任意後見受任者を子ども以外(甥・姪・友人・専門家)に頼める?選び方の基準

子どもがいない。あるいは、県外で暮らす一人娘に「老後の面倒」まで背負わせたくない。長男とはここ10年ほど疎遠で、正直そこまで頼れる関係でもない——。生前対策の相談会で「将来、判断力が衰えたら誰に任意後見をお願いしますか」と聞かれ、答えに詰まってしまった。配偶者や子どもに頼むのが当たり前だと思い込んでいたが、自分の場合はそもそもその「当たり前」が成り立たない。

✅ この記事の結論(30秒まとめ)

  • 任意後見受任者は、配偶者や子どもに限りません。甥・姪などの親族、友人・知人、弁護士・司法書士・行政書士等の専門職、NPO法人などにも依頼できます
  • 依頼できない人は法律で決まっています(任意後見契約に関する法律第4条)。未成年者、破産者、本人を訴えた人とその配偶者・直系血族などが対象です
  • 選ぶ基準は「信頼できるか」だけでなく、「本人より長く対応し続けられる見込みがあるか」「継続的に動ける体制か」の2点も重要です
  • 1人に任せることに不安がある場合は、複数の任意後見人を選ぶ「複数後見」や、将来の交代に備える契約設計もできます
  • 誰に頼むか決まらないまま先延ばしにすると、判断能力が低下した時点でこの契約自体を結べなくなります

「頼める人がいない」という不安の中身をもう少し分けて考えてみると、実際に多いのは「制度として頼めない」のではなく、「誰に頼めばいいか分からないから、話がそこで止まっている」という状態です。血のつながりがなければ後見人になれないと思い込んでいたり、専門家に頼むと報酬がずっとかかり続けるのではと心配していたり、友人に頼んだら関係が気まずくならないか不安だったりします。だから、この記事では、子ども以外に誰を選べるのか、それぞれのケースでどこに注意すればいいのかまで分かるようにしました。

目次

任意後見受任者になれない人・なれる人(欠格事由)

結論から言うと、任意後見受任者に続柄や血縁関係の制限はありません。法律が「ふさわしくない」と定めた事由に当てはまらない限り、本人が信頼できると判断した人であれば、成人であれば誰でも任意後見受任者になれます。任意後見契約に関する法律第4条1項ただし書は、次のような人を任意後見人として選任できない(欠格事由)と定めています。

任意後見人になれない人(欠格事由)
・未成年者
・家庭裁判所で法定代理人・保佐人・補助人を解任されたことがある人
・破産者
・行方の知れない人
・本人に対して訴訟をした、またはしている人、およびその配偶者・直系血族
・不正な行為、著しい不行跡、その他任意後見人の任務に適さない事由がある人

逆に言えば、この欠格事由に当てはまらなければ、甥・姪などの親族、友人・知人、専門職、法人のいずれも受任者候補になります。任意後見監督人(家庭裁判所が選ぶ、後見人を監督する立場の人)については、なれあいを防ぐ目的で受任者本人の配偶者・直系血族・兄弟姉妹はなれないという別の制限がありますが、これは監督人側の制限であり、受任者を選ぶ際の制限ではありません。任意後見契約そのものの仕組みや、公証役場で契約を結ぶ際の流れ・必要書類については、任意後見契約を公証役場で作る完全ガイドで詳しく解説しています。

子ども以外に頼める相手は?4つの選択肢

欠格事由に当てはまらない前提で、子ども以外に任意後見受任者を頼める相手は、大きく4つに分けられます。

依頼先 向いているケース 注意しておきたい点
甥・姪などの親族 普段から交流があり、金銭感覚や人柄をお互いによく知っている 相手にも仕事や家庭があり、長期間の対応が負担になり得る
友人・知人 財産が預貯金中心で、複雑な財産管理を伴わない 同年代だと本人より先に判断力が低下・死亡するリスクがある
専門職(弁護士・司法書士・行政書士等) 不動産の管理や複数の金融機関との取引など、専門知識が必要 月額の後見報酬が発生し続ける
法人(社会福祉法人・NPO法人等) 個人に頼れる相手がおらず、長期にわたる後見が見込まれる 法人自体の運営状況(存続性・信頼性)を確認する必要がある

友人・知人に頼む場合は、同年代であることが多いため、本人より先に相手の判断力が低下したり、体調を崩したりする可能性も考えておく必要があります。専門職に頼む場合は、報酬体系(公証役場での契約時費用に加え、契約発効後は月額報酬が発生するのが一般的)を事前に確認しておくと安心です。法人を受任者にする場合は、財産関係が複雑なケースや、身寄りが少なく長期間の後見が見込まれるケースで検討されることが多い選択肢です。頼れる家族が身近にいない「おひとりさま」の方が任意後見を使う際に、特に押さえておきたいメリットと注意点は、任意後見制度、おひとりさまが利用するメリットと注意点で詳しくまとめています。

