遠くにある実家のお墓を自分の代で閉じたいけれど、何度も仕事を休んで現地へ通うのは難しい、という方に向けてまとめました。
遠方のお墓の墓じまいは、手続きの多くを郵送と電話で進められます。現地での作業が要るのは、主にお寺での読経、墓石の撤去、遺骨の取り出しの場面です。この記事では、遠くに住んだまま進める順番、現地に行く回数を減らす頼み方、費用の考え方を整理します。役所の手続きは2026年11月時点の法令と名古屋市の公式ページで確かめた内容です。
遠方の墓じまいは「郵送で進める部分」と「現地の作業」に分けて考える
遠方で進めるときの3つの要点
- 郵送でできること:改葬許可(遺骨を別の場所へ移す許可)の申請は、お墓のある市町村が受け付けます。名古屋市のように郵送で申請でき、許可証も郵送で届く市があります。墓地の管理者の証明も、郵送でもらえるかを先に電話で聞きます。
- 現地が要る場面:閉眼供養(お墓から魂を抜く読経)、墓石の撤去工事、遺骨の取り出しは現地の作業です。家族が立ち会うかどうかは、お寺・石材店・依頼先と相談して決めます。
- 行く回数を減らすには:墓地に決まった石材店があるかを最初に確かめ、なければ地元の石材店か、墓じまいをまとめて請け負う会社に見積もりを頼みます。比べるときは、工事代だけでなく交通費と休む日数も入れて考えます。
墓じまいは、法律では「改葬」にあたります。遺骨を今の墓から別の墓や納骨堂へ移すことで、遺骨が今ある場所の市町村長の許可が要ります(墓地、埋葬等に関する法律2条3項・5条)。住んでいる町の役所ではなく、お墓のある町の役所に出すのが、遠方の墓じまいで最初に押さえる点です。
遠方から進められること・現地が必要になりやすいこと
墓じまいの作業を、やり取りの相手ごとに分けました。遠くに住んでいても、電話・郵送・メールで済むものは意外に多くあります。
表のとおり、現地でしかできないのは読経と工事、遺骨の受け渡しです。ここを誰に任せるかで、現地に行く回数が決まります。
遠くに住んだまま進める順番
遠方の墓じまいでつまずきやすいのは、順番を逆にしてしまうことです。工事の日を先に決めても、移す先と許可証がそろわなければ遺骨を取り出せません。次の順に進めると、行き来が少なくて済みます。
- 親族に相談する:お墓を守ってきた親族や、お参りに来ている人に、墓じまいを考えていると伝えます。
- 今の墓地の管理者に電話する:墓地の使用者が誰の名前になっているか、決まった石材店があるか、返すときの手続きを聞きます。親が使用者のままなら、名義を引き継ぐ手続きが先に要ることもあります。
- 移す先を決める:住まいの近くの永代供養墓(お寺や霊園が代わりに供養と管理をするお墓)や納骨堂、散骨などから選びます。改葬許可の申請書には移す先を書くので、ここが決まらないと先へ進めません。
- 埋蔵の証明をもらい、改葬許可を申請する:申請書には、今の墓地の管理者が作る「遺骨が納められている事実の証明」を添えます。墓地の使用者以外が申請するときは、使用者の承諾書なども要ります(墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条)。名古屋市は、使用者以外が出す場合は委任状が要ると案内しています。
- 閉眼供養と撤去工事の日を決める:お寺と石材店の都合を合わせ、許可証が届いてからの日程にします。
- 遺骨を取り出し、新しい納骨先に納める:改葬許可証を新しい納骨先に出して納めます。遺骨を受け取って運ぶ日が、もう一度現地へ行く日になることがあります。
書類の書き方や、手続きが止まりやすい場面は墓じまいの手続き(改葬許可の手順)でくわしく説明しています。お墓が愛知県内にある方は、市ごとの窓口と郵送の扱いを愛知の墓じまいにまとめています。
現地に行く回数を減らす頼み方は3つ
現地の作業を誰に頼むかは、大きく3つです。どれがよいかは、お墓までの距離と、家族が動ける日数で決まります。
まとめて請け負う会社に頼む場合でも、改葬許可を申請するのは墓地の使用者など家族の側です。改葬許可の申請書を作るのは、使用者本人か行政書士です。見積もりの段階で「申請書は誰が作り、誰の名前で出すか」「行政書士が担当するか」を確かめておくと安心です。
遠方の墓じまいの費用:交通費と「行く回数」も入れて比べる
墓じまいの費用は、今のお墓を片付けるお金(撤去工事・閉眼供養のお布施・離檀のお礼)と、遺骨を移す先のお金の合計です。項目ごとの目安は墓じまいの費用(料金の内訳表)にまとめています。遠方の場合は、これに交通費と、仕事を休む日数が加わります。
まとめて請け負う会社に頼む場合は、撤去工事に遺骨の取り出し・整地・役所への書類の提出などを組み合わせた「パック料金」で示している会社があります。公開されている目安と料金の例は次のとおりです(2026年11月確認)。
自分で手配すると工事代は抑えられることがありますが、現地調査・閉眼供養・工事・遺骨の受け取りのたびに往復すると、交通費と休みが重なります。見積もりを比べるときは、「総額」と「家族が現地へ行く回数」を並べて書き出すと、どちらが自分の家に合うかが見えてきます。
モデルで比べる:現地に行く回数と頼む相手で、総額はどう変わるか
同じお墓を3つの頼み方で閉じた場合の総額を、公開されている料金と相場の幅で試算しました。前提は、東京に住む子が名古屋市内のお寺の墓地(墓所2㎡・遺骨1柱)を閉じ、遺骨は住まいの近くの納骨先へ移すケースです。移す先の費用(永代供養料など)は家ごとに違うため、表には入れていません。
幅を見ると、総額の差は思ったほど大きくありません。違いがはっきり出るのは「現地へ行く回数」と「休む日数」です。工事代は、地元の石材店が料金表より安いことも高いこともあり、見積もりを取るまで分かりません。2〜3社に同じ条件(面積・遺骨の数・墓地の場所)で見積もりを頼み、この表の数字を自分のお墓の金額に置き換えてみてください。遺骨が2柱以上あるときは、取り出し・移送と移す先の費用が柱の数だけ増えます。
お寺と親族への連絡:遠方だからこそ早めに、文字に残す
遠くに住んでいると、お寺や親族と顔を合わせる機会が少なくなります。そのぶん、連絡は早めに、決まったことは文字に残すと行き違いが減ります。
