作成当日…受付から署名押印まで、所要時間の目安はおよそ30分前後です(内容や役場により前後します)。

書類集めで本当に困るのは、リストにある名前の難しさよりも、「いつまでに何を、どの順番で揃えればいいのか」という段取りが見えないことではないでしょうか。特に印鑑登録証明書や戸籍謄本は、取得するタイミングを間違えると、作成当日に有効期限切れで使えなくなることもあります。だからこの記事では、必要書類の内訳から、事前の打ち合わせ〜作成当日までの標準的な流れ、当日にかかる時間の目安まで、順を追って分かるようにしました。

目次

公正証書遺言の必要書類:本人確認・財産資料・戸籍謄本

公正証書遺言の作成には、大きく分けて「本人確認書類」「財産に関する資料」「戸籍謄本」の3種類の書類が必要です。求められる書類は財産の内容や家族関係によって異なるため、事前打ち合わせの中で公証人から個別に案内されるのが一般的ですが、まずは全体像を押さえておきましょう。

区分 書類 入手先の目安
本人確認① 印鑑登録証明書+実印 市区町村役場(発行から3ヶ月以内が目安)
本人確認② 運転免許証・マイナンバーカード等+認印 ①の代わりに使えることが多い(要事前確認)
財産資料(不動産) 登記事項証明書・固定資産評価証明書 法務局・市区町村役場
財産資料(預貯金等) 通帳のコピー(金融機関名・支店・口座番号がわかるもの) ご自宅で用意
戸籍謄本 遺言者と相続人・受遺者の関係がわかるもの 本籍地の市区町村役場

本人確認書類は、印鑑登録証明書と実印の組み合わせを求める役場が多い一方、運転免許証など顔写真付きの身分証明書と認印で足りるケースもあります。どちらが必要かは役場ごとの運用差があるため、断定はできません。予約時・打ち合わせ時に必ず確認してください。相続人以外への遺贈や遺留分・代償金・納税資金といった論点まで含めて全体像を押さえたい方は、公正証書遺言を作る前に知っておきたい4つの盲点|遺留分・代償金・納税もあわせてご覧ください。

証人に必要な書類

公正証書遺言には証人2人以上の立会いが必要です(民法969条)。証人本人が用意するものは、遺言者ほど厳格ではありません。

証人が当日用意するもの
① 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど。役場により健康保険証等で足りる場合もあります)
② 認印(実印である必要はありません)
③ 証人になれる人かどうかの確認(推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族などは証人になれません)

証人は実印までは不要ですが、「誰を証人にできるか」を見誤ると遺言そのものが無効になるおそれがあります。証人になれない人の範囲や、身近に頼める人がいないときの対処法は、公正証書遺言の証人は誰に頼む?なれない人・見つからないときの対処法で詳しく解説しています。

事前の打ち合わせから作成当日までの流れ

公証役場は、予約なしで訪れたその日に遺言を作ってくれるわけではありません。内容を固める打ち合わせを経てから、作成当日を迎えるのが標準的な流れです。

1

相談・日程調整(電話・メール)

公証役場、または依頼する専門家に連絡し、おおまかな希望内容と日程の希望を伝えます。

2

文案の打ち合わせ(電話・メール・来所)

財産資料・戸籍謄本などをもとに、誰に何を残すかを公証人と詰めます。内容によっては複数回のやり取りになることもあります。

3

書類・証人の最終確認

文案が固まったら、必要書類が揃っているか、証人2人の都合がつくかを最終確認します。

4

作成日時の確定・予約

公証役場と作成日時を確定します。入院中などの事情がある場合は、公証人が出張してくれる制度もあります。

5

作成当日(完了)

証人2人とともに公証役場へ出向き、本人確認・内容確認・署名押印を経て遺言が完成します。

打ち合わせの開始から作成当日までは、専門家に依頼して進める場合でおおむね2週間〜1ヶ月程度が目安と言われることが多いですが、ご自身で書類を集めながら進める場合や、公証役場の予約状況によっては1〜2ヶ月程度みておいた方が安心、という声もあります。役場や案件の内容によって前後する幅の大きい部分なので、「いつまでに何をすればいいか」は打ち合わせの早い段階で公証人に確認しておくと安心です。実際に名古屋市内の公証役場でどのような流れになるかは、名古屋の公証役場で公正証書遺言を作るときに後悔しやすい7つの落とし穴でも具体的に触れています。