選ぶときの判断基準

「信頼できるかどうか」は前提として、それだけで決めると後から困る場合があります。次の3つの基準もあわせて確認すると、判断がぶれにくくなります。

  • 継続性:本人より長く対応し続けられる見込みがあるか。任意後見は契約から発効、発効後の後見事務まで長期間に及ぶことが多く、同年代の友人よりも一世代下の親族や専門職のほうが継続性の面で安定することがあります
  • 財産・身上監護の複雑さ:賃貸不動産の管理、複数の金融機関との取引、事業に関わる財産があるなど、専門的な判断が必要な場面が多いか。多い場合は専門職の関与を検討したほうが安全です
  • 実際に動ける距離・体制:公証役場や金融機関への同行、施設との連絡など、実務が発生した際にすぐ動ける距離にいるか。遠方に住む親族だけで完結させるのが難しい場合は、身上監護の一部を専門職と分担する設計も検討できます

目安として、財産が預貯金中心で金額もそれほど大きくない場合は、信頼できる友人・知人でも対応できることが多い一方、不動産の管理や複数の金融機関との取引がある場合は、専門職に依頼するか、親族と専門職を組み合わせる形を検討したほうが安全です。

複数の任意後見人・将来の交代に備える

「1人だけに任せるのが不安」という場合は、複数の任意後見人を選ぶ「複数後見」という設計もできます。複数後見には、大きく分けて次のような方式があります。

複数後見の主な方式
各自代理方式:複数の後見人がそれぞれ単独で代理権を行使できる形式。役割分担がしやすく、1人が対応できない状況でも機能を維持しやすい
共同代理方式:複数の後見人が共同でなければ代理権を行使できない形式。相互に確認し合えるため不正防止につながる一方、手続きに時間がかかりやすい

複数後見は、遠方に住む親族と地元の親族を組み合わせたり、財産管理は専門職、日常の身上監護は親族が担うといった役割分担にも使われます。ただし、複数の後見人のうち1人でも欠格事由に当てはまると契約全体に影響することがあるため、受任者選びは慎重に行う必要があります。

将来、受任者が対応できなくなった場合に備える方法としては、「予備的受任者」をあらかじめ定めておく契約設計もあります。主たる受任者が対応困難になった時点で、予備的受任者が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立て、選任された時点から効力が生じるという仕組みです。なお、「1人が死亡した場合に他の受任者との契約を発効させる」といった条件付きの任意後見契約は無効と解されているため、こうした設計は公証人と相談しながら進める必要があります。複数の任意後見人を選んだ場合の月額報酬の考え方や、契約全体でかかる費用の目安は、任意後見制度の費用はいくら?月額報酬・手続き費用と家族信託との違いでまとめています。

任意後見を誰に頼めばいいか迷ったら

簡単な質問に答えるだけで、ご自身に合った生前対策の進め方を整理できます。

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【当窓口の相談から】
頼れる子どもがいない「おひとりさま」の方からのご相談で共通しているのが、任意後見契約・死後事務委任契約・遺言の3点セットを、判断力があるうちにまとめて結んでおきたいというご希望です。任意後見だけを先に決めても、亡くなった後の手続きや財産の行き先が別に決まっていなければ、結局同じ悩みが形を変えて残ってしまいます。3つはいずれも本人の判断能力があるうちにしか結べない契約・書面のため、同じタイミングで整理しておくと、後から迷う場面が少なくなります。(当窓口に寄せられた相談をもとに再構成した典型例です)
こんな場合は、今すぐ専門家に依頼する必要はありません
信頼できる家族が近くにいて、日常的な財産管理や通院の付き添いをすでに担ってくれており、当面判断能力の低下を心配する状況にない場合です。この場合は、今の家族関係で当面は対応できる見込みが高く、まずは制度の存在と欠格事由だけを知っておけば十分です。状況が変わったタイミングで、あらためて検討すれば間に合います。

ご自身に当てはまるか セルフチェック

  • 頼れる子どもや近い親族がいない、または頼みにくい事情がある
  • 甥・姪や友人など、子ども以外に依頼したい相手が具体的に思い浮かんでいない
  • 不動産や複数の金融機関口座など、管理すべき財産が複雑になっている
  • 誰に頼むか決まらないまま、任意後見の検討そのものを先延ばしにしている
  • 物忘れが増えるなど、判断力の低下を感じさせる兆候がすでにある
0〜1個該当: 該当が0〜1個の方は、今すぐ専門家に依頼しなくても、ご自身で情報を整理しながら進められる可能性が高い状況です。まずは本記事の欠格事由と選び方の基準を確認しながら、候補になる相手と話す時間を作ることから始めてください。
2〜3個該当: 判断が必要な論点があります。生前対策診断で、ご自身の状況に合った対策の進め方を整理してみてください。
4個以上該当: 早めに専門家と一緒に整理したほうが安心な状況です。30分の整理面談で、受任者候補の選び方や契約の進め方を相談できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 友人に任意後見を頼んで、本当に大丈夫でしょうか?

