成年後見制度の費用・デメリットと「使いにくさ」|認知症になる前にできる備え(名古屋家庭裁判所の管轄・愛知)

平日の午前、市役所の窓口で「お母様名義の定期預金を解約するには、まず後見人を選任していただく必要があります」と言われ、その場で言葉に詰まった――。今すぐ動きたくても、家庭裁判所への申立てから後見人が決まるまでには数ヶ月かかることも珍しくありません。しかも、いったん始まった後見は、本人が亡くなるまで原則としてやめられません。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 成年後見制度(法定後見)は判断能力低下”後”の制度で、後見人への報酬など費用は本人が亡くなるまで継続的にかかります
  • 家族が後見人に選ばれるとは限らず、司法書士・弁護士等の専門職が選任されるケースが多いのが実情です
  • 名古屋家庭裁判所は本庁と一宮・半田・岡崎・豊橋の4支部に分かれ、申立ては本人の住所地を管轄する家裁で行います
  • 判断能力が低下する前なら、任意後見・家族信託・保険など、より柔軟な備えを選べます

「調べてみたら、成年後見の申立てには数ヶ月かかり、後見人に選ばれるかどうかも分からず、しかも一度始めたら報酬がずっと続く」。多くの方が漠然と感じているのは、この”先の見えなさ”です。本当につらいのは手続きの煩雑さそのものよりも、いつまで・いくら費用がかかるのか誰も明確に答えてくれないまま進んでいくことかもしれません。だから、この記事では、法定後見(成年後見)の負担の全体像と、お住まいの地域を管轄する名古屋家庭裁判所の窓口、そして判断能力が低下する前に選べる備えの選択肢までをまとめました。

目次

法定後見(成年後見)が始まると、何が変わるか

成年後見制度(法定後見)は、判断能力が既に低下した方について、家庭裁判所が後見人等を選任し、本人に代わって財産管理や契約行為を行える状態にする制度です。認知症による預金口座の凍結を解除する際の代表的な選択肢の一つでもあります(凍結の基本的な仕組みは認知症による口座凍結とは?銀行の判断基準と防ぐ7つの対策で解説しています)。制度自体は本人を保護するためのものですが、実際に利用した家族から聞こえてくるのは次のような負担です。

費用が本人が亡くなるまで続く。 後見人(特に司法書士・弁護士等の専門職)への報酬は、家庭裁判所の審判で本人の財産状況等に応じて決定され、後見が終了するまで、つまり原則として本人が亡くなるまで毎月発生し続けます。申立て時にも収入印紙(申立手数料)800円程度、登記手数料2,600円程度に加え、判断能力の程度を確認する鑑定が必要な場合は鑑定費用として5万円〜10万円程度が目安になるとされています。ただしこれらはあくまで目安であり、事案により変動するため、正確な見込みは家庭裁判所や税理士等の専門家にご確認ください。

後見人を家族が選べるとは限らない。 申立て時に候補者を立てることはできますが、最終的に誰を選任するかは家庭裁判所の判断です。財産状況や親族間の意見の違いなどによっては、親族ではなく専門職が選ばれることも少なくありません。

財産が硬直化する。 後見人は本人の財産を「維持すること」が基本方針になるため、相続税対策としての生前贈与や資産の組み替え、投資性の高い運用などは、家庭裁判所の許可がなければ基本的にできなくなります。たとえば「実家を売って介護施設の入居費用に充てたい」といった場合でも、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要で、判断から実行まで想定より時間がかかることがあります。

なお、成年後見の申立てそのものの代理は弁護士・司法書士の業務です。行政書士は申立書類の作成サポートを行っており、代理が必要な場合は弁護士・司法書士にご相談いただくようご案内しています。申立ての具体的な流れ・必要書類・費用の詳細は認知症で凍結された銀行口座を解除するには?成年後見制度の手続き・費用・注意点を解説で詳しく解説していますので、実際に手続きを検討されている方はあわせてご覧ください。

名古屋家庭裁判所の管轄地域一覧(本庁・一宮・半田・岡崎・豊橋支部)

