実家に届いた後期高齢者医療の保険料の通知書を見ると、年に数万円。親の暮らしを支えているのは自分なのに、この保険料は自分の税金に関係ないのだろうか。年末調整の書類を書く11月に、こう考える人は少なくありません。
この記事では、子が親の保険料を払ったときに子の「社会保険料控除」になる条件、年金から天引きされている場合の扱い、口座振替への切り替え方と時期、年末調整での書き方を整理します。内容は2026年10月30日時点で確認した国税庁と名古屋市の公開情報に基づいています。
社会保険料控除とは:払った額の全部を所得から引ける
社会保険料控除は、その年に実際に払った社会保険料の全額を、所得から差し引ける控除です。上限はありません。自分の分だけでなく、生計を一にする配偶者や親族が負担すべき保険料を払った場合も、払った人の控除にできます(国税庁タックスアンサーNo.1130)。
親の分として対象になる主なものは、次の3つです。
- 後期高齢者医療の保険料:75歳以上の親(一定の障害がある人は65歳以上)が払う医療の保険料
- 国民健康保険料(税):74歳までで、勤め先の健康保険に入っていない親の保険料
- 介護保険料:65歳以上の親の保険料
控除で軽くなる税金は、おおよそ「払った額×税率」です。年8万円の保険料を子が払い、子の所得税の税率が5%なら、所得税は約4千円、住民税(税率10%)は約8千円軽くなる計算です。
誰の控除になるかは「払い方」で決まる
国税庁のQ&Aでは、年金から天引きされた保険料は年金を受け取っている本人が払ったもの、口座振替で払った保険料は口座の名義人が払ったものとされています。払い方ごとにまとめると、次のとおりです。
| 親の保険料の払い方 | 控除を受ける人 |
|---|---|
| 親の年金から天引き(特別徴収) | 親本人(子は受けられない) |
| 親名義の口座から口座振替 | 親本人 |
| 子名義の口座から口座振替(親と生計を一にしている) | 子 |
| 納付書で子が払った(親と生計を一にしている) | 子 |
| 子が払ったが、親とは生計が別 | 子は受けられない |
「生計を一にする」は、同居なら通常当たります。別に住んでいても、いつも生活費や療養費を送金している場合は当たると扱われます。年の途中で生計が別になった場合は、別になる前に払った分だけが子の控除の対象です。
年金天引きから口座振替に切り替える手順(名古屋市の例)
後期高齢者医療と国民健康保険は、名古屋市では申し出によって年金天引きから口座振替に変えられます。後期高齢者医療の場合の流れは次のとおりです。
| 項目 | 名古屋市の後期高齢者医療の場合 |
|---|---|
| 届け出る書類 | 納付方法変更申出書と口座振替の申し込み |
| 窓口 | 区役所保険年金課、または支所区民福祉課 |
| 持ち物 | 親の後期高齢者医療資格確認書、口座がわかる通帳など、口座の届出印、口座名義人が親と違うときは親の認印 |
| かかる時間 | 天引きが止まるまで届け出から約3か月。口座振替の開始まで約2か月で、それまでは納付書で払う |
| 注意 | 電子申請は本人しか使えない。未納の保険料があると手続きできない。天引きから納付書払いへの変更はできない |
国民健康保険は、世帯の加入者全員が65歳以上で、世帯主が年18万円以上の年金を受けているなどの条件で天引きになります。名古屋市では、口座振替で確実に払える場合は申し出で切り替えられ、区役所保険年金課か支所区民福祉課に連絡します。
介護保険料は、名古屋市では老齢・障害・遺族のいずれかの年金を年18万円以上受けている人は、年金から差し引かれます。差し引かれた分は親本人の控除になります。
切り替えには数か月かかるため、2026年の残りの保険料はそのまま天引きで払われることが多いはずです。11月に届け出ると、子の口座からの引き落としが始まるのは2027年に入ってからが目安です。親の保険料の金額や、愛知・岐阜の市町村ごとの違いは「後期高齢者医療の保険料2026」「介護保険料は月いくら?」で整理しています。
年末調整での書き方の例
会社員の子は、年末調整の「保険料控除申告書」の社会保険料控除の欄に書きます。親の後期高齢者医療の保険料を子の口座から払った場合の例です。
| 欄 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 社会保険の種類 | 後期高齢者医療保険料 |
| 保険料支払先の名称 | 愛知県後期高齢者医療広域連合(通知書に書かれた名称) |
| 保険料を負担することになっている人 | 親の氏名と続柄(父・母など) |
| あなたが本年中に支払った保険料の金額 | 2026年1月〜12月に子の口座から引き落とされた額 |
