介護をしないとどうなる?知っておきたい法律上の義務と、相続で生まれる差の実際

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実家の母から届く電話に、「大丈夫だから」というひと言が増えました。仕事と距離の都合でほとんど顔を出せない自分は、このまま何もしないでいたら、この先いったいどうなるのだろうと、ふと不安になる――。あるいは、これまでの親子関係がうまくいっておらず、「正直、介護をしたいとは思えない」という気持ちを抱えたまま、誰にも言えずにいる方もいらっしゃいます。

※このエピソードは、当窓口によくお寄せいただくご相談内容を、典型的なパターンとして再構成したものです。実在の特定の相談を指すものではありません。

30秒でわかる結論

  • 介護をしないこと自体は、法律違反にはあたりません。親族間の扶養義務は主に経済的な援助を指し、身の回りの世話までを法的に義務づけるものではないと一般に整理されています。
  • ただし、経済的に困窮している親への最低限の援助まで一切拒否するなど、極端なケースでは問題となる可能性があります。
  • 「介護をしない」ことと「将来の相続を放棄する」ことは、まったく別の手続き・別の問題です。
  • 介護をしなかったことで、あなたの法定相続分が自動的に減ることはありません。ただし、他の兄弟姉妹が介護をした分(寄与分)を主張すると、実際の取り分に差が生じる可能性があります。
  • もめごとを防ぐカギは、親が元気なうちの家族会議・財産の把握・遺言などの準備です。

「介護をしない」と考えるだけで、自分を薄情な人間のように感じてしまう方は少なくありません。けれど、その気持ちの奥にあるのは、親を思う気持ちがないからではなく、むしろ「このままでいいのか」「何か大切なことを見落としているのではないか」という誠実さの表れであることがほとんどです。この記事では、介護をしないことの法的な位置づけと、多くの方が本当に知りたい「相続ではどうなるのか」という点まで、順を追って整理していきます。

目次

「介護をしない」と思うことへの罪悪感——まずその気持ちを整理する

「親のことだから、本来なら自分が介護をするべきなのではないか」。そう考えて、実際には距離的・時間的・精神的な事情から介護に関われない自分を責めてしまう方は、想像以上に多くいらっしゃいます。仕事や自分の家庭があり、遠方に住んでいて頻繁には通えない。あるいは、これまでの親子関係の中でつらい記憶があり、素直に世話をしたいと思えない。どちらの事情も、決して珍しいものではありません。

大切なのは、「介護をしたくない」「介護ができない」と思うこと自体は、責められるべきことではないという点です。感情として抱くことと、実際にどう行動するかは別の話です。まずはその気持ちを否定せず、そのうえで「法律上はどうなっているのか」「相続の場面ではどう扱われるのか」という事実を正しく知ることが、漠然とした不安を減らす一番の近道になります。

介護をしないこと自体は、法律違反になるのか——扶養義務の範囲

結論から言うと、親の介護をしないという選択そのものは、原則として法律違反にはあたりません。民法877条には「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」という規定がありますが、この扶養義務は一般的に、生活費の援助など経済的な支援を中心とするものであり、身の回りの世話や実際の介護行為(いわゆる身体介護)そのものを法的に義務づけるものではないと整理されています。

つまり、親と離れて暮らしていて実際の世話ができない場合や、精神的な事情で介護に関わりたくないと感じている場合であっても、それだけをもって刑事罰や損害賠償の対象になるわけではありません。介護サービスや施設を利用しながら親の生活を支えるという選択も、扶養義務を果たす方法の一つと考えられます。

ただし、扶養義務の具体的な範囲や程度は、親と子の資力・生活状況・親族関係など個別の事情によって判断が分かれる部分でもあります。ここでお伝えしているのは一般的な整理であり、ご自身の状況について法的な判断が必要な場合は、弁護士など専門家にご確認いただくことをおすすめします。

ネグレクト・虐待とは何が違うのか——線引きの考え方

「介護をしなくても法的に問題ない」と聞くと、逆にどこまでが許容されるのか不安になる方もいらっしゃると思います。ここは慎重に整理しておきたいところです。

高齢者虐待の防止等に関する法律では、養護者による高齢者虐待の一類型として「ネグレクト」(介護や世話の放棄・放置)が挙げられています。一般的には、同居していて日常的に高齢者の世話をする立場にありながら、食事や必要な医療を受けさせないなど、生命や健康に関わる状態を放置するような、極めて限定的なケースが問題になり得ると理解されています。離れて暮らしていて物理的に世話ができない、というだけの状況とは区別して考える必要があります。