作成当日にかかる時間の目安

当日の流れそのものは、それほど複雑ではありません。多くの場合、次のような順番で進みます。

順番 内容
①受付 予約時間の少し前に到着し、受付を済ませます
②本人確認 遺言者・証人それぞれの本人確認書類を確認します
③内容の確認 公証人が事前に固めた内容を読み上げ、または口頭で確認します
④署名・押印 遺言者は実印、証人は認印で署名・押印します
⑤手数料の支払い 現金またはクレジットカード等(役場により対応が異なります)
⑥正本・謄本の受け取り 原本は公証役場が保管し、正本・謄本を持ち帰ります

所要時間の目安はおよそ30分前後、内容がシンプルであれば20分程度、財産の種類が多く確認事項が多い場合は45分前後かかることもあります。あくまで目安であり、役場や案件によって差が出る部分です。書式・確実性の違いから当日の立会い人数や検認の要否まで、自筆証書遺言と比較して知りたい方は、公正証書遺言と自筆証書遺言はどっちがいい?費用・手間・確実性で比較もあわせてご覧ください。

見落としがちな注意点:印鑑登録証明書の有効期限

書類は「早めに揃えるほど安心」と思われがちですが、実は例外があります。印鑑登録証明書と戸籍謄本です。公正証書の作成では、印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものを求められるのが一般的とされています(2005年4月以降の日本公証人連合会の運用変更による)。事前打ち合わせの初期段階で取得してしまうと、内容の調整や証人の日程調整に時間がかかった結果、作成当日までに有効期限が切れてしまうことがあります。

⚠️ よくある失敗
・打ち合わせの初回に印鑑登録証明書を取得し、そのまま作成日まで3ヶ月以上経ってしまった
・戸籍謄本も同様に、取得から時間が経ちすぎていた
→ 有効期限切れが判明すると、作成当日にその場で完成させられず、書類の取り直しと日程の再調整が必要になります。
🔍 当窓口の相談から
事前の打ち合わせが始まった段階で印鑑登録証明書を取得したものの、その後の文案調整や証人の都合で作成日が1〜2ヶ月先になってしまい、いざ作成当日になって「証明書の有効期限が切れている」と指摘され、日程を組み直すことになった——というご相談は少なくありません。印鑑登録証明書と戸籍謄本は、書類の中でも有効期限のある例外的な存在です。作成日がある程度固まってから取得するくらいでちょうどよいと考えておくと、こうしたやり直しを避けやすくなります。なお、有効期限の考え方や運用は役場によって異なる場合があるため、「いつまでに取得すればよいか」は打ち合わせの際に必ず確認してください。(当窓口に寄せられた相談をもとに再構成した典型例です)

こんな方は、専門家に頼らず自分で書類を揃えられます

相続人がご自身を含めて1〜2人で、財産も自宅と預貯金程度、家族関係もシンプル——そんな方は、上記の書類リストに沿ってご自身で集めれば十分です。無理に行政書士や司法書士へ依頼する必要はありません。まずは「本人確認書類」「財産資料」「戸籍謄本」の3つを、最寄りの公証役場の案内に沿って揃え、直接予約を取ってみてください。

セルフチェック:書類準備にどれだけサポートが必要か

当てはまる数をかぞえてみてください

☐ 不動産の名義が先代のままなど古い、または不動産を複数所有している

☐ 本籍地を過去に何度も移していて、戸籍謄本をどこで取ればいいか把握していない

☐ 証人を誰に頼むか、まだ決まっていない

☐ 平日の日中に、法務局や市区町村役場へ行く時間を確保するのが難しい

0個 → ご自身で書類を揃え、手続きを進められる可能性が高い状況です。最寄りの公証役場に予約し、指示された書類を集めてみてください。

1〜2個 → 書類収集の一部でつまずきやすい論点があります。下の診断で、あなたに合った生前対策の進め方を確認しましょう。

3個以上 → 書類集め・証人手配・戸籍の読み解きなど、専門家と一緒に整理した方が早い状況です。

上のチェックで該当が0個だった方は、専門家に依頼しなくてもご自身で書類を集め、手続きを進められる可能性が高い状況です。無理に相談される必要はありません。まずは最寄りの公証役場に問い合わせてみてください。

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よくある質問

書類の取得にはどのくらい費用がかかりますか?

