公正証書遺言の証人は誰に頼む?なれない人・見つからないときの対処法

「そろそろ遺言を、確実な公正証書で残しておこう」。そう決めて調べ始めた矢先、「証人が2人必要」という一文で手が止まった——。子どもに頼めば内容を先に知られてしまうし、かといって友人に「遺言の証人を」とは切り出しにくい。誰に、どこまで打ち明ければいいのか。準備を始めたはずが、最初の一歩でつまずいてしまう方は少なくありません。

📝 この記事の結論(30秒まとめ)

公正証書遺言には、作成の場に立ち会う証人が2人以上必要です(民法969条)。ただし「財産を受け取る側の家族」は証人になれません。

推定相続人・受遺者と、その配偶者・直系血族…配偶者・子・孫など、財産を受け取る立場の人は証人になれません(民法974条)。

未成年者、公証人の関係者…未成年者や、公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人も証人になれません。

頼める人がいないとき…公証役場に紹介を依頼(1人あたり6,000〜10,000円程度が目安)するか、守秘義務のある専門家に依頼できます。

最大の注意点…欠格者を証人にすると、遺言そのものが無効になるおそれがあります。「誰でもいい」わけではありません。

証人でつまずく方の本当の不安は、「2人が見つからないこと」よりも、「遺言の中身を身近な人に知られてしまうこと」にあることが多いものです。誰に何を残すかは、家族にこそ言いにくい。だからこの記事では、証人の要件を確認したうえで、内容を知られずに証人を用意する方法と、証人選びで遺言を無効にしないための注意点まで分かるようにしました。

目次

公正証書遺言に証人が2人必要な理由

公正証書遺言は、遺言者が口頭で伝えた内容を公証人が文章にまとめる、もっとも確実性の高い遺言です。法律の専門家である公証人が関与するうえ、その作成の場に証人2人以上の立会いが法律で義務づけられています(民法969条)。証人は「見届け役」であり、次の3つを確認します。

証人が確認する3つのこと
① 遺言をしているのが、本人(遺言者)本人であること(なりすましでないこと)
② 遺言が、本人の自由な意思にもとづいていること(誰かに強要されていないこと)
③ 公証人が読み上げた内容が、本人の話したとおり正確であること

証人は、完成した遺言書に署名・押印します。つまり「この遺言は、確かに本人の意思で、正しく作られた」ことを見届ける役割です。逆に言えば、この立会いがあるからこそ、公正証書遺言は後から「無理に書かされた」と争われにくいのです。

証人になれない人(民法974条)

誰でも証人になれるわけではありません。民法974条は、次の人を証人になれない人(欠格者)と定めています。特に注意したいのは、財産を受け取る側の家族が軒並み除外される点です。

証人に「なれる」人の例

友人・知人(利害関係のない人)

甥・姪など、相続人にあたらない親族

行政書士・司法書士・弁護士などの専門家

会社の同僚・取引先など第三者

証人に「なれない」人(民法974条)

推定相続人(配偶者・子・親など相続する立場の人)

受遺者(遺言で財産を受け取る人)

上記の配偶者・直系血族(子の配偶者・孫など)

未成年者

公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人

つまり、妻や夫、子ども、孫といった「いちばん身近で頼みやすい家族」は、まず証人になれません。財産を受け取る立場の人が立ち会うと、遺言の公正さが疑われるためです。ここが、証人集めでつまずく最大の理由です。なお、地域の公証役場でどんな流れで作成するか(証人が同席する場面を含む)は、名古屋の公証役場で公正証書遺言を作るときに後悔しやすい7つの落とし穴でも具体的に触れています。

頼める人がいない・知られたくないときの3つの対処法

身近に頼める人がいない、あるいは内容を知られたくない場合でも、方法は3つあります。それぞれ費用と「秘密の守りやすさ」が違います。

依頼先 費用の目安 内容の秘密
信頼できる知人・親族
(相続人以外)
無償〜1人5,000〜10,000円の謝礼 その知人に内容を知られる
公証役場に紹介を依頼 1人あたり6,000〜10,000円程度 面識のない第三者が立会い
専門家(行政書士・司法書士・弁護士) 遺言作成サポート込みで数万円〜 守秘義務があり安心

「内容を絶対に知られたくない」なら、守秘義務のある専門家に依頼するのが最も安心です。公証役場の紹介も、立ち会うのは面識のない第三者なので、身近な人に中身が伝わる心配はありません。費用も1人あたり1万円前後で、大きな負担にはなりにくい水準です。おひとりさまなど、証人だけでなく遺言の内容を実行してくれる人(遺言執行者)の確保も課題になる場合は、おひとりさまの相談事例も参考になります。

証人選びが遺言を無効にする「落とし穴」

見落とされがちですが、欠格者を証人にしてしまうと、遺言そのものが無効になるおそれがあります。たとえば「財産を渡す予定の孫」に軽い気持ちで立ち会ってもらった、というケースです。作成時には気づかず、相続が始まってから「証人が不適格だった」と判明すれば、費用と手間をかけた遺言が使えなくなりかねません。

⚠️ よくある失敗
・ 受遺者(財産をもらう人)を、そうと知らずに証人にしてしまった
・ 証人予定者が当日に来られなくなり、その場にいた家族を急きょ立会わせた
→ どちらも欠格事由に触れ、遺言全体が無効になるリスクがあります。当日に慌てないよう、証人は「予備」も含めて事前に確保しておくと安心です。

