遺産分割協議書に全員の実印をもらい終えた。あとは銀行に持っていくだけ——のつもりで窓口に行くと、「こちらの用紙にも相続人全員の署名と実印をお願いします」と別の書類を渡される。せっかく集めた印鑑を、もう一度集め直すことになります。
これは手違いではなく、どの金融機関でもある流れです。協議書は「誰がこの口座を取得するか」を示す書類で、銀行が求める相続届は「その口座をどう処理するか」を指示する書類だからです。この記事では、銀行に何を持っていけばよいか、原本は返ってくるか、法定相続情報一覧図でどこまで省略できるか、そして入金まで何日かかるかを整理します。
先に答えると、銀行に出す遺産分割協議書には、預金を「銀行名・支店名・種類・口座番号」で特定して書き、相続人全員が実印を押します。預貯金のみの協議書の全文の記載例、誰がどの口座を何割受け取るかの分け方の表、銀行で止まりやすい書き方も載せました。協議書と相続届を提出したあと、入金までは不備がなければおおむね1〜3週間です。
先に結論:銀行に出すのは協議書だけではない
協議書を作ってから窓口に行くのではなく、先に銀行へ「相続の手続きをしたい」と連絡して所定用紙を取り寄せ、協議書の署名押印と同じタイミングで一緒に回すと、印鑑を2度集めずに済みます。取り寄せた封筒の中身の見方と相続届の書き方は、銀行から相続手続きの書類が届いたらで順に説明しています。
協議書と「相続届」は役割が違う
| 遺産分割協議書 | 銀行所定の相続届 | |
|---|---|---|
| 作る人 | 相続人(書式は自由) | 銀行が用意する専用用紙 |
| 中身 | 誰がどの財産を取得するかの合意 | 解約するか名義を変えるか、振込先はどこかの指示 |
| 押印 | 相続人全員の実印 | 原則、相続人全員の実印(代表者のみで可とする扱いもある) |
| 省略できるか | 遺言がある場合や相続人が1人なら不要 | 省略できない |
協議書で「A銀行の預金は長男が取得する」と決めていても、実際にお金を動かすのは銀行です。振込先の口座番号や、解約か名義変更かの選択は、銀行の用紙でしか指示できません。だから両方が要ります。
なお、相続届に全員の押印を求めるか、代表相続人だけでよいとするかは金融機関によって分かれます。協議書が整っていれば代表者のみでよい、という運用の銀行もあるので、最初の電話で確認しておくと動きが読めます。
今日の一歩:最初の1本の電話で、この6つを聞いておく
かける先は、取引店ではなく各行の相続専用の窓口です。電話番号は、その銀行のサイトの「相続のお手続き」のページに載っています。支店に直接かけても、結局そこへ案内されることが多いので、最初から専用窓口にかけたほうが早く済みます。
まず伝えること。「〇〇(故人の氏名)の相続の手続きをしたい」「私は子です」「口座は普通と定期の2つがあります」。この3つを最初に言うと、案内がまとまって返ってきます。
そのうえで、この6つを聞いてメモしてください。①所定用紙の名前と、郵送してもらえるか(何日ほどで届くか) ②その用紙に実印を押すのは相続人全員か、代表者だけでよいか ③印鑑登録証明書は発行後何か月以内のものが必要か ④法定相続情報一覧図の写しで戸籍一式を代替できるか ⑤来店は必要か、郵送だけで完結するか ⑥提出してから入金までの日数の目安。
とくに②と③が、段取りを決めます。全員の実印が要ると分かれば、遺産分割協議書と所定用紙を同じ封筒で一度に回せて、印鑑を二度集めずに済みます。印鑑登録証明書の期限も、先に聞いておけば「取り直し」が防げます。
答えが曖昧だったときの次の一手。「相続を扱う部署に確認していただけますか」と一言添えてください。支店の一般窓口では即答できないことがあり、あとで違う案内に変わると、そのぶん往復が増えます。
期限の目安:相続税の申告・納税は10か月です。凍結中に葬儀費用などで現金が必要なときは、協議がまとまる前でも預貯金の払戻し制度(後述)が使えます。
銀行に出す遺産分割協議書の書き方:預金の記載例
銀行が協議書で確かめるのは、どの口座を誰が取得するか、相続人全員が署名して実印を押しているか、の2点です。口座が特定できない書き方だと、どの口座の話か確認が必要になり、手続きが止まります。
第1条 相続人〇〇〇〇は、次の預金を取得する。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号1234567
第2条 次の預金の元本及び利息は、相続人〇〇〇〇が2分の1、相続人△△△△が2分の1の割合で取得する。
〇〇銀行 〇〇支店 定期預金 口座番号7654321
