成年後見の申立てにかかる費用と期間|鑑定費用・必要書類の実際

「本人の診断書、戸籍謄本、住民票、財産目録、収支予定表……場合によっては鑑定も必要になります」。家庭裁判所の窓口でぶ厚い「申立ての手引き」とチェックシートを渡された瞬間、頭が真っ白になった――という話を、これまで何度も聞いてきました。実家の売却や施設入居の支払いが控えていて、正直あと数週間でも早く動きたい。それなのに、鑑定があるかないかで期間も費用も変わると言われ、結局いつ・いくらで終わるのか誰も明言してくれない。そのまま重い書類の束を抱えて帰ってきてしまった、という方は少なくありません。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 申立てから審判までの期間は、全体の約7割が2か月以内、9割超が4か月以内が目安(出典:裁判所公式統計)。鑑定が実施されるとさらに数週間〜1ヶ月程度延びることがあります
  • 費用の目安は、収入印紙800円程度+登記手数料2,600円程度+鑑定が必要な場合は5万円〜10万円程度
  • 必要書類は、本人の診断書・戸籍謄本・住民票・財産目録・収支予定表など多岐にわたります
  • 後見開始の申立ておよびその代理は弁護士・司法書士の業務です。行政書士ができるのは、申立書類の作成サポートまでです

「書類が多すぎて、自分だけで揃えられるのか」「鑑定が入ったら、一体いくら・何ヶ月かかるのか」「専門家に頼むとしたら、誰に何をお願いすればいいのか」。ここでつまずく方の多くは、手続きそのものの煩雑さより、”見通しの立たなさ”に疲れてしまっています。この記事では、成年後見(法定後見)開始の申立てにかかる期間・費用・必要書類を、裁判所公式の統計・資料をもとに整理し、鑑定が省略されるケースや、自分で申し立てる場合と専門家に依頼する場合の違いまで解説します。

目次

申立てから審判までの期間はどのくらいかかるか(鑑定の有無で変わる目安)

成年後見開始の審判までにかかる期間は、鑑定の要否や本人の状況によって変わるため、一律に「◯週間」と言い切ることはできません。ただし、最高裁判所事務総局家庭局が公表している統計「成年後見関係事件の概況」によれば、申立てから審判までの期間は、全体の約7割が2か月以内、9割超が4か月以内に終わっているとされています(出典:裁判所公式サイト「成年後見制度に関する審判」、最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」)。法務省の案内でも「申立てから法定後見の開始までの期間は、4か月以内が目安」とされており(出典:法務省「成年後見制度Q&A」)、これがおおまかな上限の目安になります。

一方で、判断能力の程度を医師が医学的に確認する「鑑定」が実施されると、鑑定書の作成にさらに数週間〜1ヶ月程度の期間が上乗せされ、審理全体としても長引く傾向があります。鑑定が実施される割合自体は全事件の1割に満たない程度とされていますが(出典同上)、必要かどうかは申立て後に家庭裁判所が判断するため、申立て時点では確定しません。「急ぎたいのに終わりが見えない」という不安の正体は、多くの場合この”鑑定の有無で振れ幅が生じる”という構造にあります。後見が始まった後にかかり続ける費用や、制度そのものの使いにくさについては、成年後見制度の費用・デメリットと「使いにくさ」で全体像を整理していますので、申立て前にあわせてご確認ください。

申立てに必要な書類一覧(本人の診断書・戸籍謄本・財産目録など)

成年後見開始の申立てでは、本人の状況を家庭裁判所が正確に把握できるよう、多岐にわたる書類の提出が求められます。家庭裁判所ごとに書式や部数の指定は異なりますが、標準的に必要とされる書類は次のとおりです(出典:裁判所公式サイト「後見開始」ほか各家庭裁判所の申立ての手引き)。

区分 主な必要書類 目安・備考
申立書類 後見開始申立書、申立事情説明書、親族関係図 裁判所所定の様式を使用
本人の状況に関する書類 本人の診断書、本人情報シートの写し、健康状態に関する資料(介護保険認定書等) 診断書は発行から3か月以内が目安
戸籍・住民票関係 本人の戸籍謄本、本人の住民票(または戸籍附票)、後見人候補者の住民票(または戸籍附票)、登記されていないことの証明書 戸籍謄本・住民票は発行から3か月以内が目安
財産関係 財産目録(所定様式)、預貯金通帳の写し・残高証明書、不動産登記事項証明書 財産全体がわかる資料一式
収支関係 収支予定表(所定様式)、年金通知書、給与明細、施設利用料等の資料 今後の収支の見込みが分かる資料

