「定期預金が満期になったら、窓口で米ドルの預金を案内された」「金利が高いと聞いたけれど、円に戻すときはどうなるのか」。外貨預金は円の預金と同じ「預金」という名前ですが、仕組みはかなり違います。
この記事では、2026年10月時点で預金保険機構・国税庁・金融庁の公表資料から確かめたことをもとに、外貨預金の為替手数料と為替の損益、預金保険の扱い、税金、相続のときの扱いを整理します。窓口で勧められたときに確かめたいことも一覧にしました。外貨預金を勧める記事でも、やめるよう促す記事でもありません。
先に結論:外貨預金は「円で見ると元本が変わる預金」
この記事の結論
- 為替で円の受取額が変わります:預けたときより円高になると、円に戻したときの金額が減ります。預けるときと戻すときの2回、為替手数料もかかります。
- 預金保険の対象外です:銀行が破綻したとき、円の預金のような「元本1,000万円までとその利息等」の保護はありません。
- 相続のときは受け取り方を確かめます:相続税の評価は、亡くなった日の為替相場で円に換算します。円に換えて受け取るか、外貨のまま受け取るかは、銀行の相続手続きで確かめます。
為替手数料と為替差損益のしくみ
外貨預金では、円を外貨に換えるときと、外貨を円に戻すときの2回、為替の手数料がかかります。銀行は、その日の基準となる相場(仲値。TTMとも言います)に手数料を上乗せしたり差し引いたりしたレートで交換します。
- 円→外貨(預けるとき):TTS(仲値+手数料)で換えます。
- 外貨→円(戻すとき):TTB(仲値-手数料)で換えます。
考え方を示すための仮の数字で見てみます。仲値が1ドル150円、手数料が片道1円の銀行で、100万円を米ドルの預金にした場合です。預けるときは1ドル151円なので、約6,623ドルになります。利息は考えずに計算します。
この例では、為替がまったく動かなくても、往復の手数料で約1.3万円減ります。仲値が2円(約1.3%)以上円安にならないと、利息を除けば元本割れです。金利が高く見えても、為替の動きと往復の手数料で、円で受け取る金額は増えも減りもします。為替の先行きを前もって知ることはできません。
預金保険の対象外:1,000万円までの保護はない
預金保険制度は、銀行などが破綻したときに預金者を守る公的な仕組みです。利息のつく円の普通預金や定期預金は、1つの金融機関ごとに元本1,000万円までとその利息等が守られます。
預金保険機構は、外貨預金を「対象とならない預金」に挙げています。対象外の預金は、銀行が破綻したとき、対象の預金とはその後の扱いが違います。破綻した銀行の財産の状況によっては、全額が戻らないこともあります。
円の預金がどこまで守られるか、口座をどう分けるかはペイオフ1,000万円を超えたら分けるべき?で整理しています。
窓口で勧められたときに確かめること
定期預金の満期や、退職金・相続のお金が入ったときに、窓口で外貨預金を案内されることがあります。その場で決めずに、次の点を書面で確かめてから考えます。
説明を聞いたら、書面を持ち帰って家族と一緒に見直します。家族に同席してもらってもかまいません。外貨預金を持つことにしたら、通貨・銀行名・満期日を家族にも伝えておくと、もしものときに家族が困りません。最終的な判断はご自身でなさってください。
説明に納得できない、強く勧められて困っているときは、金融庁の金融サービス利用者相談室に相談できます。
税金:利息は源泉分離課税、為替差益は雑所得
預貯金の利子は、原則として受け取るときに所得税・復興特別所得税15.315%と地方税5%が差し引かれ、それで課税が終わる源泉分離課税です(国税庁タックスアンサー・番号1310)。外貨預金の利息の扱いも、取引する銀行の説明書面で確かめておきます。
円に戻したときに出た為替差益は、雑所得として扱われています(国税庁 税務大学校の研究論文)。雑所得は、年金などほかの所得と合わせて計算する総合課税です。
同じ外貨のまま、満期になった外貨預金を別の外貨預金に預け直すだけなら、その時点で元本の為替差益を所得として数える必要はない、という国税庁の回答があります。一方、米ドルをユーロなど別の外貨に換えたときは、その時点で為替差損益を所得として数える必要があるとされています。
年金を受け取っている人は、年金以外の所得が一定額以下なら確定申告をしなくてよい仕組みがあります(年金受給者の確定申告)。為替差益が出た年は、この条件にかかわることがあります。申告が必要かどうか、税額はいくらかは、税務署の相談窓口(電話相談・面接相談の予約)か税理士に確かめてください。
相続のとき:円に換えるか、外貨のまま受け取るか