- お寺には、決める前に相談として伝える:長くお世話になったお寺には、まず家族から「遠くて通えず、墓じまいを考えている」と事情を話します。閉眼供養の日程やお布施は、その場で一緒に相談します。
- 離檀のお礼は法律で決まった支払いではない:高い金額を求められて納得できないときは、親族を交えて話し合い、消費者ホットライン188にも相談できます。争いになっているときは弁護士に相談します。
- 親族には、移す先の案と見積もりを見せる:「やめるかどうか」ではなく「どこへ移すか」の話にすると、まとまりやすくなります。
- 決まったことはメッセージで共有する:移す先、費用の分担、工事の日を、親族のグループなどに書き残します。
親族の同意がどこまで要るかは墓じまいで後悔しないために(親族の同意はどこまで)、お寺に包むお金の書き方は墓じまいのお布施で説明しています。お墓のことを、実家の片付けや相続の手続きとあわせて考えたいときは、30分の無料相談で、何から順に決めるかを一緒に整理します。その場で何かをお決めいただく必要はありません。
まず電話と検索で確かめること
- お墓の使用許可証か墓地の規則を探し、使用者の名前と、決まった石材店があるかを確かめる
- お墓のある市町村のホームページで「改葬」と検索し、担当課と郵送で申請できるかを確かめる
- 移す先の候補を2つ書き出し、親族に「相談したいことがある」と連絡する
遠方の墓じまいについてよくある質問
一度も現地に行かずに墓じまいはできますか
改葬許可の申請を郵送で受け付ける市町村なら、書類のやり取りは郵送で進められます。読経・工事・遺骨の取り出しを依頼先に任せ、遺骨の移送まで頼めば、家族が現地へ行かずに済むこともあります。どこまで任せられるかは、お寺と依頼先に確かめてください。
改葬許可はどこに申請しますか
遺骨が今ある場所の市町村です(墓地、埋葬等に関する法律5条2項)。住んでいる市町村ではありません。郵送できるか、どんな書類が要るかは、お墓のある市町村の担当課に電話で聞くのが確実です。
親の名義のお墓でも、子が申請できますか
申請書には、墓地の使用者以外が申請する場合、使用者の承諾書などを添えます(同法施行規則2条)。使用者が亡くなっている場合は、先に墓地の名義を引き継ぐ手続きを求める墓地もあります。墓地の管理者に、何が要るかを確かめてください。
遺骨は自分で運べますか
自分で運ぶ方もいます。改葬許可証を忘れずに持ち、新しい納骨先に出します。遠方の場合は、依頼先に移送を頼めるかも聞いておくと、受け取りのための往復を減らせます。
移す先は、今の家の近くにしたほうがよいですか
お参りを続けたいなら、住まいの近くにすると通いやすくなります。将来、お墓を継ぐ人がいないなら、永代供養墓や散骨も選べます。行き先ごとの違いは墓じまいの遺骨はどうする?で比べています。
参考にした公的情報・資料
- e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」第2条・第5条
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048 - e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」第2条
https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100024 - 名古屋市「改葬許可申請」(郵送での申請・委任状)
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/eisei/1011432/1011619.html - 名古屋市「八事霊園・愛宕霊園 よくある質問」(名義の承継と墓じまい)
https://www.city.nagoya.jp/kurashi/shisetsu/1016323/1016332/1042860.html - イオンのお葬式「墓じまいの費用・料金と方法」(全国統一料金・料金に含まれるもの)
https://www.aeonlife.jp/rebury - イオンのお葬式「墓じまいに関するよくあるご質問」(書類の作成は利用者、提出を代行/お寺への意向は利用者から)
https://www.aeonlife.jp/rebury/faq - 鎌倉新書「【第4回】改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」
https://guide.e-ohaka.com/research/survey_hakajimai_2026/ - JR東海・JR西日本「東海道・山陽新幹線における『のぞみ』・『みずほ』号の指定席特急料金及びグリーン料金の見直し等について」(2026年10月16日、東京⇔名古屋の現行料金と改定後)
https://www.westjr.co.jp/press/article/2026/10/16/items/261016_00_press_shinkansen_ryoukin.pdf - ファイナンシャルフィールド「墓じまいをしようと思っています。『50万円あればできる』と聞きましたが…」(2026年10月15日、撤去費・お布施の目安)
https://financial-field.com/inheritance/entry-524208 - 幻冬舎ゴールドオンライン「地方と都市部で大きく変わる『墓じまい』のリアルな費用と手続きの落とし穴」(2026年7月15日、撤去費・お布施の目安)
https://gentosha-go.com/articles/-/80070
※本記事は2026年11月時点の法令、自治体と事業者の公式サイトをもとにした一般的な情報です。改葬許可の手続きや必要書類は市町村・墓地ごとに異なります。当社は改葬許可の申請や書類の作成は行いません。お寺との話し合いがまとまらないなど争いがある場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。料金や条件は変わることがあるため、申し込む前に見積書と契約書でご確認ください。
