60歳でiDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金で受け取り、65歳で会社の退職金を受け取る。こうした順番で考えていた方は、2026年からの見直しを一度確かめておくと安心です。以前は「5年あければ大丈夫」と言われていた受け取り方が、2026年1月以後は前提から変わりました。
この記事では、iDeCoや企業型DC(企業型確定拠出年金)の一時金と、会社の退職金を両方受け取るときの税金の扱いを、受け取る順番ごとに整理します。国税庁の公開情報(令和8年4月1日現在の法令等)をもとに、2026年10月24日に確認しました。どの順番が得かの判断や、あなたの場合の税額の計算は行いません。
先に結論:一時金どうしは控除を分け合う。iDeCoが先なら「9年」に注意
この記事の結論
- 同じ控除を分け合う:iDeCo・企業型DCの一時金も、会社の退職金も「退職所得」です。期間が重なる分は、控除を二重に使えないよう調整されます。
- iDeCoの一時金が先なら9年:2026年1月1日以後に受け取った一時金は、その後9年以内(受け取る年の前年以前9年内)に退職金を受け取ると調整の対象です。以前は4年でした。
- 退職金が先なら19年のまま:退職金を先に受け取り、あとでiDeCoの一時金を受け取る順は、以前から「前年以前19年内」で変わっていません。
受け取る時期と置き場所を、決める前に30分で整理
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iDeCoの一時金と退職金は、同じ控除を分け合う
iDeCoや企業型DCの老齢給付金を一時金で受け取ると、税金の上では退職金と同じ「退職所得」とみなされます(国税庁 No.1420)。どちらにも、年数に応じた「退職所得控除」が使えます。
ただ、会社に勤めていた期間と、iDeCoなどの掛金を出していた期間は、たいてい重なっています。重なった期間について控除を2回使えると、同じ年数を二重に数えることになります。そこで、決められた期間内に両方を受け取ると、あとから受け取る分の控除から、重なった年数に当たる額を差し引きます(国税庁 No.2735)。
考え方の例
勤続38年の会社員が、そのうち20年間iDeCoに掛金を出していたとします。先にiDeCoを一時金で受け取り、調整の対象になる時期に退職金を受け取ると、退職金の控除2,060万円から、重なった20年分の控除額(800万円)を差し引き、1,260万円で計算します。調整の対象外の時期なら、退職金は2,060万円の控除をそのまま使えます。
※しくみを説明するための単純化した例です。実際の重なりの年数は、勤め先と金融機関の書類で確かめます。
2026年1月から変わった点:受け取る順番ごとの期間
令和7年度の税制改正で、確定拠出年金の一時金を先に受け取る場合の期間が延びました。国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」では、令和8年(2026年)分以後の所得税から適用されるとしています。
「前年以前4年内」なら、一時金を受け取った年の5年後に退職金を受け取れば調整の対象外でした。これが「5年ルール」と呼ばれていたものです。「前年以前9年内」になったことで、対象外になるのは10年後以降です。このため、改正後の扱いを「10年ルール」と呼ぶ記事もあります。
同じ改正で、支払う側の手続きも変わりました。2026年1月1日以後に支払う確定拠出年金の一時金については、受け取る人が出す「退職所得の受給に関する申告書」の保存期間が7年から10年に延びています。また、支払う側は、退職金を受け取ったすべての人の源泉徴収票を税務署に出すことになりました。
年表で見る:何年あけると調整されないか
2026年に60歳になる人を例に、受け取る年ごとの扱いを並べました。いずれも一時金で受け取る場合です。
iDeCoの老齢給付金は、原則60歳から75歳になるまでの間に受け取りを始めます(iDeCo公式サイト)。60歳で会社の退職金を受け取った場合、iDeCoの一時金を75歳まで遅らせても19年内に入るため、調整されない時期はほぼありません。退職金が先の人は「順番で調整を避ける」という考え方自体が当てはまりにくい、ということです。
iDeCoを年金で受け取ると、この調整はない
iDeCoを年金(5年以上20年以下の有期年金など)で受け取る分は退職所得ではなく、公的年金と合わせた「雑所得」です。退職金との控除の重なりは起きません。その代わり、公的年金等控除を超えた分に所得税と住民税がかかり、国民健康保険料などの計算にも入ります。一時金と年金の違いは退職金のもらい方|一時金・年金・併用の違いで比べています。
受け取る前に確かめる順番
