役所で受け取った戸籍謄本を開いてみると、「戸籍事項」「身分事項」と小さな字が並んでいる。どこを見れば何が分かるのか、見当がつかない。銀行や法務局で「出生から死亡までの戸籍を」と言われて、初めて戸籍謄本を手にした方が戸惑う場面です。
戸籍謄本は、3つの欄に分かれています。欄ごとに書いてあることが決まっているので、上から順に見れば読めます。この記事では、いまの戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を欄ごとに説明し、「除籍」と「改製」の意味も整理します。手書き・縦書きの古い戸籍は、古い戸籍の読み方にまとめています。
この記事の結論
- 戸籍謄本は「戸籍事項欄」「戸籍に記録されている者」「身分事項欄」の3つでできています。順に、戸籍そのものの記録、一人ひとりの基本情報、その人に起きた出来事です。
- 全員が抜けて空になった戸籍が「除籍」、作り替える前の戸籍が「改製原戸籍」です。どちらも、いまの戸籍謄本とは別に請求します。
- 結婚で新しい戸籍を作った人は、身分事項欄の「従前戸籍」に結婚前の本籍が出ます。戸籍をさかのぼるときの手がかりになります。
戸籍謄本は3つの欄でできている
いまの戸籍謄本の正式な名前は「戸籍全部事項証明書」です。コンピュータ化された戸籍の内容を、載っている人全員分まとめて証明する書類で、紙の時代の「戸籍謄本」にあたります(世田谷区の案内)。市区町村の案内や申請書には「戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)」と並べて書かれていることが多く、窓口では「戸籍謄本をください」で通じます。
3つの欄の役割は次のとおりです。
戸籍謄本を構成する3つの欄
次の図は、結婚して新しい戸籍を作った夫婦の戸籍の見本です。名前や住所は架空のもので、書式は法務省の記載例などをもとに簡単にしてあります。実際の見た目は、市区町村や時期で少し違います。
上から順に、①で「どんな戸籍か」、②で「誰が載っているか」、③で「その人に何があったか」を読みます。
① 戸籍事項欄:この戸籍はいつ、どう作られたか
いちばん上に、本籍と筆頭者の氏名が出ます。本籍は戸籍が置かれている場所のことで、いま住んでいる住所とは別のものです。筆頭者は、戸籍の最初に書かれている人です。筆頭者が亡くなったり、戸籍から抜けたりしても、筆頭者は変わりません(名古屋市名東区の案内)。くわしくは筆頭者とはに書いています。
その下の戸籍事項欄には、戸籍そのものの動きが載ります。見本では、結婚の日に新しい戸籍を作ったので、編製日と婚姻の日が同じ日になっています。ここで出てくる言葉は、次の4つです。
戸籍事項欄に出てくる言葉
なお、令和7年(2025年)5月26日に戸籍法の改正が施行され、戸籍に氏名のフリガナが記載されるようになりました(法務省)。通知の見方は戸籍のふりがな通知の見方にまとめています。
② 戸籍に記録されている者:一人ひとりの基本情報
ここは、戸籍に入っている人ごとに1ブロックずつ並びます。戦後の戸籍は、原則として夫婦と、結婚していない子で作られています(名古屋市名東区の案内)。子が結婚して新しい戸籍を作ると、その子は親の戸籍から抜けます。
1人分のブロックの読み方
相続では、この父母の欄と続柄が、相続人を確かめる手がかりになります。亡くなった方に子が何人いるかは、亡くなった方の戸籍の子の欄と、子本人の戸籍の父母の欄を照らし合わせて確かめます。
③ 身分事項欄:その人に起きた出来事
身分事項欄は、その人の出来事を日付つきで書く欄です。戸籍は、出生、婚姻、離婚、縁組などの身分事項を公に証明するもので(文京区の案内)、届け出をするたびに、その人の欄に記録が足されていきます。見るポイントを表にしました。
身分事項欄の主な記載と読み取り方
婚姻の記載にある「従前戸籍」は、結婚する前にその人が入っていた戸籍のことです。見本では「○○県○○市□□町三丁目5番地 甲野幸雄」と書かれていて、父の幸雄さんが筆頭者の戸籍、という意味になります。相続で出生までさかのぼるときは、ここに書かれた本籍地に、ひとつ前の戸籍を請求します。
除籍の見方:人が抜けるときと、戸籍が空になるとき
戸籍から人が抜ける場合と、戸籍そのものが空になる場合では、扱いが違います。
「除籍」が出てくる場面
