ネット銀行やネット証券、暗号資産、SNS、動画や音楽のサブスク——現代の暮らしには、目に見えない「デジタル資産」や「デジタル契約」があふれています。ところが、これらは本人しか把握しておらず、亡くなった後に家族がその存在に気づけないという問題を抱えています。近年注目されているのが、こうしたデジタル情報を整理しておく「デジタル終活」です。
この記事では、愛知県内で相続・生前対策のご相談を受けている当社の視点から、デジタル終活のやり方を、中立の立場でわかりやすく整理します。終活全体の進め方は終活とは?何から始めればいいかもあわせてご覧ください。
デジタル終活がなぜ必要なのか
デジタル資産・契約を放置すると、次のような問題が起きます。
- 存在に気づけない:紙の通帳がないネット口座・ネット証券は、家族が見つけられず、相続手続きから漏れる
- サブスクが払い続けられる:解約されないまま、口座やカードから引き落としが続く
- 暗号資産が相続できない:把握できず、あるいはパスワードがわからず、事実上引き出せなくなる
- SNSが放置される:アカウントが残り続け、不正利用のリスクにもなる
特に暗号資産やネット証券は、相続財産として課税の対象になる一方で、家族が存在を知らなければ手続きできないという厄介さがあります。「見えない資産・負債」を可視化することが、デジタル終活の目的です。
整理すべきデジタル資産・契約
デジタル終活のやり方
- デジタル資産・契約の棚卸しリストを作る(サービス名・用途を書き出す)
- 不要なサブスク・アカウントは今のうちに解約する
- IDやパスワードの「保管場所」を決める(ノートに直接書かず、在り処を示す方法も)
- 死後の扱いの希望を書き残す(削除してほしい/残してほしい)
- 信頼できる人に、リストの存在と保管場所を伝える
棚卸しの結果は、エンディングノートに一元化しておくと便利です。ただし、パスワードそのものをそのまま書き込むと紛失・盗難時のリスクがあるため、保管場所を示すにとどめる、機微な情報は別管理にするなど、セキュリティに配慮しましょう。
今日の一歩:30分でできるところまで
1. 端末を開ける方法だけを紙に書く
スマホとパソコンのロック解除の方法(暗証番号・パターン)を紙に書き、通帳や保険証券と同じ場所にしまいます。ここで書くのは端末を開ける方法だけです。個々のサービスのパスワードは書きません。端末さえ開けば、メールとアプリから残りはたどれます。
2. 引き落としを12か月分さかのぼる
通帳とクレジットカードの明細を直近12か月分ならべて、毎月または毎年おなじ金額が出ているものに印をつけます。年1回課金のサブスクは、12か月分を見ないと表に出てきません。ここで出たものが、そのまま解約候補のリストになります。
3. サービス側の「その後」の設定を先に済ませる
主要なサービスには、本人が生前に設定しておくと死後に指定した人がデータへアクセスできる仕組みがあります。iPhone・iPad・Mac は設定内の「故人アカウント管理連絡先」、Google アカウントは「アカウント無効化管理ツール」です。どちらも本人しか設定できません。家族に頼まれてからでは間に合わない部分です。
4. お金が絡むものは「どこにあるか」まで
ネット銀行・ネット証券・暗号資産は、金融機関名と取引所名だけを書き出します。残高やパスワード、暗号資産の秘密鍵は書きません。名前さえ分かれば、相続人は各社の相続手続き窓口に照会できます。分からなければ、家族は口座の存在にたどり着けません。
それでも進まないときは
全部を一度にやろうとすると止まります。1〜4のうち、1と2だけを今日やると決めてください。この2つが済んでいれば、残りが未完成でも、家族は端末を開けて引き落としを止めるところまでは進めます。伝える相手は1人で足ります。リストの中身ではなく、置き場所だけを伝えてください。
暗号資産の相続で特に注意したいこと
暗号資産は、①家族が存在を把握しづらい、②相続税の課税対象になり得る、③秘密鍵やパスワードがわからないと引き出せない、という三重の難しさがあります。「相続税はかかるのに、資産は取り出せない」という最悪の事態を避けるため、保有している場合は、取引所名や保管方法の在り処を、確実に家族へ引き継げるようにしておくことが重要です。
SNS・アカウントの停止は死後事務委任でも手配できる
亡くなった後のSNSアカウントの停止・削除や、サブスクの解約は、家族が担うのが難しい場合もあります。特に身寄りに頼れない方は、死後事務委任契約の中で、こうしたデジタル情報の停止・削除の手配を託しておくこともできます。生前整理・エンディングノート・死後事務委任を組み合わせると、デジタル面の備えも切れ目なく整います。
よくある質問(FAQ)
パスワードはエンディングノートに書いていいですか?
そのまま書くと、紛失・盗難時に悪用されるリスクがあります。「どこに保管しているか」を示すにとどめる、機微な情報は別管理にするなど、セキュリティに配慮しましょう。定期的な見直しも大切です。
暗号資産も相続の対象になりますか?
はい、暗号資産は相続財産として扱われ、相続税の課税対象になり得ます。一方で、家族が存在やアクセス方法を知らないと手続きできません。保有している場合は、在り処を確実に引き継げるようにしておくことが重要です。個別の税の取扱いは税理士にご確認ください。
故人のSNSはどうすればいいですか?
各サービスに、追悼アカウント化や削除の手続きが用意されている場合があります。ただし家族が対応するのは負担が大きいため、生前に希望を残し、必要なら死後事務委任契約で停止・削除の手配を託しておく方法もあります。
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本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。複数の提携行政書士による監修体制で運営しており、特定個人の士業を推奨するものではありません。個別の税額計算は税理士にご相談ください。
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