年末調整に間に合わなかった分や、年末調整のあとに払った分は、確定申告で控除を受けられます。名古屋市の国民健康保険では、1年間に納めた額の「年間納付額のお知らせ」が翌年1月下旬から2月上旬に届きます。確定申告のときの確認に使えます。
よくある間違い
- 年金から天引きされた親の保険料を、子の控除に書く:天引きされた分は親が払ったものです。子の申告書には書けません。
- 親の口座から引き落とされているのに、子の控除にする:口座振替は口座の名義人が払った扱いです。子が親にお金を渡していても、親名義の口座から落ちていれば親の分です。
- 兄弟で同じ保険料を二重に書く:控除できるのは実際に払った人だけです。
- 生計が別の親の分を書く:仕送りをしていない別居の親の保険料は、子が払っても子の控除になりません。
- 親の控除が消えることを考えない:子が払うと、その分は親の控除から外れます。親に所得税や住民税がかかっている場合は、親の税金が少し増えることがあります。どちらで控除するのがよいかは家族の所得で変わります。
親の保険料や公共料金を子の口座で払い始めると、親のお金の流れを家族が見る場面が増えていきます。親が判断できなくなると、本人の定期預金でも家族は解約できないことがあります。支払いを引き受けるこの時期に、親の預金で元気なうちにしておけることも確かめておくと安心です。
親の定期預金、認知症になる前にしておくことよくある質問
親を扶養に入れていなくても、保険料の控除は受けられますか
受けられます。社会保険料控除の条件は「生計を一にする親族の保険料を払ったこと」で、扶養控除の対象かどうかは問われません。親の年金が多くて扶養控除の対象外でも、生計を一にしていれば対象です。扶養控除の条件は「年末調整で親を扶養に入れるには」にまとめています。
75歳になった親が健康保険の扶養から外れました。保険料はどうなりますか
75歳になると後期高齢者医療に入り、親自身に保険料がかかります。最初の数か月は納付書で届くことが多く、その分を子が払えば、生計を一にしている限り子の控除になります。その後、年金天引きに切り替わると親の控除になります。
親の医療費を子が払った場合も、子の控除になりますか
医療費は社会保険料控除ではなく医療費控除で、確定申告で受けます。生計を一にする親の医療費を子が払えば、子の医療費控除に含められます。考え方は「介護費用・おむつ代は医療費控除の対象?」で整理しています。
参考にした公的情報
- 国税庁 タックスアンサー「No.1130 社会保険料控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm - 国税庁「No.1130 社会保険料控除」Q&A
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130_qa.htm - 名古屋市「保険料の納付方法」(後期高齢者医療、2026年6月29日更新)
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/hoken/1016449/1016476/1016478.html - 名古屋市「保険料の納め方(国民健康保険)」(2026年4月1日更新)
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000007695.html - 名古屋おしえてダイヤル「65歳以上の方(第1号被保険者)の介護保険料の納め方について知りたい」
https://faq.city.nagoya.jp/faq/detail.aspx?id=330 - 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた(手順などの説明)」
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index/shikata.htm
本記事は2026年10月30日時点の国税庁・名古屋市の公開情報にもとづく一般的な内容です。控除を受けられるか、税金がいくら変わるかは、家族の所得や暮らし方によって変わります。保険料の払い方の変更は、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。個別の税の判断は、勤め先の担当者、税務署の電話相談、または税理士にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー) 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
