「スマホで証券口座を開いて、NISAを始めた」「親がネットで株を買っているらしいけれど、どこの会社か知らない」。ネット証券は通帳も窓口もないため、本人以外は口座があることに気づきにくい仕組みです。
この記事では、ネット証券の口座を開くときに家族と共有しておきたいことを、金融庁・日本証券業協会・国税庁の公表資料をもとに整理します。ID・パスワードの扱い方、届く書類、亡くなったときと認知症のときの備えまでまとめました。特定の証券会社や商品を勧める記事ではありません。
先に結論:伝えるのは「口座がある事実」。パスワードはそのまま書き残さない
この記事の結論
- 家族に伝えるのは、口座の存在と会社名です:名義人が亡くなったら、相続人が証券会社に連絡して手続きを始めます。家族がIDやパスワードでログインする必要はありません。
- パスワードそのものを紙に書いて置かない:メモが他人の手に渡ると、不正アクセスのもとになります。金融庁は、使い回さないことや多要素認証の設定を呼びかけています。
- 書類の届き方と、判断力が落ちたときの備えも決めておく:取引報告書などを郵送で受け取るか電子交付にするか、代理人の仕組みがあるかを、口座を開くときに確かめます。
家族と共有しておくこと一覧
共有するのは「家族が手続きの入口にたどり着ける情報」です。ログインに使う情報は、共有するものに入れません。
ネット銀行やサブスクなど、ほかのデジタルの契約も含めた整理の進め方は、デジタル終活のやり方でまとめています。
ID・パスワードの考え方:書き残すことの注意
「もしものときのために、パスワードを紙に書いておこう」と考える方は少なくありません。ただ、パスワードを書いた紙は、家族以外の人の目に触れたときに悪用されるおそれがあります。
金融庁は、証券会社などを装った偽サイトでIDやパスワードを盗まれ、不正アクセスや不正取引が起きる被害について、注意を呼びかけています(2026年10月更新)。主な内容は次のとおりです。
- パスワードは使い回さない。できるだけ長く、推測されにくいものにする
- ログイン・取引・出金・出金先の変更のときの多要素認証や、取引の通知サービスを有効にする
- メールやSMSのリンクは開かず、正しいURLをブックマークしてそこからアクセスする
- 口座の状況をこまめに確かめる
- パソコンやスマホのOSとソフトを最新にしておく
家族のためにパスワードを残しても、使う場面はほとんどありません。亡くなったあとの手続きは、相続人が証券会社に連絡して進めます。生きているうちに家族が代わりに手続きをしたいときは、パスワードを渡すのではなく、証券会社の代理人の仕組みを使います(後の章で説明します)。
どうしても書き残したいときは、パスワードそのものではなく「どこに保管してあるか」だけを家族に伝える、封をして保管するなど、人の目に触れにくい方法を家族と決めておきます。
口座を開くときに決めておくこと
ネット証券の口座は、スマホやパソコンから申し込めます。どの会社で開くか、何に投資するかはこの記事では扱いません。最終的な判断はご自身でなさってください。そのうえで、開くときに次の3つを決めておくと、あとで家族が困りにくくなります。
- 書類の受け取り方:電子交付(書類をネット上で受け取る方法)にすると、家に郵便が届きません。家族が口座に気づくきっかけが減るため、会社名を紙に残しておくことがより大切になります。
- 口座の種類:特定口座で源泉徴収を選ぶと、その口座の上場株式等の売却益は、確定申告をしないことを選べます(国税庁タックスアンサー・番号1476)。NISA口座は1人1口座です。
- 代理人の仕組みがあるか:判断する力が落ちたときに、家族が代わりに手続きできる仕組みがあるかを確かめます。ネット専用の口座では、家族を代理人にできない場合があります。
60代からNISAを始めるときの、入れてよい額の考え方は60代からのNISAで整理しています。
届く書類で、口座があることを家族に知らせる
証券口座では、取引や残高を知らせる書類が届きます。日本証券業協会は、届いた書類の内容を確かめるよう呼びかけています。これらの書類は、家族にとって「どの会社に口座があるか」の手がかりにもなります。
電子交付にしている場合は、年に1回、取引残高報告書を印刷してエンディングノートと一緒に保管しておく方法もあります。紙で手元にあれば、家族が会社名と預けているものを確かめられます。
