「退職金を預けに行ったら投資信託を案内され、そのまま持っている」「ファンドラップという契約をしたが、手数料がいくらか分からない」「親の取引残高報告書に、知らない商品名が並んでいる」。60〜80代の方やそのご家族から、こうした相談をよくいただきます。
この記事では、持っている投資信託やファンドラップを見直すときに、何をどの順番で確かめればよいかを整理します。続けるか解約するかを当社が判断する記事ではなく、特定の金融機関や商品の良し悪しを述べるものでもありません。金融庁や日本証券業協会などの公開情報をもとに、確かめ方をお伝えします。
先に結論:見直しは「費用」「書面」「やめるときの条件」の順で
この記事の結論
- まず費用を年率で足し合わせる:投資信託の信託報酬は、持っている間ずっと差し引かれます。ファンドラップは、契約の手数料と中の投資信託の信託報酬の両方がかかります。
- 書面で中身を確かめる:交付目論見書、交付運用報告書、重要情報シートに、費用やリスク、解約の条件が書かれています。重要情報シートには、窓口でそのまま使える質問例も載っています。
- やめる前に、引かれるものと次の置き場所を決める:分配金も含めた損益(トータルリターン)、解約で差し引かれる費用、乗り換え先の費用を並べてから決めます。
投資信託とファンドラップは何が違うのか
投資信託は、多くの人から集めたお金を、運用会社がまとめて株や債券などで運用する商品です。値動きがあり、元本の保証はありません。銀行や証券会社は、この投資信託を売る「販売会社」です。
ファンドラップは、金融機関と「投資一任契約」を結び、どの投資信託をどれだけ持つか、いつ入れ替えるかの判断を任せるサービスです。中身は複数の投資信託(組入ファンド)でできています。任せる分の報酬がかかるため、費用は投資信託を自分で持つ場合より一段多くなります。
手数料の見方:いつ・何に・いくら払っているか
投資信託の費用は、買うとき、持っている間、売るときの3つの場面でかかります。ファンドラップでは、これに契約の手数料が加わります。
気づきにくいのが信託報酬です。口座から引き落とされるのではなく、投資信託の財産から毎日差し引かれ、その分を引いた後の値段(基準価額)で表示されます。そのため、取引残高報告書を見ても「手数料」の行としては出てきません。
ファンドラップでは、金融庁が「総コスト」として、投資一任の報酬やファンドラップの手数料に、組入ファンドの信託報酬などを加えて見ています。金融庁の2025年7月の報告では、2019〜2023年度について、約3割の販売会社が「総コストを差し引いた後の実績リターンがマイナスのコースがある」と答えています。
年率の費用は、金額に直すと実感がわきます。たとえば1,000万円を、費用の合計が年1.5%の商品で持っていれば、年に約15万円です(考え方を示すための仮の数字です)。費用が高いか安いかだけで良し悪しは決まりませんが、「毎年いくら払っているか」を知ったうえで、続けるかどうかを考えるのが出発点です。
書面の読み方:目論見書・運用報告書・重要情報シート
- 交付目論見書(投資信託説明書):商品の目的、投資する先、リスク、費用が書かれた説明書です。信託報酬の年率と、それが運用会社・販売会社・信託銀行にどう分かれるかもここで分かります。
- 交付運用報告書:原則として決算ごとに届く、運用の結果の報告です(決算の間隔が6か月より短い商品は6か月ごと)。実際にかかった費用の明細も載っています。
- 重要情報シート:金融庁が示した様式で、商品の内容、リスクと運用実績、費用、換金・解約の条件、販売会社と顧客の利益が反する可能性などを簡潔にまとめたものです。金融機関自身について書いた「金融事業者編」と、商品ごとの「個別商品編」があります。
- トータルリターン:買ったときから今までの、受け取った分配金も含めた損益です。「評価金額+受け取った分配金の累計+売った金額の累計−買った金額の累計」で計算します。日本証券業協会の規則で、販売会社から通知される仕組みがあります。
重要情報シートの個別商品編には、各項目に「質問例」が付いています。窓口で何を聞けばよいか迷ったときは、そのまま読み上げて使えます。
重要情報シートに載っている質問例(抜粋)
- 「私がこの商品に○○万円を投資したら、それぞれのコストが実際にいくらかかるのか説明してほしい。」
- 「費用がより安い類似商品はあるか。あればその商品について説明してほしい。」
- 「私がこの商品を換金・解約するとき、具体的にどのような制限や不利益があるのかについて説明してほしい。」
- 「この商品が複数の商品を組み合わせたものである場合、個々の商品購入と比べて、どのようなメリット・デメリットがあるのか。」
※出典:金融庁「重要情報シート(個別商品編)」
4つ目の質問は、ファンドラップのように複数の投資信託を組み合わせたサービスを見直すときに役立ちます。答えは口頭だけでなく、紙に書いてもらうか、自分でメモを取って持ち帰ると、家族とも見直せます。
解約・乗り換えの前に確かめること
- 分配金も含めた損益。基準価額だけを見ると下がっていても、分配金を足すとプラスのこともあり、その逆もあります。トータルリターンで確かめます。
- やめるときに引かれるもの。投資信託の信託財産留保額、ファンドラップの契約上の手数料の扱い、利益が出ている場合の税金(NISA口座なら非課税)を確かめます。