第3条 相続人〇〇〇〇は、第1条の預金を取得する代わりに、相続人△△△△に対し代償金として金〇〇〇万円を、令和〇年〇月〇日までに△△△△名義の口座へ振り込んで支払う。
第4条 本協議書に記載のない預貯金が後日判明したときは、相続人〇〇〇〇が取得する。
例3のように代わりにお金を払う形は、書き方しだいで贈与と見られることがあります。条項の作り方は代償分割の遺産分割協議書の書き方で説明しています。
親が生命保険に入っていたなら、その保険金は協議書とは分けて考えます
受取人が決まっている死亡保険金は、原則として受取人自身のお金で、遺産分割協議の対象になりません。ただし、相続人の間の差が大きすぎるときに、分け方で考慮された裁判例もあります。また、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって、かかる税金が相続税・所得税・贈与税に分かれます。
受取人と税金の早見表を見る銀行で止まりやすい書き方と直し方
| よくある書き方 | 止まりやすい理由 | 直し方 |
|---|---|---|
| 「〇〇銀行の預金は長男が取得する」だけ | 支店や口座が複数あると、どの口座か分からない | 支店名・種類・口座番号まで書く。その銀行の預金を全部1人にするなら「〇〇銀行の預金の全部」と書く |
| 定期預金の利息に触れていない | 解約時につく利息を誰が受け取るかがはっきりしない | 「元本及び利息」と書く |
| 金額を書いたが、実際の残高とずれている | 死亡後の利息や引き落としで残高が動く | 口座で特定し、金額を書くなら死亡日時点の残高証明書の数字にそろえる |
| 普通預金だけ書き、定期や積立を書き忘れた | 同じ支店でも別の口座として扱われる | 残高証明書で口座の一覧を確かめてから書く。例4の一文も入れておく |
預金だけ先に協議書を作ることもできる
不動産の分け方がまだ決まらなくても、預金だけを先に分ける協議書を作れます。民法907条1項は、共同相続人が協議で「遺産の全部又は一部の分割」をできると定めています。銀行の手続きだけ先に進めたいときの方法です。
この場合は、例4の一文の代わりに「本協議書に記載のない遺産は、相続人間で別途協議する」と書いておくと、預金だけの合意であることがはっきりします。預金を先に分けると、残りの遺産の分け方で調整の余地が小さくなる面もあるので、全体の見通しを家族で共有してから決めてください。
預貯金のみの遺産分割協議書:全文の記載例
遺産が預貯金だけなら、協議書は1〜2枚で足ります。書くのは、亡くなった方の特定、口座ごとに誰が取得するか、あとから見つかった預金の扱い、日付と全員の署名・実印の4つです。母と子2人が相続人の例で、全文を載せます。
最後の住所 愛知県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
本籍 愛知県〇〇市〇〇町〇番地
(1)〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号1234567
(2)〇〇銀行 〇〇支店 定期預金 口座番号7654321
〇〇信用金庫 〇〇支店 普通預金 口座番号2345678
株式会社ゆうちょ銀行 通常貯金 記号〇〇〇〇〇 番号〇〇〇〇〇〇〇〇
住所 岐阜県〇〇市〇〇町〇番地〇 氏名 山田一郎 (実印)
住所 東京都〇〇区〇〇〇丁目〇番〇号 氏名 佐藤明子 (実印)
第4条を全員で割合どおりに分けるか、1人にまとめるかは家族で決めます。3つの書き方の違いは、この下の表にまとめました。
銀行・支店・口座番号の書き方(金融機関ごと)
| 口座の種類 | 協議書に書く項目 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 銀行・信用金庫の預金 | 金融機関名/支店名/種類(普通・定期など)/口座番号 | 通帳か残高証明書の表記どおりに写す。支店の統合で名前が変わっていたら、残高証明書の表記に合わせる |
| JA(農協)の貯金 | 組合名/支店名/種類/口座番号 | JAは「預金」ではなく「貯金」と呼ぶ。通帳の表記どおり「普通貯金」「定期貯金」と書く |
| ゆうちょ銀行 | 種類(通常貯金・定額貯金など)/記号/番号 | 支店名は書かなくてよい。定額・定期の貯金は、証書や通帳ごとに記号・番号を1つずつ書く |
| 定期預金・積立預金 | 普通預金とは別に、口座ごとに1行ずつ | 同じ支店でも別の口座として扱われる。残高証明書に載っている口座を全部書き出してから写す |
