「定期預金の満期が来たら、窓口で個人向け国債を案内された」「親が国債を持っているらしいが、どんなものか分からない」。60〜80代の方やそのご家族から、こうした声をよく聞きます。
この記事では、個人向け国債の3つの種類の違い、金利の決まり方、途中でお金に換えるとき(中途換金)に差し引かれる額、持っている人が亡くなったときに家族ができることを、財務省の公開情報をもとに整理します。特定の商品や金融機関を勧める記事ではありません。
先に結論:元本が戻る代わりに、最初の1年は換金できない
この記事の結論
- 種類は3つ:変動10年は半年ごとに金利が見直され、固定5年・固定3年は満期まで金利が変わりません。どれも年0.05%の最低金利があります。
- 1万円から買え、1年たてば換金できる:ただし換金するときは、直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。おおよそ「受け取った利子の1年分を返す」計算です。
- 亡くなったときは相続人が動ける:持ち主が亡くなった場合は、発行から1年未満でも相続人が換金できます。相続人の口座へ移すこともできます。
個人向け国債とは:国にお金を貸して、利子を受け取る
個人向け国債は、国が個人向けに発行する債券です。債券とは、お金を貸した証書のようなものです。持っている間は半年ごとに年2回利子を受け取り、満期になると買ったときの金額(額面)で戻ってきます。
- 買える単位:最低1万円から、1万円単位です。
- 買う場所:証券会社、銀行、郵便局などの取扱機関です。国債を預けるための口座を開いて買います。
- 募集の時期:毎月募集があり、その月ごとに金利が決まります。
- 利子の税金:受け取る利子からは20.315%の税金が差し引かれます。
- 最低金利:市場の金利が下がっても、年0.05%を下回りません。
預金や国債、NISAなどを含めた老後のお金の置き場所の全体像は、老後のお金の置き場所で整理しています。この記事では、国債だけを詳しく見ていきます。
変動10年・固定5年・固定3年の違いと金利の決まり方
3つの種類は、満期までの年数と、金利が変わるかどうかが違います。金利は、毎月の募集ごとに、その時の市場の金利をもとにした「基準金利」から計算されます。
変動10年は、市場の金利が上がれば受け取る利子も増え、下がれば減ります。ただし年0.05%より下にはなりません。固定5年・固定3年は、買ったときの金利が満期まで続きます。この先の金利がどう動くかは前もって分からないため、どれが有利かも前もっては決まりません。
比べるときは、そのお金を使う予定の時期と満期の年数を並べてみると整理しやすくなります。たとえば数年先に使う予定があるお金なら、その時期より先に満期が来る種類か、換金したときに差し引かれる額を受け入れられるかを確かめます。ここでの整理は一般的な考え方で、個別の投資判断ではありません。最終的な判断はご自身でなさってください。
途中で換金するとき:1年たてばいつでも、ただし利子2回分が差し引かれる
個人向け国債は、発行から1年(2回目の利子の支払日)を過ぎれば、原則としていつでも換金できます。全部でなく一部だけの換金もできます。手続きは、口座を開いている取扱機関でします。
換金したときに受け取る金額は、次の計算です(3回目の利子の支払日以降の場合。時期によって計算が少し異なります)。
換金したときに受け取る金額
額面金額 + 経過利子相当額 − 直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685
経過利子相当額は、前回の利子の支払日から換金の日までの分の利子のことです。0.79685は、利子から20.315%の税金を引いた残りの割合です。
利子は半年ごとなので、「直前2回分」はおよそ1年分です。つまり、受け取った税引後の利子の約1年分を返す計算と考えると分かりやすくなります。たとえば固定5年を100万円、年2.39%で持っていた場合(考え方を示すための仮の数字です)、1年分の利子は税引前で23,900円です。差し引かれる額はその0.79685倍で、約19,000円になります。
換金の日が利子の支払日の直後だと、経過利子相当額が小さいため、受け取る金額が額面を少し下回ることがあります。それまでに受け取ってきた利子と合わせて見ると考えやすくなります。換金のときに、これとは別の手数料はかかりません。代金は、申し込んだ日を含めておおむね3営業日後に受け取れます。
