定年で退職した翌年の2月、まわりから「退職した年は確定申告をしたほうがいい」と聞いて、何をすればいいのか迷う方は多いものです。退職金の明細を見ても、申告が必要かどうかは書かれていません。
この記事では、退職金を受け取った人が確定申告をする必要があるかを、「退職所得の受給に関する申告書」を出したかどうかで分けて整理します。国税庁の公開情報(令和8年4月1日現在の法令等)をもとに、2026年10月24日に確認しました。あなたの場合に申告が必要かどうかの判断や、申告書の作成は行いません。
先に結論:申告書を出していれば、退職金の確定申告は原則いらない
この記事の結論
- 出していれば不要:「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先に出していれば、退職金の税金は受け取るときに精算が済み、原則として確定申告はいりません。
- 出していなければ精算:支給額の20.42%が引かれます。確定申告をすると、多くの場合は払いすぎた分が戻ります。還付を受けるための申告は5年以内です。
- 給与の分は別に見る:年の途中で辞めて再就職しなかった人は、年末調整を受けていない給与の税金が、確定申告で戻ることがあります。
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「退職所得の受給に関する申告書」とは
退職金を受け取る人が、支払う勤め先に出す書類です。勤続年数や、同じ年・前の年までに受け取った退職金の有無を書きます。勤め先はこの内容をもとに退職所得控除を計算し、正しい税額を差し引きます。
- どこでもらうか:多くは、退職の手続きのときに勤め先から渡されます。
- いつ出すか:退職金の支払いを受けるときまでに、勤め先に出します。
- 住民税の分も兼ねる:国税庁の様式は「退職所得の受給に関する申告書 兼 退職所得申告書」で、住民税の申告もあわせた書類です。
- 前に受け取った退職金がある人:その源泉徴収票を添えます。iDeCoや企業型DCの一時金も同じ扱いです。
iDeCoなどの一時金と退職金の両方を受け取る人は、受け取る順番で控除の扱いが変わります。2026年からの見直しは退職金とiDeCoの受け取り順で説明しています。
申告書を出していないと、引かれる額はこれだけ違う
国税庁は、支給額800万円・勤続10年2か月の例を示しています。勤続年数は切り上げて11年、控除額は440万円です。
出し忘れていても、取り返しがつかないわけではありません。確定申告をすれば、申告書を出した場合と同じ計算に直せます。退職金の額や勤続年数ごとの税額の目安は退職金の税金の早見表で確かめられます。
確定申告で精算するときの手順
- 書類をそろえる。退職所得の源泉徴収票、その年の給与の源泉徴収票、年金を受け取っていればその源泉徴収票、マイナンバーがわかるもの、還付金の振込先の口座です。
- 申告の時期を確かめる。確定申告の期間は原則として翌年2月16日から3月15日までです(No.2020)。還付を受けるためだけの申告なら、翌年1月1日から5年間出せます(No.2030)。
- 作り方を決める。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作るか、所轄の税務署の案内に沿って作ります。わからない点は、税務署に電話して一般的な扱いを聞けます。
- 出したあと。還付になる場合は、指定した口座に振り込まれます。
申告書の書き方を個別に見てもらいたい、自分の場合の税額を計算してほしいというときは、税理士に依頼することになります。当社では申告書の作成や税額の判断は行っていません。
年の途中で辞めた人は、給与の分も見直す
退職金とは別に、給与の税金にも目を向けておきます。毎月の給与から引かれる所得税は、ふつうは12月の年末調整で過不足を精算します。年の途中で退職して、その年に再就職しなかった人は年末調整を受けられないため、税金を納めすぎていることがあります(No.1910)。
この場合も、確定申告(還付申告)で精算します。期限は、退職した年の翌年から5年以内です。たとえば3月末に定年退職し、そのあと働いていない人は、給与の源泉徴収票を手元に置いておくと安心です。
今日できる一歩
- 退職所得の源泉徴収票を出し、「源泉徴収税額」が支給額の約20%かを見る
- 約20%なら、勤め先に申告書の提出状況を聞く
- 給与の源泉徴収票と一緒に、クリアファイル1つにまとめておく
退職した年は、健康保険や年金の切り替え、住民税の払い方など、税金のほかにも期限のある手続きが重なります。全体の順番は退職金をもらったらすることの手続き表で確かめられます。還付で戻ったお金も含めて、退職金の運用をすぐに決める必要はありません。急がないほうがよい理由は退職金をいきなり運用しないほうがいい理由にまとめています。何から手をつけるかを一緒に整理したい方は、30分の無料相談もご利用ください。
よくある質問
申告書を出したかどうか、思い出せません
源泉徴収票の「源泉徴収税額」を見ます。支給額のおよそ20%が引かれていれば、出していない可能性があります。勤め先の退職金担当に提出状況を聞くのが確実です。
退職金が控除の範囲内で、税金が0円でした。申告は要りますか
申告書を出していて税金が0円なら、退職金について確定申告をする必要は原則ありません。給与や医療費など、ほかの理由で申告する場合は別に考えます。
確定申告をしないと、どうなりますか
申告書を出さずに20.42%が引かれた人が申告しないと、払いすぎた分は戻りません。還付を受けるための申告は5年以内です。反対に、税金が不足している人が申告しないと、あとから本来の税金に加えて加算税などがかかることがあります。
退職金の住民税は、翌年に請求されますか
退職金の住民税は、勤め先が支払うときに差し引いて納める仕組みです(名古屋市の案内)。翌年に届く住民税の通知は、主に働いていた年の給与の分です。退職後の住民税の払い方で整理しています。
参考にした公的情報
- 国税庁 タックスアンサーNo.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.2732 退職手当等に対する源泉徴収
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1910.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.2020 確定申告/No.2030 還付申告
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm - 国税庁 高齢者と税(年金と税)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_1.htm - 名古屋市 退職所得に係る市民税・県民税特別徴収税額の個人別内訳書
https://www.city.nagoya.jp/jigyou/zei/1037360/1011914/1011917/1011919.html
※本記事は2026年10月24日時点で確認した公的機関の公開情報(国税庁は令和8年4月1日現在の法令等)にもとづく一般的な説明です。あなたの場合に確定申告が必要かどうかの判断や、申告書の作成は行いません。個別のご事情は、税務署または税理士にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー) 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。申告の要否や税額は、税務署または税理士にご確認ください。