| ネット銀行 | 銀行名/支店名/種類/口座番号 | 支店名が独自の名前のことがある。取引明細やアプリの口座情報で確かめる |
| 銀行で買った投資信託・国債 | 預金とは別の条文で、銘柄と口数(額面) | 預金ではないため、口座番号だけでは足りない。取引残高報告書を見て書く |
あとから見つかった預金の条項(3通りの書き方)
休眠口座や、通帳のないネット銀行の口座は、協議書を作った後で見つかることがあります。この一文がないと、その口座のためだけに全員でもう一度協議することになります。
| 書き方 | 協議書の一文 | 向いている家 |
|---|---|---|
| 1人にまとめる | 「本協議書に記載のない預貯金が後日判明したときは、相続人〇〇が取得する」 | 手続きを1人に任せたい。見つかっても少額と見込める |
| 割合で分ける | 「……は、相続人〇〇が2分の1、△△及び□□が各4分の1の割合で取得する」 | 公平にしたい。ただし受け取る人が複数になり、払戻しの手間は増える |
| 改めて協議する | 「……は、相続人全員で別途協議する」 | 大きな財産が出てくるおそれがある。もう一度全員の実印が要る |
預金の分け方:誰がどの口座を何割受け取るかの表
預貯金だけの相続なら、分け方は次の4通りです。相続人全員が納得すれば、法定相続分と違う割合でもかまいません(民法907条1項)。不動産も含めた遺産全体の分け方は、遺産分割の方法は4つで比べています。
| 分け方 | 協議書の書き方 | 銀行での手続き | 向いている家 |
|---|---|---|---|
| ①口座ごとに受け取る人を決める | 口座を挙げて「〇〇が取得する」 | 受け取る人がその口座の手続きをする | 口座が複数あり、残高の組み合わせで取り分に近づけられる |
| ②1つの口座を割合で分ける | 「元本及び利息を、〇〇が2分の1……の割合で取得する」 | 解約して、割合どおりに各人へ払い戻す | 大きな口座が1つだけ |
| ③1人がまとめて受け取り、ほかの人にお金を払う | 取得する人と、代わりに払う額・期限 | 受け取る人だけで手続きできる | 手続きを1人で済ませたい(贈与と見られない書き方が要る) |
| ④代表者が全部解約し、割合どおりに配る | 取得の割合と、代表者が払戻しを受けて配ること・期限 | 代表者の口座に一度集めてから振り込む | 口座が多い、相続人が遠方に住んでいる |
計算例:預金1,200万円を母と子2人で分ける
配偶者と子2人が相続人なら、法定相続分は配偶者2分の1、子は残りを等分して4分の1ずつです(民法900条)。死亡日の残高証明書で口座を並べると、次のようになります。
| 口座 | 死亡日の残高 | ①口座ごとに分ける場合 |
|---|---|---|
| A銀行 普通預金 | 200万円 | 母 |
| A銀行 定期預金 | 400万円 | 母 |
| B信用金庫 普通預金 | 300万円 | 長男 |
| ゆうちょ銀行 通常貯金 | 300万円 | 長女 |
| 合計 | 1,200万円 | 母600万円(2分の1)、長男300万円・長女300万円(各4分の1) |
④の代表者方式なら、長男が4つの口座を全部解約し、母に600万円、長女に300万円を振り込みます。死亡後についた利息の分だけ、払戻し額は残高証明書より少し増えます。協議書を「元本及び利息」「割合」で書いておけば、増えた分も同じ割合で分けられ、書き直しは要りません。
代表者が解約して分けるときの条項例
(口座を1行ずつ書く)
配る割合と期限を協議書に書いておくと、代表者からほかの相続人への振込が、協議で決めた取り分の受け渡しだと書面で分かります。代表者が受け取ったまま配らないときにも、協議書が請求の根拠になります。差し引く費用は、あとで領収書を見せ合えるように残しておきます。
原本は返ってくる(原本還付)
協議書も戸籍も印鑑登録証明書も、原本は返してもらえます。多くの銀行では、窓口でその場でコピーを取り、原本をすぐ返す扱いです。郵送で進める場合は、原本を送って手続き完了後に返送されるか、あらかじめコピーの提出でよいとされるかが分かれます。
- 窓口に行く場合:原本を持参すればその場でコピーを取り、原本は返却されるのが一般的です。
- 郵送の場合:返送を希望する旨を伝えます。返送用のレターパック等を同封するよう案内されることがあります。
- 複数の銀行を回る場合:協議書は相続人の人数分作ってあるはずなので、1通を持って順番に回れます。同時並行で進めたいときは、あらかじめ通数を多めに作っておく方法もあります。
