夫を見送って初めての年末。日本年金機構から届いた申告書や、勤め先の年末調整の書類に「寡婦」という欄がある。自分が当てはまるのか、どこに何を書けばよいのか分からない。相続の手続きが一段落したころに、こうした書類が続けて届きます。
この記事では、夫を亡くした妻が受けられる「寡婦控除」の条件と金額、年金暮らしの人が申告する場所、住民税が非課税になる基準、書き方とよくある間違いを整理します。内容は2026年10月30日時点で確認した国税庁・名古屋市などの公開情報に基づいています。
寡婦控除の条件:死別と離別で違う
寡婦控除は、夫と死別または離婚したあと再婚していない女性が受けられる所得控除です。2020年分(令和2年分)から今の形になり、死別した人は扶養している家族の有無を問われなくなりました。
| 本人の状況 | 扶養している家族 | 本人の合計所得 | 受けられる控除 |
|---|---|---|---|
| 夫と死別し、再婚していない(夫の生死が分からない場合を含む) | いなくてよい | 500万円以下 | 寡婦控除 |
| 夫と離婚し、再婚していない | 子以外の扶養親族がいる | 500万円以下 | 寡婦控除 |
| 死別・離婚・未婚で、生計を一にする子がいる(子の所得が一定以下) | 子 | 500万円以下 | ひとり親控除(寡婦控除ではない) |
| 事実上の夫がいる(住民票の続柄に「夫(未届)」とあるなど) | - | - | 対象外 |
「合計所得500万円以下」は、年金暮らしの人ならほとんどが当てはまります。ここでいう所得には遺族年金は入りません。自分の老齢年金から公的年金等控除(65歳以上は年金330万円以下なら110万円)を引いた額が所得です。
妻を亡くした夫は、子を養っていればひとり親控除の対象になりますが、子がいなければ寡婦控除に当たる控除はありません。2020年分から男女で扱いが分かれた部分です。
控除額と、税金がどのくらい変わるか
| 税金 | 寡婦控除の額 | 軽くなる税金の目安 |
|---|---|---|
| 所得税 | 27万円 | 税率5%の人で約1万3千円(復興特別所得税を除く) |
| 住民税(市民税・県民税) | 26万円 | 所得割の税率10%で約2万6千円 |
年金から所得税が引かれていない人や、住民税がもともとかかっていない人は、控除を受けても税金は変わりません。そうした人にとって大事なのは、次の「住民税がかからなくなる基準」のほうです。
寡婦なら住民税は「合計所得135万円以下」で非課税
住民税には、寡婦・ひとり親・障害者などに当たる人だけに使われる非課税の基準があります。前の年の合計所得が135万円以下なら、住民税(均等割・所得割とも)がかかりません。柏市の案内では、令和8年度から令和10年度までこの基準です。
| 例(65歳以上・一人暮らし・名古屋市) | 合計所得 | 住民税 |
|---|---|---|
| 自分の老齢年金200万円+遺族年金100万円で、寡婦として申告済み | 90万円 | 非課税(135万円以下) |
| 同じ年金額で、寡婦の申告が市に伝わっていない | 90万円 | かかることがある |
| 自分の老齢年金260万円 | 150万円 | 寡婦でも135万円を超えるため課税 |
住民税が非課税になると、介護保険料の段階や、医療・介護の自己負担の上限などが変わることがあります。住民税は、市区町村が把握している情報で計算されます。寡婦に当たることが年金の申告書や確定申告で伝わっていないと、本来は非課税なのに課税されている場合があります。
どこで申告するか:立場ごとの出し方
| 立場 | 出す書類 | 出す先・時期 |
|---|---|---|
| 勤めている(給与がある) | 扶養控除等(異動)申告書の「寡婦」欄に印をつける | 勤め先。11〜12月の年末調整までに |
| 年金を受けていて、所得税が引かれる額 | 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書の「寡婦」欄 | 日本年金機構。期限を過ぎても出せる(提出後にさかのぼって計算し直し) |
| 確定申告をする | 確定申告書の「寡婦、ひとり親控除」欄に27万円 | 税務署。令和8年分は2027年2月16日〜3月15日(還付申告は1月から) |
| 確定申告はしないが住民税に反映したい | 市民税・県民税の申告書で寡婦控除を書く | 住んでいる市区町村。期限は3月15日 |
年金の扶養親族等申告書は、年金から引かれる所得税を毎回の支払いで正しく計算してもらうためのものです。2026年分の年金で寡婦が反映されていなかった人は、2027年の確定申告で精算できます。出し方と期限は「年金の扶養親族等申告書2027」、確定申告が要るかどうかは「年金受給者の確定申告」にまとめています。確定申告をしない人が市区町村に出す住民税の申告は「年金受給者の住民税の申告」で出し方を説明しています。
書き方の例
- 年金の扶養親族等申告書:本人欄の「寡婦」に印をつけます。前の年と同じ内容なら「変更なし」に丸をつける欄がありますが、夫が亡くなった年は内容が変わるので、欄を書き直します。夫を控除の対象にしていた配偶者の欄は消します。
- 年末調整の扶養控除等申告書:「寡婦」の欄に印をつけます。証明書の添付は要りません。