- すぐ換金できるか。換金を申し込んでから入金まで、一般に4〜5営業日ほどかかります。一定期間解約できない「クローズド期間」がある商品もあります。
- 乗り換え先の費用。新しい商品を買うと、購入時手数料が改めてかかることがあります。売る商品と買う商品の費用を並べて比べます。日本証券業協会は、投資信託などの乗り換えを勧めるときの説明について、ガイドラインを設けています。
- 解約したお金をどこに置くか。数年以内に使うお金は預金に、当面使わないお金は別の置き場所に、と使う時期で分けて考えます。元本が戻る国債の仕組みは個人向け国債とは、全体の分け方は老後のお金の置き場所で整理しています。
解約は、顧客自身が決めてよいことです。金融庁も、解約を減らす目的で顧客の意向を無視して解約を止めることは適切でないとしています。一方で、値下がりした直後に慌てて売ると、損を確定させることにもなります。ここで挙げた点を確かめたうえで、続けるか、減らすか、やめるかを決めます。最終的な判断はご自身でなさってください。
高齢の顧客への勧誘ルール:その場で決めなくてよい
日本証券業協会は、会員の金融機関に向けて「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」を示しています。各社はこれをもとに社内規則を定めるため、細かな扱いは金融機関ごとに違います。主な考え方は次のとおりです。
このルールから分かるのは、「その日のうちに決めなくてよい」という前提で仕組みが作られていることです。説明を受けたら持ち帰り、家族と書面を見直してから返事をしてかまいません。親が窓口で話を聞く予定があるなら、家族が同席するのも一つの方法です。
本人の判断する力が落ちてくると、原則として家族が代わりに売ることはできません。早めに口座の場所と中身を家族と共有し、備えを話しておくと安心です。家族が動ける仕組みは親が認知症になったら証券口座・NISAは?で整理しています。
今日できる一歩
- 直近の取引残高報告書を出して、持っている商品名と金額を書き出しましょう。次に窓口で、その商品の重要情報シートと交付運用報告書をもらい、「費用は年に合計いくらか」を聞いてみてください。
よくある質問
Q. 信託報酬はどこを見れば分かりますか?
A. 年率は交付目論見書に書かれています。実際にかかった費用は交付運用報告書の明細で確かめられます。手元に見当たらない場合は、販売会社に問い合わせます。
Q. ファンドラップは費用が高いのですか?
A. 一概には言えません。ただ、契約の手数料と中の投資信託の信託報酬の両方がかかるため、合計で見ることが大切です。重要情報シートの質問例を使い、「私の金額で年にいくらかかるか」を聞くと比べやすくなります。
Q. 解約したいと言ったら引き止められました。
A. 解約は顧客が決めてよいことです。引き止める理由が具体的なら、その説明を書面やメモにして持ち帰り、ここで挙げた確認点と照らし合わせて考えます。
Q. 親の投資信託を、子が代わりに解約できますか?
A. 原則として口座の名義人本人しかできません。代理人の登録などの仕組みがあるかは金融機関ごとに違うため、本人が元気なうちに一緒に確かめておきます。亡くなった後の手続きは証券口座の相続手続きをご覧ください。
参考にした公的情報
- 金融庁「『重要情報シート』を作成・活用する際の手引きについて」
https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210512.html - 金融庁「重要情報シート(個別商品編)」
https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210512/03.pdf - 金融庁「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」(2025年7月1日)
https://www.fsa.go.jp/news/r6/kokyakuhoni/20250701/02.pdf - 資産運用業協会「投資信託Q&A100選 税金・手数料の知識」
https://www.imaj.or.jp/special/toushin-qa100/tax_fee - 資産運用業協会「協会の歩み」
https://www.imaj.or.jp/about/information/history.html - 日本証券業協会「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」
https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/jishukisei/web-handbook/101_kanri/files/koureikokyaku_20210801.pdf - 日本証券業協会「(投資信託の)トータルリターン」
https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/jishukisei/words/0199.html
※本記事は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な整理です。特定の金融商品や金融機関を勧めたり、評価したりするものではありません。投資信託には元本割れなどのリスクがあります。費用や解約の条件は商品・契約ごとに異なるため、手続きの前に目論見書や契約書面、販売会社の最新の説明をご確認ください。