※家庭裁判所ごとに書式・部数の指定が異なります。最新かつ正確な必要書類は、申立て先の家庭裁判所が公表する「申立ての手引き」でご確認ください。出典:裁判所公式サイト「後見開始」。

戸籍謄本・住民票・診断書はいずれも発行から3か月以内のものが求められるのが一般的で、先に取得しすぎると期限切れで取り直しになることもあります。実際にどの書類から揃え始めればよいか、認知症で口座が凍結された場面を例にした申立ての具体的な流れは、認知症で凍結された銀行口座を解除するには?成年後見制度の手続き・費用・注意点を解説でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

費用の内訳と鑑定費用の目安(収入印紙・登記手数料・鑑定費用)

申立て時にかかる実費は、大きく分けて次の4つです。

  • 収入印紙(申立手数料):800円程度
  • 収入印紙(登記手数料):2,600円程度
  • 連絡用の郵便切手代:数千円程度(裁判所により指定額が異なります)
  • 鑑定費用:鑑定が必要な場合のみ発生し、5万円〜10万円程度が目安

このうち鑑定費用は、実施された場合でも裁判所公式資料で「10万円以下におさまるケースが大半」と報告されています(出典:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」)。成年後見制度の費用・デメリットと「使いにくさ」でも触れているとおり、収入印紙800円程度・登記手数料2,600円程度に、鑑定が必要な場合は5万円〜10万円程度が上乗せされる、という水準感で予算を考えておくと安心です。なお、資力に不安がある場合は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助制度や、市区町村による費用助成制度が利用できることがあります(出典:法務省「成年後見制度Q&A」)。

なお、これらはあくまで”申立て時”にかかる費用です。後見が始まった後、後見人(特に専門職後見人)に継続的に支払う報酬の目安については、成年後見人の報酬相場はいくら?家族が受任する場合と専門家に依頼する場合の違いで解説していますので、申立て前の資金計画づくりにお役立てください。

鑑定が省略されるケースと、自分で申し立てる場合・専門家に依頼する場合の違い

すべての申立てで鑑定が実施されるわけではありません。本人の判断能力の低下が診断書等の記載から明らかで、家庭裁判所が改めて医学的な鑑定を行う必要がないと判断した場合には、鑑定が省略されることがあります。特に、すでに重度の認知症の診断を受けており、本人情報シートや診断書の記載から判断能力の欠如が明確に読み取れるケースでは、鑑定なしで審判に至ることも少なくありません。ただし、これはあくまで家庭裁判所が個別の事情に応じて判断することであり、申立人側が「鑑定は不要」と決められるものではない点に注意が必要です。

また、申立てそのものは本人・配偶者・四親等内の親族などが自分で行うことも法律上可能ですが、実務上は書類の収集や裁判所とのやり取りに手間がかかるため、専門家に相談しながら進める方も多くいます。ここで整理しておきたいのが業務の切り分けです。後見開始の申立ておよびその代理は弁護士・司法書士の業務であり、行政書士が代理人として申立てを行うことはできません。行政書士ができるのは、申立書や財産目録・収支予定表といった書類の作成をサポートする範囲にとどまります。ご自身で申し立てる時間や労力の確保が難しい場合や、代理人を立てて手続きを進めたい場合は、弁護士・司法書士への相談が必要になる点を踏まえて、依頼先を検討してください。

【実務のポイント】「本人情報シート」を早めに用意しておく

申立て準備の際、見落とされがちなのが「本人情報シート」です。これは医師が診断書を作成する前提として、本人の生活状況や判断能力に関する情報をケアマネジャーなど福祉関係者が記入する書式で、鑑定の要否や後見人候補者の適性を家庭裁判所が判断する材料の一つになります。本人情報シートの記載が具体的であるほど、診断書の作成や審理がスムーズに進みやすいとされているため、申立てを検討し始めた段階で、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに本人情報シートの作成を早めに依頼しておくと、その後の手続き全体の見通しが立てやすくなります。