外貨預金も相続財産です。名義人が亡くなったことを銀行が知ると、円の預金と同じく、原則として口座から引き出せなくなります。遺産分けで誰が受け継ぐかを決めてから、銀行の相続手続きで受け取ります。
相続税の評価では、外貨建ての財産は、原則として亡くなった日に取引金融機関が公表する対顧客直物電信買相場(TTB)などで円に換算します(財産評価基本通達4-3)。
受け取り方には、主に次の2つがあります。どちらを選べるかは銀行によって違います。
- 円に換えて受け取る:手続きのときの為替相場で円になります。外貨の口座を持たない相続人も受け取れます。
- 外貨のまま受け取る:相続人名義の外貨預金の口座へ移します。相続人がその銀行に外貨の口座を持っているか、新しく開く必要があります。
どちらにするかで、相続人が円で手にする金額や、その後の為替差損益の扱いが変わることがあります。手続きの前に銀行の相続窓口で選べる方法を聞き、税金の扱いは税務署か税理士に確かめます。親の口座がどの銀行にあるか分からないときは亡くなった親の銀行口座の調べ方、相続税がかかるかどうかは相続税の申告は必要かで確かめられます。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
今日できる一歩
- 外貨預金を持っている方は、通貨・銀行名・満期日・満期のときの扱い(円に戻るか、外貨のまま続くか)を1枚の紙に書き、家族に置き場所を伝えておきましょう。
よくある質問
Q. 外貨預金は、銀行が破綻しても守られますか?
A. 外貨預金は預金保険の対象外です。円の預金のような「1つの金融機関ごとに元本1,000万円までとその利息等」の保護はありません。
Q. 円高のときに預けて、円安のときに戻せば増えますか?
A. 預けたときより円安になれば、円で受け取る額は増えます。ただ、為替の動きを前もって知ることはできません。この記事では、預ける時期や戻す時期の判断はしません。往復の手数料がかかることも含めて考えます。
Q. 外貨預金の利息にも税金がかかりますか?
A. 預貯金の利子は、原則として受け取るときに合計20.315%が差し引かれる源泉分離課税です。外貨預金の利息の扱いは、取引する銀行の説明書面で確かめてください。
Q. 親の外貨預金を相続したら、すぐ円に換えなければいけませんか?
A. 外貨のまま相続人の口座へ移せる銀行もあります。円に換えるかどうか、いつ換えるかは相続人が決めることです。換えるときの税金の扱いは、税務署か税理士に確かめてください。
Q. 家族が知らない外貨預金があったらどうなりますか?
A. 銀行の残高証明書などで見つかることがあります。相続税の申告が必要な家では、外貨預金も財産に含めて申告します。元気なうちに、銀行名と通貨を家族に伝えておくと安心です。
参考にした公的情報
- 預金保険機構「対象預金」
https://www.dic.go.jp/yokinsha/page_000015.html - 金融庁「預金保険制度」
https://www.fsa.go.jp/policy/payoff/index.html - 国税庁 タックスアンサー「利息を受け取ったとき(利子所得)」(番号1310)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1310.htm - 国税庁 質疑応答事例「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/39.htm - 国税庁 質疑応答事例「保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/41.htm - 国税庁 税務大学校論叢第114号「個人の為替差損益に対する所得税の課税に関する考察」
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/114/01/index.htm - 国税庁 財産評価基本通達 第1章 総則(4-3 邦貨換算)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01/01.htm
※本記事は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な整理です。特定の金融商品や金融機関を勧めるものではなく、為替や金利の見通し、預け入れや払い出しの時期についての助言でもありません。外貨預金には為替変動による元本割れのリスクがあります。商品の条件は契約前に銀行の説明書面で、税金は税務署の相談窓口か税理士にご確認ください。
