公証役場のホームページで手数料表を見て、だいたいの金額は分かった気になっていました。ところが実際に相談の予約を取り、担当者から見積りを聞くと、想定していた金額より数千円〜1万円ほど高い。「これは何の費用ですか」とたずねると、聞き慣れない加算項目がいくつも出てくる——。公正証書遺言の費用は、早見表の金額だけでは終わらないことが少なくありません。
📝 この記事の結論(30秒まとめ)
公正証書遺言の費用は「基本手数料」だけでは決まりません。次の項目が上乗せされます。
① 基本手数料…目的財産の価額を受け取る人ごとに算出し合算(早見表は本文参照)
② 遺言加算…財産総額が1億円以下なら+13,000円(2025年10月に11,000円から引き上げ)
③ 証書枚数の加算…出力枚数が3枚を超えると、超過1枚ごとに300円
④ 正本・謄本の交付手数料/出張費用…書面1枚300円・電子データ1件2,500円、出張時は日当2万円+交通費+基本手数料5割増
本当の不安は、金額の大小そのものではなく、”見積りを聞くまで、実際にいくらかかるか分からない”という点かもしれません。基本手数料は早見表で調べられても、遺言加算・証書の枚数・正本謄本・出張の有無まで含めた合計額は、財産の分け方や書き方次第で変わります。だからこの記事では、公証人手数料令にもとづく早見表に加えて、見落としやすい加算項目を1つずつ整理し、ケース別の試算イメージまで分かるようにしました。
公正証書遺言の費用はどう決まる?目的財産の価額別 早見表
公正証書遺言でまず発生するのが、公証役場に支払う公証人手数料(基本手数料)です。手数料は「目的の価額」、つまり遺言によってその人が受け取る財産の額に応じて決まります。しかも受け取る人ごとに算出して合算する仕組みのため、財産の総額が同じでも、渡す相手の人数が多いほど手数料は積み上がります。以下は2025年10月改定後の早見表です。
たとえば財産3,000万円をすべて配偶者に渡す場合の基本手数料は26,000円ですが、同じ3,000万円を配偶者・長男・長女の3人に1,000万円ずつ分ける場合は、20,000円×3人=60,000円になります。財産額だけでなく「何人に、どう分けるか」が総額を左右する点は見落とされがちです。
なお、遺言でどれだけ丁寧に財産を分けても、遺留分の請求や代償金・相続税の納税資金といった”渡すための現金”までは、遺言だけでは用意できません。この論点は公正証書遺言を作る前に知っておきたい4つの盲点|遺留分・代償金・納税で詳しく解説しています。
遺言加算・正本謄本の交付手数料も忘れずに
先ほどの早見表で算出した基本手数料の合計に、次の2つが上乗せされます。
・遺言加算…財産の総額(すべての受遺者の合計)が1億円以下のときに13,000円加算されます(2025年10月の改定で11,000円から引き上げられました)。
・正本・謄本の交付手数料…遺言者本人には原則、正本1通・謄本1通が交付されます。手数料は電子データなら1件2,500円、書面なら1枚につき300円です。原本は公証役場が保管するため、必要に応じて追加の謄本も請求できます(その都度手数料がかかります)。
手数料は通常、作成当日に遺言者本人が公証役場の窓口で支払います。事前相談の段階で、財産の内容と分け方を伝えれば概算を教えてもらえるので、当日いきなり請求されて戸惑うことは避けられます。実際に名古屋市内の公証役場で手続きする場合の予約方法や必要書類は、名古屋の公証役場(葵町・熱田・名古屋駅前)で公正証書遺言を作るときに後悔しやすい7つの落とし穴で解説しています。
見落としやすい「証書の枚数」による追加手数料
意外と知られていないのが、証書の枚数による加算です。2025年10月の改定以降、公正証書は原則電子データで作成・保存され、それを紙に出力した場合の枚数が3枚を超えるときは、超える1枚ごとに300円が加算されます。金額自体は大きくありませんが、「早見表の金額だけを見積もっていたのに、当日の請求額が違う」という食い違いの正体になりやすい項目です。
枚数が増えやすいのは、財産の種類が多い方、受け取る相手(受遺者)が多い方、「誰に何を渡すか」を細かく条件付けしたい方、付言事項を長く書きたい方です。財産目録や条項が増えるほど、証書全体の分量も増えていきます。