印鑑登録証明書1通300円程度、戸籍謄本1通450円程度、登記事項証明書1通600円程度が目安です(自治体・法務局により異なります)。合計しても数千円程度で、財産額に応じてかかる公証人手数料とは別の実費です。

まだ元気なので、書類を集めるのは早すぎる気がします。

早すぎるということはありません。判断能力がしっかりしているうちに準備を進めるからこそ、公正証書遺言は後から「無効だ」と争われにくくなります。書類集めだけでも先に始めておくと、実際に内容を固める段階がスムーズです。

家族に「遺言の準備をしている」と言い出しにくいのですが。

書類集めの段階では、家族に内容を伝える必要は必ずしもありません。まずはご自身で「本人確認書類」「財産資料」を確認するところから始め、証人や内容の相談が必要になった段階で、信頼できる専門家に相談する方法もあります。

印鑑登録証明書や戸籍謄本は、いつ頃取得すればいいですか?

有効期限の目安(概ね3ヶ月以内)を踏まえ、作成日がある程度固まってから取得するのが安全です。打ち合わせの早い段階で取ってしまうと、期限切れで当日やり直しになることがあります。

証人が作成当日に来られなくなったらどうなりますか?

証人2人の立会いがなければ、その日の作成はできません。予備の証人を含めて事前に確保しておくか、公証役場に紹介を依頼しておくと、当日慌てずに済みます。

まとめ

公正証書遺言の必要書類は、「本人確認書類」「財産資料」「戸籍謄本」「証人の本人確認書類」の4つに整理できます。事前の打ち合わせから作成当日までは、専門家に依頼する場合で概ね2週間〜1ヶ月程度、ご自身で進める場合は1〜2ヶ月程度みておくと安心です(役場や案件によって前後します)。当日の所要時間はおよそ30分前後。とくに印鑑登録証明書と戸籍謄本は有効期限があるため、作成日が固まってから取得するのが安全です。まずは最寄りの公証役場に問い合わせ、必要書類を確認するところから始めてみてください。

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🛡️ 書類を揃えて遺言を作っても残る「現金」の問題

本人確認書類や財産資料を揃えて公正証書遺言を作っても、遺言では「誰に何を渡すか」までしか決められません。遺留分の請求・代償金・相続税の納税資金といった「渡すための現金」は別に用意する必要があります。準備の方法として生前贈与・預貯金の取り分け・生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)などがあり、活用法は生命保険と相続に関する完全ガイドで解説しています。相続に詳しい保険の相談先をお探しの場合は、複数社を比較できる提携代理店をご紹介することも可能です。

※ご紹介にあたり、当社が提携代理店から紹介料を受け取る場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税額計算や特定の保険商品の推奨を行うものではありません。税務・法的な判断が必要な場合は、税理士・弁護士など専門家にご確認ください。


本記事は司法書士 今井裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。掲載情報は作成時点(2026年7月)の公開情報にもとづき、公証人手数料は2025年10月改定後の内容です。必要書類・有効期限の運用・手数料・公証役場の対応は変更されることがあるため、作成前に必ず各公証役場または日本公証人連合会の公式サイトで最新の情報をご確認ください。個別の判断は弁護士・税理士など専門家にご相談ください。なお、提携保険代理店をご紹介する場合、当社が紹介料を受け取ることがあります。

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この先どうするか、決めかねている方へ

当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。実際の手続きをご依頼になる場合は、提携先の専門家が有償で承ります。ご希望に応じて提携先をご紹介した際に紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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