「年金が400万円以下なら確定申告は要らない」と聞いて、何もしていない。ところが今年は入院があって医療費がかさみ、家計の負担が大きかった。確定申告をしなくてよいなら、この医療費はどこにも申告しなくてよいのだろうか。2月から3月にかけて、よく聞かれる疑問です。
この記事では、年金を受けている人が市区町村に出す「住民税の申告(市民税・県民税の申告)」について、要る人と要らない人、期限と出し方、書き方の例、よくある間違いを整理します。内容は2026年10月30日時点で確認した名古屋市の「令和8年度分 市民税・県民税申告の手引き」などに基づいています。令和9年度分(2026年の所得の分)の様式や会場は、2027年1月以降に各市区町村から案内されます。
住民税の申告と確定申告の違い
住民税は、前の年の所得をもとに市区町村が計算します。年金だけの人なら、日本年金機構から市区町村に届く年金の情報で計算されるため、ふだんは自分で何かを出す必要はありません。源泉徴収票に載っていないことを伝えたいときに出すのが、住民税の申告です。
| 所得税の確定申告 | 住民税の申告 | |
|---|---|---|
| 出す先 | 税務署 | 1月1日に住んでいる市区町村 |
| 反映される税金 | 所得税(内容は市区町村にも伝わり、住民税にも反映) | 住民税だけ |
| 年金から引かれた所得税 | 払いすぎなら戻る | 戻らない |
| 期限(2026年の所得の分) | 2027年3月15日(月)。還付だけなら1月から5年間 | 2027年3月15日(月) |
年金から所得税が引かれている人が医療費控除を受けるなら、確定申告のほうが、所得税も戻り住民税にも反映されます。年金から所得税が引かれていない人や、手続きを市役所で済ませたい人は、住民税の申告で足ります。確定申告が要るかどうかの判断は「年金受給者の確定申告|400万円の不要条件」にまとめています。確定申告をする場合の作り方は「年金受給者の確定申告のやり方」で説明しています。
住民税の申告が要る人・要らない人の早見表
| 2026年の状況 | 住民税の申告 |
|---|---|
| 年金だけで、源泉徴収票にない控除も受けない | 不要 |
| 所得税の確定申告をする(した) | 不要 |
| 年金だけだが、医療費控除を受けたい | 必要 |
| 年金だけだが、自分で払った社会保険料(納付書や口座振替で払った国保料など)を控除したい | 必要 |
| 年金だけだが、生命保険料控除などを受けたい | 必要 |
| 年金のほかに、パートの給与(年末調整なし)や家賃・原稿料などの所得がある(20万円以下でも) | 必要 |
| 遺族年金・障害年金だけ | 申告の義務はない(非課税の年金は所得に入らない) |
| 2026年に所得がまったくなかった | 義務はないが、国民健康保険料の計算や証明書の発行に使うため、名古屋市は申告を勧めている |
夫を亡くして再婚していない人が、寡婦控除をまだ住民税に反映していない場合も、住民税の申告で伝えられます。寡婦に当たる人は、前の年の合計所得が135万円以下なら住民税がかかりません。詳しくは「寡婦控除とは」で整理しています。
期限と出し方(名古屋市の例)
住民税の申告の期限は3月15日で、2026年の所得の分は2027年3月15日(月)です。出す先は、2027年1月1日に住所がある市区町村です。年明けに引っ越した場合も、1月1日の住所の市区町村に出します。
| 出し方 | 名古屋市の場合(令和8年度分の案内) |
|---|---|
| 郵送 | 住んでいる区を担当する市税事務所へ。控えが要るときは返信用封筒を同封 |
| 電子申告 | eLTAX(マイナンバーカードが必要)。市の「試算と申告書の作成」ページで画面上で作ることもできる |
| 窓口・会場 | 令和8年度分は申告受付会場が2月6日〜3月16日。混雑するため郵送か電子申告が勧められている |
| できない方法 | FAX、電子メール |
名古屋市以外の市町村では、市役所・町村役場の市民税(住民税)の担当課が窓口です。申告書は前の年に申告した人に送られてくることが多く、届かない人は市区町村のホームページや窓口で手に入ります。
書き方の例:医療費控除を受ける場合
- 収入・所得の欄:年金の「公的年金等の源泉徴収票」(2027年1月に届く)の支払金額を写します。源泉徴収票の写しを添えるよう求める市区町村もあります。
- 医療費控除の欄:1年間に払った医療費から保険などで補てんされた分を引き、さらに10万円(所得が200万円未満なら所得の5%)を引いた額を書きます。
- 添付するもの:「医療費控除の明細書」を付けます。名古屋市では、領収書を添付して明細書の代わりにすることはできません。健康保険の「医療費のお知らせ」を使うと、明細書の記入が少なくなります。