なお、災害救助法が適用された大きな自然災害で被害を受けた場合も、発行から1年未満で換金できる特例があります。罹災証明書などの書類が必要です。
持ち主が亡くなったら:相続人は1年未満でも換金できる
口座の名義人が亡くなった場合、発行から1年たっていない国債でも、相続人が中途換金できます。換金せずに、相続人の口座へ移す(移管する)こともできます。
- 換金する:相続人であることを証明する書類などを、取扱機関に出して申し込みます。
- 相続人の口座へ移す:満期まで持ち続けたい場合です。受け取る相続人の名義の口座へ移します。
- どちらにするか:国債も遺産の一部です。誰が受け取るかを相続人で決めてから手続きを進めます。必要な書類の細かな違いは取扱機関ごとに確かめます。
証券会社や銀行での相続手続きの全体の流れと必要書類は、証券口座の相続手続きで確認できます。相続税を計算するときの国債の評価の考え方は、老後のお金の置き場所の「期限と、過ぎたらどうなるか」の章で触れています。細かい計算は税務署や税理士に確かめてください。
家族が困りやすいのは、「どこで国債を買ったか分からない」ことです。取扱機関の名前と、国債を持っていることだけでも家族に伝えておくと、手続きの入口が見つけやすくなります。親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
買う前・持っている間に確かめたいこと
- 最初の1年は使わないお金か。発行から1年は、原則として換金できません。
- 満期と使う時期が合っているか。満期より前に使うなら、換金で差し引かれる額を見込んでおきます。
- その月の金利。金利は毎月の募集ごとに変わります。財務省のページや取扱機関で、その月の数字を確かめます。
- 預金と比べてどうか。定期預金の金利と並べて比べると、違いがつかみやすくなります。銀行ごとの金利は定期預金の金利2026にまとめています。
- 家族に伝えてあるか。取扱機関と、おおよその額面を書き残しておきます。
今日できる一歩
- 手元の取引残高報告書や通帳を見て、国債を持っているか、どこの取扱機関か、満期はいつかを1枚の紙に書き出してみましょう。
よくある質問
Q. 個人向け国債は元本割れしますか?
A. 満期まで持てば、額面の金額で戻ってきます。途中で換金すると直前2回分の利子相当額(税引後)が差し引かれるため、換金した金額だけを見ると額面を少し下回ることがあります。
Q. 変動10年の金利が下がったら、利子はゼロになりますか?
A. なりません。3つの種類すべてに年0.05%の最低金利があり、それより下がることはありません。
Q. 換金するのに手数料はかかりますか?
A. 換金のときに差し引かれるのは、上で説明した利子相当額です。これとは別の手数料は必要ないとされています。
Q. 亡くなった親の国債は、すぐ換金しないといけませんか?
A. 換金しなくてもかまいません。相続人の口座へ移して、満期まで持つこともできます。どちらにするかは、相続人の間で誰が受け取るかを決めてから取扱機関に相談します。
Q. 換金したお金はいつ受け取れますか?
A. 申し込んだ日を含めて、おおむね3営業日後です。申し込みのタイミングで変わることがあるため、取扱機関に確かめてください。
参考にした公的情報
- 財務省「個人向け国債」
https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/ - 財務省「個人向け国債の中途換金についてのよくある質問」
https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/qa/answer_qd.html - 財務省 報道発表「個人向け国債の発行条件等」(2026年10月7日)
https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p20261007.pdf
※本記事は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な整理です。特定の金融商品や金融機関を勧めるものではありません。利率は毎月の募集ごとに変わり、制度の内容は改正されることがあります。購入や換金の前に、財務省の案内や取扱機関の最新の説明をご確認ください。