不動産が複数、預貯金の口座も5つ以上、相続人も4人——というケースで、「誰にどの財産を渡すか」を1つずつ丁寧に書き分けた結果、証書が想定より2〜3枚多くなり、枚数加算分で数百円〜1,000円程度、見積りより上乗せされていたという例がありました。金額自体はわずかですが、”基本手数料しか見積もっていなかったのに、当日の金額が違う”という食い違いそのものが不安の種になります。財産の種類や相続人の数が多い遺言ほど、証書の枚数は増えやすいと覚えておくと安心です。(当窓口に寄せられた相談をもとに再構成した典型例です)
遺言の内容をどこまで丁寧に、どこまで詳しく書き込むかは、自筆証書遺言との比較でも判断材料になります。公正証書遺言と自筆証書遺言はどっちがいい?費用・手間・確実性で比較もあわせてご覧ください。
公証人の出張費用(日当・交通費・手数料5割増)
体調不良や入院中などの事情で公証役場に出向けない場合は、公証人に自宅や病院まで出張してもらうことができます。ただし、この場合は手数料に次の加算が発生します。
・基本手数料の5割増…遺言加算を除いた、目的価額による基本手数料額が1.5倍になります(遺言加算13,000円はそのまま加算)。
・日当…1日20,000円(4時間以内は10,000円)。
・交通費…実費。
出張が必要かどうかは、体調や移動の負担を踏まえて公証役場に早めに相談しておくと安心です。体調面の不安から、判断能力があるうちに将来の備えをまとめて整理しておきたい方は、任意後見契約を公証役場で作る完全ガイド|費用の目安・流れ・遺言や家族信託との違いもご参考ください。
費用の試算イメージ:ケース別シミュレーション
💰 試算のイメージ(あくまで目安・概算)
ケースA:財産3,000万円を配偶者ひとりに
基本手数料26,000円+遺言加算13,000円=39,000円程度+正本・謄本の交付手数料。
ケースB:財産6,000万円を配偶者3,000万円・長男2,000万円・長女1,000万円に
26,000円+26,000円+20,000円=72,000円+遺言加算13,000円=85,000円程度。受遺者が多く条項も増えるため、証書の枚数加算(1枚300円)が発生することもあります。
ケースC:ケースAと同条件で、体調面から自宅へ出張してもらう場合
基本手数料26,000円の5割増=39,000円+遺言加算13,000円=52,000円+日当20,000円+交通費実費。合計7万円台〜が目安です。
上記はあくまで一般的な計算例であり、実際の手数料は財産の種類・評価額・条項の書き方によって変動します。正確な見積りは、必ず作成を依頼する公証役場、または日本公証人連合会の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
こんな方は、追加費用をそこまで心配しなくても大丈夫です
ここまで加算項目を並べると身構えてしまいますが、すべての方に大きな上乗せが発生するわけではありません。次のような方は、基本手数料と遺言加算の範囲でおおむね収まることが多く、過度に心配する必要はありません。
・財産の大部分が預貯金など、評価額が明確なもの
・渡す相手(受遺者)が1〜2人とシンプル
・付言事項も含めて、遺言の分量がそれほど多くならない見込み
・体調面に不安がなく、公証役場まで出向ける
該当する方は、証書の枚数加算や出張費用まで心配しすぎる必要はありません。まずは早見表で基本手数料の目安をつかめば十分です。無理に追加費用を見込んで、相談自体を先延ばしにする必要はありません。
セルフチェック:追加費用が膨らみやすいのはこんなケース
当てはまる数をかぞえてみてください
☐ 不動産を2件以上所有している
☐ 財産を渡す相手(受遺者)が4人以上いる
☐ 相続人が3人以上、または関係が複雑(前婚の子・疎遠な相続人など)
☐ 体調面などの事情で、公証役場に出向くのが難しい
0個 → 基本手数料+遺言加算の範囲でおおむね収まる可能性が高い状況です。
1〜2個 → 証書の枚数加算や出張費用が発生する可能性があります。事前に見積りを確認しておきましょう。
3個以上 → 財産や家族関係の整理を含めて、生前対策全体を一度整理したほうが安全です。
該当が0個だった方は、無理に追加費用を心配して専門家に依頼する必要はありません。早見表の金額を目安に、まずはお近くの公証役場へ直接お問い合わせください。
よくある質問
手数料は誰が、いつ支払うのですか?
