家族信託の受託者は誰にする?なれる人・なれない人と選び方の基準

相続した愛知の実家を、この先どうするか考えている方へ

住む人がいなくなった家にも、固定資産税は毎年かかります。名古屋市で空き家の税金が上がる仕組みと、愛知の市町村の空き家バンクで家を貸す・売るときの順番をまとめました。

名古屋市の空き家の固定資産税:勧告で何倍になるか

愛知の空き家バンク一覧と、相続した実家を出す順番

形見の品やブランド品を、手放すか迷ったら

相続放棄を考えている間に遺品を売ったり処分したりすると、相続を受け入れたとみなされることがあります。手放す前の仕分けの順番と、品物ごとの手放し方をまとめました。

遺品整理を自分でする手順:仕分けと手放し方

亡くなった方の車を、引き継ぐか手放すか決める前に

乗り続ける・売る・廃車にする、どの場合も相続人が手続きをします。窓口は普通車が運輸支局、軽自動車が軽自動車検査協会です。必要な書類と期限をまとめました。

車の名義変更(死亡・相続)の必要書類と期限

お墓をこの先どうするか、家族で話し合う前に

管理料が払われないままのお墓は、使用許可の取り消しや官報公告などを経て、無縁墓として改葬されることがあります。そうなるまでの流れと家族の選択肢をまとめました。名古屋市営の八事霊園・愛宕霊園の墓じまいは、返還と改葬の申し込みの流れを別にまとめています。

お墓を放置するとどうなる?無縁墓になるまでの流れ

八事霊園・愛宕霊園の墓じまい(名古屋市営墓地の返還)

留守にしている実家や、一人暮らしの親の家の防犯が気になる方へ

警察の分析では、住宅に入られる手口は鍵のかけ忘れと窓ガラス破りが多くを占めます。誰も住んでいない家と、親が一人で住む家とでは備え方が違うため、分けてまとめました。

空き家の防犯対策:お金をかけずにできることと警備会社の費用

一人暮らしの親が住む実家の防犯対策

相続した家・土地を、売るか持ち続けるか迷っている方へ

売る・貸す・住み続けるで、かかる費用と税金が変わります。亡くなった親が一人で住んでいた家を売るときは、条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例もあります。

実家を売る・貸す・住み続けるの比べ方

相続した空き家を売るときの税金と3,000万円控除

手続きが落ち着いたら、残された親御さんの預金のことも

親が認知症と診断されると、本人名義の定期預金は家族でも解約できなくなることがあります。いまのうちにできる備えと、本人以外が解約するときの手順をまとめました。

親の定期預金を動かせなくなる前に読む

預金・退職金の置き場所は、目的で分けると迷いません

すぐ使うお金、しばらく使わないお金。目的ごとに向く置き場所と、銀行の窓口で勧められたときに確かめたい点を整理しました。

お金の置き場所を目的別に見る

受け取ったお金を、窓口で勧められるまま預け替える前に

相続の手続きで金融機関の窓口に行くと、受け取ったお金の預け先として商品を勧められることがあります。早く解約すると払った額を下回る期間があるものもあります。契約の前に確かめたい点をまとめました。

契約する前に確かめる点を見る

死亡保険金は、分ける遺産とは別に扱われます

死亡保険金は受取人のものとして、遺産分割の対象から外れるのが原則です。かかる税金も、契約者・被保険者・受取人の組み合わせで変わります。手元の保険証券で確かめられる早見表です。

組み合わせ別の早見表を見る

「じゃあ、うちは誰が受託者になる?」——生前対策の相談の場で、話がふっと止まってしまうことがあります。長男は仕事と子育てに追われていて余裕がない。次男は転勤で県外暮らしが長く、実家には頻繁に帰れない。長女は「お金の管理を私が担うのは、他の兄弟に角が立ちそうで気が引ける」と言う。誰が悪いわけでもないのに、話がそこで止まってしまう——家族信託の検討を始めたご家庭で、実はいちばんよく聞くのが、この「受託者を誰にするか」で立ち止まってしまうケースです。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 受託者になれる人に、家族内の続柄による制限はありません。法律上の欠格事由は未成年者のみで、成年被後見人・被保佐人も2019年の法改正で形式的な欠格事由からは外れています(ただし判断能力の面で実務上は難しいケースが多いです)
  • 長男・長女が引き受ける必要はなく、複数受託者や、あらかじめ後任を定める予備的受託者の指定など、柔軟な設計が可能です
  • 家族の中に適任者がいない場合は、信託会社や、家族が設立した一般社団法人を受託者にする方法があります。司法書士・弁護士などの専門家は、信託業法の関係で、報酬を得て受託者を引き受けることは原則としてなく、契約書づくりの支援や信託監督人などの立場で関わるのが一般的です
  • 受託者には善管注意義務・分別管理義務・帳簿作成義務・報告義務が課されるため、引き受ける側の負担感も含めて検討することが大切です

