実家を売る・貸す・住み続ける?費用と税金で比べる判断基準

実家をどうするか——「売る」「貸す」「住み続ける(誰かが住む)」という3つの選択肢の間で悩む方は少なくありません。どれが正解かは、物件の条件や家族の事情によって変わります。大切なのは、感情だけで決めず、いくつかの判断基準に沿って比較することです。

この記事では、愛知県内で相続・生前対策のご相談を受けている当社の視点から、実家を売る・貸す・住み続けるの判断基準を、中立の立場で整理します。実家じまい全体の流れは実家じまい、何から始めればいいかもあわせてご覧ください。

目次

3つの選択肢のメリット・デメリット

選択肢 主なメリット 主なデメリット 向いているケース
売る まとまった現金化・維持費や管理から解放 手放すと戻せない・売却の手間と費用 使う予定がなく、維持負担を避けたい
貸す 家賃収入・資産を残せる 修繕費・空室リスク・管理の手間 需要のある立地で資産を残したい
住み続ける/誰かが住む 思い出を残せる・住居費を抑えられる 維持費・老朽化・他の相続人との調整 家族に住む人がいる

判断するときの5つの視点

判断の前に押さえる5つの視点
1
立地と資産価値
駅距離・賃貸需要・築年数で、売りやすさ・貸しやすさが変わる
2
維持費・管理の手間
固定資産税・保険・修繕など、持ち続ける限り費用と手間がかかる
3
税制上の特例
売却時、要件を満たせば譲渡益の特別控除が使えることも(要件・期限は要確認)
4
家族の意向と相続の見通し
誰が住むのか、相続人の間で意見が一致しているか
5
老後資金として活かせないか
住み続けつつ価値を活かす方法(リバースモーゲージ等)も選択肢になる

1. 立地と資産価値

駅からの距離、周辺の賃貸需要、建物の築年数などで、売りやすさ・貸しやすさは大きく変わります。需要のある立地なら「貸す」も選択肢になりますが、需要が乏しい地域では、維持費だけがかさむ前に「売る」判断が現実的なこともあります。

2. 維持費・管理の手間

固定資産税、火災保険、修繕費、庭の管理など、持ち続ける限り費用と手間は発生します。遠方に住んでいて管理が難しい場合、その負担に見合うかを冷静に見極める必要があります。

3. 税制上の特例

売却する場合、一定の要件を満たすと、相続した空き家の譲渡益に対する特別控除など、税負担を軽減できる特例が使えることがあります。要件や適用の可否は複雑なため、売却を検討する際は税理士に確認することをおすすめします。特例には期限や細かな条件があるため、タイミングも重要です。

4. 家族の意向と相続の見通し

誰かが住む予定があるのか、相続人の間で意見が一致しているのか。将来の相続で押し付け合いにならないよう、早めに家族で方向性を共有しておくことが大切です。きょうだいの1人が実家を継ぎ、ほかのきょうだいには現金で調整する(代償分割)と決めた場合は、協議書の書き方しだいで贈与税の扱いが変わります。そのまま使える条項例は代償分割の遺産分割協議書の書き方にまとめています。空き家のまま相続を迎える前の対策は空き家にする前にすべき生前対策で解説しています。

5. 老後資金として活かせないか

親がまだ住んでいる場合、自宅に住み続けながら、その価値を老後資金に活かすリバースモーゲージという選択肢もあります。「住み続ける」と「現金化」の中間的な方法として、条件が合えば検討の余地があります。

どれが向いている?タイプ別の目安
「売る」が向いている人
使う予定がなく、維持費や管理の負担を避けたい方
「貸す」が向いている人
賃貸需要のある立地で、資産を残しつつ家賃収入を得たい方
「住み続ける/誰かが住む」が向いている人
家族に住む人がいて、思い出や住居費のメリットを重視する方
▶ 立地・維持費・税・家族の意向を総合し、親が元気なうちに方向性を決めておくと安心です。

売る・貸す・住み続けるでかかるお金と税金の違い

判断の決め手になりやすいのが「結局いくら残るのか」です。細かな金額は物件ごとに変わるため、ここでは費用や税金の「種類」と国の基準を表にまとめます。

選択肢 かかる主なお金 税金・手続き
売る 仲介手数料(上限は売買価格が400万円を超える場合「価格の3%+6万円」と消費税)、測量・解体・片付けの費用、登記費用 売って利益が出れば譲渡所得税。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える「長期」は、合計で約20.315%(所得税15%・復興特別所得税・住民税5%)
貸す 修繕・リフォーム費、管理会社への手数料、空室の期間の固定資産税 家賃は不動産所得として確定申告。貸した家は、あとで売るときに3,000万円特別控除が使えなくなる場合がある
住み続ける/空けておく 固定資産税、火災保険、庭や建物の管理・修繕費、水道光熱の基本料金 管理が行き届かない空き家は、市区町村から改善の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地の軽減が外れることがある

※ 国税庁タックスアンサー No.3208、No.3306、空家等対策の推進に関する特別措置法をもとに作成(2026年10月確認)。個別の税額は税理士にご確認ください。

相続した実家を売る場合、所有期間は亡くなった方が取得したときから数えます。そのため、相続してすぐ売っても「長期」の税率になることが多いです。実際の判定は、売却前に税理士へ確認してください。