また、経済的な扶養についても、親が生活に困窮しているにもかかわらず、援助できる資力がありながら最低限の援助まで一切拒否し続けるような極端な状況では、扶養義務をめぐる法的な問題に発展する可能性があります。もっとも、どこからが「問題になるケース」にあたるかは、収入や資産の状況、親子それぞれの生活実態によって個別に判断される部分が大きく、一般論だけで断定できるものではありません。ご自身やご家族の状況について不安がある場合は、弁護士などの専門家に個別に相談されることをおすすめします。

「介護をしない」と「将来の相続を放棄する」はまったく別の話

ここで、混同されやすい二つの言葉を整理しておきます。「介護をしない」ことと、「将来の相続を放棄する」ことは、法律上まったく別の問題です。

相続放棄とは、親が亡くなった後(相続の開始を知った時から原則3か月以内)に、家庭裁判所に申述して行う正式な手続きです。相続放棄が認められると、プラスの財産(預貯金や不動産など)もマイナスの財産(借金など)も、一切受け取らないことになります。「介護をしなかったから、自動的に相続人でなくなる」という制度は存在しません。介護をしていなくても、法律上の相続人としての地位はそのまま維持されます。

逆に言えば、「介護に関わらなかったので、自分は相続の権利を主張しない」というつもりであっても、それが自動的に成立するわけではなく、意思表示だけでは足りません。将来的に相続そのものを辞退したいと考えている場合は、相続放棄という別の手続きが必要になる、という点を押さえておくとよいでしょう。

なお、似た言葉として「相続分の放棄」という表現が使われることもありますが、これは家庭裁判所での正式な相続放棄とは異なり、遺産分割協議の中で「自分は財産を取得しない」と意思表示する私的な取り決めにとどまります。この場合、借金などマイナスの財産を含む相続人としての地位そのものはなくならない点に注意が必要です。「介護をしない代わりに、財産もいらない」と口頭で伝えるだけでは、法的な効力を持つ放棄にはならない、ということも覚えておくとよいでしょう。

この問題、相続ではこうなります——介護をしなかった相続人の取り分

多くの方が本当に知りたいのは、ここからではないでしょうか。「介護をしなかった自分は、相続で不利になるのか」「反対に、介護を頑張った兄弟姉妹は、その分多くもらえるのか」という点です。

結論として、介護をしなかったこと自体が、法定相続分を直接減らすわけではありません。法定相続分は民法で定められた割合であり、誰が介護をしたか・しなかったかによって自動的に変動する制度ではないためです。

ただし、ここに「寄与分」という制度が関わってきます。寄与分とは、被相続人(亡くなった方)の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人がいる場合に、相続人どうしの話し合いや家庭裁判所の審判によって、その相続人の取り分を通常より多く認める仕組みです(民法904条の2)。長期間にわたり療養看護を担い、そのために本来かかったはずの介護費用の支出を防いだ、といった事情がある場合に主張されることがあります。

つまり、あなたが介護をしなかったことそのものが減点されるのではなく、「介護をした兄弟姉妹が寄与分を主張し、それが認められる」ことによって、結果的にきょうだい間の取り分に差が生じる可能性がある、という構造です。また2019年の民法改正により、相続人ではない親族(たとえば長男の配偶者など)が無償で療養看護に貢献した場合に、相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求できる制度も新設されています。介護に関わる家族の範囲は、相続人だけにとどまらなくなっている点にも留意が必要です。

もっとも、寄与分は「特別の寄与」が要件とされており、通常の親子としての情愛の範囲内の世話では認められにくいとされ、金額や割合について明確な基準があるわけでもありません。実際には、相続人どうしの話し合いで揉める最大の火種になりやすい論点でもあります。だからこそ、介護をしなかった側・した側のどちらの立場であっても、後から「言った・言わない」の争いにしないための備えが重要になります。具体的には、親が元気なうちに遺言を用意しておく、あるいは家族で早めに話し合っておくことが、もっとも実効性の高い対策です。遺言があれば、寄与分の主張自体を法的に無効にはできないものの、親自身の意思として「誰にどう分けたいか」を明確に示すことができ、話し合いの土台が大きく変わります。

実務のポイント

寄与分や特別寄与料は、「介護をした」という事実だけでなく、いつ・どのくらいの頻度で・どんな内容の世話をしたかを裏づける記録があるかどうかで、話し合いの進み方が大きく変わります。通院の付き添いの記録や、立て替えた介護費用の領収書などを残しておくことは、介護をした側にとっても、していない側にとっても、後々の話し合いを感情論にしないための材料になります。

