相続によって家を取得した場合、その売却には多くの手続きと判断が求められます。初めての経験であれば、何から手を付けるべきか、どのように進めるべきか迷うことも多いでしょう。
この記事では、相続した家をお得に売却するための具体的な手順と注意点を、専門家の視点から徹底解説します。スムーズかつ有利に売却を進めるためのポイントを、ステップごとに詳しくご紹介します。
先に結論:売る前に決める4つのこと
この4つが決まらないと売却は前に進みません
家は売れない
現金化が基本
売る前に合意する
要件は事前に確認
決まったら → 査定 → 媒介契約 → 売買契約 → 引渡し → 譲渡所得の申告
※2026年8月時点の一般的な取扱いです。特別控除などの適用要件は物件の状況や売却時期により異なるため、税務署または税理士にご確認ください。
相続した家の売却でつまずくのは、値段の交渉より前の「決めていないこと」です。名義(相続登記)・売るか使うか・分け方・使える控除の4点を先に固めれば、あとは通常の不動産売却と同じ流れで進みます。とくに相続登記が終わっていない家は、買主が決まっても引渡しができません。
売却前に確認する相続手続き
売却の前に、相続手続きがどこまで終わっているかを確認します。順番は「遺産分割協議 → 相続登記 → 売却」で、ここは飛ばせません。名義が亡くなった方のままの家は、買主が決まっても引渡しができないためです。相続人が複数いるなら協議書に全員の署名と実印が要るので、遠方に相続人がいる場合はここに一番時間がかかると見ておいてください。
⚠️ 相続登記が終わるまで家は売却できません
遺産分割協議が整わなければ相続登記ができず、家の売却も進められません。また、相続税が発生する場合は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告と納税が必要です。売却代金を納税に充てるつもりなら、この10か月から逆算して動いてください。
売るか、持ち続けるかの判断基準
相続した家をどうするかは、家族の状況や資産運用の方針によって異なります。以下のポイントを参考に、売却するか保有するかを判断しましょう。
- 相続財産の大半が不動産であり、相続税の支払いが必要な場合
- 相続した不動産を利用する予定がない場合
- 公平に遺産を分割することが難しい場合
結論からお伝えすると、次の3つの要件が当てはまれば相続不動産を売却したほうが良いケースが多いです。1.相続人が複数いる。2.相続財産のうち7割以上が不動産である。3.相続不動産に住む予定の人がいない。
不動産を持つということで固定資産税の支払いや管理義務が発生するため、使う予定がない場合は現金化してしまう方が良いというケースは多いと思います。
もちろん、「今後もその不動産価格が上がると思っている」「相続した土地にアパートを建てて賃料収入を得る算段がある」など例外は存在しますので、立地や土地の特性、ご自身の経験を踏まえて適切なタイミングで判断する必要があります。
- 相続財産の中に現金が十分にあり、相続税の支払いも特に問題がなさそうなケース
- 相続した不動産に誰かが住むことが想定できる場合
- 不動産とその他の財産を公平に分割できる場合
逆に言えば、空き家になる可能性がなく、遺産分割と相続税の支払いも問題なくできる場合は今すぐに不動産を売却する必要性は低いと思われます。
売る前の準備:家の値段を把握する
相場を知らないまま業者に任せると、買い叩かれるか、いつまでも売れないかのどちらかになります。査定を頼む前に、自分で数字を持っておいてください。
不動産の価格にはまず4つの価格設定が存在します。原則的には下に行くほど高いですが、実勢価額については売り手と買い手の合意で決まることから、状況によっては路線価より低くなることもあり得ます。
固定資産税路線価
相続税路線価
公示価額
実勢価額
この中から少なくとも公示価額と実勢価額だけは調査しておくようにしましょう。近隣の不動産がどれくらいの値段で売られているかウェブで検索したり国土交通省のホームページより公示価額を調べてみましょう。
不動産査定の方法とポイント
自身で調べた上でさらに不動産の価値を詳細に把握するためには、不動産業者に査定を依頼します。査定には、「机上査定」と「訪問査定」がありますが、正確な価格を知るためには訪問査定を受けるのが良いでしょう。
査定は1社では判断できません。複数社から見積もりを取り、価格だけでなく売却戦略と担当者の説明の具体性を比べてください。
売却手続きの流れ(6ステップ)
相続した家を売却する流れ(6ステップ)
相続手続きを済ませる
遺産分割協議をまとめ、法務局で相続登記を行って家の名義を相続人に変更します。協議が整わなければ売却は進められません。
家の価値を正確に把握する
公示価額や近隣の売却相場を自分で調べたうえで、複数の不動産業者に査定(机上査定・訪問査定)を依頼して比較します。
不動産業者を選び媒介契約を結ぶ
実績や口コミ、担当者の対応力を確認して業者を選びます。媒介契約には専属専任・専任・一般の3種類があります。
売買契約を締結する
重要事項説明書の内容をしっかり確認し、理解しにくい箇所は不動産業者に確認します。
引渡し
物件の状態確認や残代金の受領を行います。設備や備品の引渡し条件は事前に取り決めておきましょう。
売却後の税務申告
譲渡所得税の申告や住民税の支払いなど、税務上の手続きを忘れずに行います。
媒介契約は3種類。専属専任は慎重に
売却を依頼するときに結ぶ媒介契約には、専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の3種類があります。専属専任媒介契約は他の業者に重ねて依頼できないため、実績や担当者の対応を確かめたうえで判断してください。地方の相続物件では、地域に密着した業者のほうが売却事例の情報が具体的なことが多いです。
売却でかかる税金と使える特例
売却でかかる税金
売却して利益(譲渡所得)が出た場合に、譲渡所得税と住民税がかかります。課税されるのは売却額そのものではなく、売却額から取得費と譲渡費用を差し引いた額です。
税金を抑えられる可能性のある特例
居住用財産を売ったときの3,000万円特別控除は、要件を満たせば売却益から3,000万円を差し引ける制度です。相続した家では、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例が使える場合もあります。ほかに譲渡損失の繰越控除、特定居住用財産の買換え特例などがあります。
いずれも適用要件が細かく、建築時期・売却時期・同居の有無・売却価格などで結論が変わります。売る前に、どの特例が使えそうかを税務署または税理士に確認してください。売った後では選べなくなる特例もあります。
特例には「売却の期限」がある
相続した家の特例は、多くが期限付きです。代表的な2つの目安は次のとおりです。
- 取得費加算の特例(払った相続税の一部を取得費に加算できる):相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに売却
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除:相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。つまり取得費加算の特例は、亡くなってからおよそ3年10か月が目安になります。どちらも家の建築時期や利用状況などの要件があり、制度の内容は改正されることがあります。期限が近い場合は、売却を決める前に確認してください。