たとえば、夫婦の戸籍で夫が亡くなっても、妻が残っていれば戸籍は残ります。最後の一人が亡くなるか、戸籍から抜けると、その戸籍は除籍になります(岡山市・世田谷区の案内)。
もう一つ知っておきたいのは、コンピュータ化の前に戸籍から抜けていた人は、いまの戸籍には記録されないことがある、という点です。筆頭者だけは例外です(世田谷区の案内)。古い時期の家族関係を調べるときは、いまの戸籍謄本だけでは足りません。紙のままの古い除籍は書き方も古いことがあるので、古い戸籍の読み方も合わせてご覧ください。
改製の見方:「改製原戸籍」はいつの戸籍か
改製は、戸籍を作り替えることです。作り替える前の戸籍を「改製原戸籍」といい、いまも請求できます。コンピュータ化の直前の戸籍は「平成改製原戸籍」と呼ばれます(岡山市・世田谷区の案内)。
取り寄せる戸籍の種類と手数料(名古屋市の例)
手数料は市区町村で決めるので、請求先の案内で確かめてください。
コンピュータ化のとき、一部の身分事項は新しい戸籍に記録されないことがあります。現在の戸籍に出ていない事項を証明する必要があるときは、平成改製原戸籍も必要です(世田谷区の案内)。相続で「出生から死亡まで」の戸籍を求められるときも、除籍と改製原戸籍を含めて集めます。取り方は除籍謄本・改製原戸籍の取り方に書いています。
読んだあとの動き方:戸籍をつなぐ4つの手順
戸籍の読み方が分かったら、ひとつ前の戸籍へさかのぼります。流れは次のとおりです。
- 最新の戸籍謄本で、見たい人の欄と身分事項欄を読む
- 婚姻や転籍の記載から、「従前戸籍」や前の本籍を探す
- その本籍地に、ひとつ前の戸籍(除籍謄本や改製原戸籍謄本)を請求する
- 取った戸籍の編製日・改製日が、前の戸籍の除籍日と重なっているか確かめる
請求できるのは、本人、配偶者、父母・祖父母など(直系尊属)、子・孫など(直系卑属)です。それ以外の人は、請求の理由を書く必要があります。窓口では本人確認書類が要ります(法務省)。
本籍地が遠いときは、本籍地以外の窓口で請求できる「広域交付」があります。ただし、窓口に直接行く必要があり、郵送や代理人の請求はできません。きょうだいの分や、コンピュータ化されていない一部の戸籍、個人事項証明書も請求できません(法務省)。くわしくは戸籍の広域交付の使い方をご覧ください。
よくある質問
Q1 戸籍謄本と戸籍抄本は、何が違いますか。
謄本は戸籍に載っている全員、抄本は一部の人だけを写したものです。いまの名前では、謄本が戸籍全部事項証明書、抄本が戸籍個人事項証明書です(岡山市の案内)。使い分けは戸籍謄本と戸籍抄本の違いで説明しています。
Q2 見本と自分の戸籍で、欄の並びや言葉が違います。
戸籍の書式は、時期や市区町村のシステムで少しずつ違います。意味が分からない記載は、発行した窓口に聞くと教えてもらえます。個別の戸籍の読み取りや、相続人の判断は、司法書士などの専門家に確認してください。
Q3 住民票と戸籍謄本は、同じものですか。
別のものです。住民票は住んでいる場所と世帯、戸籍は親子や夫婦などの関係を証明します。置かれている場所も、住所地と本籍地で違います(岡山市の案内)。違いは住民票と戸籍謄本の違いで表にしています。
Q4 子が親の戸籍謄本を取るとき、委任状は要りますか。
子が両親の戸籍謄本を請求する場合、委任状は要りません。本人確認書類は必要です。使いの人や代理人が取るときは、委任状などが要ります(法務省)。
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- 筆頭者とは?意味と決まり方、亡くなったら変わるかと確認方法
参考にした公的情報
- 法務省「戸籍記載例」(全部事項証明書の見本)
- 名古屋市名東区「戸籍について」
- 岡山市「戸籍全部事項証明書・除籍・改製原戸籍について」
- 世田谷区「戸籍の証明書について」
- 名古屋市「戸籍の証明書の手数料」
- 法務省「戸籍の窓口での本人確認」
- 法務省「戸籍の証明書の請求が便利になります(広域交付)」
- 法務省「戸籍にフリガナが記載されます」
- 文京区「住民票と戸籍の違い」
※本記事は2026年10月8日時点の、法務省と市区町村の公開情報にもとづく一般的な情報です。戸籍の書式や記載は、時期と本籍地によって異なります。個別の戸籍の読み取りや相続人の判断は、司法書士などの専門家にご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