どの順番がよいかは、退職金の額、勤続年数、iDeCoの資産額と加入期間、ほかの収入で変わります。一般論で決めず、次の順に材料をそろえてから相談先に持ち込むと話が早く進みます。
- 会社の退職金の支給予定を聞く。何歳で、いくら、一時金か年金か、勤続年数を何年で数えるかを、人事・総務の退職金担当に確認します。定年後の再雇用がある会社は、退職金がいつ支払われるかも聞きます。
- iDeCo・企業型DCの記録を見る。加入していた期間、資産額、受け取りを始められる年齢を、加入先の金融機関(運営管理機関)の通知やサイトで確かめます。加入期間が10年に満たないと、受け取りを始められる年齢が61歳以降になります。
- 受け取り方を選べる期限を聞く。一時金か年金か、併用かを選べるか、いつまでに決めるかは、制度と金融機関によって違います。
- 源泉徴収票を保管する。先に受け取った一時金や退職金の源泉徴収票は、あとから受け取るときの申告書に添えることがあります。2026年以後の一時金の申告書は保存期間が10年になったように、長い期間を前提にしたほうが安心です。
- 税額の比べ方は、税務署か税理士に確認する。税務署の電話相談では、一般的な扱いを聞けます。具体的な試算を頼むなら税理士です。
今日できる一歩
- 紙に「会社の退職金:◯歳」「iDeCo:◯歳から受け取れる」と2行書く
- 2つの年の差が9年以内か、どちらが先かを見る
- iDeCoの加入先の金融機関に、受け取り方を選ぶ期限を電話で聞く
受け取ったお金をどこに置くかは、税金とは別の話です。老後のお金の置き場所では、使う時期で分ける考え方を整理しています。一時金を受け取っても、運用をすぐに決める必要はありません。その理由は退職金をいきなり運用しないほうがいい理由にまとめています。70代から新しくiDeCoやNISAを始める意味があるかは70代のNISA・iDeCoをご覧ください。受け取る時期と、受け取ったお金の置き場所をまとめて整理したい方は、30分の無料相談で一緒に並べることもできます(税額の試算は行いません)。
よくある質問
2025年にiDeCoを一時金で受け取りました。改正の影響はありますか
9年に延びたのは、2026年1月1日以後に受け取る確定拠出年金の一時金です。2025年までに受け取った一時金は、従来どおり前年以前4年内で見ます。
調整の対象になると、損をするということですか
重なった期間の控除を二重に使えなくなる、という意味です。退職金とiDeCoの合計が控除の範囲に十分おさまる人は、調整されても税金がかからないこともあります。損得は金額しだいなので、早見表や試算で確かめます。
企業型DCと会社の退職金を同じ年に受け取る場合は?
同じ年に複数の退職所得を受け取る場合は、合計して計算し、勤続年数は重ならない期間を足して数えます(国税庁 No.2735)。あとから支払う側に、先に受け取った分の源泉徴収票を添えて申告書を出します。
本人が亡くなった場合のiDeCoはどうなりますか
加入者が亡くなると、遺族が死亡一時金を受け取ります。こちらは相続税の対象で、この記事の退職所得とは扱いが違います。iDeCoの死亡一時金は誰が受け取るかで整理しています。
参考にした公的情報
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」税制改正等の内容
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2026/pdf/01.pdf - 国税庁 タックスアンサーNo.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm - 国税庁 タックスアンサーNo.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm - 国税庁 高齢者と税(年金と税)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_1.htm - 国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html
※本記事は2026年10月24日時点で確認した公的機関の公開情報(国税庁は令和8年4月1日現在の法令等)にもとづく一般的な説明です。受け取る順番の有利・不利や、あなたの場合の税額・申告の要否を判断するものではありません。個別のご事情は、税務署または税理士に、制度の中身は勤め先と加入先の金融機関にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー) 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。特定の金融商品や受け取り方を勧めるものではありません。最終的な判断はご自身で行い、個別の税額は税務署または税理士にご確認ください。