通常、遺言者本人が作成当日に公証役場の窓口で支払います。事前に見積りを聞き、必要な金額を準備しておくとスムーズです。
正確な見積り額はどうすれば分かりますか?
財産の内容(不動産の評価額・預貯金残高など)と、誰にどう分けるかが決まれば、公証役場が概算を提示してくれます。早見表で大まかな目安はつかめますが、最終的な金額は必ず作成を依頼する公証役場にご確認ください。
費用が心配で、なかなか踏み出せません。
「思ったより高いのでは」と身構えて、相談すること自体を避けてしまう方は少なくありません。ただ、実際にいくらかかるかは、財産の内容を伝えるだけで概算が分かります。まずは金額を知ることから始めても遅くはありません。
まだ元気なので、もう少し先でもいいですか?
「まだ早い」と先延ばしにするうちに、判断能力の心配が出てくると、公正証書遺言そのものが作れなくなることもあります。早く動いたからといって費用が変わるわけではないため、判断力に不安がないうちに検討しておくと安心です。
家族に「遺言を書いた」と言い出しにくいのですが。
費用の話も含めて、家族に切り出しにくいと感じる方は多くいらっしゃいます。「万一のときに、みんなが困らないように整理しておきたい」という伝え方であれば、身構えられにくくなります。専門家に同席してもらい、第三者から説明してもらう方法もあります。
手数料以外に、追加で用意しておくべき費用はありますか?
公証人手数料のほかに、遺言の内容によっては遺留分侵害額請求への備えや、代償金・相続税の納税資金といった”渡すための現金”が別途必要になる場合があります。詳しくは公正証書遺言を作る前に知っておきたい4つの盲点|遺留分・代償金・納税で解説しています。
まとめ
公正証書遺言の費用は、目的財産の価額で決まる基本手数料に、遺言加算・証書の枚数加算・正本謄本の交付手数料、必要に応じて出張費用が上乗せされる仕組みです。加算項目をあらかじめ知っておけば、見積りを聞いたときに”想定外”と感じることは少なくなります。正確な金額は財産の内容によって変わるため、最終的には必ず公証役場または日本公証人連合会で最新の情報をご確認ください。
🛡️ 手数料を払っても、遺言では用意できない「現金」の問題
公証人手数料を支払って公正証書遺言を作っても、遺留分侵害額請求への支払い・代償金・相続税の納税資金といった”渡すための現金”は、遺言だけでは用意できません。準備の方法として生前贈与・預貯金の取り分け・生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)などがあり、活用法は生命保険と相続に関する完全ガイドで解説しています。相続に詳しい保険の相談先をお探しの場合は、複数社を比較できる提携代理店をご紹介することも可能です。
※ご紹介にあたり、当社が提携代理店から紹介料を受け取る場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税額計算や特定の保険商品の推奨を行うものではありません。税務・法的な判断が必要な場合は、税理士・弁護士など専門家にご確認ください。
本記事は司法書士 今井裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。掲載情報は作成時点(2026年7月)の公開情報にもとづき、公証人手数料は2025年10月改定後の内容です。手数料・制度・公証役場や法務局の運用は変更されることがあるため、作成前に必ず各公証役場・日本公証人連合会または法務局の公式サイトで最新の情報をご確認ください。個別の判断は弁護士・税理士など専門家にご相談ください。なお、提携保険代理店をご紹介する場合、当社が紹介料を受け取ることがあります。
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この先どうするか、決めかねている方へ
当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。実際の手続きをご依頼になる場合は、提携先の専門家が有償で承ります。ご希望に応じて提携先をご紹介した際に紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。