「実家の金庫から金の延べ棒が出てきた」「親が金貨を集めていたけれど、どう分ければいいのか」。金(ゴールド)は預金や株と違って、通帳や定期的な報告書がありません。そのため、家族が見つけてから扱いに迷いやすい財産です。
この記事では、2026年10月時点の国税庁の公表資料をもとに、相続のときの評価の考え方、売ったときの税金(譲渡所得)、買ったときの金額が分からない場合の扱い、買取業者が税務署に出す支払調書を整理します。家族が見つけたときの手順もまとめました。個別の税額の計算や申告が必要かどうかの判断は、税務署か税理士に確かめてください。
先に結論:金も相続財産。売った利益は「総合課税の譲渡所得」
この記事の結論
- 金も相続財産です:地金・金貨も、ほかの財産と同じく遺産分けと相続税の計算の対象です。相続税では、亡くなった日の価格(買取価格)が評価を考えるときの目安になります。
- 売った利益は譲渡所得です:年金などほかの所得と合わせて計算する総合課税です。持っていた期間が5年を超えると、課税される額は半分になります。相続した金は、亡くなった人が買った時期と金額を引き継ぎます。
- 買った金額が分からなくても計算できます:売った金額の5%を取得費とする方法があります。200万円を超える代金を受け取る売却では、買取業者が税務署へ支払調書を出します。
家族が金を見つけたときの手順
金は、見つけた人がすぐに売ってよいものではありません。遺産分けが終わるまでは、相続人みんなの財産です。次の順番で進めると、あとで困りにくくなります。
- 持ち出さずに記録する。品名、刻印(重さ・純度・ブランド名など)、数、保管場所を写真に撮ってメモします。
- 買ったときの記録を探す。納品書・領収書・保証書、地金商の購入明細などです。売ったときの税金の計算に使います。
- 相続人全員に知らせる。見つけたことと記録を共有します。一人で保管や処分を決めると、話し合いがこじれる原因になります。
- 相続放棄を考えているなら売らない。財産を売ると、相続を受け入れたとみなされることがあります。詳しくは相続放棄できないケースで整理しています。
- 誰が受け継ぐかを決める。金のまま分けるか、売ってお金で分けるかも、遺産分けの話し合いで決めます。
- 相続税の申告が要るか確かめる。金を含めた財産全体が基礎控除を超えるかどうかで決まります。目安は相続税の申告は必要かで確かめられます。
相続税での評価:亡くなった日の価格が目安
相続税の計算では、財産を亡くなった日(相続開始日)時点の価額で評価します。国税庁の財産評価基本通達では、一般の動産は「売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する」と定めています。
金は、地金商や買取業者が毎日の買取価格を公表しています。そのため、亡くなった日の買取価格(業者が買い取るときの1グラムあたりの価格)に重さをかけた額が、評価を考えるときの目安になります。金貨は、地金と同じ価格にならないこともあります。実際にどの価格を使うかは、税務署か税理士に確かめてください。
金は通帳のような記録が残りにくい財産です。相続税の申告が必要な家では、申告から漏れないよう、財産の一覧に重さと数を書き入れておきます。
売ったときの税金:総合課税の譲渡所得
個人が金地金を売ったときの所得は、原則として譲渡所得です。給与や年金などほかの所得と合わせて税額を計算する総合課税の対象です(国税庁タックスアンサーNo.3161)。株の売却益のように、ほかの所得と分けて税率をかける仕組みではありません。
国税庁の示す計算の流れは、次のとおりです。
- 金の譲渡益を出す。売った代金-(取得費+譲渡費用)です。取得費は買ったときの代金など、譲渡費用は売るときにかかった費用です。
- 特別控除50万円を差し引く。その年の金の譲渡益と、ほかの総合課税の譲渡益を合わせた額から50万円を引きます。
- 持っていた期間で分ける。5年以内(短期)なら、2の額がそのまま課税の対象です。5年を超える(長期)なら、2の額の2分の1が課税の対象です。
特別控除の50万円は、金だけでなく、その年のほかの総合課税の譲渡益と合わせて50万円です。なお、金の売買を営利目的で継続的にしている場合は、実態に応じて事業所得や雑所得になります。
相続した金は「買った時期と金額」を引き継ぐ
相続で受け継いだ資産は、亡くなった人が買った時期と取得費をそのまま引き継ぎます(所得税法60条)。たとえば親が20年前に買った金を相続して売るなら、持っていた期間は親が買ったときから数えるため、長期の扱いになります。
相続税がかかった人が、相続の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに相続した財産を売った場合は、払った相続税のうち一定額を取得費に足せる特例もあります(国税庁タックスアンサーNo.3267)。
年金を受け取っている人は、年金以外の所得が一定額以下なら確定申告をしなくてよい仕組みがあります。金を売って利益が出た年は、この条件から外れることがあります。条件は年金受給者の確定申告で整理しています。申告が必要かどうか、税額はいくらになるかは、税務署の相談窓口(電話相談・面接相談の予約)か税理士に確かめてください。
買った金額が分からないとき:売った代金の5%を取得費にできる
親が何十年も前に買った金は、領収書が残っていないことがよくあります。国税庁の所得税基本通達38-16では、土地建物以外の資産を売ったとき、売った代金の100分の5(5%)を取得費として計算していれば、これを認めて差し支えないとしています。
5%を取得費にすると、売った代金のほとんどが利益として扱われます。考え方を示すための仮の数字で見てみます。相続した金を600万円で売り、買ったときの金額が分からない場合です。
- 取得費:600万円×5%=30万円
- 譲渡益:600万円-30万円=570万円(譲渡費用がない場合)
- 特別控除後:570万円-50万円=520万円
- 長期(5年超)なら、課税の対象は520万円×2分の1=260万円。これをほかの所得と合わせて税額を計算します
買ったときの記録が見つかれば、実際の金額を取得費にできます。売る前に、次のようなものがないか探しておきます。
- 購入時の納品書・領収書・保証書
- 地金商や百貨店などの購入明細、会員の取引記録
- 積み立てて買っていた場合の取引明細