- マイナンバーと本人確認:マイナンバーを書き、本人確認書類を用意します(電子申告はマイナンバーカードで済みます)。
医療費控除の対象になる費用と計算の考え方は「医療費控除のやり方」、介護サービスやおむつ代の扱いは「介護費用・おむつ代は医療費控除の対象?」で整理しています。
よくある間違い
- 「確定申告不要」を「何もしなくてよい」と思い込む:確定申告が要らないのは所得税の話です。源泉徴収票にない控除を住民税に反映するには、住民税の申告が要ります。
- 年金以外の所得が20万円以下なので申告しない:20万円以下で申告が要らないのは所得税の確定申告だけです。住民税では申告が必要です。
- 所得税が引かれているのに住民税の申告だけで済ませる:住民税は軽くなりますが、年金から引かれた所得税は戻りません。所得税も戻したいなら確定申告をします。
- 確定申告と住民税の申告を両方出す:確定申告をすれば、その内容が市区町村に伝わります。住民税の申告書を重ねて出す必要はありません。
- 年金から天引きされた保険料を、もう一度書き足す:天引き分は源泉徴収票に載っており、すでに反映されます。書き足すのは、納付書や口座振替で自分で払った分です。
子が親の保険料を自分の口座から払っている場合は、その分は親ではなく子の控除になります。払い方による違いは「親の後期高齢者医療・国保の保険料を子が払うと控除になる?」にまとめています。
親の申告を子が手伝うと、病院や薬局の支払い、公共料金の引き落としなど、親のお金の動きを家族が見る機会が増えます。親のカードを、リボ払いが初めから付かないものや、家族を代理人に登録できるものにしておくと、問い合わせや利用の停止を家族が代わりにしやすくなります。
高齢の親のカードを、リボ払い・家族の手続きで比べるよくある質問
親の住民税の申告を、子が代わりに書いて出してもよいですか
申告書は親本人の名前で書きます。郵送で出す場合は、家族が書類をそろえて投函してかまいません。窓口に家族が行く場合の持ち物(委任状など)は市区町村で違うため、事前に担当の課に確かめてください。
期限の3月15日を過ぎてしまいました
気づいた時点で、すぐに住んでいる市区町村の税の担当に連絡してください。すでに住民税の通知書が届いたあとでも、内容を直してもらえるかどうかを案内してもらえます。所得税の分は、還付申告なら5年間出せます。
住民税の申告をすると、住民税が非課税になることはありますか
住民税がかかるかどうかは、医療費控除などを引く前の所得(合計所得金額など)で判断されます。そのため、医療費控除を申告しても非課税に変わることは通常ありませんが、かかる住民税(所得割)の額は少なくなります。非課税の基準そのものは「年金暮らしの住民税非課税はいくらまで?」で整理しています。
参考にした公的情報
- 名古屋市「市民税・県民税の申告」(2026年3月17日更新)
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1037356/1011880/1011927.html - 名古屋市「令和8年度分 市民税・県民税申告の手引き」(PDF)
https://www.city.nagoya.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/927/8tebiki.pdf - 名古屋市「年金収入が400万円以下の場合、市民税・県民税の申告は?」(2026年1月5日更新)
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1035069/1012012/1012022/1033974/1012036.html - 名古屋市「昨年中所得がなかった場合、市民税・県民税の申告は?」(2026年1月5日更新)
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1035069/1012012/1012022/1033974/1012028.html - 国税庁「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200042/noufu_kigen.htm
本記事は2026年10月30日時点の名古屋市・国税庁の公開情報にもとづく一般的な内容です。令和9年度分(2026年の所得の分)の申告書・会場・日程は、各市区町村の案内をご確認ください。申告が必要か、控除がいくらになるかは、収入や家族の状況によって変わります。個別の判断は、お住まいの市区町村の税の窓口、税務署、または税理士にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー) 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