成年後見の申立ては、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。愛知県内で名古屋家庭裁判所の管轄となる地域は、本庁のほか一宮・半田・岡崎・豊橋の4支部に分かれています。お住まいの市区町村がどの窓口の管轄になるかを、下表でご確認ください。

管轄 対象市区町村 対応する公証役場の関連記事
本庁
(名古屋家庭裁判所)
名古屋市/豊明市/日進市/清須市/北名古屋市/豊山町/東郷町/春日井市/小牧市/瀬戸市/尾張旭市/長久手市/津島市/愛西市/弥富市/あま市/大治町/蟹江町/飛島村 名古屋公証役場春日井公証役場
一宮支部 一宮市/稲沢市/犬山市/江南市/岩倉市/大口町/扶桑町 一宮公証役場
半田支部 半田市/常滑市/東海市/大府市/知多市/阿久比町/東浦町/南知多町/美浜町/武豊町 半田公証役場
岡崎支部 岡崎市/幸田町/安城市/碧南市/刈谷市/西尾市/知立市/高浜市/豊田市/みよし市 岡崎公証役場豊田公証役場西尾公証役場
豊橋支部 豊橋市/豊川市/蒲郡市/田原市/新城市/設楽町/東栄町/豊根村 豊橋公証役場新城公証役場

※2026年7月時点の情報です。出典:裁判所公式サイト(名古屋家庭裁判所 管内の裁判所所在地)。最新情報は裁判所公式サイトでご確認ください。

たとえば一宮市・稲沢市・岩倉市などにお住まいの場合は一宮支部が申立ての窓口になり、地域の公証役場も一宮公証役場が対応します。半田市・常滑市・知多市など知多半島エリアは半田支部の管轄で、半田公証役場と重なります。同様に、岡崎支部は岡崎・豊田・西尾の3つの公証役場、豊橋支部は豊橋・新城の2つの公証役場と対応地域がほぼ一致しています。当サイトでは9つの公証役場エリアについて、公正証書遺言や任意後見契約の作り方をそれぞれまとめていますので、お住まいの地域の記事もあわせてご覧ください。

だから、判断能力が低下する前にできる備え(任意後見・家族信託・保険)

ここまで見てきた負担――費用の継続、後見人を選べないこと、財産の硬直化――は、いずれも判断能力が低下した”後”に法定後見を使うことで生じるものです。裏を返せば、判断能力がしっかりしている”今”であれば、これらを避けられる選択肢があります。

任意後見。 本人が元気なうちに、将来の後見人と支援内容をあらかじめ契約で決めておく制度です。公正証書での作成が法律上必須で、契約時点ではなく判断能力低下後に家庭裁判所が監督人を選任した時点から効力が生じます。誰に託すかを本人の意思で決められる点が、法定後見との大きな違いです。詳しくは任意後見契約を公証役場で作る完全ガイドをご覧ください。

家族信託。 保有する不動産や預貯金の管理を、契約に基づいてあらかじめ家族に託しておく仕組みです。判断能力が低下した後も、信託の範囲内であれば家庭裁判所を介さず家族の判断で管理を続けられるため、賃貸物件の契約更新や修繕といった日常的な財産管理の柔軟性を保ちやすいのが特徴です。詳しくは家族信託で親の資産凍結を防ぐで解説しています。

保険。 認知症など判断能力が低下した後は新たに保険へ加入することが難しくなるため、入院費や将来の生活費に充てる資金をあらかじめ確保しておく方法として、生命保険を活用するケースもあります。どのような備え方が向くかは家族構成や資産状況によって異なるため、特定の商品ありきで考えるのではなく、複数の選択肢を比較したうえで検討することをおすすめします。

任意後見・家族信託・保険のいずれも、判断能力がしっかりしている”今”だからこそ選べる備えです。ご自身やご家族の状況にどの組み合わせが向くかは、生前対策診断で確認できます。