公証役場に紹介を依頼すれば、こうした欠格の心配はまずありません。「誰に頼むか」で迷ったら、確実性を優先して公証役場や専門家に相談するのが安全です。証人選び以外にも公正証書遺言で後悔しやすいポイントは、公正証書遺言を作る前に知っておきたい4つの盲点|遺留分・代償金・納税にまとめています。

🔍 当窓口の相談から
「証人くらい身内で」と考えて親族に頼んだところ、後日その親族から他のきょうだいへ遺言の内容が伝わり、相続前から関係がぎくしゃくしてしまった——というご相談は少なくありません。証人は遺言の内容を知る立場です。内容を厳密に伏せたい場合は、守秘義務のある専門家に依頼するか、面識のない公証役場紹介の証人を使うのが安全です。(当窓口に寄せられた相談をもとに再構成した典型例です)

こんな方は、費用をかけて専門家に頼む必要はありません

利害関係のない信頼できる知人が2人確保でき、遺言の内容を知られても差し支えない——そんな方は、その知人に証人をお願いすれば十分です。無理に専門家へ依頼する必要はありません。まずは「身近に、相続人でない大人が2人いるか」を確認してみてください。証人が用意できるなら、あとは最寄りの公証役場に予約するだけで進められます。

セルフチェック:証人まわりで準備が必要か

当てはまる数をかぞえてみてください

☐ 配偶者・子・孫など「財産を受け取る家族」以外に、証人を頼める大人がいない

☐ 遺言の内容を、家族や身近な人に知られたくない

☐ そもそも遺言に何をどう書くか自体、まだ固まっていない

0個 → ご自身で証人を確保して作成を進められます。最寄りの公証役場に予約して問題ありません。

1〜2個 → 証人の手配か内容整理のどちらかで、準備しておくと安心な論点があります。下の診断で、あなたに合った生前対策を確認しましょう。

3個 → 証人の確保・内容の整理・専門家の要否を一度に整理したほうが早い状況です。

上のチェックで該当が0個だった方は、専門家に依頼しなくてもご自身で証人を用意して手続きを進められる可能性が高い状況です。無理にご相談される必要はありません。

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よくある質問

証人には必ず費用がかかりますか?

知人・親族に無償で引き受けてもらえば、証人自体の費用はかかりません。ただし謝礼として1人5,000〜10,000円程度を渡す方が多く、公証役場に紹介を頼む場合も同水準の実費がかかります。なお、この証人の費用と、財産額に応じてかかる公証人手数料は別ものです。

家族に証人を頼んではいけないのですか?

財産を受け取る立場の家族(配偶者・子・孫や、遺言で財産をもらう人)は証人になれません。一方、相続人にあたらない親族(たとえば甥・姪)であれば証人になれる場合があります。判断に迷うときは、事前に公証役場へ確認しておくと安心です。

「まだ元気だから遺言は早い」と感じます。証人まで準備が必要ですか?

早すぎるということはありません。むしろ判断能力がしっかりしているうちに作るからこそ、公正証書遺言は後から争われにくくなります。証人の手配は作成日の前に整えれば十分なので、まずは「誰に何を残すか」の整理から始めれば大丈夫です。

証人に遺言の全部を見られてしまいますか?

証人は作成に立ち会うため、内容を知る立場になります。どうしても内容を伏せたい場合は「秘密証書遺言」という方式もありますが、確実性は公正証書に劣ります。実務では、守秘義務のある専門家か、公証役場が紹介する第三者を証人にする方法が多く選ばれています。

証人が当日来られなくなったらどうなりますか?

証人2人の立会いがなければ、その日の作成はできません。予備の証人を含めて事前に確保しておくか、あらかじめ公証役場に紹介を依頼しておくと、当日慌てずに済みます。

まとめ

公正証書遺言の証人は「2人以上」で、財産を受け取る側の家族は頼めません。頼める人がいなくても、公証役場の紹介(1人1万円前後)や、守秘義務のある専門家に依頼すれば解決できます。むしろ大切なのは、欠格者を立てて遺言を無効にしないこと。「誰に頼むか」で迷ったら、確実性を優先して公証役場や専門家に相談するのが安全です。

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🛡️ 遺言と証人がそろっても残る「現金」の問題

証人を用意し公正証書遺言を作っても、遺言では「誰に何を渡すか」までしか決められません。遺留分の請求・代償金・相続税の納税資金といった「渡すための現金」は別に用意する必要があります。準備の方法として生前贈与・預貯金の取り分け・生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)などがあり、活用法は生命保険と相続に関する完全ガイドで解説しています。相続に詳しい保険の相談先をお探しの場合は、複数社を比較できる提携代理店をご紹介することも可能です。

※ご紹介にあたり、当社が提携代理店から紹介料を受け取る場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税額計算や特定の保険商品の推奨を行うものではありません。税務・法的な判断が必要な場合は、税理士・弁護士など専門家にご確認ください。


本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。掲載情報は作成時点(2026年7月)の公開情報にもとづきます。証人の費用相場や公証役場の運用は変更されることがあるため、作成前に必ず各公証役場または日本公証人連合会の公式サイトで最新の情報をご確認ください。個別の判断は弁護士など専門家にご相談ください。なお、提携保険代理店をご紹介する場合、当社が紹介料を受け取ることがあります。

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この先どうするか、決めかねている方へ

当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。実際の手続きをご依頼になる場合は、提携先の専門家が有償で承ります。ご希望に応じて提携先をご紹介した際に紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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