相続した実家を売るなら|3,000万円特別控除を使えるかの確認点

亡くなった親が一人で住んでいた実家を売る場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。国税庁の案内では、主な要件は次のとおりです。

3,000万円特別控除の主な確認点

  • 売る時期:平成28年4月1日から令和9年12月31日までの売却。亡くなった日から3年を過ぎる日の属する年の12月31日までに売ること
  • 建物:昭和56年5月31日以前に建てられ、マンションのような区分所有ではないこと。亡くなる直前に、亡くなった方以外に住んでいた人がいないこと
  • 売り方:建物ごと売るなら耐震基準を満たすこと。取り壊して土地だけ売るなら、取り壊しから売るまで土地を他に使わないこと
  • 相続後の使い方:相続してから売るまで、貸したり住んだり事業に使ったりしていないこと
  • 売る金額:売却代金が1億円以下であること
  • 控除額:令和6年1月1日以後の売却で、相続人が3人以上いるときは、1人あたり2,000万円まで
  • 手続き:確定申告が必要で、市区町村が出す「被相続人居住用家屋等確認書」などを添える

この特例は「相続してから早めに動く」ことが前提です。亡くなる前に親が老人ホームへ入っていた場合も対象になることがありますが、条件が細かいため、売却を決める前に市区町村の窓口か税理士に確認すると確実です。生前に売る場合との違いは実家を親が生きているうちに名義変更・売却するとどうなるかで比べられます。

迷ったときの進め方|3つのステップ

「売る・貸す・住み続ける」で結論が出ないときは、次の順番で整理すると決めやすくなります。

  1. 名義と登記を確認する:実家の名義が誰かで、動ける人が変わります(実家の名義の確認方法)
  2. 家族で希望を聞く:誰かが住む予定はあるか、売ってよいか、相続人の間でそろえておく
  3. 不動産会社2〜3社に査定を頼む:売る・貸す、どちらの場合の見込みも聞き、費用と手取りを比べる

査定は無料で、頼んだからといって売る約束にはなりません。判断材料をそろえる段階として使ってください。

認知症になる前に決めておくことの重要性

どの選択肢を選ぶにせよ、親が判断能力を失うと、売却も賃貸契約もできなくなります。「売る・貸す」を選ぶ可能性があるなら、親が元気なうちに方向性を決め、必要に応じて家族信託などで柔軟に対応できる仕組みを整えておくと安心です。

よくある質問(FAQ)

売るのと貸すの、どちらが得ですか?

一概には言えません。賃貸需要のある立地なら「貸す」で資産を残しつつ収入を得られますが、空室リスクや修繕費もかかります。需要が乏しく維持負担が重いなら「売る」が現実的です。立地・維持費・家族の意向を総合して判断しましょう。

売却で使える税の特例はありますか?

相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たすと譲渡益に対する特別控除が使えることがあります。ただし要件や期限が細かいため、適用の可否は税理士に確認してください。

親が認知症になったら、実家は売れなくなりますか?

本人に判断能力がないと売買契約は原則できません。成年後見制度による方法もありますが制約があります。売却の可能性があるなら、元気なうちに家族信託などで備えておくと柔軟に対応できます。

実家を売るとき、仲介手数料はいくらかかりますか?

仲介手数料には法律で上限があり、売買価格が400万円を超える場合は「価格の3%+6万円」に消費税を加えた額が上限です。たとえば3,000万円で売れた場合の上限は、96万円に消費税を加えた額になります。実際の額は不動産会社との契約で決まるため、依頼前に確認してください。

売れ残りそうな田舎の実家は、どうすればいいですか?

売却が難しい場合は、近隣の不動産会社や市区町村の「空き家バンク」への登録、隣地の方への打診などの方法があります。まず市区町村の空き家担当窓口に、利用できる制度や補助があるかを聞いてみてください。持ち続けるほど管理の費用と手間がかかるため、早めの相談がおすすめです。

参考にした公的情報

  • 国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
  • 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」
  • 空家等対策の推進に関する特別措置法(国土交通省)
  • 宅地建物取引業法に基づく報酬額の告示(国土交通省)

※ 税の特例や法律は改正されることがあります。ご利用前に最新の案内をご確認ください(確認日:2026年10月9日)。

実家や資産の備えを確認してみませんか? 相続税・生前対策かんたん診断(無料・登録不要・1分)で今の状況を整理できます。愛知県内での個別相談も承っています。

本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。複数の提携行政書士による監修体制で運営しており、特定個人の士業を推奨するものではありません。税・不動産取引の具体的な取扱いは、税理士・宅地建物取引業者など各分野の専門家にご確認ください。

▶ あわせて読みたい:相続した家をお得に売却するテクニック:手順と注意点

実家を「売る・貸す・住み続ける」で迷っている方へ
どれを選ぶかは、名義が誰か・相続人が何人いるか・親の判断能力が今どうかで前提が変わります。30分の無料相談では、登記簿と家族構成をもとに「今動けるのはどの選択肢か」「先に決めておくことは何か」を整理してお持ち帰りいただけます。愛知県内は対面、それ以外はオンラインです。
お電話 052-766-5650(相談中は折り返しになります)

あわせて読みたい

親の預金・保険、元気なうちに決めておくこと。30分無料で相談できます052-766-5650無料相談を申し込む
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

目次