「受託者になるのに資格は必要?」「長男じゃないとダメ?」「専門家に頼んだら家族信託の意味がなくなるのでは?」「もし受託者が先に倒れたら、信託はどうなるの?」——受託者選びで検討が止まる背景には、こうした具体的な疑問が整理されないまま残っていることが多くあります。この記事では、「誰が受託者になれるのか」「誰を選べばいいのか」という一歩踏み込んだ論点を、実務目線で整理します。

目次

受託者になれる人・なれない人|法律上の条件

結論から言うと、受託者になれる人に家族内の続柄による制限はありません。信託法が明確に受託者になれないと定めているのは未成年者のみです(信託法7条)。財産管理という重い責任を、行為能力が制限された未成年者に担わせるのは適切ではないという考え方によるものです。

一方で誤解されやすいのが、成年被後見人・被保佐人の扱いです。以前は信託法上、受託者になれない人として明記されていましたが、2019年施行の「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」により、この規定は削除されました。つまり法律上は、成年被後見人・被保佐人であることを理由に一律で受託者になれないわけではありません。ただし実務上は、受託者には信託財産を自分の判断で管理し、金融機関や不動産会社とのやり取りを継続的に行う能力が求められるため、判断能力が十分でない方が実際に受託者を担うケースは多くありません。「制度上できるかどうか」と「実務上うまく機能するかどうか」を分けて考える必要がある、数少ない論点のひとつです。

また、受託者は個人に限りません。法人を受託者にすることも可能で、家族が中心となって設立した一般社団法人を受託者にするケースが実務では見られます。報酬を得て営業として引き受けるのでなければ、信託会社のような信託業の免許は不要とされていますが、これは家族・親族が主体となって管理する信託に限られた考え方で、法人の設立要件や運営体制については後述します。

家族信託全体の仕組みや、資産凍結を防ぐ効果については家族信託で親の”資産凍結”を防ぐ|アパート・自社株の信託と任意後見・成年後見との違いで詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

家族の中で誰を選ぶか|長男・長女に限らず考える

「長男だから」「同居しているから」という理由だけで受託者を決めると、後になって「なぜあの人が」という不公平感が他の家族に残ることがあります。受託者選びで実務上重視されているのは、続柄よりも次の3点です。

  • 信託財産の管理を、長期間にわたって継続できる状況にあるか(仕事・住まい・健康状態)
  • 他の家族との間で、情報共有や説明を怠らずに続けられる関係性があるか
  • 不動産や自社株など、専門的な判断が必要な財産がある場合、それに対応できる知識や専門家との連携力があるか

また、受託者は1人に固定する必要はありません。複数の家族を受託者にする「複数受託者」という設計もあります。各自が単独で代理権を行使できる方式と、共同でなければ行使できない方式があり、前者は1人が対応できない状況でも機能を維持しやすく、後者は互いに確認し合えるため不正防止につながる一方、手続きに時間がかかりやすいという違いがあります。

「自分が受託者を引き受けるべきか迷っている」という場合は、判断能力があるうちに一度立ち止まって、上記3点に加えて「引き受けた場合に生じる帳簿作成や報告といった事務負担を、今の生活の中で継続できるか」を確認してみることをおすすめします。義務の詳細は後述しますが、想像以上に事務的な負担があることは、引き受ける前に知っておいて損はありません。

「信頼して任せられる人を誰にするか」という判断は、任意後見の受任者選びと似た論点があります。子ども以外の家族や専門家に任せる場合の考え方は任意後見受任者を子ども以外(甥・姪・友人・専門家)に頼める?選び方の基準でも整理していますので、あわせてご覧ください。