制度上は問題ありません。友人・知人であっても、欠格事由(未成年者、破産者、本人を訴えた人とその配偶者・直系血族など)に当てはまらなければ受任者になれます。ただし、財産が複雑な場合や、同年代で先に相手の判断力・体調が変わるリスクがある場合は、専門職を組み合わせる、あるいは予備的受任者を定めておくといった備えを検討すると安心です。

Q2. 専門家に頼むと費用がかさむのではないでしょうか?

専門職に依頼する場合、公証役場での契約時費用に加えて、契約発効後は月額の後見報酬が発生し続けるのが一般的です。一方で、財産管理や身上監護を継続的に任せられる安心感とのバランスで考える必要があります。契約時費用と月額報酬の目安、家族信託との費用比較はこちらの記事で確認できます。費用面が心配な場合は、財産の一部だけを専門職に、日常的な部分は親族にといった役割分担も検討できます。

Q3. 親族が誰もいない場合はどうなりますか?

親族がいない、または頼める関係にない場合でも、友人・知人、専門職、法人のいずれかに任意後見を依頼できます。それでも判断力が低下する前に受任者を決められなかった場合は、任意後見契約自体を結ぶことができなくなり、判断力低下後に家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見(成年後見)」に頼ることになります。この場合、後見人を自分で選ぶことはできません。誰を選ぶかを自分で決めておきたいのであれば、判断力があるうちに任意後見契約を結んでおくことが重要です。

Q4. 甥や姪に頼むことはできますか?

可能です。任意後見受任者に続柄の制限はなく、甥・姪、いとこなど、法定相続人にあたらない親族でも欠格事由に当てはまらなければ受任者になれます。日頃から交流があり、金銭感覚や人柄をお互いによく知っている場合は、有力な選択肢のひとつです。

Q5. 複数の任意後見人を選ぶことはできますか?

できます。各自が単独で代理権を行使できる方式や、共同でなければ行使できない方式など、役割分担の仕方を契約時に決めておけます。財産管理は専門職、身上監護は親族といった分担も可能です。ただし複数の受任者のうち1人に欠格事由があると契約全体に影響する場合があるため、公証人や専門職と相談しながら契約内容を詰めることをおすすめします。

まとめ:子ども以外でも、選び方の基準を押さえれば任意後見は頼めます

任意後見受任者は、配偶者や子どもに限らず、甥・姪などの親族、友人・知人、専門職、法人にも依頼できます。依頼できない人は法律(任意後見契約に関する法律第4条)で決まっており、続柄そのものは制限されていません。選ぶ際は「信頼できるか」に加えて、継続性・財産の複雑さ・実際に動ける体制の3つを基準にすると判断しやすくなります。1人に任せることに不安があれば、複数の任意後見人を選ぶ、あるいは予備的受任者を定めておくことで備えられます。誰に頼むか決まらないまま先延ばしにすると、判断力が低下した時点でこの契約自体を結べなくなる点だけは、早めに知っておいてください。

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なお、任意後見を専門職や法人に依頼する場合、公証役場での契約時費用に加えて、契約発効後は月々の後見報酬が発生し続けます。こうした継続的な支出や、将来の施設入所費用にあらかじめ備える方法のひとつとして、生命保険を活用するご家庭もあります。保険が向くかどうかは資産状況によって異なるため、生命保険と相続の完全ガイドで他の備え方とあわせて役割を確認したうえで、専門家に相談しながら検討することをおすすめします。

※ご紹介にあたり、当社が提携代理店から紹介料を受け取る場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税額計算や特定の保険商品の推奨を行うものではありません。税務・法的な判断が必要な場合は、税理士・弁護士など専門家にご確認ください。

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本記事は一般的な情報提供を目的として作成しており、個別の法的・税務判断を保証するものではありません。実際の受任者選びや契約手続きにあたっては、最寄りの公証役場・家庭裁判所、および弁護士・司法書士・行政書士など専門家にご確認ください。監修:提携行政書士法人による監修体制。

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この記事を書いた人

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