成年後見人になれる人・なれない人(欠格事由)|家族と専門家、どちらが選ばれるか

「私が後見人候補者になろうと思うんですが、なれますよね?」——認知症の母の預金口座手続きのため訪れた金融機関の窓口で、担当者にそう尋ねたところ、「欠格事由に当てはまらなければ候補者にはなれますが、最終的に選ぶのは家庭裁判所です」と言われ、拍子抜けした。長男である自分が選ばれるのは当然だと思っていたが、そう単純な話でもないらしい。しかも数年前、事業に行き詰まって自己破産した過去がある——まさか、それが引っかかるのだろうか。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 成年後見人になれない人(欠格事由)は民法847条で5つに限定されています(未成年者/家裁で法定代理人等を免ぜられた人/破産者/本人を訴えた人とその配偶者・直系血族/行方の知れない人)
  • 欠格事由に当てはまらなければ家族も候補者になれますが、最終的に選任するのは家庭裁判所で、必ず家族が選ばれるとは限りません
  • 直近の統計では親族が成年後見人等に選ばれた割合は約17%程度にとどまり、司法書士・弁護士などの専門家が選ばれるケースの方が多いとされています
  • 財産規模が大きい場合や親族間で意見が分かれる場合は、複数後見人や後見監督人がつくこともあります

「自分は後見人になれるのか」「破産した経歴があるとアウトなのか」「家族なのに選ばれないことなんてあるのか」——後見人候補者を考え始めると、こうした漠然とした不安が次々に出てきます。厄介なのは、多くの方が「欠格事由」という言葉自体を初めて聞き、何を確認すればいいのか分からないまま、家庭裁判所への申立てに進んでしまうことです。だからこの記事では、民法で定められた成年後見人になれない人(欠格事由)の中身と、欠格事由に当てはまらなくても実際には専門家が選ばれることが多い実情、そして複数後見人や後見監督人がつくケースまで、順番に整理しました。

目次

後見人になれない人の範囲|民法847条の欠格事由をすべて確認する

成年後見人(保佐人・補助人を含む)になれない人は、民法847条で次の5つに限定されています。この5つのいずれにも当てはまらなければ、家族はもちろん、友人・知人や司法書士・弁護士などの専門家も、候補者になることができます。

成年後見人になれない人(欠格事由/民法847条)
・未成年者
・家庭裁判所で法定代理人・保佐人・補助人を解任(免ぜられた)されたことがある人
・破産者(破産手続きを経てまだ復権していない人)
・本人に対して訴訟をした人・している人、およびその配偶者・直系血族
・行方の知れない人

このうち特に誤解されやすいのが「破産者」です。欠格事由に当たるのは、破産手続き開始の決定を受けてまだ「復権」していない期間に限られるとされています。免責許可決定を受けて復権すれば、この欠格事由には当てはまらなくなるとされていますので、過去に自己破産した経験があっても、手続きがすでに終わっている場合は該当しないのが一般的です。実際に該当するかどうか不安な場合は、家庭裁判所や弁護士・司法書士にご確認ください。

また「本人に対して訴訟をした者・している者、およびその配偶者・直系血族」という事由は、遺産分割や金銭トラブルなどで本人と対立関係にあった人が、公正な立場で財産管理や身上監護を行うのは難しいと考えられるために定められているものです。過去に本人と何らかの争いごとがあった親族は、この事由に該当しないかを確認しておく必要があります。

欠格事由に当てはまらないことが確認できても、それはあくまで「候補者になれる」段階の話にすぎません。実際に後見が始まった後、どのような費用や負担が本人が亡くなるまで続くのかについては、成年後見制度の費用・デメリットと使いにくさで詳しく解説しています。

欠格事由に当てはまらなくても、実際には専門家が選ばれるケースが多い理由

欠格事由に当てはまらなければ候補者にはなれますが、最終的に誰を後見人として選任するかを決めるのは家庭裁判所です。「候補者になれること」と「実際に選ばれること」の間には、少なからぬギャップがあります。