印鑑登録証明書は、原本の提出を求められて返却されないこともあります。相続人の人数×手続きする金融機関の数だけ用意しておくと、途中で足りなくなりません。きょうだいなどに印鑑証明書を頼むときは、何に使うのかを先に伝えておくと話が早く進みます。頼まれた側が確かめたいことは相続で「印鑑証明書を送って」と言われたらにまとめています。
法定相続情報一覧図で代替できる範囲
法務局で交付される「法定相続情報一覧図の写し」は、戸籍の束の代わりになる公的な証明書です。交付手数料は無料で、必要な通数を一度にもらえます。銀行を何行も回るなら、先にこれを取っておくと戸籍を持ち歩かずに済みます。申出書の書き方と必要書類は法定相続情報一覧図の作り方で手順どおりに説明しています。
| 書類 | 一覧図の写しで代替できるか |
|---|---|
| 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍 | できる |
| 相続人全員の現在の戸籍 | できる |
| 遺産分割協議書 | できない |
| 相続人全員の印鑑登録証明書 | できない |
| 銀行所定の相続届 | できない |
| 相続放棄があった場合の申述受理証明書 | できない(一覧図には放棄が反映されない) |
申出先は、亡くなった方の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、亡くなった方名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です。相続登記も予定しているなら、登記の申請とあわせて申し出るのが効率的です。図の書き方は相続関係説明図のひな形と書き方で説明しています。
金融機関ごとに違うところ
| 違いが出るところ | よくある運用 |
|---|---|
| 受付の場所 | 最寄りの支店で受け付けるが、審査は相続専門の部署で行う。書類は本部に送られる |
| 来店の要否 | 郵送だけで完結できる銀行と、1回は来店が必要な銀行がある。予約制のことが多い |
| 用紙の名前 | 相続届、相続関係届書、貯金等相続手続請求書など呼び方が異なる |
| 印鑑証明書の期限 | 発行後3か月以内、または6か月以内を求めることが多い |
| ゆうちょ銀行 | 最初に「相続確認表」を出し、後日届く案内にしたがって書類を提出する2段構え |
| ネット銀行 | 窓口がないため、コールセンターに連絡して郵送でやりとりする |
主要行ごとの必要書類と窓口の流れは、それぞれの記事にまとめています。地元の名古屋銀行は、支店ではなく名古屋市千種区の「相続相談プラザ」が相談窓口です(名古屋銀行の相続手続き完全ガイド)。
遺産分割協議書の提出後、入金までの日数
| 段階 | 目安 |
|---|---|
| 最初の連絡から所定用紙が届くまで | 数日〜1週間 |
| 書類を全部そろえて提出 | 戸籍集めが最大の山。ここで数週間かかることが多い |
| 提出から入金まで | おおむね1〜3週間 |
| 不備があったとき | 差し戻し1回でさらに2〜3週間 |
葬儀費用や当面の生活費で先に現金が必要な場合は、遺産分割が終わる前でも「預貯金の払戻し制度」が使えます。相続開始時の預金額に3分の1と自分の法定相続分を掛けた金額まで、1つの金融機関につき150万円を上限に、単独で払戻しを受けられます(民法909条の2)。協議がまとまるまで待てないときの選択肢です。
提出後、入金が遅いと感じたら確かめる3つ
遺産分割協議書を出してから3週間を過ぎても入金がないときは、提出した窓口(または相続センター)に電話で次の3つを聞きます。
- 書類を受け付けた日と、いまの進み具合:受付日から数えて、あとどのくらいかを聞けます。
- 不備の連絡が出ていないか:差し戻しの書類が、代表者以外の相続人の家に届いていることがあります。
- 入金先の口座:代表者の口座か、各相続人の口座か。他の銀行への振込は、同じ銀行の口座より日数がかかることがあります(ゆうちょ銀行は、通常貯金への入金が約1〜2週間、他の金融機関への振込が約3〜4週間と案内しています)。
入金されたら確かめること
手続きが終わると、払い戻しの明細や完了の案内が郵送されることが多くあります。届いたら、協議書に書いた口座がすべて払い戻されているか、利息を含めた金額が合っているかを見ます。代表者がまとめて受け取った場合は、協議書の金額どおりに各相続人へ分け、振込の記録か受領書を残します。分け方と受領書の書き方は「遺産相続の現金の受け取り方・渡し方」、銀行ごとの日数の違いは「銀行から相続手続きの書類が届いたら」で整理しています。