【実務のポイント】

最高裁判所が公表している統計でも、近年は親族ではなく司法書士・弁護士等の専門職が後見人に選任されるケースが全体の多くを占める状況が続いています。「家族の中の誰かが後見人になって、これまで通り財産を管理してくれるはず」というイメージのまま申立てをすると、実際の運用とのギャップに戸惑うご家族も少なくありません。

こんな方には、この記事の内容は不要です

すでに判断能力の低下が進んでおり、銀行口座の凍結など緊急に対応が必要な状況にある場合は、この記事で紹介しているような予防的な備え(任意後見・家族信託等)は選べません。その場合は、実際に家庭裁判所へ成年後見の申立てを行う必要があります。具体的な手続きは認知症で凍結された銀行口座を解除するには?で解説していますので、あわせて弁護士・司法書士へのご相談もご検討ください。

セルフチェック|まだ”備える”段階か、それとも申立てが必要な段階か

次の5つのうち、当てはまる(YES)ものはいくつありますか。

  • ご本人は日常生活で大きな判断の間違いをしていない
  • まだ正式に認知症等の診断を受けていない、または診断を受けていても軽度である
  • 銀行の窓口で「本人の意思確認ができない」と言われたことはない
  • 本人名義の口座や不動産の管理を、今のところ本人の同意を得て家族が把握できている
  • 今すぐ家庭裁判所へ申立てが必要な緊急の状況ではない

YESの数で見る、今の状況

4〜5個YES:まだ十分に余裕があります。任意後見・家族信託・保険を組み合わせて、今のうちに備えを整えるのに適した段階です。生前対策診断でご自身に合う備えを確認してみてください。

2〜3個YES:一部に気になる兆候があります。先延ばしにするほど選べる選択肢は狭まるため、早めに生前対策診断で今できることを確認することをおすすめします。

0〜1個YES:すでに判断能力の低下が進んでいる可能性が高い状況です。この記事のような予防的な備えではなく、実際に家庭裁判所への成年後見の申立てを検討すべき段階です。こちらの記事や弁護士・司法書士へご相談ください。

よくある質問

Q. 子どもなど家族が成年後見人になることはできますか?
候補者として申立てはできますが、最終的に選任するのは家庭裁判所です。財産の規模や親族間の状況によっては、司法書士・弁護士等の専門職が選任されることも多く、必ず家族が選ばれるとは限りません。

Q. 申立てにはどのくらい費用がかかりますか?
収入印紙(申立手数料)800円程度、登記手数料2,600円程度に加え、鑑定が必要な場合は5万円〜10万円程度が目安とされていますが、事案により変動します。後見が始まった後の後見人報酬も本人が亡くなるまで継続的にかかるため、あわせて家庭裁判所や税理士等にご確認ください。

Q. 名古屋家庭裁判所の管轄はどこで確認できますか?
本記事の管轄地域一覧表でご確認いただけます。より詳しい最新情報は裁判所公式サイトでもご案内されています。

Q. まだ元気だから、備えを考えるのは早いのでは?
任意後見は本人が元気なうちにしか結べない契約です。「まだ早い」のではなく、迷っている間に判断能力が低下すると、そもそも契約という選択肢自体がなくなってしまいます。早すぎるということはありません。

Q. 行政書士に申立てを代理してもらうことはできますか?
成年後見の申立ての代理は弁護士・司法書士の業務です。行政書士は申立書類の作成サポートを行っており、代理が必要な場合は弁護士・司法書士へのご相談をご案内しています。

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あわせて読みたい

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税額計算・法的判断や、特定の保険商品の推奨を行うものではありません。費用・金額は2026年7月時点の目安であり、事案により異なります。正式な申立て手続きの代理は弁護士・司法書士、税務判断は税理士にご相談ください。保険についてのご相談は提携する乗合代理店をご紹介する場合があり、その際に当社が紹介料を受け取ることがあります。

この先どうするか、決めかねている方へ

当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。実際の手続きをご依頼になる場合は、提携先の専門家が有償で承ります。ご希望に応じて提携先をご紹介した際に紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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