家族以外(専門家・信託会社)に頼むという選択肢

家族の中に適任者がいない、または家族に負担をかけたくないという場合、家族以外に受託者を依頼する方法もあります。主な選択肢は次の3つです。

依頼先 特徴 コスト感の目安 注意点
専門職(司法書士・弁護士等) 契約書づくりの相談や、信託監督人などの立場での関わり 受託者になるのではなく、支援や見守りの役割。報酬は契約で定める 報酬を得て受託者を引き受けることは、信託業法の免許との関係で、原則として行われない
一般社団法人(家族が設立) 家族の意向を反映した運営がしやすく、特定の個人に依存しない 設立の費用がかかり、その後も維持費(法人住民税など)が継続的に発生 社員・理事の体制づくりと、法人の存続性(誰が運営を引き継ぐか)を事前に検討する必要がある
信託会社(商事信託) 信託業の免許を持つ専門機関が管理する 信託財産の規模や種類に応じた報酬体系が一般的 家族信託(民事信託)とは別枠の制度で、取扱財産の種類・規模に条件があることが多い

家族信託の”低コスト”という特徴は、無償または低額で家族が受託者を引き受けることを前提にしている面があります。信託会社に依頼する場合や、専門職に信託監督人などを頼む場合は、契約時の費用に加えて継続的な報酬が発生するため、この点は依頼前に必ず確認しておきたいポイントです。報酬を得て繰り返し信託を引き受ける「信託業」は、内閣総理大臣の免許が必要と信託業法第3条で定められています(2026年10月時点)。費用全体の目安については家族信託の費用相場はいくら?目安と内訳でまとめていますので、あわせてご確認ください。

なお、賃貸不動産や自社株など、専門的な判断が必要な財産を信託する場合は、家族だけで抱え込まず専門家と役割分担する形も選択肢になります。アパート経営者が家族信託を組む際の受託者選びの勘所は家族信託でアパート経営を”止めない”|賃貸オーナーの資産凍結対策で解説しています。

受託者が倒れたら?予備的受託者・第二受託者を決めておく

家族信託を組む際、見落とされがちなのが「受託者本人が病気や認知症、あるいは死亡した場合にどうなるか」という備えです。受託者が信託事務を行えなくなった場合、次の受託者があらかじめ契約書で指定されていなければ、信託事務が止まってしまう、あるいは関係者間の調整に想定より時間がかかることがあります。

この備えとして実務でよく使われるのが「予備的受託者」「第二受託者」と呼ばれる仕組みです。信託契約の中に、主たる受託者が対応できなくなった場合に備えて、あらかじめ後任者を指定しておきます。予備的受託者を決めておけば、主たる受託者が対応できなくなった時点で、信託事務を引き継ぐ流れを契約書上ではっきりさせておくことができます。

「まだ元気だから」と先延ばしにしがちな部分ですが、受託者自身の高齢化や体調変化への備えは、本人が信託契約を結ぶ判断能力を持っているうちにしか対応できません。受託者を決めるタイミングで、あわせて予備的受託者も決めておくことを強くおすすめします。

受託者に課される4つの義務

受託者は、信託財産を管理する大きな権限を持つ一方で、信託法上いくつかの義務を負います。引き受ける前に、負担感も含めて把握しておきたい内容です。

  • 善管注意義務(信託法29条2項): 良識ある管理者として、注意を払って信託事務を行う義務
  • 分別管理義務(信託法34条1項): 信託財産を、受託者自身の財産や他の信託財産とは分けて管理する義務(不動産は信託登記、金銭は信託専用口座を使うのが一般的)
  • 帳簿等作成義務(信託法37条1項): 信託財産に関する帳簿や書類を作成し、保管する義務
  • 報告義務(信託法36条): 委託者や受益者から求められた場合に、信託事務の処理状況を報告する義務
当窓口の実務から
受託者を引き受けたご家族から契約直後によく相談されるのは、「自分の判断が本当に正しいのか、誰にも確認してもらえない」という孤独感です。他の家族から「その使い方で合っているの?」と聞かれたときに、自信を持って説明できる材料(帳簿・領収書・報告の記録)を普段から残しておくと、この不安はかなり軽くなります。孤独感や不正防止への不安が大きい場合は、契約書に「信託監督人」(受託者の事務を客観的にチェックする役割の人)を置く設計も検討されています。