心当たりのない取引が書類に載っていたら、ブックマークした正しいサイトや書類に書かれた窓口から、証券会社にすぐ問い合わせます。
亡くなったとき・認知症のときの備え
亡くなったとき:相続人が証券会社に連絡する
名義人が亡くなったら、相続人が証券会社に連絡し、株や投資信託を相続人名義の口座へ移すのが基本の流れです。必要な書類や、口座がある会社が分からないときの調べ方は、証券口座の相続手続きで整理しています。
NISA口座の非課税は亡くなった日までで、中身は相続人のNISA口座には移せません。届出と移し方はNISA口座の相続手続きをご覧ください。家族が会社名を知っていれば、最初の連絡をすぐにできます。
認知症への備え:元気なうちに代理の仕組みを
証券口座の取引は、原則として名義人本人しかできません。本人の判断する力が落ちた後に家族が売るには、成年後見制度を使うのが基本です。元気なうちなら、証券会社の代理人の仕組みや、日本証券業協会が示す家族サポート証券口座などを用意できる場合があります。
それぞれの違いと必要な書類は、親が認知症になったら証券口座・NISAは?で詳しく比べています。口座を開くときに代理人の仕組みがあるかを確かめておくと、あとで選べる方法が広がります。
ご自分の預金や自宅を、元気なうちにどう残すか整理しておきたい方は、3分でできる相続対策診断で確かめられます。
今日できる一歩
- 証券会社の名前と問い合わせ先、口座の種類を1枚の紙に書き、エンディングノートや通帳と同じ場所にしまいましょう。家族には、その紙の置き場所だけを伝えておきます。
よくある質問
Q. 家族にパスワードを教えておいたほうがよいですか?
A. 教えなくても、亡くなったあとの相続手続きはできます。相続人が証券会社に連絡して進めるためです。生きているうちに代わりの手続きが必要になりそうなら、代理人の仕組みを確かめておきます。
Q. 親がネット証券を使っているか分からないときは?
A. スマホのアプリやメール、銀行通帳の入出金の記録、郵送された書類が手がかりになります。亡くなった後の調べ方は、証券口座の相続手続きの記事でまとめています。
Q. 電子交付と郵送は、どちらにすればよいですか?
A. どちらが向くかは人によります。電子交付にするなら、郵便が届かない分、会社名を紙に残す、年に1回は報告書を印刷するなどの工夫をしておくと、家族が口座に気づけます。
Q. 夫婦で1つの口座を使えますか?
A. 証券口座は名義人本人のものです。NISAも1人1口座で、夫婦はそれぞれ自分の名義で口座を持ちます。
Q. 家族サポート証券口座は、どこの証券会社でも使えますか?
A. 取り扱っている証券会社は一部です。口座を開く前に、取り扱いがあるか、代理人の仕組みがあるかを証券会社に確かめてください。
参考にした公的情報
- 金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください」
https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/chuui_phishing.html - 日本証券業協会「取引前と取引後の留意点」
https://www.jsda.or.jp/anshin/inv_alerts/alearts02/alearts02-2.html - 日本証券業協会「取引残高報告書」(用語解説)
https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/jishukisei/words/0208.html - 国税庁 タックスアンサー「特定口座制度」(番号1476)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1476.htm - 日本証券業協会「家族サポート証券口座」
https://market.jsda.or.jp/shijyo/kazokusupport/index.html
※本記事は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な整理です。特定の証券会社や金融商品を勧めるものではありません。投資には元本割れなどのリスクがあります。口座のサービスや手続きは証券会社ごとに異なるため、口座のある証券会社の最新の案内をご確認ください。