きょうだい間で介護の負担に差がある、将来の話し合いに不安がある——そんな場合は、今のうちにどんな備えができるかを確かめておくと安心です。

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ひとりで抱え込まない——地域包括支援センターなど公的な窓口

「介護をしない」という選択をした場合でも、親の生活をまったく気にかけなくてよい、ということではありません。実際に手を動かして世話をする代わりに、公的な制度やサービスにつなぐという関わり方があります。

各市区町村には、高齢者の暮らしを地域で支えるための「地域包括支援センター」が設置されています。介護保険サービスの利用相談、ケアマネジャーの紹介、生活上の困りごとの相談などを、無料で受け付けている窓口です。遠方に住んでいて自分では動けない場合でも、親が住んでいる地域の地域包括支援センターに連絡すれば、地域のケアマネジャーやヘルパーなど専門職が親の生活を支える体制を整えてくれます。

介護保険サービスを利用するには、まず市区町村の窓口や地域包括支援センターを通じて要介護認定の申請を行う必要があります。認定を受けた後は、ケアマネジャーが本人の状態に合わせてケアプランを作成し、訪問介護やデイサービス、ショートステイなど、家族が直接手を動かさなくても利用できるサービスの組み合わせを提案してくれます。「自分が介護をしない代わりに、誰がどう関わるか」を専門職と一緒に設計できる、という点は、意外と知られていない選択肢です。

「自分が直接介護をできない・したくない」という気持ちと、「親が安全に暮らせる環境を整える」ことは、両立させることができます。むしろ、無理に自分だけで抱え込もうとして共倒れになるよりも、早い段階で公的な窓口や介護サービスにつなぐほうが、親にとっても家族全体にとっても良い結果につながることが少なくありません。

親が元気なうちにできる、後悔しないための生前対策3つ

介護をする・しないにかかわらず、後々の兄弟姉妹間のトラブルを防ぐためには、親が元気なうちにできる備えがあります。ここでは3つに絞って紹介します。

  • ①家族会議――誰が何をどこまで担うかを、早めに言葉にする。介護の分担や費用負担について、兄弟姉妹間で明確なルールがあるわけではありません。だからこそ、何も決めないまま時間が過ぎると、後から「あなたは何もしなかった」という感情的な対立が生まれやすくなります。全員が集まれなくても、電話やオンラインでよいので、早い段階で一度話す機会を持つことが有効です。
  • ②財産の把握――何が、どこに、どれくらいあるかを確認しておく。親の預貯金・不動産・保険などの財産状況を家族があらかじめ把握しておくことは、相続が発生した後の手続きの負担を大きく減らします。財産目録やエンディングノートのような形で書き出しておくだけでも、いざというときの混乱を防げます。
  • ③遺言や保険での準備――親自身の意思を形にしておく。親自身が「誰に何を残したいか」を遺言という形で意思表示しておけば、寄与分の主張が出た場合でも、話し合いの土台がまったく違ってきます。また、生命保険の受取人を指定しておくことも、特定の相続人に資産を早く確実に届ける方法の一つとして選択肢に入ります。保険を検討する場合は、特定の一社だけでなく複数の商品を比較したうえで判断することをおすすめします。当窓口でご希望があれば、提携している乗合代理店(特定の保険会社に属さず複数社を扱う代理店)をご紹介することも可能です。その際に紹介料が発生する場合がありますが、紹介するかどうかや内容によって当窓口の案内内容を変えることはありません。

あなたの状況を3段階でチェック

ここまでの内容を踏まえて、ご自身の状況を簡単に確認してみましょう。当てはまるものにチェックしてみてください。

  • □ 親と離れて暮らしている、または関係が良好とはいえず、直接の介護には関わっていない(関わる予定がない)
  • □ 自分が介護をしないことで、将来の相続で不利にならないか不安がある
  • □ 他の兄弟姉妹が実際に介護をしており、負担の差が気になっている
  • □ 親の財産状況や、遺言の有無をまだ把握していない
  • □ 家族で将来の相続について、きちんと話し合ったことがない