協議書がまだない・使えない場合はどうするか
協議書を出す以外にも、口座を動かす方法はいくつかあります。自分の状況がどれに当たるかで、そろえる書類が変わります。
| 状況 | 銀行に出すもの |
|---|---|
| 遺言書がある | 遺言書(自筆証書は家庭裁判所の検認済みのもの、または法務局保管の情報証明書)。協議書は不要 |
| 相続人が1人だけ | 戸籍で1人であることを示せば足りる。協議書は作れない |
| 法定相続分どおりに分ける | 協議書なしで、相続人全員の署名押印がある銀行所定の用紙だけで進められる場合がある |
| 話し合いがまとまらない | 預貯金の払戻し制度で当面の分だけ引き出す。その後は家庭裁判所の調停へ |
| 相続人に認知症の方がいる | そのままでは協議ができない。成年後見人の選任が必要になる |
いちばん止まりやすいのが最後の行です。判断能力が落ちている相続人がいる状態で作った協議書は、後から効力を争われます。銀行の窓口でも、事情を聞かれた時点で手続きが進まなくなります。気づいた段階で、先に成年後見の見通しを立てておいたほうが早く終わります。
差し戻されないための持ち物チェック
- 協議書の記載が「金融機関名・支店名・預金種別・口座番号」までそろっているか。定期預金や積立が別口座になっていないか。
- 協議書の住所が、印鑑登録証明書の表記と一字一句そろっているか。
- 印鑑登録証明書の発行日が、その銀行の求める期限内か。古いものは取り直す。
- 相続届に押す印鑑が、協議書と同じ実印になっているか。
- 払戻し先の口座(相続人名義)の通帳・カードを持っているか。振込先を書く欄があります。
- 亡くなった方の通帳・キャッシュカード・貸金庫の鍵を持っているか。紛失していても手続きは進められますが、その旨を申し出ます。
協議書そのものの書き方でつまずいている場合は、遺産分割協議書の書き方とひな形でWordのひな形を配布しています。預金の相続手続き全体の流れと期限は銀行預金の相続手続き(流れ・必要書類・期限)を参照してください。
よくある質問
遺産分割協議書は銀行ごとに1通ずつ必要ですか
窓口で原本を確認してコピーを取り、原本を返す扱いが多いので、1通を持って順番に回れます。郵送で複数の銀行に同時に出したいときは、全員の実印を押した協議書を通数分作っておきます。
銀行に出す協議書に、預金の残高まで書く必要がありますか
協議書の書式に決まりはなく、残高を書く義務もありません。銀行が見るのは、どの口座を誰が取得するかです。金額を書く場合は死亡日時点の残高証明書の数字にそろえ、定期預金は「元本及び利息」と書くと食い違いが起きません。
銀行の相続届に全員の実印をもらえば、遺産分割協議書は要りませんか
協議書がなくても、相続人全員が署名・押印した相続届と全員の印鑑証明書で手続きできるのが一般的です(全国銀行協会の書類一覧)。ただ、銀行が複数ある場合や、不動産の相続登記にも協議書が要る場合は、協議書を1つ作るほうが実印を集めるのが1回で済みます。
預貯金だけの遺産分割協議書のひな形はありますか
この記事の「預貯金のみの遺産分割協議書:全文の記載例」を、名前と口座を入れ替えてそのまま使えます。Wordで作りたいときは、遺産分割協議書の書き方とひな形の一般型から不動産の条文を消して使います。手書きでもパソコンでも効力は同じです。
預金を割合で分けると、1円未満の端数はどうなりますか
3分の1ずつのように割り切れないときは、端数を誰が受け取るかを協議書に一文入れておきます。「分配により生じる1円未満の端数は〇〇が取得する」と書けば足ります。書いていないと、払戻しの段階で家族の間で確かめ直すことになります。
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参考にした公的情報:全国銀行協会「預金相続の手続に必要な書類」、法務局「法定相続情報証明制度について」、e-Gov法令検索(民法900条・907条・909条の2)(いずれも2026年10月確認)。
本記事の制度・日数は2026年9月時点の一般的な取り扱いです。必要書類、所定用紙の名称、印鑑登録証明書の有効期限、処理にかかる日数は金融機関ごとに異なります。実際に手続きを始める前に、口座のある金融機関に直接ご確認ください。
本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の事情による判断は、専門家にご確認ください。