最高裁判所事務総局家庭局が公表している統計(「成年後見関係事件の概況-令和6年1月~12月-」)によると、成年後見人等に選任された人のうち、配偶者・親・子・兄弟姉妹などの親族が占める割合は約17.1%程度にとどまり、親族以外(司法書士・弁護士などの専門家や法人)が選任された割合が約82.9%程度と、専門家が選ばれるケースの方が多いとされています。内訳では司法書士が約34.7%程度、弁護士が約25.7%程度を占めているとされています。

親族が候補者として申立てをしても専門家が選ばれやすくなる主な要因としては、次のようなものが挙げられます。

  • 管理する財産の規模が大きい(不動産、複数の金融機関口座、有価証券など)
  • 親族間で後見人候補者や財産管理の方針について意見が分かれている
  • 賃貸不動産の運用や事業に関わる資産など、専門的な判断が必要な財産構成になっている

これらの事情があると、家庭裁判所は「継続的かつ公正な財産管理ができるか」という観点から、親族よりも専門家を選ぶ判断をすることがあるとされています。財産の規模や親族間の状況は事案ごとに異なるため、どちらが選ばれやすいかを事前に断定することはできません。

「誰が後見人になるか、最終的には自分で決められない」という点に不安を感じる場合は、判断能力があるうちに契約を結ぶ任意後見であれば、受任者をご自身で選ぶことができます。任意後見受任者を子ども以外に頼めるかどうかや選び方の基準は、任意後見受任者を子ども以外(甥・姪・友人・専門家)に頼める?選び方の基準で解説しています。

まだ間に合ううちに

法定後見・任意後見・家族信託、どれが合うか無料で確認できます

生前対策診断をやってみる →

複数後見人・後見監督人がつくケースとは

後見人は必ずしも1人とは限りません。財産管理は専門家、日常的な身上監護は親族、というように役割を分担する「複数後見人」が選任されることもあります。複数後見人には、各自が単独で代理権を行使できる方式と、共同でなければ代理権を行使できない方式があり、事案に応じて家庭裁判所が判断します。

また、親族が単独で後見人に選ばれた場合でも、家庭裁判所の判断で「後見監督人」が別途選任されることがあります。後見監督人は、後見人の事務が適正に行われているかをチェックする立場の人で、多くの場合は司法書士や弁護士などの専門家が選ばれます。前出の統計では、認容で終局した後見開始・保佐開始・補助開始事件のうち、成年後見監督人等が選任されたものは約3.4%程度とされています。

後見制度は、最終的に「誰が管理するか」を家庭裁判所が決める仕組みであるため、財産を任せる相手をあらかじめ自分で指定しておきたい場合には、別の選択肢も検討の余地があります。たとえば家族信託であれば、財産を託す受託者を契約の中で自分で選べます。受託者に向いている人・向いていない人の基準は、家族信託の受託者選び方で解説しています。

【実務のポイント】後見制度支援信託・支援預金という仕組み

親族が後見人に選ばれた場合でも、財産の額が大きいときは、日常的に使う分だけを親族後見人の手元に残し、それ以外のまとまった金銭を信託銀行等に信託する「後見制度支援信託」や、同様の考え方で信託銀行以外の金融機関に預け入れる「後見制度支援預金」の利用を、家庭裁判所から促されることがあります。信託財産や指定した金額を超える部分を引き出す際には家庭裁判所の指示書が必要になる仕組みで、親族後見人が単独で財産を管理する場合の保全策として使われています。利用するかどうかや対象となる財産の目安は、家庭裁判所の運用や個別の事情によって異なるため、申立て時に家庭裁判所や専門家にご確認ください。