受託者選びで迷ったら

簡単な質問に答えるだけで、ご家族の状況に合った生前対策の進め方を整理できます。

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この記事が向いていない方

一方で、次のような場合は、この記事で扱う「受託者選び」の前に、別の検討が必要かもしれません。

こんな場合は、まず別の検討から
・すでに本人の判断能力が低下しており、契約行為が難しい状態の場合 → 家族信託は本人が契約を結べることが前提の制度です。この場合は成年後見制度の利用を検討することになります
・受託者を誰にするか以前に、家族信託そのものを組むべきかを検討している段階の場合 → まずは家族信託で親の”資産凍結”を防ぐで、制度の効果と限界を確認することをおすすめします
・すでに専門家と相談し、受託者と予備的受託者を契約書に落とし込み済みの場合 → 本記事で新たに確認する内容は少ないかもしれません

セルフチェック:受託者選びで立ち止まっていませんか

以下の項目のうち、いくつ当てはまるか数えてみてください。

  • 家族の中に、信頼して財産管理を任せられる人が思い浮かばない、または候補が複数いて意見が分かれている
  • 賃貸不動産や自社株など、専門的な判断が必要な資産がある
  • 受託者になってほしい人が遠方に住んでいる、または高齢・持病があるなど、長期間の対応に不安がある
  • 受託者になった人だけに権限が集中することについて、他の家族が不公平感を感じている
  • 予備的受託者(受託者が対応できなくなった場合の後任)をまだ決めていない

該当数による目安

0〜1個: 受託者選びの方向性はある程度固まっていると考えられます。記事内の資格要件や義務の内容を、契約書に落とし込む段階で確認する程度で十分でしょう。

2〜3個: 判断が必要な論点が残っています。家族以外に頼む選択肢や複数受託者の設計も含め、比較しながら検討することをおすすめします。

4個以上: 家族内の話し合いだけで結論を出すのが難しい状況です。専門家を交えて、選択肢を整理しながら進めるほうが早い場合が多くあります。

よくある質問(FAQ)

長男・長女でなくても受託者になれますか?

なれます。法律上、受託者になれる人に続柄の制限はありません(信託法7条が定めるのは未成年者を除外する規定のみです)。財産管理の実務に向いているか、長期的に対応できるかを基準に選ぶご家庭が増えています。

家族の中で受託者を決められない場合はどうすればいいですか?

一人に絞れない場合は、複数の受託者を置く「複数受託者」や、専門職・一般社団法人を受託者にする方法もあります。まずは何を判断基準にするかを家族内で整理するところから始めると、話が進みやすくなります。

司法書士や弁護士に受託者を頼むことはできますか?

司法書士・弁護士などの専門家は、信託業法の関係で、報酬を得て家族信託の受託者を引き受けることは原則としてありません。受託者は家族などが担い、専門家は契約書づくりの支援や、信託監督人などの立場で関わるのが一般的です。家族の中に受託者がいない場合は、信託会社への依頼や、家族が設立した一般社団法人を受託者にする方法を検討します。いずれも継続的な費用がかかるため、依頼前に報酬の仕組みを確認してください。

受託者は途中で変更できますか?

信託契約にあらかじめ定めておけば、受託者の辞任・解任や後任者の指定について柔軟に設計できます。何も定めていないと、変更の際に関係者間の合意形成など、想定より手間がかかることがあります。だからこそ、契約時点で予備的受託者まで決めておくことが重要です。

受託者に指定されたけれど、引き受けたくない場合はどうなりますか?

受託者への就任を強制されることはありません。契約締結前であれば辞退でき、契約後であっても信託法上の手続きに沿って辞任することが可能です。ただし後任者が決まっていないと信託事務が滞ってしまうため、予備的受託者をあらかじめ決めておくことが望ましいです。

受託者選びで迷ったら

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本記事は司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修のもと、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の税額計算や信託の設計は、税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

「いまから相続」は、株式会社アシストプラスが運営する、相続の手続き・生前対策・終活に関する情報サイトです。愛知県内の相続相談先の選び方や費用相場、金融機関ごとの手続き、生前対策や終活の進め方など、地域の実情に即した実践的な情報をお届けしています。 なお、運営会社である株式会社アシストプラスには、「あいち相続あんしんセンター」代表を務める司法書士 今井裕司が一部出資しております。この関係性を踏まえ、記事内でのご紹介・ご案内は公平性を保つよう努めています。

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