- 確定申告書:所得から差し引かれる金額の「寡婦、ひとり親控除」の欄に27万円と書き、区分の寡婦に当たる印をつけます。確定申告書等作成コーナーなら、画面の質問に答えると自動で入ります。
夫が亡くなった年は、夫の所得が少なかった場合、夫が亡くなった時点の状況で妻の配偶者控除を受けられることもあります(国税庁「年の中途で控除対象配偶者が死亡した場合」)。夫の分の確定申告(準確定申告)は、亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内です。手順は「準確定申告が必要な人と4か月の期限」で整理しています。
よくある間違い
- 子がいないから対象外だと思う:夫と死別した人は、扶養している家族がいなくても対象です。
- 夫が亡くなった年は使えないと思う:12月31日の時点で再婚していなければ、その年から対象です。
- 遺族年金を所得に入れて計算する:遺族年金は税金がかからないため、所得に数えません。
- 「変更なし」に丸をつけて年金の申告書を出す:夫を配偶者控除の対象にしたままになり、寡婦も反映されません。
- 何年も前に夫を亡くしたので関係ないと思う:再婚していなければ毎年対象です。申告していなかった年は、5年前の分までさかのぼって確定申告(還付申告)ができます。
夫名義のクレジットカードの家族カードを使っていた場合、夫が亡くなると家族カードも使えなくなります。公共料金や病院の支払いを自分名義のカードに切り替えるときは、リボ払いが初めから付かないものや、家族を代理人に登録できるものを選んでおくと、あとで子が手伝いやすくなります。
自分名義のカードを、リボ払い・家族の手続きで比べるよくある質問
遺族年金だけで暮らしています。寡婦控除を申告する意味はありますか
遺族年金だけなら所得は0円なので、所得税も住民税もかかりません。寡婦控除を申告しても税額は変わりません。年金の扶養親族等申告書が届かない人は、何もしなくてかまいません。
夫の死亡後、家を相続しました。寡婦控除に影響しますか
相続した財産そのものは所得ではないため、寡婦控除の「合計所得500万円以下」には入りません。ただし、相続した家を売って利益が出た年や、相続した家を貸して家賃が入る年は、その所得が加わります。
再婚はしていませんが、子と同居しています。寡婦控除ですか、ひとり親控除ですか
子が自分の扶養に入る程度の所得で生計を一にしていればひとり親控除、子に十分な収入があり生計が別なら寡婦控除が目安です。どちらに当たるかで迷うときは、税務署の電話相談で確かめてください。
子が会社員で、母である私を扶養に入れています。私の寡婦控除は使えますか
子の扶養控除と、母本人の寡婦控除は別のものです。母の所得から引く控除なので、母に所得税や住民税がかかる場合に意味があります。子が親を扶養に入れる条件は「年末調整で親を扶養に入れるには」で整理しています。
参考にした公的情報
- 国税庁 タックスアンサー「No.1170 寡婦控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1170.htm - 国税庁「令和8年度税制改正により、所得税の基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ等が行われました」(2026年5月)
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/pdf/0026005-024.pdf - 国税庁 確定申告書等作成コーナー よくある質問「年の中途で控除対象配偶者が死亡した場合」
https://www.keisan.nta.go.jp/r1yokuaru/cat2/cat22/cat22a/cid020.html - 名古屋市「所得控除」(住民税の控除額、2026年5月28日更新)
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1037356/1011880/1011883/1011892.html - 柏市「令和8年度以降、個人住民税がかからないかた(非課税)」(2026年10月13日更新)
https://www.city.kashiwa.lg.jp/shiminzei/kojinshiminzei/r8hikazei.html - 名古屋市「市民税・県民税の申告」
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1037356/1011880/1011927.html
本記事は2026年10月30日時点の国税庁・市区町村の公開情報にもとづく一般的な内容です。寡婦控除やひとり親控除に当たるか、住民税が非課税になるかは、所得や家族の状況、お住まいの市区町村によって変わります。個別の判断は、税務署の電話相談、市区町村の税の窓口、または税理士にご確認ください。
本記事はFP(ファイナンシャル・プランナー) 門田 博之監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額の計算や法的な判断は、税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