- 買った時期の手がかりになる通帳の出金記録やメモ
200万円を超える売却では、買取業者が支払調書を出す
金地金等の売買を業として行う事業者は、国内で金地金等を買い取り、200万円を超える代金を支払うときに、税務署へ「金地金等の譲渡の対価の支払調書」を出すことが義務づけられています(2012年1月から)。提出は、支払いが確定した日の翌月末日までです。
支払調書には、売った人の住所・氏名・個人番号(マイナンバー)、金地金等の種類・重さ・数・支払金額などが書かれます。国税庁の様式の記載例には、「金地金、白金地金、メープル金貨、イーグル白金貨」が挙がっています。金の地金だけでなく、プラチナ(白金)や金貨も対象になり得るということです。
支払調書が出るかどうかと、確定申告が必要かどうかは別の話です。200万円以下の売却でも、利益が出ていれば申告が必要になることがあります。反対に、支払調書が出ても、利益が特別控除の範囲に収まり、税金がかからないこともあります。
売ると決めたときに確かめること
売るかどうか、いつ売るかは相続人で決めることです。金の価格は毎日動きます。この記事では、売る時期の判断はしません。最終的な判断はご自身でなさってください。
売ると決めたら、次の点を確かめておくと手続きが落ち着いて進みます。
- 遺産分けで、誰が受け継いで売るのかを先に決めておく
- 本人確認書類を用意する
- 査定額・手数料・振込日を書面や画面で確かめ、控えを残す
- 1か所だけで決めず、査定の内訳を見比べる
- 受け取った明細と、買ったときの記録をまとめて保管する(確定申告に備えて)
お店に持ち込むか、宅配で送るかは、家族の住まいや品物の量に合わせて選べます。遺品の中に金のほか時計やブランド品がある場合は、まとめて査定を受ける方法もあります。
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相続した金(ゴールド)や貴金属を、家族で売ると決めたら
ブランドオフとKOMEHYOは、どちらも金やプラチナの地金(インゴット)、金貨、ジュエリーを買取の対象として公式サイトに載せています(2026年10月時点)。ブランドオフは、宅配キットに入れて家から送る宅配買取です(査定料・送料は無料)。KOMEHYOは、品物をお店に持ち込む店頭買取で、来店予約はWebから無料でできます。どちらも本人確認書類が必要です。
申込先はブランドオフが株式会社K-ブランドオフ、KOMEHYOが株式会社コメ兵です。当サイト(いまから相続)が買取をするものではありません。
金以外も含めた遺品全体の片付けの進め方は、遺品整理を自分でする手順でまとめています。
親の預金や自宅のことも、元気なうちに整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
今日できる一歩
- 金庫や引き出しにある金や金貨を、品名・刻印・数で1枚の紙に書き出し、買ったときの書類と一緒に保管しておきましょう。家族には、その紙の置き場所を伝えておきます。
よくある質問
Q. 200万円以下に分けて売れば、申告しなくてよいですか?
A. いいえ。確定申告が必要かどうかは、売って出た利益などで決まります。支払調書が出るかどうかとは関係ありません。分けて売っても、その年の利益の合計で考えます。
Q. 相続した金を売ると、相続税と所得税の両方がかかりますか?
A. 両方かかることがあります。相続税は財産を受け継いだことに、所得税は売って得た利益にかかります。相続税を払った人には、払った相続税の一部を取得費に足せる特例があります。
Q. 買った金額が分からないと売れませんか?
A. 売れます。取得費が分からないときは、売った代金の5%を取得費として計算する方法があります。ただし利益が大きく計算されやすいため、先に買ったときの記録を探してみてください。
Q. 金のネックレスや指輪も同じ扱いですか?
A. 身の回りの品は、地金とは扱いが変わることがあります。品物の種類や金額で違うため、売る前に税務署か税理士に確かめてください。相続税の評価も、地金と同じ価格になるとは限りません。
Q. 遺産分けの前に、相続人の一人が売ってもよいですか?
A. 遺産分けの前の金は相続人みんなの財産です。売るなら、相続人全員で合意してからにします。相続放棄を考えている人が売ると、放棄できなくなることがあります。
参考にした公的情報
- 国税庁 タックスアンサーNo.3161「金地金の譲渡による所得」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3161.htm - 国税庁 所得税基本通達38-16「土地建物等以外の資産の取得費」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/18.htm - 国税庁 財産評価基本通達 第6章第1節「一般動産」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/06/01.htm - 国税庁 確定申告書等作成コーナー「相続や贈与によって取得した資産の取得の時期」
https://www.keisan.nta.go.jp/r1yokuaru/cat2/cat21/cat218/yogo/sozokuzoyojiki.html - 国税庁 タックスアンサーNo.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm - 国税庁「F1-42 金地金等の譲渡の対価の支払調書(同合計表)」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/1251.htm - 福岡国税局「金地金等に係る譲渡所得の調査状況」(支払調書制度の説明)
https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/release/h27/shotoku_shohi/07.htm
※本記事は2026年10月時点の国税庁の公表資料をもとにした一般的な整理です。個別の税額の計算や、申告が必要かどうかの判断をするものではありません。金の価格の見通しや、売る時期についての助言でもありません。税金のことは税務署の相談窓口か税理士に、遺産の分け方で意見が分かれるときは弁護士などの専門家にご確認ください。