こんな方には、この記事の内容は不要です

すでに後見人候補者や欠格事由の有無について家庭裁判所や専門家に相談済みで、申立ての準備を進めている方には、この記事で紹介した一般的な整理はすでに済んでいる内容かもしれません。具体的な申立て書類の書き方や必要書類については、申立て先の家庭裁判所や、弁護士・司法書士に直接ご確認いただくのが確実です。

セルフチェック|今、後見人選びのどの段階にいるか

次の5つのうち、当てはまる(YES)ものはいくつありますか。

  • 後見人候補者になろうとしている人に、破産や本人への訴訟など欠格事由に当てはまる事情がない
  • 家族の中で「誰が後見人になるか」について意見がまとまっていない、または対立がある
  • 管理すべき財産に不動産や複数の金融機関口座、事業に関わる資産などが含まれ複雑になっている
  • 「家族の誰かが選ばれるはず」という前提で、専門家が選ばれる可能性を考えていなかった
  • 本人の判断能力はまだしっかりしており、今のうちなら任意後見や家族信託も選べる段階にある

YESの数で見る、今の状況

4〜5個YES:まだ選択肢が複数残っている段階です。任意後見や家族信託も含めて、生前対策診断でご自身に合う備えを確認してみてください。

2〜3個YES:一部に気になる点があります。財産構成や親族間の状況を整理したうえで、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

0〜1個YES:すでに判断能力の低下が進んでいる可能性や、家庭裁判所への申立てが必要な状況が近い可能性があります。弁護士・司法書士へご相談ください。

よくある質問

Q. 自分は後見人になれますか?欠格事由に当てはまらなければ大丈夫ですか?

欠格事由(民法847条の5つ)に当てはまらなければ、候補者にはなれます。ただし最終的に選任するのは家庭裁判所であり、候補者になれることと実際に選ばれることは別の話である点にご注意ください。

Q. 過去に自己破産した経験がありますが、後見人になれませんか?

破産者であることは欠格事由の一つですが、免責許可決定を受けて復権すれば、この事由には当てはまらなくなるとされています。ご自身のケースが該当するかどうかは、家庭裁判所や弁護士・司法書士にご確認ください。

Q. 家族が候補者に立てば、必ず家族が後見人に選ばれますか?

必ず選ばれるとは限りません。財産規模や親族間の意見対立などの事情から、専門家が選ばれるケースも一定数あるとされています。直近の統計では、親族が成年後見人等に選ばれた割合は約17%程度とされています。

Q. 後見人の欠格事由と、任意後見受任者の欠格事由は同じですか?

異なる規定に基づいています。任意後見受任者の欠格事由は任意後見契約に関する法律第4条に定められており、法定後見(成年後見)の欠格事由(民法847条)とは別の条文です。任意後見受任者の選び方は任意後見受任者を子ども以外(甥・姪・友人・専門家)に頼める?選び方の基準で解説しています。

Q. 兄弟姉妹など複数の家族で後見人になることはできますか?

複数後見人として選任される場合もあります。財産管理は専門家、身上監護は親族、といった役割分担も可能です。ただし複数のうち1人でも欠格事由に該当すると申立て全体に影響することがあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

まだ間に合ううちに

法定後見・任意後見・家族信託、どれが合うか無料で確認できます

生前対策診断をやってみる →

あわせて読みたい

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断を保証するものではありません。欠格事由への該当有無や、後見人候補者の選任見込みについての正式な判断は、申立て先の家庭裁判所、または弁護士・司法書士にご確認ください。成年後見の申立て手続きそのものの代理は弁護士・司法書士の業務であり、行政書士は申立て書類の作成サポートを行っています。統計・金額等は2026年7月時点の情報(出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況-令和6年1月~12月-」)であり、最新の数値は裁判所公式サイトでご確認ください。監修:司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)。

この先どうするか、決めかねている方へ

当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。実際の手続きをご依頼になる場合は、提携先の専門家が有償で承ります。ご希望に応じて提携先をご紹介した際に紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

目次