0〜1個:現時点で大きなトラブルの火種は少ない状況です。今すぐ何かをする必要はありません。

2〜3個:将来、兄弟姉妹間で認識の差が表面化しやすい状況です。一度、無料の診断で状況を整理してみることをおすすめします。

4個以上:早めに家族での話し合いや、遺言などの準備を検討したほうがよい状況です。診断や無料の整理面談で、何から手をつければよいかを一緒に確認できます。

不要な人には、はっきり「不要です」とお伝えします

ここまで読んで、「うちは兄弟姉妹も仲が良いし、財産もそれほど多くないから、特に対策は不要かもしれない」と感じた方もいらっしゃると思います。実際、相続人が少ない・財産の内容が単純・家族関係が良好といった状況であれば、専門家に費用をかけて依頼しなくても、ご自身たちで十分に対応できるケースは多くあります。無理にご相談いただく必要はありません。

上のチェックで該当が0〜1個だった方は、専門家に依頼しなくてもご自身で手続きを完了できる可能性が高い状況です。費用をかける必要はありません。そのうえで、判断に迷う点が1つでもあるようでしたら、30分の整理面談(無料)でご一緒に確認できます。

当社は手続きそのものをお受けしていないため、「いまは何もしなくて大丈夫です」という結論をお伝えしても困りません。ご相談を無料にしているのは、そのためです。実際の手続きをご依頼になる場合は、提携先の専門家が有償で承ります。ご希望に応じて提携代理店や専門家をご紹介した際に紹介料を受け取る場合がありますが、紹介料の有無でご提案の内容は変えません。判断に迷うことがあれば、こちらの窓口からいつでもお問い合わせください。

よくある質問

介護をしないと、相続人から外されてしまいますか?

いいえ、介護をしなかったことを理由に、法律上の相続人としての地位が自動的に失われることはありません。相続人から外れるのは、相続放棄の手続きをとった場合や、相続欠格・廃除など別の法律上の要件に該当する場合に限られます。「介護をしていないから相続人ではなくなる」という制度は存在しませんので、その点は安心していただいて大丈夫です。

扶養義務を果たさないと、罰せられることはありますか?

親と離れて暮らしていて世話ができない、という程度であれば、直ちに罰則の対象になるものではないと一般的に理解されています。ただし、経済的に困窮している親に対して、援助できる資力がありながら最低限の援助まで完全に拒否し続けるといった極端な状況では、法的な問題に発展する可能性があります。個別の状況によって判断が異なるため、不安がある場合は弁護士など専門家に相談することをおすすめします。

遠方に住んでいて介護に関われません。何をしておけばよいですか?

まずは親が住んでいる地域の地域包括支援センターに連絡し、介護保険サービスの利用やケアマネジャーとの調整を依頼するとよいでしょう。あわせて、兄弟姉妹や親族と役割分担・費用負担について早めに話し合っておくことで、後からの「知らなかった」「押し付けられた」という感情的な対立を防ぎやすくなります。

まだ親は元気です。今から相談するのは早すぎますか?

早すぎるということはありません。むしろ、親が元気で判断能力がしっかりしているうちのほうが、家族会議や遺言の準備といった対策の選択肢は広くなります。介護や相続の話は、何かが起きてからでは間に合わないことも多いテーマです。今は情報を整理するだけでも構いませんので、気になったタイミングでご相談いただければと思います。

「介護をしたくない」と家族に言い出しにくいのですが、どうすればよいですか?

いきなり「介護をしない」と伝えるのではなく、「今の自分にできることと、できないこと」を整理して伝える形にすると、家族の受け止め方が変わることがあります。たとえば、身の回りの世話は難しくても、費用の一部を負担する、手続きの調整役を担う、といった別の形での関わり方を提案できる場合もあります。第三者を交えて話したほうが感情的にならずに進めやすい、という場合は、無料の診断や整理面談を、話し合いのきっかけとして利用していただくことも可能です。

兄弟姉妹から「介護は自分ばかりだった」と言われたら、どう対応すればよいですか?

まずは感情的に反論するのではなく、実際にどのような世話を、どのくらいの期間・頻度で行っていたのかを、記録や領収書などの客観的な資料をもとに確認することが大切です。そのうえで、寄与分として認められる可能性がある部分と、話し合いで調整できる部分を整理していくとよいでしょう。当事者同士だけで感情的な対立になりやすいテーマですので、早い段階で第三者を交えて整理することをおすすめします。

今からできる一歩

「介護をしない」ことへの罪悪感は、あなたが不誠実だからではありません。まずは現状を整理し、親が元気ないまにどんな備えができるかを確かめておくことが、これからの安心につながります。診断は匿名・約1分で、費用は一切かかりません。

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この記事を書いた人

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