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こんな方には、この記事の内容は不要です

すでに弁護士・司法書士に申立てを依頼し、手続きが進行中の方は、申立て後の具体的な進め方は依頼先の専門家にご確認いただくのが確実です。また、本人の判断能力にまだ大きな問題がなく、任意後見契約や家族信託など、より柔軟な備えを検討できる段階にある方には、この記事で扱う「申立ての費用・期間・書類」よりも先に検討すべきことがあります。申立てそのものではなく、後見人が決まった”後”の報酬や職務内容が気になる方は、成年後見人の報酬相場はいくら?の記事をご覧ください。

セルフチェック|申立ての準備段階か、専門家への相談を急ぐべき段階か

次の5つのうち、当てはまるもの(YES)はいくつありますか。

  • すでに家庭裁判所や専門家から「鑑定が必要になるかもしれない」と言われている、または診断書だけでは判断がつかないと言われた
  • 申立てに必要な書類(診断書・戸籍謄本・財産目録など)を、まだ一つも揃えていない
  • 不動産の売却や施設入居費用の支払いなど、決まった期限までに手続きを終えたいと考えている
  • 自分ひとりで申立て書類を作成・提出できるか不安がある
  • 後見人候補者について、家族内で意見がまとまっていない

YESの数で見る、今の状況

4〜5個YES:書類収集や期限のプレッシャーが重なっている段階です。早めに弁護士・司法書士へ相談し、申立ての代理も含めて依頼するかどうかを検討することをおすすめします。

2〜3個YES:必要書類の収集から着手しつつ、鑑定の可能性や後見人候補者について、早めに専門家へ確認しておくと見通しが立てやすくなります。

0〜1個YES:比較的落ち着いて準備を進められる段階です。まずは本記事の必要書類一覧を参考に、戸籍謄本や診断書など取得に時間がかかるものから着手してください。

よくある質問

Q. 鑑定は必ず行われますか?
いいえ、すべての申立てで鑑定が実施されるわけではありません。診断書等の記載から判断能力の低下が明らかだと家庭裁判所が判断すれば、鑑定が省略されることがあります。実施の要否は家庭裁判所が個別に判断するため、申立て時点で確定的にお答えすることはできません。

Q. 自分で書類を全部揃えて申立てできますか?行政書士に依頼することはできますか?
本人や四親等内の親族であれば、自分で申立てを行うこと自体は法律上可能です。ただし、後見開始の申立ておよびその代理は弁護士・司法書士の業務であり、行政書士が代理人になることはできません。行政書士に依頼できるのは、申立書や財産目録などの書類作成のサポートまでです。

Q. 申立てにかかった費用は、後から本人の財産で精算できますか?
申立てにかかった実費(収入印紙・鑑定費用等)は、家庭裁判所の判断により本人の財産から償還を受けられる場合がありますが、必ず認められるとは限りません。詳しくは申立て先の家庭裁判所にご確認ください。

Q. 急いでいる場合、審判までの期間を早めることはできますか?
審理の進め方は家庭裁判所の判断によるため、申立人の希望だけで一律に短縮できるものではありません。ただし、書類に不備がなく、本人情報シートなど判断材料が整っているほど、審理がスムーズに進みやすいとされています。

Q. 必要書類が一部足りない場合、申立てはできませんか?
家庭裁判所によっては、申立て時点で一部書類が未提出でも受理し、後日追完を求める運用をしている場合があります。ただし対応は裁判所により異なるため、事前に申立て先の家庭裁判所の窓口や「申立ての手引き」でご確認いただくことをおすすめします。

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あわせて読みたい

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的判断や、特定の家庭裁判所における運用を保証するものではありません。期間・費用・金額は2026年7月時点の裁判所公式資料等をもとにした目安であり、事案により異なります。正式な申立て手続きの代理は弁護士・司法書士、税務判断は税理士にご相談ください。司法書士 今井 裕司(愛知第1112号/簡裁認定 第118116号)監修。

この先どうするか、決めかねている方へ

当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。実際の手続きをご依頼になる場合は、提携先の専門家が有償で承ります。ご希望に応じて提携先をご紹介した際に紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。

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この記事を書いた人

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